DATA SCIENCE
2021/12/22

【ゼロから始めるデータ分析#5】データ分析初心者でも経営と組織を巻き込める、現場担当者のための4つのTips

これまでデータ分析を学んだことがない方に向けて、データ分析の基礎を解説していく本連載。第5回では「経営・組織の巻き込み」に的をしぼり、現場で役に立つ巻き込みの4つのTipsをご紹介していきます。

データ分析は分析をして終わりではありません。分析結果にもとづくアクションを起こし成果につなげてこそ、データは活用できているといえます。

アクションを起こす上で大事なのが、経営陣や他部署など、組織の巻き込みです。しかし、データ分析を担当するビジネスパーソンが、分析の現場から経営陣や他部署を巻き込んでいくためのポイントはなかなかまとまっていません。ぜひこの記事を参考に、組織を巻き込んだデータ分析を実践していただけたらうれしいです。


↓ 「ゼロから始めるデータ分析」記事一覧はこちら ↓

#1 初学者がまず知るべき「分析の8ステップ」
#2 データ分析初心者が覚えておくべき3つの分析手法
#3 データ分析初心者が知っておきたい、経営層を巻き込むコミュニケーションのポイント
#4 データ分析初心者が知っておきたい、経営層がデータ分析と分析担当者に求めるもの
#5 データ分析初心者でも経営と組織を巻き込める、現場担当者のための4つのTips

最終回となる今回は、データ分析の8ステップのうち、Step7「巻き込み」で役に立つ4つのTipsをご紹介していきます。

データ分析の8ステップ「Step7:組織を動かす」

Tips1:ビジョンと成果で語れ

経営陣や他部署のメンバーの関心事は何でしょうか。

それは「高度な分析ができるか否か」ではなく、「成果につながるか否か」です。

データを扱う方々は、データを成果に、そしてその先のビジョンに接続する役割を担います

「自分たちはどんな世界を実現したいのか」というビジョンから逆算して、「このデータはビジョン達成のためにどんな成果をもたらすか」を語ることが、経営陣や他部署を巻き込む1つ目のポイントです。 

データ分析は、意識していても目的から外れていきやすいものです。分析に必要なデータが集まらなかったり、予想していたものとは異なる分析結果が出たりして、いつのまにかビジョンや目的を見失い頓挫してしまった、という話はよく聞きます。 

このように、「分析をすること」自体が目的化して失敗に陥る事態を防ぐためにも、データをビジョンと成果で語り、組織に横串を通していくことが重要です。

Tips2:まず成功体験を作れ

組織を巻き込む一番の近道は、「データにもとづいてアクションをしたら成果が生まれた」という成功体験をしてもらうことです。

なので、まずは小さな成功を生み出せるプロジェクトで成果を作り、組織に成功体験をもたらすことを目指しましょう。これが2つ目のポイントです。

データ分析は、必ずしも巨額のコストがかかるものではありません。収集や分析にコストがかからないデータでも、小さな成功を収めるには十分なケースが多いです。

小さな成功を重ね、データ分析の効果を組織全体が実感できるようになると、しだいに組織内でデータの重要性が高まってきます。データにもとづき意思決定をするデータドリブンな組織風土の醸成は、こうした小さな一歩からはじまります。

データドリブンな組織文化ができれば、データを事業成果につなげることが当たり前になるでしょう。

Tips3:視覚に訴えろ

データ分析の結果をまとめたレポートには、見慣れない数式や複雑なグラフ……そのまま見せても「なんか難しそう」と思われ、拒否反応を示されてしまうケースも。

こんなときはビジュアルを活用しましょう。データになじみがない人でも分かるよう、誰でも一目で分かるように見せる工夫ができます。 

一つ、簡単な例を見てみましょう。下の図の左側にある2つのグラフは、それぞれ「テレビCMの出稿量」「バナー広告のインプレッション数」を表したものです。これらを見て相関関係を見出せと言われても、なかなか難しいのではないでしょうか。

では、右側のグラフを見てみましょう。こちらは、「テレビCMの出稿量」「バナー広告のインプレッション数」「コンバージョン数」を表す3つのグラフを重ねたものです。波形を比べてみると、バナー広告よりもテレビCMのほうがコンバージョンと連動していることが一目で分かります。 

このように、いくつかのグラフはバラバラに見せるのではなく、波形と波形を重ね合わせて見せることで、分析に詳しくない方にも分かりやすく伝えることができます。これが3つ目のポイントです。 

グラフを重ねることで、伝えたいことをわかりやすく見せる例

Tips4:データで工夫せよ

分析の前提には「データ収集」があります。ですが、これからデータ分析を始めようというタイミングで必要なデータが完璧に揃っていることはなかなかありません。また、データ収集の段階で組織の協力は必要不可欠ですが、まだ成果が出ていない段階でデータ収集に協力を仰ぐことが難しい場合もあるのではないでしょうか。

そんな時は、Tips2に挙げた小さな成功を目指し、「今あるデータ」を工夫して使い、分析を行う努力も必要です。

ほしいデータが集まらないときや、必要なサンプル数に満たないとき──そんなときは、代わりになるデータがないか、少ない数でも分析できないかを考えてみましょう。 

「このデータじゃないとだめ」「●●サンプル以上ないとだめ」と思っていたけれど、実は別のデータでも、数が少なくても、大きな誤差なく分析できる場合があります。完璧なデータが揃っていなくてもデータ分析はできるのです。 

(e.g)ほしいデータが集まらないときに、別のデータを使う例

「ある地域の、日別の人の移動推移」を示すデータがほしい場合、GPSデータを集めて測定したり、実際に現地に人を派遣して測定したりする方法が考えられます。しかしこれらの方法を使うには大きなコストがかかります。

この場合、検索ボリュームとその推移をチェックする無料ツール「グーグルトレンド」のデータで代用できます。検索ボリュームから、おおよその日別の人口推移を推計できるからです(*1)。こうすれば簡単に必要なデータを集められ、大幅なコスト削減になるでしょう。

(*1)訪問先からの移動手段や経路、時間などを検索する人が多いだろうという仮定にもとづき、グーグルトレンドのトップページで「〇〇(地域名)から」と入力して検索する。

例えば下のグラフは、「渋谷駅から」と検索した結果。2020年1月15日に国内で最初のCOVID-19感染者が確認された後、東京都内で大きな流行がみられた2020年3月下旬〜5月下旬、特に、1回目の緊急事態宣言が発出された2020年4月7日〜5月25日の期間は、検索数が大きく減少する一方、緊急事態宣言と重点措置が全面解除された2021年9月頃からは検索数の上昇がみられる。このことから、検索ボリュームと人口流入数に相関があることが確認でき、人口流入数を推計できる。

グーグルトレンドを活用し、検索ボリュームからおおよその人口流入を推計する例

Point)代替データを使うとき/少ないサンプル数で分析するときの注意点

どんなデータでも無条件に代替できるわけではありません。代替データを使うときや、少ないサンプル数で分析する際は、事前に以下を確認するようにします。

◆ 代替データを使うとき

ほしいデータと代替データのあいだに相関があることの確認(上に挙げた例を参照)
・代替データに異常値がないかの確認

◆ 少ないサンプル数で分析するとき

・必要サンプル数と実際に集められるサンプル数の間で、どのくらい精度に違いがあるかを示す「標準誤差」という数値の確認
※ 標準誤差の数値が小さければ精度が高く、大きければ精度が低いということになります。標準誤差はエクセルの数式を使って算出することができますが、少し専門的な話になるので、詳細は別の機会にご説明したいと思います。

おわりに  

5回にわたり、データ分析の基礎知識をご紹介してきました。

5回とおしてお伝えしてきたのは、データ分析は事業成果につなげてこそ意味があるということ。そして、データ分析は、基本をおさえれば誰もが取り組めるものだということです。

「データ分析は専門家でないとできない」「完璧なデータがないとできない」と思っている方がいるかもしれませんが、実はそんなことはありません。できるところからぜひ実践していただきたいと思います。 


↓ 「ゼロから始めるデータ分析」記事一覧はこちら ↓

#1 初学者がまず知るべき「分析の8ステップ」
#2 データ分析初心者が覚えておくべき3つの分析手法
#3 データ分析初心者が知っておきたい、経営層を巻き込むコミュニケーションのポイント
#4 データ分析初心者が知っておきたい、経営層がデータ分析と分析担当者に求めるもの
#5 データ分析初心者でも経営と組織を巻き込める、現場担当者のための4つのTips

データ分析をゼロから学びたい人におすすめの書籍2選 

木田浩理・伊藤豪・高階勇人・山田紘史(2020)『データ分析人材になる。目指すは「ビジネストランスレーター」』日経BP 

三井住友海上でDXを推進するデータサイエンティストの方々による著書。企業でデータ分析を担当する人が押さえておくべき重要な考え方が「5Dフレームワーク」という方法論で解説されています。ビジネスの現場に寄り添って書かれているので、データ分析担当者だけでなく、マネジメント層や経営層にもおすすめしたい一冊です。 

河本薫(2017)『最強のデータ分析組織 なぜ大阪ガスは成功したのか』日経BP 

「データサイエンティスト・オブ・ザ・イヤー」の初代受賞者である、大阪ガスの河本薫氏が、データ分析組織の立ち上げから今日に至るまで、どのように壁を乗り越えてきたかを紹介しています。組織の作り方や巻き込みについてヒントがもらえるはずです。 

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株式会社サイカ
ADVA Analysis部部長 西 津平

九州大学大学院工学府修了。大学院時代、原子力発電に関わる実験を通してデータ分析と統計学を学び、新卒から3年間、遊技機メーカーにて市場動向のデータ分析業務に従事。業界にとらわれずもっと広い範囲でデータ分析ができる環境を求め、2018年10月、サイカ入社。現在ADVA Analysis部の部長を務める。