データからマーケティングに活用できるインサイトの発掘方法

コラム
データ分析

企業間競争が激化している現代において、マーケティングはビジネス成功のために欠かせない要素です。しかし、市場環境が複雑化するにつれて、従来のマーケティング手法だけでは顧客のニーズやビジネスを成長させる打ち手などを的確に把握することは難しくなってきました。

この問題を解決するために、データからマーケティングに活用できるインサイトを発掘する方法に注目しましょう。

マーケティングに活用できるインサイトとは何か?

マーケティングにおいて、インサイトとは、顧客の行動・思考・感情の背後にある根本的な動機や理由を理解することを指します。

具体的には、顧客がなぜある商品やサービスを選ぶのか(あるいは、選ばないのか)、どのようなニーズや欲求があるのか、どのような価値観や信念を持っているのか、などを明らかにすることが重要です。これにより、商品やサービスをより効果的に訴求するためのアプローチやメッセージを見出すことができます。

つまり、マーケティングに活用できるインサイトは、商品やサービスを顧客にとって魅力的なものにするための重要な手がかりとなります。

「データ」「情報」「インサイト」の関係性を理解

まずは、「データ」「情報」「インサイト」がそれぞれどう関係しているか、例を使ってあらためて理解しましょう。

芸術を例にすれば、画家が描いた絵の筆跡や色彩は「データ」です。

画家が描いた絵、たとえば湖と山の風景が、見える「情報」です。

この風景が、河口湖から秋に見た富士山であるというのを理解することは「インサイト」です。

ビジネス文脈での「データ」「情報」「インサイト」

データは、事実から生成され、数字、画像、音声やビデオファイル、コンピューターに読み取らる値を含む、様々な形にあるものです。データは測定可能な基本単位であり、保存したり、転送したりすることもできます。事実上、ほぼすべての会社がデータを生成していますが、”生”(未加工)のままでは、役に特に立ちません。

そのため、データを加工、整理、可視化するなどして、そこから情報を収穫できるようにするのです。つまり情報とは、収集、集約、整理されたデータのことです。

情報を文脈の中で捉え、解釈のために知識や経験などを情報に加えることで、インサイトが得られます。情報だけの場合は、何が起こっているのかを観察するのに役立ちますが、インサイトはその理由を説明することができます。ビジネスの文脈では、インサイトが意思決定に重要な要素となります。

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インサイトの発掘方法

インサイトを発掘するためのデータや情報を得るための、いくつかの手法をご紹介します。

1. 業界のニュースやレポートを収集する

業界のニュースやレポートを収集することで、市場のトレンドや競合の状況を把握することができます。例えば、同じ商品やサービスを提供する競合他社の動向や、業界全体の市場動向などが把握できます。

2. 顧客調査を実施する

顧客調査とは、アンケートやインタビューなどを用いて、顧客の意見やニーズを把握することです。自社の商品やサービスについての意見や改善点、競合他社との比較などを聞くことで、より具体的なマーケティング戦略を立てることができます。

5. データを可視化する

データの可視化は、複雑なデータを明確で実用的な形に変換することで、インサイトの発掘において重要な役割を果たしています。これにより、マーケティング担当者は顧客行動、トレンド、相関関係を簡単に特定することができ、それに基づいた意思決定と効果的なマーケティングにつながる価値のあるインサイトが得られます。

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4. ウェブ分析を活用する

ウェブ分析とは、ウェブサイトのアクセス状況や行動を分析することです。Google AnalyticsやAdobe Analyticsなどのツールを使って、ユーザーの訪問履歴やページビュー、コンバージョン率などを把握することができます。これらのデータを分析することで、顧客のニーズや行動を把握することができます。

5. ソーシャルメディア分析を活用する

ソーシャルメディア分析とは、SNSなどのソーシャルメディア上でのユーザーの行動や反応を分析することです。ハッシュタグの使用頻度やシェア数、コメント数などを把握することで、商品やサービスに対する興味関心や評判を把握することができます。

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6. クロスチャネル分析を行う

クロスチャネル分析とは、複数のチャネルでの顧客の行動を総合的に分析することです。例えば、ウェブサイトでの行動とSNS上での反応を組み合わせることで、より詳細な顧客像を把握することができます。

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マーケティングに活用できるインサイト発掘の具体例

ここで、インサイト発掘の具体例をご紹介します。

例1:売上データを活用した飲食チェーン店

あるコーヒーチェーン店が、日次と時間帯ごとの売上データを追っています。

このデータを朝、昼、夜で集計してグラフで可視化すると、朝の時間帯には売上が特に低いことが分かります。

さらに売上データを深堀ることで、店内注文の売上が非常に低いことがわります。朝での売上が低い理由として、顧客の通勤や顧客行動が考えられます。例えば、多くの人は通勤などに急いでいるため、座ってコーヒーやその他の飲食品を楽しむよりも、利便性や時間効率を優先しているといった仮説が立てられます。

そこで、コーヒーチェーン店は朝の時間帯の売上を増やすために、朝食のメニューを手軽な持ち帰り品の充実や、お持ち帰りコーヒー割引の提供など、時間帯に合わせたサービス改善に取り組むことができます。

このように、データを活用することで、マーケティングの改善につながるインサイトを得ることができます。

例2:ソーシャルメディア分析を活用したスポーツ用品メーカー

あるスポーツ用品メーカーが、自社の商品に関するツイートデータを収集しています。

まず、ツイートのテキスト分析を行うことで、最も頻出するキーワードを抽出しました。その結果、「ランニングシューズ」「ウェア」「フットサル」といったキーワードが多く出ています。

また、ツイートの投稿時間を集計して、最も活発に投稿される時間帯を特定しました。平日の夜や週末の午後に投稿が集中していることが分かります。

さらに、ツイートを投稿したユーザーの属性情報を収集し、その属性に基づいて分析を行いました。20代から40代の男性が、スポーツ用品に関するツイートを最も多く投稿していることが分かります。

これらのデータをもとに、スポーツ用品メーカーは、以下のようなマーケティング施策を検討することができます。

顧客がソーシャルメディア上でもっとアクティブとなる投稿のピーク時間帯にあわせて、20~40代男性というターゲットに絞ったソーシャルメディアキャンペーンを実施します。キャンペーンでは、自社のランニングシューズやスポーツウエアなどの製品を使っているターゲット層に影響力のあるインフルエンサーとコラボレーションし、ターゲットの注目を集めます。また、ツイートのテキスト分析に現れた「フットサル」などの人気トピックを取り上げ、トピックに関連した自社製品の魅力を強調することで、効果的にターゲットにおけるブランドの認知度を高め、コンバージョンを促進することができます。

このように、ソーシャルメディア分析を活用することで、マーケティングの改善につながるインサイトを得ることができます。

例3:クロスチャンネル分析を活用した自動車メーカー

ある自動車メーカーが、マーケティング施策として、テレビCM、ウェブ広告(ディスプレイ、検索)、SNS広告、メールマガジンなどを利用しています。それぞれの広告チャネルにおいて、コストとコンバージョン率、クリック率などのデータを収集し分析を行いました。

その結果、テレビCMの放映期間中に、テレビ以外の広告チャネルでのクリック率やコンバージョン率が上昇する傾向があることが判明しました。

これは、テレビCMによって顧客の興味・関心が高まったことが考えられ、またデジタルチャネルを通じて顧客が積極的にブランドや製品についての追加情報を求めている可能性を示します。また、テレビCM放映期間中にSNSやウェブ広告のパフォーマンスが向上したことは、クロスチャネルアプローチに顧客がポジティブに反応する可能性を示唆しています。

顧客が異なるチャネルで複数の接点から影響を受ける可能性を示唆し、シームレスなカスタマージャーニーを実現するための統一感のあるマーケティング戦略の重要性が確認できます。

このように、クロスチャンネルでのデータを分析することで、顧客の嗜好品や行動に合わせてマーケティング活動を調整し、クロスチャネル施策を最適化し、費用対効果のより高いマーケティングを実現できます。

まとめ

データからマーケティングに活用できるインサイトを発掘することは、より効果的なマーケティング戦略を立てるために欠かせない要素です。ウェブ分析やソーシャルメディア分析、顧客調査、業界ニュースやレポートの収集、データ分析による情報の可視化、クロスチャネル分析など、様々な手法があります。貴社の目的、ニーズや取得できるデータに合わせて、最適な手法を選択し、インサイトを発掘してみてください。

弊社サイカは、マーケティングにおけるデータサイエンス領域で10年以上のコンサルティングおよび、サービス展開の経験を持ち、大手企業を中心に250社以上の支援実績があります。専門のデータサイエンティストとコンサルタントが、クライアント企業のニーズと目的に応じて、データ分析の最適な活用をサポートします。

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