マーケティング戦略コンサルティングの役割と活用法・注意点
マーケティングの手法が多様化する現代では、論理的に立案された戦略をもとにマーケティングをする必要性が高まっています。
しかし、マーケティング戦略には専門的な知識が必要とされるため、自社のリソースだけで行おうとしてもうまくいかないケースは少なくありません。
そこで、この記事ではマーケティング戦略に特化したコンサルティングの概要や、コンサルティング会社の選び方など、マーケティング戦略コンサルティングについて解説します。
目次
マーケティングの定義
マーケティング戦略について解説する前に、まずはマーケティングの定義についてあらためて考えておきましょう。
ここでは、日本マーケティング協会をはじめ、日本オペレーションズ・リサーチ学会、アメリカマーケティング協会におけるマーケティングの定義を紹介します。
1つめの日本マーケティング協会は、高度経済成長期に向けて経済が急激に発展しようとしている1957年に創設された公益社団法人です。日本マーケティング協会では、マーケティングを以下のように定義しています。
「マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である。」
引用:日本マーケティング協会「日本マーケティング協会の概要」
つまり、民間企業に限らず、顧客のいるすべての組織が対象であり、相互理解関係を生み出すことを目的に行われる「総合的な活動」をマーケティングとしています。
2つめの日本オペレーションズ・リサーチ学会は、応用分野の広い問題解決学の情報交換や発表を行っている団体です。マーケティングについては、以下のように定義しています。
「マーケティングとは, 個人や組織が製品の創造を行い, 市場での交換を通じて自らのニーズや欲求を満たすために行う様々なプロセスのことである.」
日本オペレーションズ・リサーチ学会は、市場の分析やターゲット市場の選定、ターゲット市場にアプローチするための戦略構築、戦略実行、活動を管理・運営する仕組みの構築、といったプロセスのすべてがマーケティング活動であるという考え方です。
3つめのアメリカマーケティング協会は、アメリカの機関です。2017年にマーケティングの定義を以下のように改定しています。
「マーケティングとは、顧客やクライアント、パートナー、そして社会全体にとって価値のある商品を創造・伝達・提供・交換するための活動と制度、およびプロセスのこと。」
原文:Marketing is the activity, set of institutions, and processes for creating, communicating, delivering, and exchanging offerings that have value for customers, clients, partners, and society at large.
引用:American Marketing Association「Definitions of Marketing」
つまりは、社会を構成するさまざまな人が価値を創造・伝達・供給する仕組みがマーケティングだという考え方のようです。
このように、マーケティングについては三者三様の表現で定義されていますが、突き詰めれば「誰に」「どのような価値を」「どのように提供するのか」を考え、売れる仕組みを作ることといえるでしょう。
マーケティング戦略はマーケティングの要
多種多様な商品やサービスがあふれている現代においては、ただ良い商品やサービスを提供するだけでは売上を伸ばせません。
だからこそ戦略に基づくマーケティング、すなわちマーケティング戦略が重要になってくるのです。
そこで、ここではマーケティング戦略の重要性と、戦略立案の流れについて解説します。
マーケティング戦略とは
マーケティング戦略とは、「誰に」「どのような価値を」「どのように提供するのか」を決定することです。
モノがあふれる現代だからこそ、各企業は消費者のニーズに合わせて商品やサービスの売り方、売る場所や情報提供の方法などを変えていかなければなりません。自分の勘だけで進めていては、ヒト・モノ・カネなどの経営資源を無駄にしてしまいます。
それを防ぐには、論理的・効率的に資源を配分し、マーケティングの効果を最大化することが重要です。
競合と戦うためにも、商品を知ってもらうにはどうすれば良いのか、どうすれば買ってもらえるのか、という明確なマーケティング戦略が必要になります。
マーケティング戦略の流れ
マーケティング戦略を決めるうえで重要なことは、まず市場調査を行い、自社の状況を把握することです。顧客・市場・競合などの外部環境を分析しつつ、内部環境として自社の分析も行う必要があります。
次に、ターゲット層を分けて対象を絞ります。マーケティングの結果に影響する重要な要素であるため、ターゲットの設定はある程度まで詳しく決めます。
BtoCの場合は、年齢・性別・職業・居住地域・趣味嗜好などの軸で考え、BtoBの場合は業種や業態、企業規模などを軸として考えるとよいでしょう。
ターゲットが決まったら、フレームワークを用いて顧客に提供するメリットを探ります。なお、どのようなフレームワークを用いると良いのかは後述します。
最後に、どのようにメリットを提供するか、戦略を決定します。ここまでがマーケティング戦略の流れです。
ここまでの流れを効率的・効果的に進めるには、各ステップに合ったフレームワークを活用しましょう。
代表的なフレームワークについては、ステップ別に次章で紹介します。
ステップ別|マーケティング戦略の代表的なフレームワーク
マーケティング戦略で使用される、代表的なフレームワークとして知られているのが「R-STP-MM-I-C」です。
これはマーケティングの第一人者として知られるアメリカの経営学者、フィリップ・コトラーが提唱したマーケティングの全体像(流れ)です。このフレームワークでは、マーケティングは5つの手順に分けられます。
- R:
- Research(リサーチ:調査)
- STP:
- Segmentation(セグメンテーション:市場の分割)
- Targeting(ターゲティング:ターゲット市場の選択)
- Positioning(ポジショニング:位置取り)
- MM:
- Marketing Mix(マーケティングミックス:マーケティング要素の組み合わせ)
- I:
- Implementation(インプリメンテーション:実施)
- C:
- Control(コントロール:管理)
それぞれの頭文字をとって「R-STP-MM-I-C」と呼ばれ、「R-STP」が戦略策定のプロセス、「MM-IC」が戦術的なプロセスと大別されます。
R:Research(調査)
Researchは、参入できる事業を見つけるために、自社の強み・弱みや社外の環境などを把握して、市場調査や環境分析をする工程です。
環境分析は、自社を取り巻く外部環境から自社の内部環境への流れで行うのが一般的です。さらに、外部環境はマクロ環境分析とミクロ環境分析という、2つの視点をもとに分析します。
ここで使われる代表的なフレームワークが、C分析とSWOT分析です。
3Cとは、Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の頭文字を取ったもので、環境分析のために用いられるフレームワークです。
3Cのうち、Customer(顧客)とCompetitor(競合)は外部環境、Company(自社)は内部環境となり、分析することで市場規模や成長性などを見極めていきます。
顧客のニーズや市場の状況、競合の強みと弱み、自社の立ち位置などを分析することで、戦略を明確にします。
一方のSWOT分析は、Strength(強み)、Weakness(弱点)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)からなるフレームワークです。
強み・弱点などの自社でコントロール可能な内部環境と、機会・脅威などのコントロールができない外部環境をはじめ、プラスの要素(強み・機会)とマイナスの要素(弱点・脅威)など、多角的な軸で戦略を考えるために使用します。
STP:Segmentation(セグメンテーション)・Targeting(ターゲティング)・Positioning(ポジショニング)
このステップでは、分析結果に基づいて市場の選択や分類(Segmentation:セグメンテーション)を行い、自社商品が参入するセグメントを選定(Targeting:ターゲティング)します。
その後、提供する商品の他社との優位性(Positioning:ポジショニング)を明確にします。
なお、この順番は特に決まっているわけではありません。セグメンテーションとターゲティングを同時に行うこともあれば、ポジショニングを行ったあとでターゲティングを調整することもあります。プロダクトの性質や状況、経営資源のボリュームに応じて進めましょう。
ここで使用されるフレームワークが「STP分析」と呼ばれるものです。変化していく市場を見極めてターゲットを選定し、経営資源を集中させる目的があります。
MM:Marketing Mix(マーケティングミックス)
Marketing Mixのステップでは、ResearchやSTPで明確化された戦略を具体化し、実際に商品化を進めていきます。
商品を作って販売するためには、いくつかのマーケティング要素が必要となり、複数のマーケティング要素をまとめたものをMarketing Mixといいます。
ここでは、「4P」という代表的なフレームワークを用いて、情報を整理することが一般的です。
4Pとは、Product(商品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販促・プロモーション)の頭文字を取ったもので、製品のための分析ともいわれています。
Productでは顧客が何を求めているか、顧客が何を解決したいのかなどの製品戦略を考え、Priceでは製品の価値と価格のバランスや、コストと収益のバランスなどの価格戦略を考えます。
Placeでは販路経路や商圏、在庫や配送などの流通戦略を考え、Promotionでは顧客に製品を知ってもらうための手段や宣伝方法などの販促戦略を考えます。
マーケティング戦略の流れに沿って進められるこれらのフレームワークを、ぜひ活用してみてください。
マーケティング戦略コンサルティングとは
マーケティング戦略コンサルティングとは、マーケティング戦略に特化したコンサルティングをする業務・ビジネスのことです。
クライアントからの要望や提供されたデータからマーケティング戦略を立案し、専門的な知識で実行に導いていきます。
消費者の消費行動が大きく変化していることにより、従来の営業手法やマーケティング運用手法が通用しなくなってきています。
そのため、さまざまなノウハウをもとに、スピード感をもって効率的に変革しなければなりませんが、社内リソースでは専門知識もノウハウも限界があります。
そこで、プロのコンサルタントに支援して欲しいと考える企業が急増しているのです。
とはいえ、マーケティング戦略コンサルティングに依頼したことがない企業であれば、どのようなことを依頼できるのか不安に思うこともあるでしょう。
次章では、その不安を払拭できるよう、マーケティング戦略コンサルティング会社に依頼できることについて解説します。
マーケティング戦略コンサルティング会社に依頼できること
実際に、マーケティング戦略会社に依頼できる内容は、大きく分けて次の3つです。
マーケティング戦略に必要な情報収集・分析
まずは、市場の情報など戦略立案に必要な情報を収集し、分析します。企業が目標とするゴールを達成するためには、課題を把握する必要があるからです。
また、顧客が抱える課題を深掘りし、どのような情報が必要になるかのヒアリングを行い、達成を妨げている要因を探ります。
マーケティングを成功させる基礎となる部分が、市場調査です。ニーズを知ることで「どのような戦略を取ればいいのか」がわかるため、企業が成果を出すうえで役立ちます。
調査方法は、サイト訪問者数の解析やアンケートをもとにしたものなどさまざまで、依頼内容によっても異なるのが特徴です。
マーケティング戦略の立案・実施・補助
情報収集や分析後には、マーケティング戦略の立案と実施を委託できます。
マーケティング戦略コンサルティング会社では、クライアントの課題に沿ってマーケティングリサーチの企画や体制、スケジュールなどの提案が可能です。
また、戦略立案をコンサルティング会社に丸投げせず、自社のリソースも投入し、補助的にコンサルティングを利用する方法もあります。
マーケティング戦略の検証
マーケティング戦略を実施したあとは、必ず効果の検証が必要です。検証をしないと、軌道修正ができないからです。
そのため、データ分析・検証のノウハウを持つコンサルティング会社へ委託するのがよいでしょう。そうすれば、効果を測定し課題を洗い出してもらえます。
検証する際には、売上に直結しない、見込み客の獲得や認知度のアップにも注目してみましょう。
そして、費用対効果も重要です。たとえ効果が出ていても、広告費が大きく膨らんでしまえば、効率的なマーケティング戦略とはいえません。
マーケティング戦略コンサルティング会社に依頼するメリット
マーケティング戦略コンサルティング会社に依頼すると、「効率的・効果的なマーケティング戦略を立案できる」「自社にないノウハウやリソースを得られる」という2つのメリットが得られます。
以下で詳しく見ていきましょう。
効率的・効果的なマーケティング戦略を立案できる
マーケティング戦略には、高度な知識や技術が必要となりますが、マーケティング戦略の専門家であるコンサルタントなら、最新情報もふまえながら適切に対応できます。
マーケティングに不慣れな社内メンバーで対応すると時間がかかってしまうことも、マーケティング戦略専門のコンサルタントならスムーズに問題解決が可能です。
また、常識や古い慣習にとらわれて新しい施策に挑戦できない企業であれば、第三者からの意見も得られ、新たなアイデアを取り入れられます。マーケティングの専門家であるコンサルタントの意見であるため、経営陣の理解を得られやすいというメリットもあります。
自社にないノウハウやリソースを得られる
自社でマーケティングに取り組もうとすると、ノウハウやリソースが足りなくなる場合があります。そのうえ、資源が少ない状態でのマーケティングでは、十分な効果が発揮されません。
しかし、マーケティング戦略専門のコンサルティング会社に委託すれば、その会社のノウハウを自社に蓄積することも可能です。
特にデジタルマーケティングで課題になりやすい広告運用も、高度な専門知識を持つコンサルティング会社に依頼すれば、効率的な運用方法を提案してサポートしてくれます。
企業の状況によっては、制作会社を紹介してくれるケースもあるため、リソース不足に悩む会社にとっては大きなメリットといえるでしょう。
マーケティング戦略コンサルティング会社を選ぶポイント
リソース不足に悩む企業にとっては、マーケティング戦略コンサルティングに委託することで、さまざまなメリットがあります。
しかし、コンサルティング会社によって特徴が異なるため、会社選びを誤ると思ったような結果が得られないかもしれません。
そこで、戦略コンサルティング会社を選ぶ際のポイントを解説します。
委託したい内容を明らかにしておく
コンサルティング会社に依頼する前に、まずは自社の理想の状態や課題を明確化しましょう。自社で認識をしっかり持っておくことが大切です。
次に、委託したい内容を明確にするために、次の5W1Gに沿って整理します。
- Why(なぜ)
- What(どのような問題を)
- Where(どこで)
- When(いつまでに)
- Who(誰のために)
- Goal(どのような状態になりたいのか)
こうして委託したい内容を明確にしておくことが、自社に合うコンサルティング会社を選ぶための第一のポイントです。
契約前に契約内容をしっかり確認する
コンサルティング会社を決める際は、複数の会社から提案してもらいコンペを実施することが一般的です。
その際に確認したいのは、自社の課題と提案された内容が合っているか、予算に合っているかという点です。複数の企業を比較すると、契約内容を検証しやすくなります。
また、課題に対する分析方法や解決策は、コンサルティング会社ごとに異なります。そのため、より重要な課題を見つけ出したり、最も効果的な解決方法を提示してくれたりする会社かどうかを、十分に検討しましょう。
中立性が保たれた提案をしてもらえるか見極める
長期的に、自社のパートナーともいえる存在になりうるのが、コンサルティング会社です。
コンサルティング会社はコンサルティングサービスを提供する会社ですが、広告代理店などの場合もあります。そのため、自社サービスや他社のサービスなどを取り扱い、これらの購入を勧めてくる場合もあるでしょう。コンサルティングするにあたり、ツールなどの購入が必要な場合もあるので注意が必要です。
最も大切なのは、中立性を重視し、自社の課題解決にマッチした最適なサービスを提案してくれるのかという点です。これはしっかり確認しておきましょう。
アフターサービスも含めて検討する
マーケティング戦略は、長期的な立案・実行が必須です。そのため、コンサルティング後のサポートが充実している企業を選択すれば、長くマーケティング戦略の効果を得られます。
アドバイスを受けて戦略を実行した場合、それが無事に軌道に乗ったのか、想像とは異なるミスマッチはなかったかなど、終了後にもヒアリングしてもらえれば満足度が高まります。
また、アフターサービスがきっかけとなり、新たな課題が見つかることもあるでしょう。より市場価値の高い会社として自社を育成するためにも、長期的なサポートをしてくれるコンサルティング会社を探すことをおすすめします。
まとめ
自社の商品やサービスの認知度を高め、購入・利用につなげるためにも、マーケティング戦略の導入は重要です。
しかし、自社のリソースだけでは、知識不足や時間的な余裕がないなどの理由から思うように進まず、悩みを抱えている企業もあるでしょう。
専門的な知識を持つマーケティング戦略コンサルティングに委託する方法もあります。サイカは、統計解析とマーケティング分野における10年以上の経験と、課題抽出からマーケティング効果の分析実績をベースに、お客様のマーケティング戦略のプロセスに科学的根拠を実装します。
データドリブンなマーケティングの実現に向けて伴走できますので、ぜひご相談ください。