広告効果測定とは?マス&Web広告の測定指標と効果の分析手法、有効活用するための4つのポイントを解説
広告効果の測定は、広告の費用対効果を向上させるうえで欠かせません。目標以上の結果が出ていれば、現状の施策継続という意思決定ができ、逆に下回れば測定結果をもとに改善策を検討する必要があると判断できます。
適切な判断をするためにも、広告担当者は広告効果測定に必要な指標を知り、日頃から情報を収集・分析することが大切です。
この記事では、広告効果測定の概要と広告効果の種類、広告の種類ごとに測定指標や測定のポイントを解説します。また、費用対効果を最大にするための分析手法も紹介します。
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目次
広告効果測定とは?
広告効果測定とは、出稿した広告の効果を測定することを指す用語です。広告効果測定によって広告の課題を検証でき、より費用対効果の高い広告出稿につなげられるため、広告宣伝担当者にとって必須の工程といえます。
広告を改善するには、広告を出稿する媒体・広告の量や頻度・広告の内容など、さまざまなポイントが考えられます。広告効果測定なしには、施策のどこに問題があったかを判断できません。
広告効果測定では、CVR(コンバージョン率)やCTR(クリック率)などの指標が用いられます。各指標の測定結果から、広告自体や出稿フェーズなど、どの要素をどう修正すべきか判断し対策につなげましょう。代表的な指標の詳細については後述します。
測定する広告効果の種類
広告効果は、一般的に「接触効果」「心理効果」「売上効果」の3種類に分けられます。
- 接触効果
- 商品・サービスをまだ知らない消費者に対し、広告で接触して認知度を高める効果のことです。新商品など認知度の低い商品は、顧客が広告で初めて知ってそのまま購入するケースは稀なため、まずは接触効果を狙った広告が必要となります。
- 心理効果
- 接触効果の次の段階として、その商品・サービスの詳細を深く理解してもらう効果のことです。消費者が商品について「ただ知っているだけ」の状態から、その魅力を理解するフェーズにつなげ、購入・申し込みへの距離を縮めます。
- 売上効果
- 申込フォームへのリンクやお問い合わせ用電話番号の記載などによる、商品・サービス購入に直接つながる効果のことです。高単価の商品における資料請求など、売上につながる行動を促す部分も売上効果に分類されます。すでに商品・サービスについて理解している層がターゲットです。
広告効果測定とは、このような広告効果のうち、実際にどのような効果がどれくらい出ているのか、指標を用いて数値的に明らかにすることを指します。広告効果測定で得られたデータは、広告の手法や内容を適切に改善するための判断材料になります。
広告効果の測定方法
広告効果測定は、相対評価が基本です。広告で達成したい数値目標を立てて広告効果測定を行い、広告出稿前後で数値がどう変化したかを検証します。
このとき、漫然と測定して「数値が改善した」から良しとするのではなく、事前に立てた目標を達成できたかどうかを見ることがポイントです。広告出稿前後で期間や対象ユーザーなどの諸条件をそろえて測定し、より正しく結果を評価できるようにします。
また、競合の売上状況などを含めた、市場全体の動向も事前に把握しておきましょう。広告効果は市場のトレンドなどによっても左右されるため、調査してある程度影響を予測し、対策を立てておく意味でも重要です。
効果測定にあたっては、広告の種類や目的に応じた指標が使われます。広告の種類ごとにどのような指標を使うかは、以下で詳しく解説します。
広告効果測定指標:マス広告
マス広告は、より広い層に情報を届けたいときに用いられる広告です。幅広い世代に認知されやすく、短時間で多くの人にアプローチできます。
ここでは、マス広告における効果測定指標を解説します。
マス広告の特徴と種類
マス広告とは、テレビCM・新聞広告・雑誌広告・ラジオCMなどを指します。「マス」には「大衆、群衆」などの意味があり、幅広い層に一斉に情報を拡散できるのが特徴です。
また、商品やサービスの宣伝と同時に、企業の知名度の向上やイメージ構築などの効果も期待できます。費用はWeb広告と比較して高い傾向にありますが、広告の表示回数で見ると単価は安くなります。
一方で、その訴求範囲の広さゆえに、マス広告は定量的な効果測定が難しいという側面があります。
例えば、視聴率が高いからといって、テレビCMの広告効果が高いとは限りません。また、CMによっては何となく深層心理に印象が残り、時間差で数ヵ月・数年後に購入につながることもあるでしょう。
こういった数値で見えない部分の効果が測定しづらいため、マス広告の効果測定は難しいものとされています。
マス広告の効果測定指標
マス広告の媒体ごとの広告効果測定指標は、以下のとおりです。
テレビ | GRP(Gross Rating Point)、GAP(Gross Attention Point) |
新聞 | CPR(Cost Per Response)、CPO(Cost Per Order) |
ラジオ | GRP |
雑誌 | 販売・発行部数 |
テレビCMの効果測定で用いられるGRPとは「延べ視聴率」、GAPとは「延べ注視量」のことです。
GRPはCM放映時の毎分の世帯視聴率合計で、どの程度CMが視聴者に届いているかを表します。例えば、毎分の世帯視聴率が15%の時間帯にCMを2本流した際のGRPは、以下のとおりです。
15%×2=30GRP
この数値は、どの時間帯にどのくらいの頻度で広告を流すか判断する際の指標などに使われます。
ただし、GRPだけでは視聴者が本当にCMを見ていたか、わかりません。そこで、センサーカメラを使って、誰がどれくらい画面を見ているかを含めて測定したものがGAPです。GAPは毎秒単位で計測され、例えば視聴者が画面を5秒注視した場合は5GAPとなります。
GRPとともにGAPも測定すると、センサーカメラの顔認識機能によって、CMのターゲット層が実際にCMを見ていたかどうかを確認できます。
新聞広告の広告効果測定で使用されるCPRやCPOは、広告効果に対するコストを計算するものです。
CPRは「コスト÷レスポンス件数」で計算され、レスポンス(申し込みや問い合わせ)1件あたりの単価になります。CPOは「コスト÷受注件数」で、受注1件あたりの単価を表します。例えば、広告費用が10万円で受注件数が20件だった場合のCPOは、以下のとおりです。
10万円÷20=5,000円
ラジオはテレビと同じく、GRPを広告指標として用います。ただし、テレビが世帯ごとに視聴率を測定するのに対して、ラジオは「聴取率」と呼ばれる個人単位での測定を行います。
広告効果測定指標:Web広告
Web広告は、特定のターゲットに認知してもらいやすい広告です。ここでは、Web広告における広告効果測定指標を解説します。
Web広告の特徴と種類
Web広告はデジタル広告とも呼ばれ、WebサイトやSNS、メールマガジン、YouTubeなどのWeb媒体に出稿する広告を指します。
Web広告では、細かいターゲティングが可能です。例えば、年齢・居住地・趣味・嗜好などのデータから、商品やサービスのターゲットとなりそうな相手に絞って広告を届けられます。また、マス広告と比較して、少ないコストで行えるのも特徴です。
Web広告はマス広告に比べて、広告効果を測定しやすいものですが、目的に合わせた指標を設定することに注意が必要です。指標の種類も多く、どの数値を上げれば広告の目的を達成できるか判断し、対策を打たなければなりません。
したがって、広告効果をより高めるためには、広告運用に関する専門的な知識が求められるでしょう。
Web広告の効果測定指標
Web広告の効果測定は、以下の3つの段階ごとに行います。
- インプレッション:広告が何回表示されたか
- トラフィック:目的のWebサイトに広告から何人を誘導できたか
- コンバージョン:誘導先のWebサイトで何人が商品・サービスを購入したか
状況・目的によって利用するWeb広告の種類も異なり、狙うべき広告効果ごとに異なる指標を用いた測定が必要となります。Web広告のおもな効果測定指標は以下のとおりです。
- インプレッション
Imp(インプレッション数) | Web媒体への広告表示回数 |
CPM(インプレッション単価) | 1,000インプレッションあたりの単価 |
リーチ | 広告が実際に見られた回数 |
Impとリーチの違いは、Impが純粋にWeb上に表示された回数なのに対し、リーチは何人に見られたかを計測する点です。例えば、ある人がAサイトからBサイトに遷移した際に、どちらにも同じ広告が表示されていた場合、Impは2、リーチは1になります。
インプレッションを狙った広告の種類としては、Webサイトなどの広告枠に固定もしくはローテーションで表示させる「バナー広告(純広告)」などが挙げられます。閲覧数の多いサイトなどに掲出すれば、より幅広いユーザーにアプローチできるでしょう。
- トラフィック
クリック数 | 誘導先サイトへのリンククリック数 |
CTR(クリック率) | 表示された広告がクリックされる確率。(クリック数÷インプレッション数)×100 |
CPC(クリック単価) | 1クリックあたりの単価。広告費÷クリック数 |
トラフィックを狙う広告の例としては、特定のワードで検索したユーザーに表示させる「リスティング広告(検索連動型広告)」が挙げられます。例えば「家事 時短」などのキーワードをターゲットにすると、時短方法を調べている人や時短アイテムに興味がある人など、ある程度絞られたユーザー層にアプローチできます。
- コンバージョン
CVR(コンバージョン率) | サイトに誘導された顧客が商品を購入する確率。(コンバージョン数÷クリック数)×100 |
CPA(コンバージョン単価) | 1件のコンバージョンを獲得するための広告単価。広告費÷コンバージョン数 |
コンバージョンを上げたい場合は、より購入の可能性が高いユーザーにアプローチできる広告を出稿します。例えば、リスティング広告でも「家事 時短」などではなく「食洗器 コンパクト 最新」のように、具体的に購入を検討している人が検索するキーワードを用いるとよいでしょう。
広告の最大の目的は、コンバージョンです。コンバージョンを増やすために、まずはインプレッションを増やし、さらに広告内容を最適化することによってトラフィックを向上させます。そのうえでコンバージョン単価を測定・検証し、費用対効果の高い広告運用を目指していくことが重要です。
広告効果の分析手法
広告出稿にあたっては、費用対効果の分析が欠かせません。以下では、広告の効果を分析する手法を解説します。
ROAS(広告費用対効果)
ROAS(Return on Advertising Spend)とは、広告費に対してどのくらいの売上を出せたかを測るもので、以下の式で計算できます。
ROAS=(広告による売上÷広告費)×100%
ROASを算出する際に使用するデータは、比較的用意しやすいでしょう。式内の広告による売上は、「商品やサービスの平均単価×コンバージョン数」で計算できます。
ROASの算出により、広告費1円あたりで得られた売上額がわかります。ROASが100%を上回っているのであれば、売上が広告費用を上回っているということです。
なお、後述のROIは投資した広告費に対してどれほどの「利益」が得られたのかを表す一方、ROASはどれほど「売上」が上がったのかを表す指標である点に注意しましょう。ROASには原価や経費などが考慮されていないため、100%を超えているからといって黒字であるとは限りません。
LTV(顧客生涯価値)
LTV(Life Time Value)とは、特定の顧客が生涯にわたって企業にもたらす利益のことです。例えば、ある顧客が毎月1,000円のサブスクリプションサービスを契約し、24ヵ月間利用後に解約した場合、LTVは2万4,000円になります。
平均単価などからLTVを計算する場合、一般的には以下の式を用います。
LTV=平均購買単価×購買頻度×継続購買期間
LTVから、広告費として使える金額を算出する際は「LTV×粗利率」で計算するとよいでしょう。単純に「平均購買単価×粗利率」以内に広告費を収めようとすると過小になりがちですが、LTVを加味すれば金額が大きくなり、広告運用の幅も広がります。
このように、LTVを加味することでより適切な広告費を把握でき、有効な施策にもつながります。ぜひ、現在の広告費が妥当かどうかの分析に、LTVを活用してみてください。
ROI(投資対効果)
ROI(Return on Investment)とは、投資額に対して利益をどれくらい生み出せたかを測るもので、投資収益率や投資利益率ともいわれます。
広告においては、以下の式で計算できます。
ROI=(広告による売上-売上原価)÷ 広告費×100%
ROIを見れば、広告費に見合う利益を出せているかがわかります。商品・サービスの平均利益単価を把握できればすぐに算出できるため、現状把握に役立つでしょう。
ただし、ROIは広告出稿初期の段階では低めになる傾向があります。そのため、ROIの数値が悪いという理由で、すぐに広告打ち切りを判断するのはおすすめしません。ROIは期間を長めにとって追いかけていくのが良く、定期的に分析することで、広告による効果をある程度予測できるようになるでしょう。
ROIについて詳しくは関連記事の「マーケティングROI(MROI)を最大化するための主要な測定指標」をご覧ください。
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変化の激しい時代、事業成果を最大化するための広告投資の最適化方法とは?
マーケティングを取り巻く環境が激変する昨今。これまでの経験や常識が通用しない状況下でも、事業成果を最大化させるための広告投資の最適化方法「MMM」についてご紹介します。
広告効果測定における4つのポイント
ここでは広告効果測定のポイントを解説します。広告効果測定は、漫然とデータを取得するだけでは意味がありません。必要なデータを取得し、正しく活用することが重要です。
広告の種類や目的別に効果を測定する
異なる種類・目的の広告を混合させて広告効果測定を行うと、正しい測定結果が出ません。
そのため、複数のWeb広告を同時期に出稿したとしても、広告ごとのコンバージョン数を計測し、それぞれを分析する必要があります。これは、広告出稿期間中のコンバージョン数の合計で判断しようとしても、施策ごとの良し悪しについて判断することが難しいからです。
また、当然ながら、おもに狙う広告効果が接触効果なのか売上効果なのかによっても、測定すべき指標は違ってきます。
広告ごとに測定する指標を決め、細かく情報を収集・分析することが、正確な広告効果測定につながります。
アトリビューション分析も行う
アトリビューション分析とは、コンバージョンまでの経路における、各広告の貢献度を分析するものです。
コンバージョンは、最終的に売上につながった広告だけでなし得たとは限りません。顧客がそれまでに目にしたメディアや広告も、購入の意思決定に影響している可能性があるため、過程での効果も正しく評価することが大切です。アトリビューション分析の結果をもとに、直接は売上につながらない施策も正当に評価し、貢献度に応じた施策を実行することで、各広告の改善がより期待できます。
アトリビューション分析には、オンライン広告のみを分析対象とした「オンラインアトリビューション分析」と、オンラインに加えてオフライン広告も分析対象とした「統合アトリビューション分析」があります。オンラインに特化した分析ではなく、オンライン・オフラインを統合した分析のほうが、より実態に近くなるため重要だといえるでしょう。
アトリビューション分析の重要性と具体的な方法については、以下の解説記事もご覧ください。
アトリビューション分析とは?概要や代表的な分析モデル、分析方法をわかりやすく解説
定期的に広告効果測定を実施する
広告効果は、広告内容の良し悪しのみで決まるものではなく、競合や流行など周りの影響を受けて変化するものです。一度目標を達成したとしても、周囲の状況によって広告効果が低減し、費用対効果が薄れるおそれもあります。そのため、広告効果測定や分析は一度で十分ということはありません。
広告が目標とする効果を達成しているかを判断するには、効果測定を定期的に実施し、広告効果の変化を調査・分析する必要があります。分析結果をもとに、定期的に広告内容や手段をアップデートしていきましょう。
広告効果測定だけで終わらない
広告効果測定で得られたデータを適切に活用できなければ、測定の意味がなくなってしまいます。得られたデータから改善策を立案・実行し、さらに改善アクション結果の効果を測定してPDCAを回し、より良い広告運用につなげていきましょう。
具体的には、以下のような流れが必要となります。
- 事前に目標を立てる(広告の目的や狙う数値結果を明らかにする)
- 広告ごとに広告効果測定・分析を行う
- 課題を見つけて改善策をテストする(目標を達成していない広告は改善し、目標を達成している広告はより成果を伸ばす施策を講じてテストする)
- 費用対効果を確認する
広告効果測定に最適なMMM分析サービス「MAGELLAN」とは?
「MAGELLAN(マゼラン)」は、株式会社サイカが提供する統合マーケティング分析サービスです。
このMMM分析サービスでは、売上を構成する要素を分析することで広告効果の可視化が可能になり、より相性の良い施策の提案まで行なえます。
広告効果測定は継続的な測定・分析が必要です。手動で対応するには相応の知識と工数が必要となるため、測定・検証に分析ツールやサービスを利用すれば業務効率化にもつながるでしょう。
また、「MAGELLAN」のMMM分析では、マスやWebのあらゆる媒体、「接触効果」「心理効果」「売上効果」を目的としたあらゆる施策を、統一指標で評価することができます(例えば、売上や購入件数などの最終的な事業成果)。各媒体・施策でそれぞれ異なる指標で測定・分析し、個別に最適化するのではなく、全媒体・施策を統一指標で測定・分析することで、媒体・施策を横断した全体最適な投資配分を導き出すことができます。マーケティング活動の費用対効果を最大化したい場合は、MMMサービスの利用も検討してみてください。
まとめ
広告はただ運用するだけでなく、その効果を測定し、費用対効果を最大化することが重要です。
広告効果測定には媒体種類によって異なる指標があり、目的に合った指標の分析が必要になります。狙う広告効果とそれに合った測定指標を理解し、個々の施策の貢献度を正しく判断しましょう。
また、広告効果は時期や流行など周囲の環境によっても変化するため、広告効果測定の定期的な実施も必要です。長いスパンで数値収集・分析を行えば、新たな広告出稿による利益向上の効果について、ある程度予測も可能になります。
データを正しく収集・活用するため、状況に応じてツールなども活用しつつ、効率的に成果につながる広告運用を目指しましょう。