マーケターのための「現代のMMM(マーケティング・ミックス・モデリング)」実践ガイド

コラム
MMM

MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)を活用してマーケティング戦略を最適化し、事業成果を向上させたいと考えているCMOやマーケティング責任者のための「実践ガイド」を紹介します。

近年、多くの企業がMMMに注目していますが、それには大きく2つの背景が影響しています。1つ目は、消費者の消費行動の複雑化とマーケティングチャネルの多様化です。企業・ブランドと消費者との接点が多様化する中で、間接的な効果も含めた各マーケティング施策の効果を測定できるMMMは、投資を最適化するための有用な手法となっています。そして2つ目は、GDPRやCookie規制のような最近のプライバシーに関する変化です。個人のトラッキングデータへの依存を減らす方法を取り入れなければならない現代の企業にとって、MMMの活用はさらに重要性を増しています。

サイカは2012年の創業以来、データサイエンス領域に特化したソリューションを提供しており、独自開発のMMMをもとに、これまで250社以上の大手企業のクライアント様に併走してご支援してきました。この実践ガイドはサイカのサービスに限らず、MMMという手法を最適に活用するための手引きとしてまとめました。MMMをこれらか導入する方、また既にお取り組み経験のある方において、この実践ガイドがMMMを活用して成果を上げるためのガイダンスとなれば幸いです。

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目次

1 MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)入門

1.1 MMMの過去と現在

MMMは、売上や市場シェア、その他事業KPI/KGIに与える各種マーケティング施策の影響を定量化するために用いられる統計的手法です。MMMによりどのマーケティング施策が最も効果的かを特定し、マーケティング予算の配分においてデータに基づいた意思決定を行い、マーケティングミックスを最適化します。さらに、MMMは将来のマーケティング施策の影響と売上を予測し、予算編成や長期的な計画立案に役立てることができます。

MMMの歴史は1950年代にさかのぼります。MMMの初期では、線形回帰や計量経済学の手法を使って、食品や飲料、日用雑貨ブランドのテレビCMや印刷広告といったマーケティング施策の影響を測定することに重点を置いていました。現代のMMMは、より多様なデータソース、自動化された分析、より洗練された統計技術を取り入れるなど、時間をかけて進化してきました。2016年にサイカが独自開発によるコンピューターサイエンスを活用したMMMソリューション「MAGELLAN(マゼラン)」を立ち上げた後、近年では2021年にMetaがRobynオープンソースライブラリを公開、2022年にGoogleがベイズMMM論文の出版やLightweightMMMオープンソースライブラリを公開するなど、ここ数年でMMMソリューションがさらに発展してきています。

1.2 MMMの利点と欠点

1950年代から、MMMはマーケティングミックスを最適化し、費用対効果を最大化するために利用されてきましたが、その他にはどのような利点があるのでしょうか? また、MMMが日本においてはこれまで広く採用されてこなかったのはなぜでしょうか? ここでは、MMMの利用における利点と欠点を説明し、自社に適しているかどうかを判断できるようにします。

MMMの最も大きな利点は、マーケティング投資の全体最適化を図ることができるということです。MMMはすべてのマーケティングチャネルを横並びで評価することができるため、各チャネル(効果測定が難しいテレビやOOHなどのチャネルも対象)や施策間で予算の最適な配分を導き出すことができます。多くの場合、広告プラットフォームやチャネルごとに効果測定方法や測定する指標、レポート内容は異なります。そのため、チャネルごとの個別最適が進行してしまい、全体最適を意識したチャネル間の優先度付けが難しくなります。複雑なマーケティングミックスを有する企業は、チャネル間での優先度を特定するための情報源としてMMMを活用しています。

また、MMMは必要なマーケティング予算を、科学的な根拠に基づいて算出できるという利点もあります。多くの企業では、売上目標に対する比率でマーケティング予算を設定しています。例えば、売上比率の10%をマーケティング予算に充てる企業であれば、100億円の売上を計画している場合、売上の10%となる10億円をマーケティング予算として設定します。このような予算の割り当て方では、より少ない予算でも目標を達成できたかどうか、あるいはその予算で見込める成果がどのくらいが適切だったのかを知る術はありません。MMMを活用すれば、実施するマーケティングがどの程度売上に貢献するかを予測することで、予算に関する意思決定を科学的に行うことができるようになります。

しかしMMMも万能なわけではなく、欠点もあります。例えば、MMMは過去のデータに基づく分析となるため、過去に実施したことのない施策の結果を予測することはできません。加えて、分析においては質の高いデータを収集する必要があります。特に、一元化されたデータ管理・データウェアハウスのない企業にとっては、MMMに必要とされるデータを収集するためにさまざまな部門やチームと協力する必要があるため、収集に時間がかかることもあります。さらに、マクロ経済指標、市場や業界の動向、祝日や季節的な要因、天気などの外的要因に関するデータを外部ソースから収集する必要がある場合もあります。また、競合他社の実施施策に関するデータを購入する必要がある場合もあります。このようなデータ収集に関する工程は、MMMを初めて実践する際に最も時間がかかる部分です。

またデータが少ない、あるいはマーケティングがそこまで複雑ではない企業、例えば月間のマーケティング投資が1,000万円以下の企業や、広告チャネルが3つ以下の企業などの場合、MMMが適さない可能性もあります。

さらに、MMMの分析ではモデルの構築や変数の選択において、社内のバイアスを反映させてしまうことがあります。MMMの近代化における変化の大部分は、変数の選択とモデリングプロセスの多くを自動化することによって、このような人間のバイアスを取り除くか、その影響を軽減することにありました。バイアスが生じないようにするには、信頼できる外部の専門家を活用するという方法もあります。

MMMはまだ近代化の過程にあり、すべての企業にベストプラクティスが浸透されているわけではありません。最先端のMMMを実践している企業においても、広告クリエイティブの影響をどのように説明するのが最適なのか、ブランディング広告の長期的な効果をどのように考慮すればよいのか、最適化のための施策データをもっと細かく取得するにはどうすればよいのか、などといった議論が残っています。近年では、サイカのようなデータサイエンス・コンサルティング企業だけでなく、MetaやGoogleのような大手テック企業がこの分野に投資をしてきています。MMM手法における革新と改善は、今後さらに加速していくでしょう。

1.3 MMMが難しい理由

MMMは、マーケティング活動と購買行動の関係を統計的に測定する取り組みです。前述の通り、企業やブランドと消費者との接点の多様化に伴い、現代のマーケティング構造は非常に複雑になっています。そのため、それを統計的に表現することも複雑になっています。機械学習の進歩をこの問題に応用できると考える人もいますが、残念ながらそう簡単ではありません。ほとんどの機械学習ツールは、予測を行うのみで分析データや分析結果の背後にある「なぜ」を説明することができません。この「なぜ」を説明するためには、マーケティングやビジネスに関する知識とそれに基づく仮説が重要となります。つまり、MMMを活用してマーケティング活動の効果を正確に測定し、その結果を解釈・説明するためには、専門的なアルゴリズムの理解だけでなく、自社ビジネスやマーケティングに関する知識が必要なのです。

また、実態に即した分析を行うためのモデル構築における難しさもあります。例えば、広告出稿が売上へ影響するまでのタイムラグ(残存効果)、ベースラインの売上に対する長期的な底上げ(蓄積効果)、施策間の影響(間接効果)、収穫逓減(サチュレーション)など、短期的・直接的な効果以外も考慮して分析するためには、モデルの構築がより難しくなります。

さらに、MMMの分析においては季節性や競合他社の活動、外部イベントなど、売上に影響を与える外的要因も考慮しなければなりません。これらの要因を考慮に入れずに分析すると、実施したマーケティング施策を過大評価または過小評価してしまうなど、誤った結論を導く可能性もあります。

これらの点を踏まえたうえで、自社においてどのようにMMMを実践すればよいのかを検討しましょう。分析の目的において、どのような要素をモデルに組み込むべきなのか、どのような変数の影響が大きいと考えているのか、といった事前の仮説立てが重要となります。それを考えるうえで、以降の実践ガイドを手引きとしてぜひご参考ください。

2 MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)プロジェクトの目的を明確にする

2.1 MMMで達成したいことを定義する

MMMは、ROI(投資収益率)の最大化を目指す企業にとって、非常に重要な取り組みとなります。

一般的なデータ分析と同じように、目的を明確に定義することで、事業目標に沿った取り組みにすることができます。また、目的が明確であればどのようなデータを収集するか、どのような指標を追うか、分析結果をどのように解釈するか、そして最も重要なこととしてどのようなアクションに繋げるべきか、といった視点においても指針となります。目的を設定する際には、事業の長期的な目標と短期的な目標を考慮することが重要です。例えば、短期的な目標としては顧客獲得数、長期的な目標としては売上成長やブランド認知などが挙げられます。短期的な目標に対してのみ最適化を図り、マーケティングの中長期的な影響を無視することは避けなければなりません。

MMMにおいて陥りやすい間違いの一つは、あらゆる問いに答えようとするモデルを構築することで、結局はどの問いに対しても効果的に答えられなくなるということです。MMMを活用する際は、事業にとって最も重要であり、かつアクション可能な問いに絞ることが重要です。「もしこの問いの答えがわかったら、我々はどのようなアクションを取るだろうか?」と自問するとよいでしょう。例えば、インフレが前期の売上にどれほど影響したのかを知ることは、興味深いことではありますが、それが今期や来期のアクションに活かせる情報ではないのであれば、おそらく事業にとっては重要な問いではないはずです。

目的が定まれば、モデルにどのような変数を組み込むべきか、どのようなシナリオをシミュレーションする必要があるか、どのようなアウトプット(図表やグラフなど)を使って説明すればよいか、といったことも明らかになり、分析結果を意思決定に活用しやすくなります。逆にいうと、MMMでの分析を始める前に目的を定めておかないと、最終的な意思決定に活用できない分析結果に陥る危険性があります。このような失敗は、MMMという分析手法自体への信頼性を低下させ、MMMを活用した将来の成長機会をも失ってしまう可能性があります。

2.2 取り組みにとって最も重要な指標(KPI)を特定する

実践的なモデルにするためには、まず、企業にとって最も重要な業績評価指標(KPI)を特定する必要があります。MMMでは、目的変数であるKPIと説明変数であるマーケティング活動の関係をモデル化します。

MMMのKPIを特定する

KPIを決める際は、基本的には事業目標の指標に合わせるのがよいでしょう。売上や販売個数などを設定することが多いですが、売上に繋がるまでに長い時間(数か月から数年)かかる事業の場合、事業目標となる売上に相関する代替指標をKPIとして使用することがおすすめです。例えばB2B事業の場合、マーケティングにより見込み顧客を獲得した後、そこから実際に売上に繋がるまでには数か月から数年かかることもあります。また、B2Cのサブスクリプション事業では、サービス利用顧客によって料金を支払う(売上が上がる)タイミングが異なるため、分析期間における売上をKPIと置くことが難しい場合があります。このような場合、MMMの目的変数としては「適格リード(MQLなど)」や「アクティブユーザー(MAUなど)」などの代替指標を設定することが適切です。

また、KPIは企業のフェーズやマーケティングの目的によって異なる場合もあります。例えば、急成長しているEコマース事業であれば、新規顧客の獲得に注力している可能性が高いため、初回注文や初回平均単価をKPIとするとよいでしょう。一方、同じEコマース事業であっても、事業が成熟している企業の場合は、主にリピート購入を重視して、リピート注文や平均単価をKPIとするのがよいでしょう。

企業にとって最も重要なKPIを特定することは、MMMを運用する上で極めて重要なステップです。自社の事業において最適なKPIを設定することで、MMMの分析を結果をマーケティングの最適化に活かすことができるようになります。

2.3 MMMプロジェクトに割くリソースを概算する

企業や事業により、MMMの規模や複雑さはさまざまです。適切なリソースを割り当てることは、プロジェクトの成功にとって重要です。必要なリソースを計算する際には、考慮すべきポイントがいくつかあります。

まず1つ目は、マーケティング活動の規模と複雑さです。

マーケティング活動の規模が大きくなると、数多くの広告チャネルやマーケティング施策、さまざまな要因を考慮したモデルを検討する必要があります。また、複雑なマーケティング活動であればあるほどMMMが多重共線性(互いに相関する変数が多すぎること)の課題に直面する可能性が高く、それらの確認のためにより多くの時間とリソースを必要とします。また、大きなマーケティング予算であれば、モデルの精度における1%の誤差が数千万から数億円の影響となることもあるため、モデルの精度を高く保つことが重要となります。

一方、マーケティング活動の規模が大きくない場合は、MMMに投資しても大きなメリットが得られない可能性もあります。少数のチャネルにしか広告を出稿していなければ、効果を分析し投資を最適化するためにMMMは必要ないかもしれません。また、後述の2つ目のポイントに関連しますが、マーケティング活動の規模が小さい場合は利用可能なデータが限られることが多く、その場合は十分なモデルの構築ができず、分析結果を活用できない状態に陥る可能性があります。このような場合は、まず比較的リソースのかからないエクセルの重回帰分析を活用し、効果を測定するという方法も有効です。

2つ目のポイントは、分析に利用可能なデータの量と質になります。

MMMプロジェクトを成功させるには、十分な量の質の高いデータを用いることが重要です。一般的なMMMでは、各マーケティングチャネルにおいて、最低1年分の過去データが日次または週次で必要となります。データが限られている場合は、データの収集とクレンジング(破損したデータや不正確なデータを特定して修正すること)に多くのリソースを割く必要があるかもしれません。データ管理状況にもよりますが、データの収集に数週間から一か月近くかかることもあります。

3目のポイントは、MMMプロジェクトに必要な統計的な専門知識になります。
統計学や計量経済学、データサイエンスに関する専門知識が社内にあれば、プロジェクトに割り当てる外部リソースを少なくすることができるかもしれません。しかし、これらの分野の専門知識が不足している場合は、外部のコンサルタントを雇ったり、社員の教育に割くリソースが必要となるかもしれません。

これらのポイントを考慮したうえで、最終的に重要となるのはMMM分析による成果(マーケティングの最適化による利益向上)を試算することです。
年間10億円をマーケティング予算に費やして、年間50億円の売上となる(ROAS:500%)企業の例で考えてみましょう。ROAS 500%となる企業が、マーケティング予算のうち1,000万円をMMMプロジェクトに使用するとなると、同じ費用をプロモーションに投下していた場合に作られる売上である5,000万円(1,000万円×500%)が削られることになります。つまり、MMMプロジェクトのコストを正当化するためには、マーケティング成果を売上6,000万円(1,000万円+5,000万円)以上(1.2%以上)改善させなければなりません。逆に考えると、例えばマーケティング投資の最適化により売上が2%改善すればMMMプロジェクトに掛かるコストは十分に採算が取れ、5%や10%改善することが見込まれるのであれば、積極的に実施するべきという判断になります。もちろん、分析する前から改善幅を正確に試算することはできませんが、どのくらいの改善幅を目指すべきかを試算することは、プロジェクトの実施や継続可否を判断するうえで重要となります。なお、参考までに、サイカがこれまでの250社以上のご支援における、MMMの分析による売上改善示唆は平均4~8%となります。 

3 現在のMMM(マーケティング・ミックス・モデリング)の状況

3.1 計量経済学から現代のMMMへ

ここからは、冒頭の「#1.1 MMMの過去と現在」をより掘り下げて解説します。

MMMのアプローチは計量経済学から発展したものです。計量経済学は線形回帰分析に基づく一連の統計的手法で、マーケティングに限らず金融、農業、医療などのさまざまな分野で応用されています。マーケティングへの応用の一つがMMMとなります。

今日に至っても、その根本的な手法はほとんど変わっていません。変わったのは、その分野を支えるインフラです。従来の計量経済学モデルでは、高度な学問を修得した計量経済学者や統計学者が「手作業」でモデルを構築し、全てのデータの入力と変数を調整する必要がありました。そのため高額かつ時間のかかる手法となり、年に1度しか分析を行わないということが一般的でした。現代に至り、デジタル化により急速に変化するマーケティング環境下において、この分析のペースを上げることが求められるようになった結果、MMMをシステム化し、分析を自動化したソリューションが生まれました。 これらのソリューションではモデリングする過程をシステム化することで、モデルを構築するコストを大幅に下げることができました。

そして近年では、MetaのRobynやGoogleのLightweigthMMMというったオープンソースのMMMライブラリが提供されるようになり、統計知識やプログラミング言語に関する知識があれば、無料でスピーディにMMMを実行できるようになりました。

また、手間のかかっていたデータ収集やクレンジング作業においても、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進歩とともにますます容易になってきています。複数のソースからのデータ収集や統合プロセスを自動化することで、より高い頻度でMMMを更新することができるようになりました。

3.2 現代のMMM機能のチェックポイント

ここでは、MMMソリューションを選定する際のチェックポイントを紹介します。これらのチェックポイントを考慮せずに実行した場合、分析結果が役に立たない、あるいは誤った結果に導いてしまうリスクがあるので要注意です。

ここで紹介するポイントを知っておくことで、MMMソリューションを選定する際やデータサイエンスチームとすり合わせをする際に、より適切な判断や指示ができるようになるでしょう。考慮しておくべきポイントを「モデルの分析機能」と「アウトプット機能」に分けて紹介します。

モデルの分析機能

  • マーケティング施策の波及効果(間接効果)を加味しているか
    特に認知施策などのアッパーファネルにおける施策は、売上に対する直接的な効果以外にも、デジタル広告の効果や指名検索数を押し上げるといった間接的な効果もあります。MMMの分析においては間接効果を加味できていないと、指名検索広告、店頭販促施策など刈取り系施策の効果を過剰に評価してしまう可能性があります。
  • マーケティング施策の残存効果(Ad stock、Carryover)を加味しているか
    マーケティング施策の効果は、消費者との接触後も数日~数週間(場合によっては数か月間)にわたり減衰しながらも残存します。店頭やウェブで買い物中に、過去に広告を見たブランドや商品を思い出すとった、残存する施策の効果を加味して分析をしないと、正しいマーケティング施策の効果が評価できない可能性があります。このような残存効果は、出稿媒体やクリエイティブ、業界や商品カテゴリーなどによって異なります。
  • サチュレーション(非線形の関係、収穫逓減)を加味しているか
    当たり前ではありますが、マーケティング施策に費やす金額を10倍にしたからといって、成果も10倍になるとは限りません。投下金額を拡大すればするほど、収穫逓減の法則により一定の水準を超えると成果は頭打ちとなり、ROIは悪化するでしょう。このような費用対効果の非線形的な関係がMMMに加味されれば、予算配分の最適化による売上予測を、より高い精度でシミュレーションすることができます。一方、サチュレーションを加味できていない分析結果を活用してしまうと、それ以上効果が期待できない施策に過剰投資をしてしまう可能性があります。
  • ブランド・エクイティ(ブランド蓄積効果)を加味*しているか
    ブランド力を測る指標としてはアンケート調査で確認する認知度や好意度などがよく使用されています。しかし、これらの指標だけではブランド力が事業成果にどのように繋がるのかを説明することは困難です。これを説明する一つの方法として、ブランディング施策への継続的な投資が、数ヶ月~数年間の中長期的にわたり企業のベースライン売上の底上げに繋がるという、ブランドの蓄積効果を測る方法があります。その効果を加味して分析すると、中長期的なマーケティング戦略を描くうえで、ブランディングにおける取り組みの事業への貢献度や費用対効果を説明することができるようになります。

*ここで説明するブランド・エクイティ分析機能は、サイカのMMMソリューションの機能になります。他のMMMソリューションでは、ブランド効果の代理指標として、指名検索数、もしくは定期的な認知調査などをモデルに加味することがあります。

  • 季節性を加味できるか
    MMMではマーケティングと季節性の関係を考慮に入れることが必要です。一般的には、消費者が商品を最も購入する可能性が高い時期に予算を多く使う(例:アイスクリームは夏に、セーターは冬に宣伝を強化する)傾向があるでしょう。しかし、MMMで季節性の事業成果への影響を直接的に評価すると、需要の高い時期にマーケティングの費用対効果が悪くなるという結果になる可能性が高いです。なぜなら、ほとんどのMMMでは季節性の影響を独立変数として、マーケティング施策への影響を考慮せずに分析するためです。季節性がマーケティングに影響するという仮説がある場合は、季節性の影響を加味できるMMMを選ぶことをおすすめします。
  • モデルの更新頻度がどのくらいか
    MMMの分析結果をアクションに繋げるためには、昔のように年に1度のモデル更新頻度では不十分な場合が多くなっています。特にデジタルマーケティングの割合が大きくなっている現在では、月次~週次、場合によって日次にでも予算配分に関する意思決定ができるようになっているので、MMMを通した施策の効果分析も可能な限りスピーディーに行えることが理想です。

モデルのアウトプット機能

  • モデルの精度を示す誤差率が示されているか
    モデルの精度の確認は、MMMを活用するうえで非常に重要です。分析の結果出てくる推定値の誤差率や信頼区間を確認しましょう。一般的に、費用が大きくまたはデータ量が多い施策は、モデルから計算されるROIの推定値の精度は高くなり、費用が小さくデータ量が少ない施策の場合は精度が低くなります。分析の結果を精度と共に確認することで、そこから得られる情報の、何をどの程度参考にするべきかが判断でき、適切な意思決定を行うことができるようになります。
  • 売上予測と予算配分の最適化ができるか
    MMMは、マーケティング施策によってどれほど成果が生み出されるかを予測することができます。これは、予算編成や計画立案の際に非常に有用なほか、期中の進捗によって方針を見直す際にも役立ちます。
    さらに、現実的な事情を反映した制約条件の下で最適な予算配分の算出ができるMMMは非常に有用です。例えば「サチュレーションを考慮してテレビCMの予算を調整(抑制)したいが、四半期のテレビCM予算はすでに確定している」というような制約がよくあります。このような制約がある場合でも、制約に基づいて現実的な予算配分の最適化ができるMMMが有用です。

3.3 MMMプロジェクトのタイムラインと主なマイルストーン

MMMプロジェクトを成功させるには、事前の計画と実行管理が必要です。

以下は、MMMプロジェクトの主要なマイルストーンとタイムラインになります。タイムラインについてはシステム化したMMMによるプロジェクトの一例となりますが、従来のコンサルタントによる手作業によるプロジェクトの場合はこれより長くなる可能性が高いでしょう。

STEP 1:プロジェクト目標を設定し、分析スコープを決定する(1~2週間) 

MMMプロジェクトの最初のステップは、取り組みの目的と検証するべき重要な仮説を定義することです。これには、企業の事業目標の理解、それにおける問題・課題の整理、データの獲得可否を把握した上でのモデル設計、そして分析とレポート内容のスコープの決定まで含まれます。このステップには、通常1~2週間かかります。

STEP 2:データの収集とクレンジング(2~4週間) 

データ収集はMMMプロジェクトの不可欠な部分です。最低でも1年間分の成果(売上など)、マーケティング・広告施策、そしてマクロ経済などの外的要因に関する時系列データを獲得しなければなりません。不正確なデータ(欠損値、入力ミス、不整合や重複など)は、不正確な分析結果につながる可能性があるため、収集したデータをクレンジングすることも重要です。このステップには、通常2~4週間かかります。

STEP 3:モデル構築とモデル確定(4~6週間)

データの収集とクレンジングが完了したら、モデリング作業を始めることができます。これは、モデルを常に再実行し、微調整して改良していく反復プロセスとなります。場合によっては、モデルに省略されていた重要な変数に関するデータを新しく獲得する必要もあります。分析のスコープやモデルの複雑さにもよりますが、このステップには通常4~6週間かかります。 

STEP 4:分析、レポート報告と示唆出し(1~2週間)

次のステップは、モデルのデータを分析して、プロジェクト目標と仮説に基づいてアクション可能な示唆を出すことです。プロジェクト目標と検証したい仮説によって、分析できる指標やアウトプットはさまざまです。通常は、分析結果と示唆出しのレポート作成には1~2週間かかります。

4 適切なデータを収集する

4.1 MMMに必要なデータの種類と量

MMMに必要な主なデータは、マーケティングデータ、成果データ、そして外的要因のデータになります。

マーケティングデータには、広告、プロモーション、販売価格などのマーケティング活動に関するデータが含まれます。これらのデータは社内のマーケティングレポート、広告代理店、第三者データプロバイダ、広告やSNSプラットフォームなど、さまざまなソースから収集することができます。

成果データには、売上、販売個数、顧客獲得数などの指標が含まれます。これらのデータは、社内の販売レポート、POSシステム、CRMシステムなどのソースから収集することができます。

外的要因のデータには、消費動向、競合他社の活動、その他自社のマーケティング効果および事業成果に影響を与える可能性のある要因(祝日や天候など)に関するデータが含まれます。

データ収集プロセスをより効率的にするためには、データウェアハウスの設置を検討することがおすすめです。そうすることで、すべてのデータが適切な形式で一箇所に集められ、その後は比較的工数をかけるモデリングに利用することが可能になります。 

信頼性の高い統計モデルを構築するためには、最低12ヶ月分のデータがあれば良いとされていますが、季節的なパターンをより精度高く特定するには、2年以上がおすすめとされています。原則としては、より多くのデータがあればあるほど、マーケティングが事業成果に与える影響をより精度高く推定することができます。

4.2 さまざまなソースから収集したデータをクレンジングする

信頼性の高い統計モデルを構築するために、さまざまなソースから収集したデータをクレンジングすることが不可欠です。

前述したように、MMMに組み込むデータは、社内データベース、第三者データプロバイダ、広告プラットフォーム、代理店など、さまざまなソースから入手することができます。収集するだけで結構な労力を要しますが、モデリングの取り組みにおいてはデータの正確性、完全性、一貫性を確保することが重要です。これには、重複データの削除、エラーの修正、異なるソースからのデータフォーマットの標準化などが含まれます。MMMに組み込むデータのクレンジングと準備は、時間とリソースを要する作業となるため、この作業に十分なリソースを割り当てる必要があります。サイカでは、専任のデータアナリストとデータサイエンティストのチームが、クライアントから受け取ったデータのクレンジングと準備をサポートしています。

以下は、MMMやその他のデータ分析にも適用できるデータのクレンジングと準備に関する一連のステップです。

STEP 1: データを検査

最初のステップは、データを検査し、それらの構造、形式、内容を大まかに理解します。これには欠損データ、外れ値、記入ミスなどの異常値を探すことも含まれます。

STEP 2:データフォーマットの標準化

次のステップは、データを分析できるように、一貫性のあるフォーマットを揃えます。これには、列名の標準化、形式の変換、重複の削除などが含まれます。

STEP 3:データを変換

分析手法の要件を満たすようにデータを変換します。これには、複数変数のデータの集計、新しい変数の作成などが含まれます。

STEP 4:欠損値の補完

欠損したデータ項目に対して、手元にあるデータに基づいて可能な限り現実的な推定値を代入します。

STEP 5:データの検証

データを再度検査し、分析のためのデータ基準に適合しているのを確認します。

STEP 6:データのエクスポート

クレンジングしたデータを、CSVファイルやデータウェアハウスなど、分析に利用しやすい形式でエクスポートします。

4.3 競合他社や消費者トレンドなど、外的要因のデータを考慮する

MMMでは、マーケティングや成果データの活用が中心となりますが、ここでは外的要因に関するデータの活用について説明します。

例えば、観光産業の会社では、海外の消費者の行動に大きな影響を与える「為替レートの変動」をMMMに取り入れるとよいかもしれません。同様に、季節性の強い事業は、その業界の季節性を表す代理指標として、Googleトレンドでの検索データをMMMに組み込むこともできます。例えば、自動車産業の会社では「車購入」が毎年1~3月に検索が上がる傾向が見られており、このようなトレンドを外的要因として加味して分析することで、施策の効果を正しく評価することができます。

競合他社、消費者動向、経済データも、マーケティング活動の効果に関する貴重な示唆を提供することができます。例えば、競合他社が多額のテレビCMを打ったり、大規模なプロモーションを実施したりした場合、自社のマーケティング活動が貢献した分以上に売上にマイナスな影響を与える可能性があるかもしれません。消費者動向データは、失業率、GDP成長率、インフレ率などの経済データ、またターゲット顧客の嗜好や行動なども、マーケティング施策の効果や売上に影響を与える可能性があるため、MMMに取り入れるとよい場合もあります。

注意:MMMにより多くの要因を分析することが、必ずしも良いとは限らないということを念頭に置いてください。データソースが増えるとともに、複雑さと潜在的なノイズが増大するため、サイカがクライアントと構築しているモデルでは、検証したい仮説において影響があると考えられる変数のみを加味するよう注意を払っています。

5 社内チームやMMM(マーケティング・ミックス・モデリング)提供会社との協働

5.1 MMMプロジェクトの関係者との連携

MMMの分析結果は、マーケティング部門だけでなく、経営層や経理部門など社内の幅広いステークホルダーに対して説明・報告することが多くあります。社内を動かしながら分析結果をアクションに繋げるためには、これらの関係者のプロジェクトへの理解が不可欠です。MMMプロジェクトを進行する際は、プロジェクトの目的や事業課題に対する効果などを関係者に事前に説明し、理解を得ておくことがポイントとなります。場合によっては、定例ミーティングやモデルを確定するミーティングに、関係者に同席してもらうのもよいでしょう。モデルや分析内容に対する関係者の信頼が高まり、結果に対する納得度が増すことが期待できます。

サイカのMMMソリューションでは、プロジェクトごとに専属のプロジェクトチーム(コンサルタント、データアナリストとデータサイエンティストを含めたチーム)が、クライアントの担当部署だけでなく、各ステークホルダーに対する説明会や報告会などを実施することで、クライアント社内における共通認識の醸成をサポートしています。

5.2 ステークホルダーに分析結果を報告する

MMMの分析が完了したら、その結果をステークホルダーに報告し、理解を得ることが重要です。分析による発見や得られた示唆、そして事業成果に繋げるための実行可能なアクションを提示しましょう。

モデルの主要な示唆を分かりやすく伝えるためには、適切な図表やグラフを選択することが重要です。各マーケティングチャネルの売上に対する貢献度を示す場合は、棒グラフやウォーターフォールチャートが適しています。また、時間の経過に伴うパフォーマンスの変化を示す場合は、折れ線グラフが適しています。

MMM分析アウトプット

5.3 分析結果に対する質問や意見に対応する

最初からステークホルダーを巻き込んでいたとしても、MMMプロジェクトでは、他部署からの異論や懐疑的な意見が出ることもあります。特に、得られた分析結果や示唆が予想外であったり、難解であったりする場合はこのような意見が出る可能性が高いでしょう。ステークホルダーからの質問や意見に対し、根拠に基づいた説明ができるよう準備をしておくことが重要です。

事前に懐疑的な意見が出てきそうだと予想される場合は、前述のようにモデル構築の段階からプロジェクトに参加してもらうことも有効です。モデルや分析方法に対する信頼を得られ、分析結果が受け入れられやすくなるでしょう。

また、意思決定に際しての情報が不足する場合は、他に代替となる分析がないか検討し、対応方法を共有しましょう。

6 MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)を意思決定プロセスに組み込む

6.1 モデルを定期的に更新するための仕組みを整える 

従来の計量経済学では、モデルの構築に膨大なコストと専門的な知識が必要であったため、年に1回や早くて半年に1回しかモデルの更新が行われませんでした。環境の変化が激しい現代のマーケティングにおいてはこの更新頻度では分析結果をアクションに活用することができません。MMMの利点を十分に活かすためには、モデルを常に最新のビジネス状況に合わせることが重要です。そのためには、定期的にモデルを更新するための仕組みを整えることが必要です。

まず、データ更新の頻度を決めます。例えば、急速に変化する市場に参入している場合は、モデルを月次または週次で更新することを検討するとよいでしょう。一方で、比較的安定している市場に参入している場合は、四半期または半年ごとの更新で十分かもしれません。

また、マーケティング活動の複雑さも考慮すべきでしょう。モデルが単純でわかりやすく、ほとんど変化がない場合は、モデルの更新は比較的簡単です。一方、モデルが複雑で新しいチャネルが頻繁に入れ替わる場合は、最適なモデルを維持するために社内のデータサイエンティストや外部のMMM提供会社と協働する必要があるかもしれません。

6.2 マーケティング戦略策定や予算配分の最適化に活用する

MMMの分析を通して事業成果に繋がる要因を理解することで、マーケティング戦略の策定や予算の配分について、データに基づいた最適な意思決定を行うことができるようになります。

MMMを活用することで、異なるマーケティング施策やクリエティブ、メッセージが事業成果に与える影響を理解することができます。例えば、広告の出稿を抑制したら売上にどのくらい影響が出るのかなど、さまざまなマーケティングシナリオの影響を予測することができます。このような情報は、どの施策に投資するか、どのようにコミュニケーションを実行するかを決定するのに役立ちます。

注意:MMMは反復的な取り組みであることを念頭に置くことが重要です。マーケティング戦略や予算配分に関する意思決定をする際には、モデルを定期的に更新し、最新のデータやビジネス状況を反映させることが不可欠です。

6.3 モデルを調整し信頼性を高める

特に、企業にとってリスクが高いあるいは金額的に大きな判断が必要な場合は、モデルの分析結果に対する信頼性を高めることは非常に重要です。信頼性を高めるには、バックテストを通じてモデルの予測精度を確認したり、リフト調査やエリア別配信テストなどを通じてモデルの結果を検証したりして、推奨アクションの確からしさを確認する方法があります。

バックテストとは、過去のデータを用いてモデルの精度を評価する方法です。ある過去の時点(例えば1ヶ月前)までのデータでモデルを学習させ、その後1ヶ月先の予測を生成させます。モデルがアウトプットした予測値を、実際に計測した成果と比較することで、モデルの予測精度を評価することができます。金融業界やトレーディングなどで、予測モデルの精度と有効性を検証するために良く使われている手法です。

MMMのバックテスティング

リフト調査では、特定のマーケティング施策に接触させたテストグループと、接触させなかったコントロールグループへの効果を比較します。これにより、施策がKPIに与える影響の増分を測定し、モデルの分析結果と比較し、推奨アクションが的確がどうかを判断することができます。

エリア別配信テストでは、モデルの推奨アクションを特定のエリア(国や地域など)でテストし、その結果をアクションを実施していない他の他域と比較します。これにより、モデルの推奨アクションの的確性を検証することができます。

これらの検証を通じてモデルを調整することで、より信頼性の高いモデルを構築し、自信をもってアクションに移すことができるようになります。

注意:上記の方法を含むどの効果分析手法も、必ずしも完璧ではないことを念頭に置くことが必要です。気をつけなければならないのは、MMMの分析結果が他の効果分析手法やマーケターの肌感覚と比べて、大きく異なる結果となったときです。このような場合は調査を実施し、モデルを改善するべきか、あるいは結果を重要なファインディングスとして捉えるべきかを判断することが重要です。

6.4 MMMの分析結果をマーケターにとって簡単に利用できるようにする

MMMを意思決定プロセスに組み込むための有効な方法は、その分析結果をマーケターが簡単に利用できるようにすることです。

例えば、データビジュアライゼーション機能や予算と売上の予測シミュレーション機能を備えたダッシュボードを構築することで、マーケターが技術的知識を持たなくても、過去のマーケティング活動の効果を自由に確認することができ、仮説立てや将来の投資シナリオをシミュレーションすることができるようになります。

このようなダッシュボードを構築することは、意思決定プロセスにMMMを活用するうえで有効な方法だと考えられます。

7 MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)の外部専門家を活用する

7.1 自社で行うか外部に委託するか、どちらが合理的かを判断する

MMMを導入する際には、自社で内製して構築するか外注するかを検討しましょう。前述の通り、MMMプロジェクトの規模や複雑さはさまざまなので、一概にどちらが適しているということは言えません。社内で利用可能な専門知識やリソース、マーケティングミックスの複雑さなどを考慮し検討しましょう。

自社のマーケティングミックスが比較的単純でわかりやすければ、自社内でモデルを構築することは容易かもしれません。一方マーケティングミックスが複雑で、多くの変数などを含む必要がある場合は、外部の専門家に意見を聞くか委託した方がよいかもしれません。

7.2 モデルの精度と信頼性を高めるため、専門家やコンサルティング会社へ相談する

社内に必要なリソースがあっても、モデルの精度と信頼性を向上させたい場合は、第三者視点と専門性のあるコンサルティング会社などの外部専門家の指導を仰ぐことが有効です。特に、マーケティングに対する投資が大きければ大きいほど、第三者視点と専門性は重要となってきます。

外部に専門知識を求める場合、MMMソリューションの提供会社の経験と信頼性を慎重に評価することが重要です。これには、MMMプロジェクトを成功させた実績や、自社の業界や事業領域における専門知識も含まれます。

7.3 外部委託のMMMソリューションを選定する

MMMを構築するために外部の支援を受けると決めた場合、貴社のニーズに合ったソリューション提供会社を選ぶことが重要です。

まず、価格や料金形態(月額料金、モデル更新ごとの料金、プロジェクトごとの料金など)が自社に適しているかを確認しましょう。どのくらいリソースやコストを割くべきかの検討については「MMMプロジェクトに割り当てるべきリソースを概算する」をもう一度確認しましょう。

そして、MMMソリューションの機能も重要な検討事項です。ソリューション提供会社によって、高度なモデリング機能、シミュレーション機能、レポーティングの頻度、独自データの提供などの特徴が異なります。提供される機能が自社のニーズや要件に合致しているかどうかを確認しましょう。

また、カスタマーサポートの手厚さも考慮すべき重要な点です。分析領域におけるコンサルティング、モデルのカスタマイズ対応、分析結果の解釈や示唆出しなどが評価のポイントとなります。

さらに、委託する会社の中立性(第三者的立場)を考慮することも重要です。利益相反が生じ得るような関係(広告出稿などの実行機能を請け負っているなど)がある場合は、モデルの構築や結果の解釈にバイアスが生じる可能性もあります。自社との関係性を踏まえて委託先を選定することが重要です。

8 まとめ

MMMは、プライバシーに配慮したマーケティング活動の効果を評価する手法として、近年ますます注目されています。

MMMを導入するには、社内でモデルを構築する方法から、MetaやGoogle社によるオープンソースツールを活用した運用、そして我々サイカで提供しているような独自開発のMMMによるカスタムソリューションの活用まで、多くの選択肢があります。モデルの分析機能やアウトプット機能を確認し、プロジェクトに割けるリソースを考慮したうえで、自社に適した方法を検討しましょう。

MMMプロジェクトを内製化するにしても、外部の委託会社と協働するにしても、事業の目標に合致したモデルを構築すること、分析結果をステークホルダーに報告し、理解を得ながらプロジェクトを進行することは、プロジェクトを通して成果を出すために非常に重要です。

また、MMMソリューション提供会社に委託する場合は、分析機能、カスタマーサポート、価格、実績などを考慮して選定することが大切です。

MMMがマーケティング効果の評価方法として再注目され、改良され続けるいま、MMMの実践的な運用方法を理解することは、ブランドや企業にとって不可欠なスキルになっています。今回読んでいただいた「マーケターのための『現代のMMM(マーケティング・ミックス・モデリング)』実践ガイド」が、その一助となれば幸いです。

サイカが提供するデータドリブンなマーケティングソリューションについて詳しく知りたい方は、弊社のウェブサイトをご覧ください。また、サイカのサービスを利用したMMMプロジェクトの実践方法についてご興味のある場合は、是非こちらからお問い合わせください。

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