ヤマキ株式会社

1917年創業。花かつおの製造販売を中心に事業を展開し、2017年に100周年を迎えた。「鰹節屋・だし屋、ヤマキ」を企業コンセプトとして、和食のだしが本来持っている価値やサービスを提供し続けている。 現在は、鰹節から、鰹節を削った花かつおやかつおパック、だしの素などの粉体調味料、めんつゆ、割烹白だしなどの液体調味料まで、だしのフルラインナップを揃え、製造販売を行っている。

5年連続2桁成長のきっかけを作ったのは、バイヤーの言葉だった

Q. 担当業務を教えて下さい

小澤様:家庭用事業部、業務用事業部、海外事業部という3つの事業部が社内にある中で、私は家庭用事業部と、広告や広報などのコミュニケーションを担当しています。

岡田様:家庭用事業部で、めんつゆや白だしといった液体調味料のカテゴリーを担当しています。業務としては、プロモーションを中心に、製品開発やPRまでマーケティング全般に幅広く携わっています。

Q. マーケティングにおいて、これまで抱えていた課題を教えて下さい

小澤様:統合型のマーケティングコミュニケーションを可視化したいという悩みを持っていました。 今回、MAGELLAN(マゼラン)の分析でフォーカスした割烹白だしというブランドは、2019年の秋まで5年連続で2桁成長しています。しかし当初、割烹白だしは、料理上手の方には重宝されていたものの、それ以外の方には「自分には使いこなせない」と思われてしまい、なかなか裾野が広がらない状態でした。

岡田様:白だしは、めんつゆや鍋つゆとは違ってまだまだ生活者に浸透しきっていない商品で、だからこそ成長する可能性のある市場だと思っています。白だしを使ったことがなかったり、一度使っても離脱してしまう理由は、やはり使い方がわからないためです。調味料は他の製品で代用がきくものなので、必ずしも白だしを使う必然性はないのかもしれません。その中で、やっぱり白だしは良いものだよね、白だしにしかできないことがたくさんあるよね、ということを伝えていくのは非常に難しいところです。

小澤様:そうした中、割烹白だし発売からちょうど20周年を迎えた4年前の出来事になりますが、ある大手流通のバイヤーさんから「あなたたちがマーケットを大きくしないでどうするの」と言われました。それが個人的なきっかけとなり、社内外の総力を結集してマーケット作りに邁進しようという計画を立ち上げました。

具体的には、一部の料理上手の方だけでなく、より広い方々に使ってもらえるように、テレビCMに笑福亭鶴瓶さん、駿河太郎さん親子を起用し、割烹白だし1:9で簡単にスープができる、という「スープ訴求」を始めました。このように割烹白だしの使い方を訴求することで大きな成長を得られましたが、訴求を変えて4年目に差し掛かるころ、急激に成長速度が落ちてきました。

その時に「これは次のステージに入らなければいけない」と思い、テレビCMのタレントとして新たに岡田将生さんを起用し、訴求するメニューもスープから一段上げて「さっと煮」という簡単に作れる煮物を考案してもらいました。さらに割烹白だしの容器も従来のガラス瓶からペットボトルに変え、次のステージに上がるための起爆剤として、広告タレントから訴求メニュー、製品まですべてを刷新しました。

またプロモーションの展開方法も見直し、テレビCMの影響は非常に大きいと思いつつ、テレビを見ない方々にももっと訴求できるように従来の方法から改善しました。テレビCMを投下する直前に記者会見を行い、記者会見の様子をSNSで流し、それがネットニュースに載り、そしてネットニュースに載った姿がテレビでもう一回流れる。その話題をまたSNSに流し、機が熟したところに広告を投下、といったように、あらゆるチャネルを活用して生活者と複合的なコミュニケーションを取るようにしました。その結果、テレビを見ない方々にも訴求することができ、5年連続2桁成長という成果を勝ち取ることができました。

もちろん担当者たちは皆それぞれに意図して施策を実行していました。しかし一方で、こうした複合的なマーケティングコミュニケーションは可視化することが難しく、それゆえに「なんかいろんなことをやって成功したね、わーい」のような状態で終わってしまうのは良くないな、と考えていました。成功した要因をしっかりと可視化して、レビューできるようにすることで、本当に統合型のマーケティングによって成功したのだ、と見えるようにしたい、そう悩んでいたときにMAGELLANに出会い、導入を決めました。

複雑化したマーケティングコミュニケーションをMAGELLANが可視化

Q. 実際にMAGELLANを導入して良かった点はどういったところでしょうか?

小澤様:先ほど申し上げた統合型マーケティングの中で実施したいろいろな施策の効果が可視化され、それぞれが成果にどれくらい貢献したかが見えた、というのがMAGELLANを導入した一番のメリットだと思います。テレビCMや容器のペットボトル化など、感覚的に効果が高いと捉えていた施策が分析結果でも非常に大きな貢献を示していて、感覚が数字で裏付けられました。

また、デジタル領域の施策についても成果への貢献度がしっかりと見えるようになり、その分析結果も踏まえて、それぞれの施策の広告費を増やしたとき、減らしたとき、維持したときに売上がどのように変化するかシミュレーションもできました。 こうした分析結果が次の施策につながってくると感じ、そこにも大きなメリットを感じます。

Q. MAGELLANの今後の活用方針を教えて下さい

小澤様:MAGELLANの分析を短期的に1回だけ行うのはもったいないと思っています。 次にまたマーケティングのアクションを起こした際に、今回と同様にMAGELLANで分析を行い、分析結果を2つ並べて比較できれば、より理解が深まるのではと考えています。

例えば、今回の割烹白だしでは容器のペットボトル化という特殊な要件がありましたが、それがなかった場合にどういうことになるのか、ということも比較することでわかることがあるはずです。それができれば、次のブランドを育成するときにも役立つかもしれません。

コミュニケーションの評価に悶絶しながら向き合う覚悟

Q. 最後に、マーケティングにおいて目指す姿について教えて下さい

岡田様:だしは世界に誇る食文化で、我々は100年以上そこに携わっていますが、鰹節を中心に、だしの美味しさ、良さ、をもっともっと伝えていきたいという思いがあります。

「だしってけっこう良いものだよね」という認識は恐らく皆さん持たれていると思いますが、じゃあ何が良いの、どう良いの、というところまでは意外と知られていないと思います。例えば、だしをきかせると塩分が少なくてもおいしくなったり、だしをきかせることで素材の味を活かしたり、素材の味をまとめることができたり、そういった良いところがだしにはあります。単純に「だしがおいしいから」ではなく、そういっただしの良さをきちんと伝えていきたいと考えています。その中で、最終的には「だしといえばヤマキ」「だし=ヤマキ」というブランドイメージを築けるように、プロモーションを行っていきたいと考えています。

小澤様:私はマーケターを30年以上やっていますが、昔を振り返ると、テレビCMが主役だった時代、私自身はテレビCMの目的は消費者に認知してもらうことであると信じて疑わなかったのですが、営業現場からは「広告に意味があるのか」「金ばかり使いやがって」と言われるような時代でした。恐らく現在は、デジタル領域の広告がそう思われているのではないかと思っています。

広告に対する「何の価値があるのか」「これだけお金をかける価値があるのか」という問いに解を示すためにも、お客様とのコミュニケーションをどのように評価していくか、ということがこれからもっと重要になっていくと考えていますし、その課題に日々悶絶しながら向き合っていかなければいけないと思っています。

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消費者意識と事業成果の構造を解明し、コミュニケーションの最適化を図る

渉外・コミュニケーション統括本部 ブランド・コミュニケーション本部長
馬場 剛史 氏

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スマートフォン・携帯電話など従来の通信サービスを中心に、幅広い事業を展開。基盤となる通信を核に、コマース・金融・エネルギー・エンターテインメント・教育などのライフデザインサービスを連携しながら拡充することで、新たな体験価値の提供を目指しています。