OOH広告の効果測定からみる、コロナが事業成果に与えた影響と今後の展望
COVID-19(以後、コロナまたはコロナ禍と表記)の感染拡大に対し、WHO(世界保健機関)が緊急事態宣言を出してから2年半が経ちました。各広告媒体もコロナの影響を受け、出稿内容や出稿金額に大きな変化が起こっています。
今回は、コロナ禍に特に影響を受けた広告媒体であるOOH広告(※1)について、コロナ禍での動向と現状を振り返り、あらゆる広告の統合的な効果分析を行うサイカの知見から、今後の展望を考察してみます。
※1)屋外広告、デジタルサイネージ、交通広告を指す
目次
OOH広告の出稿額の変化
まず、COVID-19の流行によるOOH広告の出稿額の変化を見てみましょう。
株式会社電通の調査レポート(※2)によると、国内におけるOOH広告の出稿額を2020年と2021年で比較すると、4,283億円から4,086億円と約4.6%減少しています。
※2)2021年日本の広告費(電通,2022)(https://www.dentsu.co.jp/news/release/2022/0224-010496.html)
今後OOHを出稿する際のポイント
出稿額は抑制の傾向にあるOOH広告ですが、ポイントを抑えればしっかりと効果を出すことができます。ここからは、サイカの過去の分析から得た知見をもとに、OOH広告の獲得効率(費用対効果)に影響を与えるであろうポイントを紹介します。
各ポイントの検証方法
サイカは、MMM(※3)ツール「MAGELLAN(マゼラン)」を使い、「業界ノーム値」の算出に取り組んでいます。
「業界ノーム値」とは、簡単にいうと各業界の平均のこと。「平均・基準」を意味する「norm」という英単語がもとになっています。業界ノーム値は、同じ条件で何度も繰り返しデータ収集・分析を行うことで、マーケット全体の基準値を割り出します。
業界ノーム値がわかると、各業界で獲得効率を出しやすい施策や、施策ごとの一般的な効果性など、業界の傾向を把握できます。
今回は、この業界ノーム値を使い、「OOH広告の獲得効率がどのように変化したか」の観点で算出しました。
※3)MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)とは、オンライン(Web広告・SNS広告など)・オフライン(テレビCM・新聞・雑誌など)を問わず、さまざまなマーケティング施策が成果に与える影響を定量化できる効果測定手法です。各施策の効果を正しく把握するだけでなく、施策同士の関係性や相乗効果を数値化できるのが特徴です。
MMMについてはこちらの記事もご覧ください。
- 広告の正しい効果測定に「オンオフ統合分析」を使うべき理由 | 株式会社サイカ https://www.wantedly.com/companies/xica/post_articles/379221
- クッキーレス時代、日本がマーケティングにMMMを取り入れるべき3つの理由 | 株式会社サイカ https://xica.net/magazine/marketing-mix-modeling/
ポイント①:人流量
OOH広告には人流量が重要と考えられています。これは屋外広告や交通広告特有の「接触する人数が多いほど、リーチ効率が良化する」性質によるものです。
緊急事態宣言が発令されている時期とそうでない時期での交通広告の獲得効率の差分から、人流量が増えている時期に出稿するOOH広告が効果的だったという事例があります。
実際に、4度の緊急事態宣言が発令された2020年3月から2021年9月の期間とそれ以降の期間を比較し、OOH広告の獲得効率がどのように変化したかを見てみましょう。
<OOH広告における2020/3~2021/9と2021/10~2021/12の獲得効率比較(※4)>
※4)サイカの保有する分析結果から算出
OOH広告の獲得効率は、緊急事態宣言を含む時期から大きく良化しているということが分かります。この要因は「人流量(人々の移動や流れの量)」にあると考えられます。
国土交通省の発表(※5)を見ても、緊急事態宣言が発令されていた期間の公共交通機関での人流量は、他期間と比べて大きく減少していることが分かります。
<公共交通機関における人流の増減率(※5)>
※5)国土交通省 駅の利用状況(首都圏・関西:速報値)(https://corona.go.jp/toppage/pdf/area-transition/20220624_station.pdf)より
ポイント②:商材
コロナ禍でOOH広告の獲得効率は全体的に落ち込んでおりましたが、一方でOOH広告の獲得効率が高いとの分析結果が出ている事例もあります。このような事例の共通点としては、分析対象の商材が、外出の際についでに購入しやすいFMCG系商材(※6)であることでした。
下記グラフのように、FMCG系商材におけるOOHの獲得効率は、FMCG系以外の商材におけるOOHの獲得効率より8.2%高いことが分かります。
※6)Fast Moving Consumer Goodsの略。衣料用洗剤、洗面用品、文具、飲料、食品、化粧品など、短期間で消費される、比較的低価格帯の日用消費財のこと。
<FMCG系商材とそれ以外の商材におけるOOHの獲得効率比較(※7)>
※7)サイカの保有する分析結果(2020/3~2021/12)から算出。※4の獲得効率指数とは基準値が異なる。
特に交通広告では、家から目的地への往復で同じ路線を使うことが多く、反復接触効果が見込めるため獲得効率が高く出やすいと推察されます。
人流量は戻りつつあり、OOH広告の獲得効率も良化すると予想される
前述の「公共交通機関における人流の増減率」の22年以降(※5)を見ると、2022年6月20日~2022年6月24日ですでにコロナ前と比較し首都圏では約8割、近畿では約9割まで人流量が回復しており、今後もさらなる回復が予想されます。
人流量の回復にともない、今後はOOH広告の効果についても、コロナ前と同水準近くまで回復すると想定されます。
オンオフ統合分析で継続的に獲得効率を把握し、最も効果的なマーケティング運用を
今回は、コロナ禍におけるOOH広告の獲得効率の変化を業界ノーム値を使って検証しました。
今後も引き続き人流量は回復し、OOH広告の獲得効率も回復することが予想されます。OOH広告の獲得効率の回復が見込まれるこのタイミングで、今一度OOH広告を含む広告施策の獲得効率の振り返り・予算の見直しを検討してみてはいかがでしょうか。
今回ご紹介した広告施策の関係性については、あくまでも統計処理したデータから算出した傾向であり、個社の傾向と必ずしも一致するものではありません。
OOHを含むオフライン広告の獲得効率を測定したい際は、MMMという選択肢をご検討ください。
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