DATA SCIENCE
2022/03/30

【ゼロから始めるデータ分析#4】データ分析初心者が知っておきたい、経営層がデータ分析と分析担当者に求めるもの

データ分析の結果をもとにした事業改善のアクションを実行しようとすると、時間とお金がかかります。そのため、実行の前に組織の経営層からGOをもらう必要が出てきます。

このように「経営層を巻き込まなければ!」と思った時、まずは、経営層がデータ分析に何を求めているかを正しく理解しておくことが重要です。

この記事では、経営層がデータ分析に何を求めているのか。また、データ分析担当者にどんなことを期待しているのかを解説していきたいと思います。


↓ 「ゼロから始めるデータ分析」記事一覧はこちら ↓

#1 初学者がまず知るべき「分析の8ステップ」
#2 データ分析初心者が覚えておくべき3つの分析手法
#3 データ分析初心者が知っておきたい、経営層を巻き込むコミュニケーションのポイント
#4 データ分析初心者が知っておきたい、経営層がデータ分析と分析担当者に求めるもの
#5 データ分析初心者でも経営と組織を巻き込める、現場担当者のための4つのTips

経営層はデータ分析に何を求めているのか

データ分析に求める「勝利の法則」

一言でいえば、経営層がデータ分析に求めているのは「勝利の法則」です。

では、勝利の法則とはいったい何でしょうか。

まず前提として、「データ分析」と「人間の思考」は両輪で成り立っています
データ分析だけがあっても、人間の思考だけがあっても、うまく回りません。

例えば、山のふもとにジャンプ台を設置し、高い山をジャンプして飛び越えようとするところを想像してみてください。

この時、ジャンプ台となるのがデータ分析(=論理)、ジャンプするのが人間の思考(=クリエイティビティ)です。

ジャンプ台が高ければ高いほど飛び越えられる可能性は高まります。このジャンプ台を高くする役割を担うのがデータ分析です。

データ分析をとおして論理的な正しさを積み上げることで、人間のクリエイティビティはより高く飛躍できます。

経営層がデータ分析に求めているのは、人間が確実に山を飛び越えられるジャンプ台。つまりは、勝率を高めるための論理と戦略なのです。

データ分析をジャンプ台にして高い山を飛び越える人間
データ分析で論理を積み上げ、ジャンプ台が高くなることで、高い山を飛び越えられる勝率が高まる人間

データ分析に求める「2つの提案」

経営層がデータ分析に求めているのは「勝利の法則」だとお話しました。

「勝利の法則」がほしい経営層に対して、分析結果だけを提示するだけでは不十分です。では、経営層はデータ分析をとおして、具体的にどのような提案がほしいと考えているのでしょうか。

経営層が求めている提案は、大きく2つです。

①因果の仮説
②ネクストアクション

因果の仮説


1つ目は、分析結果の背景にある因果の仮説です。

因果とは、原因と結果のこと。
データ分析の結果がどのような原因からもたらされたのかという仮説です。

たとえば、ビールメーカーで働いていたとします。
データ分析をしたら「コロナ禍が実は自社の売り上げを押し上げている」という分析結果が出ました。

こういった場合、この分析結果にとどまらず、もう一歩踏み込んで「巣ごもり需要の中で、家でお酒を飲む文化に変わってきたからなんじゃないか」と原因にあたりをつけていく(仮説を立てる)ことが、その先のアクションにつなげていく上で非常に重要になってきます。

こういった因果関係への気付きは、人間の脳だけに頼っていたらたどり着けません。データというファクトがあるからこそ、見えていなかった問題点に気づける。こういったところに、データ分析をする意義があります。

ネクストアクション


2つ目は、勝率が高く実現性のあるネクストアクションです。

データ分析結果の因果関係が分かった上で、自分たちはどんなアクションを取ったらよいのか。これがネクストアクションです。

こちらもひとつ例を挙げてみます。

地方間格差についてデータ分析をしたところ「地方に対する公的な補助金を増やしても、格差は縮まない」というデータが出ました(*1)。

この結果に対して、以下のような因果関係があるのではないかと仮説を立てます。

公金である補助金は、決められた期日までに、決められた範囲内の使途で使わなければならない。そのため、地方側は事業計画を練りきれないまま、短期間でできる投資をするしかない(原因)。
その結果、建物の建設やよくあるイベントの実施に終わってしまい、根本的な地方間格差の是正にはつながらなかった(結果)。

ここで、どのようなネクストアクションが考えられるでしょうか。

例えば「地方のブランド力を高める補助金のあり方」という視点で考えてみると、以下のようなアクションが考えられます。

地方の競争力を高めるためには、地方全体のストック資産(中長期的に見たときに地方のブランド力や誘引力を高めるもの)の蓄積が重要。
中長期の事業計画を立ててもらい、短期的な成果は見込めないが、のちのち地域の価値を高めるようなデザインやブランドといった無形資産の醸成に使える補助制度を検討するのはどうか。

このように、データをもとに因果関係を考え、人間がもつクリエイティビティを活かしてネクストアクションを示していく

これが、経営層がデータ分析に求めている2つの提案です。

因果関係の仮説から、クリエイティビティを活かしたネクストアクションを生み出す

(*1)参照
Chuo Online「地方に補助金を出せば地方創生につながるか?」 https://yab.yomiuri.co.jp/adv/chuo/research/20220224.php
内閣府 地方創生推進事務局「地方創生推進交付金事業の効果検証に関する調査報告書(R2_houkokusyo-suishin.pdf) 」https://www.chisou.go.jp/sousei/pdf/R2_houkokusyo-suishin.pdf

経営層はデータ分析担当者・マーケターに何を求めているのか

次に、ここまでで話してきたような「経営層が求める提案」を実践する人に対して、経営層が期待する素養は何なのか。「経営層がデータ分析担当者やマーケターに期待していること」を整理していきたいと思います。

ここでは、データ分析担当者として必ずもっていてほしいスキル(Mustスキル)、ここまでできたら素晴らしいと思うスキル(Excellentスキル)を3つずつご紹介します。

Mustスキル

  • 全社的な目的・課題への深い理解と視座の高さ/全社的な目的を起点とした思考

企業のデータ分析担当者は、会社全体の目的と課題を深く理解し、目的を起点として物事を考えなければいけません。そのためには高い視座が必要です。

たまに、「SNSをやりたいから分析してみよう」というように、やりたいことからスタートするデータ分析をしてしまう方がいます。ですが、そういったデータ分析は本質的でなく、実行につなげるのが難しい場合も多いです。

  • 分析・マーケティングのプロとしての中立的なスタンス

企業に所属しているとしても、データ分析には中立的なスタンスで向き合う必要があります。企業の方針や経営者の意向を優先してしまうと、分析の精度が崩れたり、間違った意思決定をしてしまったり、最終的に経営に大きなダメージを与えてしまう危険性もあります。

分析のプロとして、「社長の肝入りで作ったCMだけど、全然響いていません!」と忖度なく正しい判断を伝える役割を担っていただきたいと思います。

  • 分析結果を正しく説明できること

分析結果には、判断が難しいものやあいまいなものが多くあります。その中で経営層が悩むのは、結果をポジティブに捉えてよいのか、ネガティブに捉えないといけないのか、という点です。その点をプロとして判断し、教えてくれること

そして、仮説やアクションに対して懸念点があれば、それも正しく伝えてくれること

正しく勝率の高い意思決定をしたいと思っている経営層が求めているのは、このように分析結果を正しく説明できるスキルです。

2点目に挙げた「プロとしての中立的なスタンス」にもつながりますが、分析結果はほしい仮説に当てはまっていたが、実はサンプルが足りていないので精度は信じないほうがいい。こういうことはよくあります。そういう時は、そういった背景も含め、正しく伝えてほしいと思います。

Excellentスキル

  • データ分析のプロではない素人に対する言語の転換

分析のプロとして、専門的な知識をもっていることは重要です。ですが、経営層やほかの部署のメンバーは、データ分析の専門用語を知らないかもしれません。ここで大事なのが言語の転換です。

たとえば、経営層に意思決定を求める時に、「社長、自由度調整済み決定係数がとても良いです。」と言われても分からないですよね。

分析の素人でも分かるように言語を転換して説明できるスキルがあると、あなたの提案はより通りやすくなるでしょう。

  • スピーディーなPDCAを回してくれること

ビジネスの現場はすごいスピードで変わり続けます。

分析を担当する人の中には、もともと学者や研究者を目指して論文を書いていた方もたくさんいると思います。論文は、8割の時間を使って2割の精度を目指しますが、ビジネスの現場では、2割の時間を使って8割の精度を求めてほしいです。このように、ビジネスの現場に合ったスピード感覚を持つことは重要です。

  • 人をプロジェクトに巻き込むマネジメント力

適切な人材やキーパーソンを見極める力。そして、上に書いたとおり、「仮説設計ができたタイミング」「解釈を考えたタイミング」という2つの重要なタイミングで、巻き込むべき人を全員巻き込んで、プロジェクトをダイナミックに回す力

こういったプロジェクトマネジメント力を持っていると、事業全体の大きな推進が期待できます。プロとしての高いデータ分析スキルに加え、こういった推進力を持っている方は、非常に貴重な人材だと思います。


↓ 「ゼロから始めるデータ分析」記事一覧はこちら ↓

#1 初学者がまず知るべき「分析の8ステップ」
#2 データ分析初心者が覚えておくべき3つの分析手法
#3 データ分析初心者が知っておきたい、経営層を巻き込むコミュニケーションのポイント
#4 データ分析初心者が知っておきたい、経営層がデータ分析と分析担当者に求めるもの
#5 データ分析初心者でも経営と組織を巻き込める、現場担当者のための4つのTips

おすすめの書籍

経営層がデータ分析に求めるもの、データ分析担当者に期待することをお話してきました。最後に、「経営・組織の巻き込み」という観点で、みなさんに読んでいただきたい書籍を2冊ご紹介します。

  • 三谷 宏治(2013) 『経営戦略全史』ディスカヴァー・トゥエンティワン

データ分析官として高い視座をもつための一助となる一冊です。
「経営ってどんなものなんだろう」と思った時に、経営戦略の歴史を体系立てて教えてくれる、初学者向けの内容。過去から今に至る経営の歴史を知ることができ、マーケティングや分析の現場から経営に視座を上げることができます。

  • スティーブン・G・ブランク(2016) 『アントレプレナーの教科書』翔泳社

大前提として、検証がビジネスにどれだけ大きなインパクトを与えるかが分かる一冊です。起業家や新規事業立ち上げ担当者の必読本ともいえるこちらは、検証しながらビジネスを作っていく手順を教えてくれて、そのインパクトの大きさをイメージできます。

株式会社サイカ 代表取締役CEO 平尾 喜昭 

父親の倒産体験から「世の中にあるどうしようもない悲しみをなくしたい」と強く思うようになる。慶應義塾大学総合政策学部在学中に統計分析と出会い、卒業直前の2012年2月、株式会社サイカを創業。創業前にはバンドマンであったというユニークなキャリアも持つ。