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ステレオタイプとは|バイアスとの違いやメリット・デメリットをわかりやすく解説

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SDGs・ESGステレオタイプ

「A型の人は几帳面・O型の人はおおざっぱ」「男性は理系・女性は文系」など、多くの人に浸透している固定観念やイメージのことを「ステレオタイプ」といいます。

ここ数年、男女の働き方に対する不公平感や性差別の問題が、ニュースやSNSでも大きく取り上げられるようになってきました。ステレオタイプは、それらを引き起こす原因にもなっています。

この記事では、ステレオタイプという言葉が生まれた背景、語源、具体例やメリット・デメリットをわかりやすく解説します。ステレオタイプが何なのかを正しく知り、自分や社会にひそむ隠れたステレオタイプに気付くきっかけになればうれしいです。

ステレオタイプの意味・定義

ステレオタイプとは、多くの人に浸透している固定観念やイメージ、思い込み、概念、思考の型のことをいいます。

ステレオタイプを最初に提唱したのは、アメリカのジャーナリスト、ウォルター・リップマンです。リップマンは、著書『世論(1992年)』の中で「人間は、現実環境・疑似環境・行動の三角形の中で行動する」と言いました。

私たちが自分の行動を決めるためには、現実の世界のことをちゃんと知る必要があります。しかし、現実の世界はあまりにも複雑で変わりやすいため、現実をより単純にした疑似的な世界のイメージをつくり、そのイメージをもとに行動します。そしてステレオタイプは、この疑似的な世界のイメージが固定化されたものだというのが、リップマンの考え方です。

人はもともと頭の中に、型(ステレオタイプ)を持っているといいます。その型は、生まれた国や地域、年代、社会階層によって異なり、さらに育ち方や経験、外部からの情報が加わることで形成されていきます。

また、社会心理学では、特定のカテゴリーの人々に関する過度に一般化された信念のことと定義されます。私たちには、他人のことを味方か敵かで分けようとする習性があり、味方を「内集団」、敵を「外集団」と区別するのが心理学の基本的な考え方です。この観点でみると、ステレオタイプは、善悪・優劣の判断理由や、偏見や差別を生む原因にもなり得ます。

ステレオタイプの語源

ステレオタイプという言葉の語源は、印刷業界で使われていた「ステロ版(鉛板・stereotype)印刷」です。

ステロ版印刷とは、文字や線画、写真を圧して作った紙型に、鉛の合金を流し込んで作った原版を用いる印刷技術のことです。まるで型を抜いて作られたかのように全く同じものが印刷されます。

そのことから、ステレオタイプを最初に提唱したリップマンは、私たちが「頭のなかにあらかじめ持っている型に、外の現実を流し込んで理解している」という意味でこの言葉を使いました。

もともと印刷のための型を意味するステレオタイプという技術用語を、彼は新たなマスコミュニケーション時代のキーワードとして流用したのです。

「ステレオタイプ」と「バイアス」の違い

ステレオタイプと似た言葉に「バイアス」があります。バイアス(bias)は「先入観・偏見」という意味の英語です。

ステレオタイプは、一人ひとりが持つ特定のイメージで、それが当たり前だと思っており、自分が持つステレオタイプを意識する機会はあまりありません。

一方のバイアスは、ステレオタイプに何らかの評価や感情、態度、行動が加わったものです。

ステレオタイプ:多くの人に浸透している固定観念やイメージ

例)女性は数学が苦手

バイアス:ステレオタイプ+評価・感情・態度・行動

例)女性は数学が苦手だから(ステレオタイプ)、理系の大学に通う女性は変わっている(評価)

ステレオタイプはなぜ起こる? ステレオタイプが生まれる原因

ステレオタイプは「相手のことがわからない」という不安から生まれます。我々が入手する情報量は膨大なので、すべての情報を裏取りする余裕がありません。

リップマンが「我々は、見てから定義しないで、定義してから見る」と言っているように、私たちはこれまでの経験やメディアから得た情報をもとにイメージを生成し、相手のことを理解しようとします。その過程で「カテゴライズ」「ラベリング」しながら相手のことを認識していくのです。

脳は人間の体の中でも多くのエネルギーを消費する器官といわれています。ステレオタイプがあることで、脳のエネルギーをセーブしながら判断したり、行動したりできます。ステレオタイプは、人間が効率的に生きるための生存戦略の一つといえるでしょう。

リップマンはステレオタイプ自体を悪いものとは言っておらず、ステレオタイプを形成する重要な要因としてジャーナリズムを挙げています。

リップマンが『世論』を執筆した1922年、アメリカではラジオが急速に普及し、1930年代に入るとテレビの開発・試験放送も始まりました。人々が、自身の経験していないことも情報として手に入れられるようになったことで、固定化されたイメージが広く世の中に定着することになり、それに対して人々が何らかの評価を下せるようになったともいえます。

日本におけるステレオタイプの事例

ステレオタイプの身近な例

ステレオタイプの身近な例として、「血液型」があります。例えば、「O型はおおざっぱ」「A型は几帳面」というようなものです。

ほかにも、性別のステレオタイプとして、「男性は理系」「女性は文系」、職業のステレオタイプとして、「保育士や看護師は女性の仕事」「営業職は飲み会が多い」などがあります。

このように、ステレオタイプは私たちの身近に存在しています。

ステレオタイプを生む広告の例

また、日常だけではなく、企業の発信内容にもステレオタイプが隠されています。

特に、CMなどの広告では、気をつけていても、ステレオタイプな考え方を押し付けてしまっているような内容になってしまった事例があります。

例えば、大手食品メーカーのCM「日本のお母さん」です。

このCMでは、母親が仕事と育児・家事に苦労している姿が描かれました。しかし、それに対して、「子育ては母親がするもの」というワンオペ育児を前提としていると、批判が集まりました。制作側の意図は、女性を応援するというものでしたが、家庭の中での、性別による役割の明確化を表現した形になってしまいました。

また、石鹸メーカーのCM「与えるもの」では、父親の1日が表現されました。

妻から頼まれた、子どもの誕生日プレゼントを買い、居酒屋で後輩と酒を飲み、帰宅して、妻から、なんで飲んで帰ってくるのかと怒られ、最後にお風呂に入り、「さ、洗い流そう」というキャッチフレーズが流れるというストーリー展開でした。

制作意図としては、頑張るお父さんを応援するというものでしたが、「男性が家庭よりも仕事を優先することが正当化されている」との意見との意見が集まり、炎上してしまいました。

そして、大手繊維メーカーが、イラストレーターさんにタイツを履いた女の子のイラストを依頼し、それをSNSに挙げたところ炎上してしまった例もあります。

そのイラストは、太ももが強調された女性など、性的な描写を連想させるようなものでした。そのため、「ストッキングを履く女性を性的な目で見ている」「性的消費だ」と批判を受けてしまいました。

ステレオタイプの解消を提起した広告の例

一方、広告ステレオタイプに関する問題提起をすることで、世の中の空気や捉え方を変えようとした事例もあります。

貝印株式会社の「剃るに自由を」の広告は大きな反響を呼びました。

処理されていない脇毛を見せる女性のビジュアルと「ムダかどうかは自分で決める。」というキャッチコピーで、「毛を剃ることが当たり前」という風潮に疑問を投げかけています。

この広告は、第74回広告電通賞のSDGs特別賞に輝きました。

「#剃るに自由を」に託した、貝印の思いとは?~第74回広告電通賞 SDGs特別賞受賞記念対談 | ウェブ電通報

株式会社POLAのCMも大きな話題を呼びました。

第3弾まである人材募集のCMで、「この国は、女性にとって発展途上国だ。」「この国には、幻の女性が住んでいる。」「この国では、二つの顔が必要だ。」というメッセージを訴えました。CMの中では、会議の後ひとりで全員分のコップを片付ける女性、制服姿で受付をする女性、黒いリクルートスーツに身を包む女性など、様々な女性の葛藤を描きました。この挑戦的なCMに対して、ネットでは共感の声がたくさん寄せられました。

このCM、男性にこそ見て欲しい | Business Insider Japan

また、Unicharmは、生理用品ブランド「ソフィ」を通した「#NoBagForMe Project」を始動させました。

専門性を持ったインフルエンサーと協力し、SNSを中心に生理に関する発信を促すプロジェクトです。プロジェクトを開始してから、Twitter上の生理に関するツイート数が前年の2倍に増加するなど、気兼ねなく生理について話せる社会の実現を後押ししています。

“生理タブー視”問題は次のフェーズへ。#NoBagForMeが日本社会に与えたインパクトと社会課題に立ち向かうヒント | PR GENIC

ステレオタイプのメリット・デメリット

ステレオタイプのメリット

ステレオタイプのメリットは、情報処理を簡略化できることです。

私たちは大量の情報に囲まれているため、「必要な情報」と「不要な情報」を区別する必要があります。ステレオタイプをもっていることで、情報を即座にカテゴライズし、簡単に識別できます。そうすることで、瞬時に行動できるのです。

脳への負担を最小限にして、自分にとっての必要な情報を取捨選択できるのが、ステレオタイプのメリットといえます。

ステレオタイプのデメリット

ステレオタイプのデメリットは、誤った認識をしてしまう可能性が高まることです。

型にはめた考え方によって、人や物を単純化してしまい、その人自身やその物自体の特性・性質を、見逃してしまうかもしれません。場合によっては、偏見や差別が生じる原因にもつながってしまいます

また、現代は情報にあふれています。テレビや新聞といったマスメディア、SNSを通じた個人の発信、そして、インターネットで検索すれば数えきれないほどの検索結果が表示されます。

人は、受け取る情報が多くなればなるほど、自分のステレオタイプに依存するようになります。世の中に発信されている情報の正確性はあいまいな場合も多く、それらの情報を鵜呑みにしてしまうと新たなバイアスを生み出してしまうこともあります。

最後に

ステレオタイプは、誰もが持っているものです。

ですが、自分のステレオタイプに頼って下す判断や行動が、差別や偏見につながる可能性があること、メディアが発信する情報を鵜呑みにして、根拠のないステレオタイプを強固にしてしまう可能性があることは知っておく必要があるでしょう。

重要なのは、自分が持っているステレオタイプが、もしかすると偏った情報によってつくられたものかもしれないと認識すること、隠れたステレオタイプに焦点を当てることです。

そのためには、さまざまなメディアの情報を突き合わせて考えたり、データをもとに議論したりすることが必要になってきます。誰でも簡単に発信できる現在においては、一人ひとりのステレオタイプが世の中の流れをつくっていくことを意識して行動する必要があるでしょう。

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