ビジネスパーソンが知っておくべきデータサイエンスの基礎知識をわかりやすく説明|アルゴリズム、機械学習、ビッグデータとは?
急速に変化する現代のビジネス環境において、データサイエンスが果たす役割は決して小さいものではありません。複雑なデータを解析し、実行可能な洞察を得ることを可能にするデータサイエンスは、マーケティングやビジネスにおける意思決定の基盤となっています。
このような背景もあり、「データサイエンス」という言葉を耳にすることが近年ますます増えてきました。しかし、特に文系出身のビジネスパーソンにとっては、データサイエンスという概念はまだ掴みずらいものではないでしょうか。
データサイエンスとは何なのか?ビジネスにとってどのような意味があるのか?――この記事ではデータサイエンスの基本的な概念や用語、ビジネスやマーケティングでの応用例、データサイエンスにおける課題と解決策を、ビジネス視点でわかりやすく説明します。データサイエンスをビジネスに活用するために必要な知識やスキル、技術を知り、データドリブンな時代に備えましょう。
目次
はじめに:複雑な概念をわかりやすく説明
「データサイエンス」をシンプルに
データサイエンスは、データを収集、整理、分析、可視化するために必要な統計学と情報工学の知識や技術です。ビッグデータなどの膨大で複雑なデータから、ビジネスに役立つ知見や洞察を導き出すことを目的としたアプローチです。
例として、巨大なパズルがあると想像してみてください。データサイエンスとは、ピースを組み合わせてパズルに描かれた絵を明かにするプロセスに似ています。
「機械学習」をシンプルに
機械学習とは、コンピュータが人と同じように経験から学ぶよう訓練することです。これにより、プログラミングをしなくても、システムがデータに基づいて自動的に改善し、予測や決定を行うことを可能にします。
機械学習はペットのしつけに例えて考えると理解しやすくなります。ペットのしつけでは、訓練を続けることで指示をしなくてもペット自身が特定の行動を行えるようになりますが、同じようにコンピュータに対して経験を学習させることができるのです。
「アルゴリズム」をシンプルに
アルゴリズムとは、コンピュータが問題を解決したり、タスクを実行したりするために従う手順やルールのことです。
アルゴリズムを料理のレシピに例えて考えてみてください。レシピは「使用する材料とその分量」と「材料を加工して調理する手順」からなりますが、コンピュータの世界において「材料とその分量」が「データ」であり、「調理の手順」が「アルゴリズム」に該当します。目的の料理を作るためにはこのレシピの手順に従いますが、コンピュータもタスクを完了するために手順となるアルゴリズムに従って処理を行うのです。
「ビッグデータ」をシンプルに
ビッグデータは、世界中で生成される膨大で複雑なデータの集合体を指します。人々の日常生活やビジネスを通して生まれるデータの海のようなもので、一般的なデータベースや管理ツールでは処理が難しいほどの規模のデータのことです。ビッグデータの分析にはデータサイエンスを用いた特別な技術やツールが必要です。
ビッグデータを理解するためには、巨大な図書館を想像してみてください。図書館には、一生かかっても読みきれないほどの本がありますが、データサイエンスを活用することで、この大量なコレクションの中から効率的に本を検索したり、価値のある情報を見つけたりすることができるようになります。
・補足のための関連記事:ビッグデータとは|意味や活用事例、分析手法など
「予測分析」をシンプルに
予測分析とは、データやアルゴリズム、機械学習などを用いて、未来の結果を予測することです。
身近な例では天気予報が代表的な予測分析の一つとして挙げられます。天気予報では、過去の天気のパターンを分析することで、未来の天気の状況を予測しているのです。
・補足のための関連記事:マーケティングにおける予測モデル:予測分析手法と活用事例を分かりやすく解説
データサイエンスの基本
データと情報を理解する
「データ」と「情報」という言葉はしばしば混同して使われがちですが、実はこの二つが持つ意味は異なります。両者の意味の違いを理解することは、データサイエンスの基本となります。
「データ」は、数値や文字列などの形式で表現される生(未加工)の事実や現象です。データはそのままでは意味を持ちません。データを分析・処理することではじめて、意味や価値が付与されます。
「情報」は、データに意味や価値が付与されたものです。データが情報になることによって、人の理解や判断に役立てることができるのです。
データサイエンスは、統計学やアルゴリズム、機械学習などの手法を用いて、大量で複雑なビッグ「データ」から問題解決に必要な「情報」を引き出す学問といえます。
・補足のための関連記事:データからマーケティングに活用できるインサイトの発掘方法
データサイエンスの主な構成要素
データサイエンスの主な要素には、「ビジネス力」「統計学の知識」「情報工学のスキル」「データビジュアライゼーション(データ視覚化)力」があります。これらの要素について説明します。
「ビジネス力」は、課題を理解し解決するために必要な、論理的思考、課題の定義、ビジネス観点のデータ理解、分析手法の妥当性評価などのスキルのことを指します。これらのスキルはデータサイエンスを事業へ実装するうえで必要なもなります。
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「統計学」は、データに対する考察を得るための数学的な手法です。膨大なデータを分析し、データの特徴や規則性・不規則性、データ同士の関連性を割り出すことで、データの特徴を理解し未来を予測することに役立ちます。
・補足のための関連記事:【初心者向け】統計学ってどんな学問? 身近な事例から統計学にできることを解説
「情報工学」は、情報の力を工学的に利用するための分野で、プログラミングやアルゴリズム、データベースなどに関連します。データの処理・管理・分析に必要なツールを取り扱うその性質から、システム開発や設計に関する知識や技術も求められます。
「データビジュアライゼーション力」は、グラフやダッシュボード、インフォグラフィックなどを活用して、データを図表などの形で可視化し、伝える能力です。
データサイエンスは、これらの分野の知識や技術を組み合わせることで、大規模なデータセットから問題解決に必要な知見、洞察を導き出すことができるのです。
ビジネスやマーケティングでの応用例
意思決定の強化
データサイエンスは、経営やマーケティングにおいて、直感だけではなく根拠に基づいた意思決定を行うことを可能にします。戦略立案をデータドリブンに行うことで、より成功確率を高めることができます。
・補足に関連した記事:データドリブンな意思決定方法
顧客セグメンテーションとターゲティング
データ分析に基づいて顧客をセグメント化することで、パーソナライズされたマーケティングが可能となります。その結果、顧客エンゲージメントや顧客満足度を高めることができます。
・補足のための関連記事:顧客理解を深めるためのデータドリブンな方法
マーケティング予算配分の最適化
データサイエンスの活用により、様々なマーケティング施策に対して、どのように予算を割り振ると最大の成果が得られるのかを予測することができます。例えば、マーケティング・ミックス・モデリング(MMM)と呼ばれる手法を用いることで、各マーケティング施策の成果に対する寄与度やROIを測定し、予算の最適な配分を算出することができます。
・補足のための関連記事:リソース・予算を最適に配分する方法
データサイエンスにおける課題と解決策
ここでは、ビジネスでデータサイエンスを活用する際に直面しがちな課題を紹介します。これらの課題を特定し、対処することがデータサイエンス活用による成功の鍵となります。
データの収集・整理・管理における課題
データサイエンスを行うには、必要なデータを適切に収集・整理・管理することが重要です。しかし、データの量が増え種類が多様化することに伴い、データの品質や信頼性が低くなってしまう場合もあります。このような課題に対する解決策としては、データのクレンジングや標準化を行うこと、適切なデータストレージを利用することが有効です。また、データの収集や管理を困難にする「組織のサイロ化」を防ぐために、部門間のデータ共有やコラボレーションを促進することも重要です。
・補足のための関連記事:データ収集のベストプラクティス:クライアントとの伴走で得た知見をご紹介
データの分析・解釈・活用における課題
データサイエンスの目的は、データから有用な知見や洞察を導き出し、ビジネスなどに活用することです。データの分析や解釈には高度なスキルや技術が必要な場合も多く、またデータを活用するうえではコミュニケーション能力やプレゼンテーション能力も求められます。このような課題に対応するためには、データサイエンスに関する教育や研修の実施、データ活用に関するベストプラクティスやノウハウの共有、データサイエンティストや他専門家との協働、データの可視化やストーリーテリングなどの手法活用が有効です。
法律・セキュリティに関する課題
活用するデータの種類によっては、個人のプライバシーや権利を侵害する可能性があります。また、管理が不十分な場合はデータの漏洩や改ざんなどのセキュリティリスクもあります。データの収集・管理や利用に関する倫理規範や法令を遵守すること、データの暗号化やバックアップなどのセキュリティ対策をすること、データ利用に関する説明とデータ提供者の同意取得を徹底することが重要です。
データへの過度な依存のリスク
データに基づく意思決定は、データの質や量、分析の目的や方法、結果の解釈の仕方などによって大きく変わる可能性があります。データを過信せず、常に疑い、検証を行うことが重要です。
データへの過度な依存は、データの偏りや欠落、過去の傾向やパターンに囚われることにつながる可能性があります。これを防ぐためには、データの収集や分析の範囲を広げる(つまりデータの多様性や新規性を高める)ことが有効です。例えば、内部データだけでなく外部データも活用したり、定量的なデータだけでなく定性的なデータも取り入れたりすることを検討するとよいでしょう。
プロフェッショナル企業に任せることを検討する
データサイエンスの活用には、一定の専門知識やスキルを要するため、場合によっては外部のプロフェッショナル企業に任せることも効果的です。
データサイエンスの実行を外部に委託する際の、メリットとデメリットを整理しましょう。
メリットとしては、以下のような点が挙げられます:
- 専門的なスキルや知識を持った人材の採用や教育をする必要がない
- プロジェクトの遂行や品質をデータサイエンスに精通した外部企業に任せることができる
- 内部では見過ごされがちな、新しい視点による洞察やアプローチを得ることができる
そして、デメリットとしては、以下のような点が挙げられます:
- サービスの利用に費用がかかる(ただし、内製化のコストとの比較は必要)
- サービスの利用に際して、自社のデータを外部企業に提供する必要がある
- 深い事業理解が必要となる場合が多いため、外部企業とのコミュニケーションに時間と労力がかかる
自社のニーズや予算、データのセキュリティなどを考慮して、メリットとデメリットを比較して検討することが重要です。なお、インハウス化におけるメリットとデメリットについては、下記の記事をご一読ください。
・補足のための関連記事:マーケティング分析のインハウス化|メリットとデメリットを解説
終わりに
データサイエンスは、ビジネスにとって欠かせない学問です。データサイエンスを正しく理解し効果的に活用することで、様々なビジネスの課題を解決することが可能となります。しかし、データサイエンスには様々な技術や手法があり、ビジネスパーソンにとっては難解に感じることもあるでしょう。この記事ではデータサイエンスの基本的な概念や用語、ビジネスやマーケティングでの応用例、よくある課題と解決策を、ビジネスの観点でわかりやすく説明しました。
サイカは、マーケティングにおけるデータサイエンス領域で10年以上サービスを提供しており、国内エンタープライズ企業を中心に250社以上の支援実績があります。
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