【ゼロから始めるデータ分析#3】データ分析初心者が知っておきたい、経営層を巻き込むコミュニケーションのポイント

データ活用
スキルアップデータサイエンスデータ分析マーケティング統計連載

企業でデータ分析を行う時、「せっかく分析をしたのに、経営層にNGを出されボツになってしまった……。」こういったケースは、実はよくあります。

私はこれまで、約100社を超えるクライアントのデータ分析を支援し、経営の巻き込み、アクション実行に至るまでをサポートしてきました。

この記事では、これまでの経験から学んだ、データ分析をアクションにつなげるための経営層とのコミュニケーションにおけるポイントを解説します。

↓ 「ゼロから始めるデータ分析」記事一覧はこちら

#1 初学者がまず知るべき「分析の8ステップ」
#2 データ分析初心者が覚えておくべき3つの分析手法
#3 データ分析初心者が知っておきたい、経営層を巻き込むコミュニケーションのポイント
#4 データ分析初心者が知っておきたい、経営層がデータ分析と分析担当者に求めるもの
#5 データ分析初心者でも経営と組織を巻き込める、現場担当者のための4つのTips

なぜあなたの分析はムダになってしまうのか

データ分析が途中でボツになってしまう理由は、実は単純です。

分析には基本となる8ステップがあります。このステップのどこかに矛盾があると、分析を意思決定に活かし、アクションにつなげるのが難しくなってしまいます。

以前公開したこちらの記事で、分析の基本となる8ステップをご紹介しました。

まずは、いま取り組んでいるデータ分析が、すべてのステップをとおして一気通貫しているかどうかをしっかりと確認することが重要です。

データ分析の8ステップ
データ分析基本の8ステップ
https://xica.net/magazine/data_analysis_for_beginners_1/

仮に間違った分析結果をもとに経営層がアクションを決めてしまった場合、経営にマイナスの影響を与えてしまう可能性もあります。

データ分析にはプロセスがあることを意識し、その分析プロセスに矛盾がないかを丁寧に確認するようにしましょう。

データ分析のプロセスをしっかりと踏んだ上で、難しいのは経営と組織の巻き込みです。

データ分析の最終ゴールは、分析にもとづく成功確率の高いアクションを実行すること。アクションを実行するためには、関係部署や経営のGOが必要不可欠です。

では、経営・組織の巻き込みの段階には、どのような難しさがひそんでいるのでしょうか。

経営陣を巻き込む難しさ

経営・組織を巻き込む難しさは、「コミュニケーションのタイミング」にあるといえます。

みなさんの中には、「データ分析のすべての工程を完璧に仕上げてからじゃないと、経営層に提案できない。」このように考えている方がいるかもしれません。

ですが、これは大きな間違いです。

経営と組織を巻き込むポイントは、「経営陣・キーパーソンと、最適なタイミングで適切なコミュニケーションを取ること」にあります。次の章から具体的に見ていきましょう。

経営層とのコミュニケーションのポイント

データ分析にはリスクがあります。

それは「第三者がやったもの」と見られてしまうことです。そう見られてしまうと経営層を巻き込み切ることはできません。

データ分析の取り組みを、経営層や他部署のメンバーにも「ジブンゴト」にしてもらう必要があるのです。

そのためには、”経営層や他部署のキーパーソン自身の脳を使ってもらうこと”が重要です。自分の脳を動かすと、自分たちが主体的におこなったデータ分析だと感じるようになるので、組織の巻き込みはぐんとスムーズになります。

いきなりデータ分析の結果を出されても、経営層は経緯を把握できません。理解し納得するまでに時間がかかり、巻き込みが難しくなってしまう。そんなパターンもあります。

だからといって、こまめに進捗を共有するのは現実的ではありません。

大事なのは、押さえるべきタイミングで適切な共有をし、合意を取りながら進めることです。

経営層の合意を取るべき2つのポイント

データ分析を経営層に「ジブンゴト化」してもらうために、必ず合意を取っておきたいポイントが2つあります。

①仮説設計後
②分析結果の解釈後

この2点です。

なぜこの2つのポイントで合意を取るべきかというと、データ分析の8ステップのうち、ジブンゴトとして考えやすいのが、「仮説」と「解釈」だからです。

このタイミングで合意が取れると、データ分析が経営層にとっても「自分のプロジェクト」になっていきます。

経営層が「ジブンゴト」にしやすいタイミングは、仮説設計後と分析結果の解釈後の2つ

① 「仮説」の合意を取る

データ分析の8ステップ「Step3:仮設(課題を引き起こす要因を推測する)」

データ分析の8ステップのうち、Step1〜3は比較的少ない工数でできます。また、データを提供してもらうなど他部署の協力が必要となるのは、Step4のデータを集める段階からです。

なので、「Step3:仮説」まで進んだら、目的・課題・仮説を経営陣に共有し、一度すり合わせをしましょう。

目的:何を達成したいのか
例)「売上を最大化したい」「新規事業を成功させたい」

課題:何を解決したいのか
例)「リスティング広告の流入数が少ないこと」「新規顧客が少ないこと」

■ 仮説:課題を引き起こす要因は何か
例)「売上が伸びた要因は○○だろう」「会員登録数が減った原因は○○だろう」

データを集める前に分析の方向性に納得してもらうことで、ずれた仮説をもとに間違ったデータを集めてしまう失敗がなくなります。

組織として動く以上、信頼関係はとても大切です。会社のお金を使って間違ったデータを集めてしまったら信用が崩れてしまいます。

そのためにもこの時点で必ず合意を取るようにしましょう。

② 「解釈」の合意を取る

データ分析の8ステップ「Step6:解釈(ここまでのステップが一気通貫しているか振り返る)」

データ分析の結果はただの数字の羅列です。みなさんはその数字に「解釈」を加え、必要なアクションを判断することになります。

実は「解釈」は、2種類に分けられます。

①自分の解釈
分析結果を見て考えた、自分なりの解釈

②自分+キーパーソンの解釈
キーパーソンと一緒に考えた解釈

「Step6:解釈」では、これまでの分析が一気通貫しているかを振り返ります。「想定していた仮説と分析結果」を「実際の分析結果」と比較し、仮説が実証されるかを確認します。

仮説が正しければ、具体的にどんなアクションを取れば課題を解決できるのか、目的を達成できるのかを考えます。

自分なりの解釈ができたら、経営層に提案する前に、「経営層はこの人の言うことなら聞いてくれる」というキーパーソンと一緒に解釈を考える工程をはさみましょう。

アクションを実行するために巻き込むべきキーパーソン(上長やほかの部署の担当者)は事前に分かっているはずなので、最初から狙いをつけておくとよいです。

キーパーソンと一緒に解釈を考えることで、キーパーソンにとってのジブンゴトになるとともに、経営層にとってのジブンゴトにもなりやすくなります。

解釈には、「自分なりの解釈」と「自分+キーパーソンの解釈」の2種類がある

おわりに

この記事では、データ分析における経営層とのコミュニケーションのTipsとして、経営層の合意を取るべき2つのポイントを解説してきました。

プロジェクトをダイナミックに回し、データ分析に基づくアクションを実行するためには、経営層やキーパーソンの巻き込みが大きな鍵になります。

本記事でご紹介した2つのポイントを意識して、データ分析に取り組んでいただけたらうれしいです。

↓ 「ゼロから始めるデータ分析」記事一覧はこちら

#1 初学者がまず知るべき「分析の8ステップ」
#2 データ分析初心者が覚えておくべき3つの分析手法
#3 データ分析初心者が知っておきたい、経営層を巻き込むコミュニケーションのポイント
#4 データ分析初心者が知っておきたい、経営層がデータ分析と分析担当者に求めるもの
#5 データ分析初心者でも経営と組織を巻き込める、現場担当者のための4つのTips

↓ ビジネスメディア『PIVOT』にて、ビジネスにデータサイエンスを活かす方法を解説しています

株式会社サイカ 代表取締役CEO 平尾 喜昭 

父親の倒産体験から「世の中にあるどうしようもない悲しみをなくしたい」と強く思うようになる。慶應義塾大学総合政策学部在学中に統計分析と出会い、卒業直前の2012年2月、株式会社サイカを創業。創業前にはバンドマンであったというユニークなキャリアも持つ。 

この記事を読んだ方におすすめの記事