広告効果測定とは?媒体別の指標とそれぞれの活用ポイント

コラム
MMMデータ分析広告

優れた広告に必要なのは、魅力的なクリエイティブだけではありません。

大切なのは、「広告効果測定」による改善の繰り返しと、データの蓄積です。広告で成果を上げている企業のほとんどは、このPDCAを高速で回すことを徹底しています。

本記事では、オンライン広告とオフライン広告それぞれの効果測定指標や、広告効果測定が「むずかしい」と言われる理由についても解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

広告効果測定とは?

広告効果測定とは、Web上に出稿するオンライン広告や、テレビCMなどのオフライン広告において、どの程度の効果があったかを可視化することです。

たとえば、「資料請求数を増やす」という目的で、オンライン広告を出稿したとします。広告出稿の結果、資料請求数が増えれば十分な広告効果を得られたといえるでしょう。広告出稿後も資料請求数が増えなければ、広告効果は低いと判断できます。

こうした「広告効果があった・なかった」を可視化できるのが、広告効果測定です。

ただし、広告効果測定の役割は、広告効果があったか否かを判断するだけではありません。広告効果があった場合は「なぜ効果が生まれたのか?」 なかった場合は「なぜ効果が生まれないのか?」 成功と失敗の要因を分析するための指標にもなります。

広告出稿が成功したパターン、失敗したパターン、どちらにおいても広告効果測定を用いることで、継続的な改善活動につなげていくことができます。

広告効果測定の指標と活用ポイント

広告効果測定では、出稿する広告のタイプや目的に応じて、いくつかの指標を使いわけます。オンライン広告かオフライン広告かによって指標が異なり、活用ポイントもそれぞれにあります。

ここでは、オフライン広告とオンライン広告における、主要な効果測定指標を紹介します。

オンライン広告の効果測定指標

CTR(クリック率)

CTR(Click Through Rate)は広告の表示回数(インプレッション)に対し、広告がクリックされた割合を表す効果測定指標です。

たとえばGoogleのリスティング広告では、ユーザーが検索したキーワードに応じて、ページの上部または下部に広告が表示されます。

「スポンサー」と表示されているのがリスティング広告

これらの広告がクリックされるためには、広告のクリエイティブ(テキスト、画像、映像)がターゲットにとって魅力的でなければいけません。

CTRが高いと、「広告のクリエイティブがターゲットにとって魅力的だった」と判断できます。

CPC(クリック単価)

CPC(Cost Per Click)は出稿した広告がクリックされた際にかかった広告費を表す効果測定指標です。

先ほど説明したGoogleのリスティング広告なら、ユーザーがキーワード検索を行うごとに表示される広告が決まり、予算を高く設定した広告主が出稿した広告ほど優先的に表示されます。

たとえば「DX化」というキーワードで出稿した広告が1,000回クリックされ、かかった広告費用の総額が10万円なら、CPCは100円となります(*1)。

CPCそのものよりも、他の効果測定指標を組み合わせて広告効果を判断することが大切です。

(*1)リスティング広告の費用は都度変動するため、クリック一つひとつの費用は測定できません

CVR(コンバージョン率)

CVR(Conversion Rate)はコンバージョン(*2)に至ったユーザーの割合を表す効果測定指標です。

CVRはよく、「 ” コンバージョン数 ÷ 広告表示回数 ” で計算しましょう」と説明されていますが、広告効果測定をより細かく行うためには、クリック数を基準に計算することも大切です。

このように、効果測定指標を細分化することでより詳細な広告効果測定が行えます。

(*2)広告と接触したことでユーザーに起こして欲しい行動(資料請求や商品購入など)
(*3)「LP=ランディングページ」:広告をクリックして遷移する最初のページ

CPA(ユーザー獲得単価)

CPA(Cost Per Action)は広告出稿にかけた費用総額に対して、1ユーザーあたりいくらで獲得できたかを表す効果測定指標です。

たとえば、広告にかけた費用総額が100万円、その結果獲得できたユーザー数が100人なら、CPAは1万円となります。

CPAは広告効果測定を行う重要な指標の一つですが、「CPAが高い=広告効果が低い」とは限らないので注意してください。

CPAが高くてもリピート率が高かったり、顧客のLTV(*4)が高ければ、広告効果はしっかりと出ていると判断できます。

(*4)一人(一社)の顧客との関わりを通じて得られる利益

オフライン広告の効果測定指標

GRP(延べ視聴率)

GRP(Gross Rating Point)はテレビCMで使われる効果測定指標で、一定期間に放送されたテレビCMの合計視聴率を表します。テレビ番組の平均視聴率に対して、CM放送枠内で放送されたCMの本数をかけて計算します。

たとえば、テレビ番組の平均視聴率が10%、番組放送中にCMを3本放送した場合のGRPは「10×3=30GRP」です。GPRが高いほど、より多くの視聴者にテレビCMを届けたことになります。

ただし、「実際にテレビCMを観ていたかどうか」までは把握できません。あくまで、放送したテレビCMがどれくらいの視聴者に表示されたかを表します。

GAP(延べ注視率)

GAP(Gross Attention Point)は株式会社デジタルインテリジェンスが提唱した、テレビCMの効果測定指標です。

テレビCMがどれくらい表示されたかを表すGRPに対して、GAPは、視聴者がテレビCMにどれくらい注目していたかを表します。つまり、「実際にテレビCMを観ていたかどうかは把握できない」という、GRPの課題を補うための効果測定指標がGAPです。

GAPは2015年に実証実験が開始されたものの、効果測定指標としてはまだ確立されていません。しかし、テレビCMの広告効果測定をより詳細に行えるため、今後はGAPがGRPに代わって主流になっていくと考えられています。

広告換算値

広告換算値とは、企業の広報・PR活動を通じて自社の商品・サービス、取り組みなどが取り上げられた際の価値を把握する効果測定指標です。

たとえば、新商品発売といった情報がニュース番組で報道されれば、同時間帯に放送されるテレビCMと同じ広告効果があると考えられます。新聞や雑誌に取り上げられれば、同程度の掲載面積を持つ広告欄に出稿したときと、同じ広告効果があるといえます。

このように、ニュース番組や新聞、雑誌、Webメディアなどで取り上げられた場合に、「それに近しい広告の価値に換算する」のが広告換算値です。

近年の広報・PR活動では、広告換算値の事前目標を設定し、戦略的に広報・PR活動を進めていくことが大切です。

指名検索数の増加率

指名検索数とは、GoogleやYahoo!などの検索エンジンにおいて、特定の企業名や商品・サービス名が検索された回数のことです。この増加率を測ることで、オフライン広告の効果測定指標として活用できます。

たとえばテレビCM放送後に指名検索数が20%増加すれば、一定の広告効果があったと考えられます。

ただし、季節性やトレンド性など、他の要因によって指名検索数が増加する可能性もあります。そのため、他の要素が影響していることも踏まえて、指名検索数の増加率を測定・考察することが大切です。

サイトアクセス数の増加率

指名検索数に加えて、PVやUUといったサイトアクセス数の増加率もオフライン広告の大切な効果測定指標です。

企業や商品・サービスのWebサイトにアクセスする経路は、検索エンジンだけではありません。他のサイトやSNS投稿に設置されていたリンクから、サイトにアクセスするユーザーも大勢います。

たとえば指名検索数の増加率が芳しくなくても、サイトアクセス数が伸びていれば、出稿した広告にブランディング効果があった可能性が考えられます。「広告と接触したことでユーザーの潜在意識に印象付けられた可能性がある」ということです。

指名検索数とサイトアクセス数は、一見すると類似した効果測定指標ですが、視点を少しずらすだけで広告効果の見方を変えられます。

広告効果測定が近年「むずかしい」と言われる理由

近年、マーケテイング担当者の多くが「広告効果測定はむずかしい」と、頭を悩ませています。ここでは、広告効果測定がむずかしいと言われる4つの主な理由を紹介します。

1. オフライン広告の効果を可視化できない

テレビCMや新聞・雑誌などを使ったオフライン広告において、効果測定は長年の課題です。

テレビCMの場合、GAP(延べ注視率)など新しい効果測定指標に期待が寄せられていますが、現状としてGRP(延べ視聴率)を使った広告効果測定が中心です。

オンライン広告のようにCTR(クリック率)やCPA(顧客獲得単価)などを細かく測定することができず、「広告効果の可視化がむずかしい」という大きな課題が残されています。

2. 広告終了後も効果が持続する

広告は、掲載(放送)終了後も効果が持続します。これが、広告効果測定をむずかしくしている要因の一つです。

広告終了後も持続する効果とは

上記の共同研究はテレビCMを対象としたものですが、広告の波及効果、残存効果、ブランド蓄積効果は、あらゆる広告に存在すると考えられます。

(*5)XICA保有の統計処理された分析データ(249事例)から作成したスコア(2017年~2021年)のため、すべての案件に共通するものではありません
(*6)本研究では「長期」を3〜5年の期間と定義しています

3. ユーザー接点が多様化している

オンライン広告の細分化(検索エンジン、ディスプレイネットワーク、SNS、動画配信、Eコマースなど)により、ユーザー接点の多様化が進みました。

広告の目的、商品・サービスの特性、ターゲットによって詳細な広告戦略が取れるようになった反面、広告効果測定をむずかしくしているのも事実です。

購買プロセスのどのタイミングでどの広告に接触しているか。どのような経路でコンバージョンに至っているかを、正確に把握しなければいけないのです。

4. 間接効果を無視してしまいがち

広告効果測定では、間接効果を無視してはいけません。

たとえば、Googleの検索結果ページの広告をクリックしてコンバージョンに至った場合、最終的なコンバージョンに貢献したGoogleのリスティング広告だけ評価してしまいがちです。

一方で、テレビCMによる波及効果や残存効果、その他の広告効果があってこそ最終的なコンバージョンへとつながります。

間接効果は可視化がむずかしいため、必然的に無視してしまいがちな要素です。これも広告効果測定をむずかしくしている要因となります。

広告が事業成果に与えた影響をどう測るか

広告が事業成果に与えた影響を測る重要指標として、「ROAS」「ROI」「LTV」があります。

売上ベースで成果を測るROAS

ROAS(Return On Advertising Spend)とは「広告費用対効果」のことです。広告に投じた費用に対して、どれくらいの売上をあげられたかを表します。

ROAS(%)=広告による売上÷広告費×100

ROASが高ければ高いほど、広告の成果が高いということになりますが、ROASには原価や人件費などの経費が考慮されていないため、100%を超えたからといって黒字であるとは限りません。

ROASは広告経由の売上高をどう設定するかによって結果が異なるため、企業ごとに適切な切り口で分析することが大切です。

たとえば、「広告掲載期間中の新規売上高」として設定するのか、「オンラインの問い合わせから生じた新規売上高」として設定するかによって、ROASは変化します。

ROASを広告効果測定の指標として適切に運用するためには、継続的な広告運用と効果測定により、企業ごとの最適解を見つけなければいけません。

この「最適解を見つける」がROASのむずかしいところですが、広告が事業成果に与えた影響を確認するために欠かせない指標の一つです。

利益ベースで成果を測るROI

ROI(Return On Investment)とは「投資対効果」のことです。広告に投じた費用に対して、どれくらいの利益を生み出せたかを表すもので、投資収益率や投資利益率ともいわれます。

ROI=(広告による売上-売上原価)÷ 広告費×100%

企業は、売上が立っていても利益が出ていなければ存続できません。ROIは、売上から人件費や手数料などの売上原価を引いた利益をベースにして広告効果を測定します。商品やサービスの平均利益単価さえわかればすぐに算出できるため、現状の把握に役立ちます。

広告ごとのLTVに着目する

LTV(Life Time Value)とは、「顧客生涯価値」のことです。顧客との関わりを通じて、顧客が自社にもたらした利益を数値化したものです。一般的なLTVは次のように計算します。

  • BtoCのLTV=購入単価×購入回数×継続期間
  • BtoBのLTV=年間取引額×利益率×継続年数
  • サブスクのLTV=平均継続期間(*7)×ユーザー平均単価(ARPU)

(*7)平均継続期間は「1÷解約率」で求められる

広告効果測定の近代的戦略では、これらのLTVを「広告ごと」に計算します。

なぜかというと、例えばCTR(クリック率)とCPA(顧客獲得単価)が同じ2つの広告があったとしても、各広告経由で獲得した顧客のLTVは異なる場合が多いからです。

つまり、広告によってLTVは異なり、このデータを考慮して広告効果測定を行うために、広告ごとにLTVを計算する必要があります。

単純なLTVを用いると、広告費全体に対する結果しかわからないため、前述した「間接効果を無視してしまいがち」などの問題点に陥る可能性が高いのです。

広告効果測定の課題をデータで解決するサイカの取り組み

広告効果測定を正しく行えば、広告効果は着実に伸びていきます。しかし、前述した4つの課題が、広告効果測定をむずかしくしています。

こうした、広告効果測定の課題をデータで解決する取り組みを進めているのが、わたしたちサイカです。

マーケティング活動の全体最適化

広告効果測定に悩む企業に向けて、サイカが提供しているのが「MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)を活用した広告効果の可視化」です。

MMMとは、データや統計的手法を用いて、マーケティング活動全体の効果測定を行う手法・技術のことです。

サイカではこのMMMソリューション「MAGELLAN(マゼラン)」を提供することで、多くの企業の広告効果測定をサポートしてきました。

MAGELLANを用いた広告効果測定では、次のような可視化が行えます。

  • 広告ごとに売上に与える影響
  • 広告ごとの波及効果や残存効果、ブランド蓄積効果
  • 広告を通じたブランド・エクイティ
  • 販促・営業など広告以外の要因が与える影響
  • 認知から成果までのカスタマージャーニー
  • etc.

データドリブン・マーケティングを実現するパートナー

サイカは、MMMをはじめとするさまざまな統計知識、データサイエンス技術を軸に、お客様のデータドリブン・マーケティングを実現し、持続的な事業成長を支援するプロフェッショナルパートナーです。

広告効果測定は、マーケティグ活動の基盤となる重要な要素ですが、効果測定の結果をマーケティング戦略に落とし込み、戦術を設計し、各施策を実行し、再度効果測定を行っていく。このPDCAを高速に回していかなければ、マーケティングのROI最大化は図れません。

サイカは、お客様の視点に立ち、さまざまなソリューションを組み合わせることで広告効果測定の可視化と、そこにあるさまざまな課題解決に貢献しています。

おわりに

広告効果測定の課題をどういったアプローチで解決するかは、企業によって異なるでしょう。しかし一つ共通しているのは、「広告効果測定はさらに複雑化していく」ということです。

オンライン広告の細分化も、ユーザー接点の多様化も、どんどん進みます。メタバースやAR(拡張現実)など、広告のトレンド変化も加速していくでしょう。

その中でわたしたちサイカは、「マーケティング活動全体の広告効果測定を行い、ROI最大化を図りたい」と悩んでいる企業の力になれるよう、データサイエンスの研鑽に日々努めています。

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