この論文では、以上のような理論を数理的モデルとして構築した上で、実証分析をしています。使用したデータは、韓国の leading search engine からスポンサー広告のデータセットを抽出し、2008年7月の15日間の日時の広告の表示されるポジションと日時のインプレッション数 (何回キーワードがサーチされたか)、およびクリック回数を表したデータを用いています。
結果の概要としては、基本的にはポジションが上に位置すればするほどクリック数が増えるという結果になりました。しかし、上述したようなケースでポジションの逆説が発生したことが確認されたため、理論と整合的な結果を得られました。
サイカの見解
Varian(2007)について、当時は現在ほど情報の接点が少なく、消費者は商品 、サービスを比較できていないまま検索をするため、上位層のポジションに依存しがちだった。しかし現在は、商品・サービスを膨大な情報と照らし合わせて比較できる環境にあるため、上位層のポジションに依存しづらくなってきたと解釈をしています。
Jerah et al. (2011)に関しては、ポジションの逆説というのは非常に興味深い結果であると考えつつ、一方で分析結果と考察には多少の論理の飛躍があるとの意見がありました。すなわち、分析結果では商品の質の影響力(係数)よりポジションの質の影響力が大きく出ていたのにも関わらず、結局質が大事なのであると主張をしている点が少し強引に感じ取れた、ということです。
次回の論文について
今回、Web広告の先駆けとなったVarian(2007)と、比較的新しい研究であるJerah et al. (2011)をレビューしましたが、顧客接点は多様化しているので分析しようとすることには現実に沿っていないのではないかという意見があり、そのためオフラインも考慮する方にサーベイを進めていくことにしました。
そこで、次はオンラインとオフライン両方を考慮した研究として Joo et al. (2013)をサーベイしてく予定です。
参考文献
Jerah, K., Ma, L., Park, Y. H., and Srinivasan, K. (2011), “A Position Paradox” in Sponsored Search Auctions.” Marketing Science, Vol.30, No.4, pp.612-627.Joo, M., Wilbur, K. C., Cowgill. B., and Zhu, Y. (2013), “Television Advertising and Online Search.” Management Science, Vol.60, No.1, pp.56-73.Varian, H. R. (2007), “Position auctions.” International Journal of Industrial Organization, Vol25, No.6, pp.1163–1178.