データドリブンマーケティングとは?意味・進め方と、意思決定につなげる方法

更新日: コラム
データ分析マーケティング

データドリブンマーケティングとは、勘や経験だけに頼らず、顧客データや施策データなどの分析結果を根拠にして、マーケティングの意思決定を行う手法です。ただし、データを集めてダッシュボードで「見る」ことと、データで「決める」ことのあいだには距離があり、データドリブンといえるかどうかは、データの量よりも、分析によって実際に意思決定が変わったかどうかで決まります。

この記事では、データドリブンマーケティングの意味と注目される背景、データによって変わる4つの意思決定、成果を測るKPI、進め方の5ステップ、事例、活用できるツールの種類までを解説します。

データドリブンマーケティングとは

データドリブンマーケティングとは、顧客データや施策データなどの客観的なデータを収集・分析し、その結果を根拠としてマーケティング戦略の立案・実行・改善を行う手法です。担当者の勘や過去の慣習ではなく、検証できるデータを意思決定の起点に置く点が特徴です。

「データドリブン」の意味

データドリブン(Data Driven)は直訳すると「データに駆動される」という意味で、データを根拠に意思決定を行う考え方を指します。この考え方はマーケティングに限らず、経営や営業、人事など、ビジネスのさまざまな領域で使われています。マーケティングでは、顧客の属性や行動のデータ、広告の出稿量や費用、販売実績、意識調査の結果などを分析し、戦略の立案から施策の実行、効果の検証までを一貫してデータに基づいて行います。

従来のマーケティングとの違い

従来のマーケティングとデータドリブンマーケティングのいちばん大きな違いは、意思決定の根拠です。従来型では担当者の経験や勘が根拠の中心でしたが、データドリブン型では検証できるデータが根拠になります。

観点従来のマーケティングデータドリブンマーケティング
意思決定の根拠経験・勘・慣習データの分析結果
評価の単位媒体ごとの管理画面の数値施策全体が売上にどれだけ貢献したか
再現性属人的で再現しにくい成功要因を特定でき、再現しやすい
検証のしかた成否の要因が曖昧になりがち施策の効果を定量的に検証できる
組織への広がりノウハウが個人にたまるデータが部門を越えた共通言語になる

なお、経験や勘が不要になるわけではありません。仮説を立てるうえで現場の知見は欠かせない資産であり、データはその仮説を検証し、判断の確かさを高めるために使います。

データを「見る」ことと、データで「決める」ことの違い

ダッシュボードを整えてデータを「見る」ことができても、それだけではデータドリブンマーケティングとはいえません。データで「決める」状態には、少なくとも次の3つの条件がそろっている必要があります。

  1. 変えるべき意思決定が、分析の前に決まっている(来期の広告予算の配分、注力するターゲットなど)
  2. 分析の結果によって、選ぶ選択肢が変わる(結果がどう出ても同じ判断になるなら、その分析は判断に使われていない)
  3. 「その施策がなかった場合と比べて、成果がどれだけ動いたか」という因果の問いに答えている

見落とされやすいのは3つめの条件です。たとえば、ある期間に広告を増やし、売上も伸びたとします。しかし同じ時期に季節要因や競合の値上げがあれば、売上の伸びのうちどこまでが広告によるものかは、売上と広告費の推移を並べて見ても分かりません。予算をどこへ動かすかを決めるには、施策ごとの貢献をほかの要因から切り分けて推定する必要があるためです。

この記事の以降の章は、この3つの条件のどれを満たすための話なのかという視点で読むと、全体の流れがつかみやすくなります。

データドリブンマーケティングが注目される背景

データドリブンマーケティングが注目される背景には、購買行動の複雑化、プライバシー保護の強化、扱えるデータ量の増加という3つの環境変化があります。

購買行動とチャネルの複雑化

スマートフォンとSNSの普及により、顧客が商品を知ってから購入するまでの経路は多様になりました。かつてはAIDMAに代表される画一的な購買行動モデルを前提に、多くの人へ同じメッセージを届ける手法が機能していましたが、現在は顧客ごとに接触するチャネルも、検討の進み方も異なります。テレビCMで知り、SNSで評判を確かめ、店頭で買うといった複数の接点をまたぐ行動を、経験則だけで把握することは難しくなっています。

プライバシー保護の強化と効果測定の見直し

ブラウザによるサードパーティCookieの制限や、個人情報の保護に関する規制の強化により、個人の行動を追跡する形の効果測定は以前より難しくなっています。そのため、クリックやコンバージョンを個人単位で追う計測だけに頼らず、自社で保有するファーストパーティデータの活用や、集計されたデータから施策の効果を統計的に推定する手法(後述するMMMなど)への関心が高まっています。

扱えるデータの増加と、解釈の難しさ

クラウドやBIツール、AIの普及により、データを集めて可視化するハードルは大きく下がりました。一方で、扱えるデータが増えるほど、「どのデータから何を読み取り、どの判断につなげるか」という解釈と設計の難しさは増しています。ツールを導入するだけでは成果につながらず、分析を意思決定に結びつける仕組みが問われる段階に入っています。

データが増えるほど、「見る」ことと「決める」ことの距離はかえって開きやすくなります。次の章では、データによって具体的にどの意思決定が変わるのかを整理します。

データドリブンマーケティングで変わる4つの意思決定

データドリブンマーケティングのメリットは、マーケティングの主要な意思決定を、根拠を示せる形で行えるようになることです。代表的なものは、予算配分、訴求とターゲット、振り返り、社内への説明の4つです。

予算配分:どの施策に、いくら投じるか

各施策が売上にどれだけ貢献しているかを推定できれば、効果の低い施策への投資を抑え、効果の高い施策へ予算を移す判断ができます。限られたマーケティング予算のなかで、成果に直結しやすい意思決定のひとつです。たとえばKDDIでは、UQ mobileのマーケティング投資を月次で分析して見直し、契約者一人あたりに投じるコミュニケーション費用を、最適化前と比べて約2割削減しています(2023年度実績)。

訴求とターゲット:誰に、何を伝えるか

顧客がどのような理由で自社を選び、あるいは競合へ移っているのかをデータで特定できれば、注力するターゲットと伝えるべき価値を絞り込めます。メガネトップでは、若年層を中心としたブランドスイッチとロイヤル化の要因を分析し、戦略の優先順位とコミュニケーション投資の選択と集中に生かしています。

振り返りと再現性:なぜうまくいったのかを説明できるか

施策の成否の要因をデータで特定しておくと、成功を偶然で終わらせず、組織の知見として残せます。「なぜうまくいったのか」を定量的に説明できるため、担当者が異動しても判断の質を保ちやすくなります。公開されている事例でも、KDDIは月次、丸亀製麺は四半期ごとと、分析を一度で終わらせずに回し続けています。

社内・経営層への説明:根拠を示して合意を取れるか

マーケティング投資は成果が見えにくいぶん、経営層や他部門から説明を求められやすい領域です。施策の貢献をデータで示せれば、予算の議論を経験談のぶつけ合いではなく、同じ数字を前にした検討に変えられます。プリマハムでは、広告代理店やメディアに属さない第三者の分析を用いることで、社内や経営層に客観的な説明ができるようになったと語られています。

4つの意思決定はいずれも、データを見るだけでは変わらず、「どの施策が成果を動かしたか」に答えて初めて変わるものです。

成果を測る主要なKPI・指標

データドリブンマーケティングでは、目的に応じたKPI(重要業績評価指標)を設定し、施策の成果を定量的に測ります。代表的な指標は、施策の効率を測るものと、顧客との関係性を測るものに大別できます。

広告・施策の効率を測る指標

広告や施策の効率を測る代表的な指標には、次のようなものがあります。

指標意味計算式の例
ROAS広告費に対する売上の割合売上 ÷ 広告費 × 100(%)
CPA1件の成果獲得にかかった費用広告費 ÷ コンバージョン数
CPO1件の受注獲得にかかった費用広告費 ÷ 受注件数
CVR訪問や接触のうち成果に至った割合コンバージョン数 ÷ セッション数 × 100(%)

顧客との関係性を測る指標

顧客の獲得効率と長期的な収益性を測る指標には、次のようなものがあります。

指標意味
LTV(顧客生涯価値)1人の顧客が取引期間全体を通じてもたらす利益
CAC(顧客獲得コスト)1人の新規顧客を獲得するためにかかった費用
リピート率一定期間内に再購入した顧客の割合

事業の健全性を判断するうえでは、単年のCPAだけでなく、LTVとCACのバランスで投資を判断する視点が欠かせません。

管理画面の成果を足しても、実際の成果にならない理由

広告媒体ごとの管理画面に表示される成果は、足し合わせても実際の成果とは一致しません。各媒体が、自社の広告に接触したユーザーの成果をそれぞれ独自の基準で数えるため、複数の広告に接触してから申し込んだ人が、複数の媒体で重複して数えられるためです。

たとえば、ある月の申込数について、各媒体の管理画面が次のように表示していたとします(架空の数値です)。

管理画面上の申込数
媒体A(検索広告)600件
媒体B(SNS広告)500件
媒体C(ディスプレイ広告)400件
管理画面の合計1,500件
実際の申込数(自社データ)1,000件

管理画面の合計は、実際の申込数の1.5倍です。この数字をもとに「どの媒体がいちばん効いているか」を判断すると、各媒体の貢献を過大に見積もることになります。

さらに、テレビCMや交通広告、店頭販促といったオフラインの施策は、クリックの記録が残らないため、この合計にすら入りません。オンラインとオフラインの施策を同じ物差しで比べるには、売上データから施策ごとの貢献を統計的に推定する考え方が必要になります。

KPIが示すのは「何が起きたか」です。「どの施策がそれを動かしたか」は、別に答える必要のある問いであり、次の章の5ステップはこの問いに答えるところまでを含めて組み立てています。

データドリブンマーケティングの進め方【5ステップ】

データドリブンマーケティングは、変えたい意思決定を決める、データを集めてつなげる、何が成果を動かしたかを分析する、分析結果を予算と施策に落とし込む、実行結果を検証して次の判断に使う、という5つのステップで進めます。以下では、ステップごとに「やること」「必要なもの」「よくあるつまずき」を整理します。

STEP1. 変えたい意思決定と、答えるべき問いを決める

やること:最初に決めるのは、データを何の意思決定に使うかです。「来期の広告予算を媒体間でどう配分するか」「若年層向けに何を訴求するか」のように、決める内容と時期を具体的に書き出し、そこから最終目標(KGI)と、途中経過を測るKPIを設定します。

必要なもの:意思決定の責任者と、判断の期限です。

よくあるつまずき:目的が曖昧なままデータの収集や分析を始めると、分析そのものが目的になり、どの判断にも使われないレポートが残ります。

STEP2. 必要なデータを棚卸しし、つなげる

やること:STEP1の問いに答えるために必要なデータの所在を棚卸しし、分析できる形に統合します。

必要なもの:必要なデータは問いによって異なります。たとえば広告予算の配分を決める場合は、売上などの成果データ、媒体別の出稿量と費用、季節性や競合の動きといった外部要因のデータを、週次程度の粒度で過去2〜3年分そろえるのが目安です。個人情報を含むデータについては、関連法規に沿った取得・保管・利用のルールも欠かせません。

よくあるつまずき:販売データは営業部門、広告データは宣伝部門、顧客データはCRMの担当部門と、データが部門ごとに分かれていることが最初の壁になります。すべてを一度に統合しようとせず、STEP1の問いに必要なものから順につなげるほうが現実的です。マーケティングデータの集め方は、XICA Analysis Insightレポート「データ収集のベストプラクティス:クライアントとの伴走で得た知見をご紹介」もあわせてご覧ください。

STEP3. 何が成果を動かしたのかを分析する

やること:集めたデータを可視化して傾向をつかんだうえで、「どの施策が成果をどれだけ動かしたか」を推定します。グラフで傾向を見るだけでは、季節要因や競合の動きと施策の効果を切り分けられないため、決めたい意思決定に合った分析手法を選びます。

決めたい意思決定主な分析手法分かること
広告・販促の予算配分MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)施策ごとの売上への貢献と、予算を動かした場合の成果の見通し
訴求・ポジショニングCMM(コンシューマー・ミックス・モデリング)顧客がブランドを選ぶ決め手(購買決定要因)と、その影響の大きさ
個別施策の実施・停止A/Bテストや、地域を分けた検証などの実験その施策を行った場合と行わなかった場合の差
CRM施策の配信対象アップリフトモデリング施策によって購入する確率が上がる顧客

MMMは、売上の時系列データから、季節性や競合、価格などの影響と、広告の残存効果(出稿後もしばらく続く効果)や飽和(投下量を増やすほど効果が小さくなること)を切り分け、施策ごとの貢献を推定する手法です。クリックの記録に頼らないため、テレビCMやOOHを含めて、オンラインとオフラインの施策を同じ物差しで比べられます。一方のCMMは、意識調査などのデータから、顧客が競合と比べて自社のブランドを選ぶ確率に、どの要因がどれだけ効いているかを推定します。MMMの仕組みや進め方は「MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)とは」で詳しく解説しています。

必要なもの:統計学やデータサイエンスの知識です。

よくあるつまずき:分析人材の不足です。採用市場でも希少なため、コアとなる領域の内製を目指しつつ、高度な分析は外部の専門家を活用するなど、段階的に体制をつくるほうが進めやすくなります。内製と外部活用の比較は「マーケティング分析のインハウス化:メリットとデメリットを解説」で解説しています。

STEP4. 分析結果を、予算と施策に落とし込む

やること:分析で特定した課題と機会をもとに、予算配分、注力するターゲット、伝える内容、チャネルごとの投資額を決めます。分析結果をレポートで終わらせず、予算とアクションに変えることがこのステップの要点です。

必要なもの:STEP1で決めた意思決定の責任者が、結果を見て判断する場です。

よくあるつまずき:分析結果は出たのに、何も変わらないケースです。STEP1で「この結果が出たら何を変えるか」を決めていないと起きやすく、分析と判断のあいだが空いたままになります。同じ状況で悩んでいる場合は、「分析が、次の一手に変わらない」もあわせてご覧ください。

STEP5. 実行結果を検証し、次の判断に使う

やること:実行した施策の効果をデータで検証し、次のサイクルに反映します。検証の頻度(月次、四半期など)をあらかじめ運用の予定に組み込んでおくと、改善の速さが大きく変わります。

必要なもの:検証結果を共有し、次の判断に反映する定例の場です。

よくあるつまずき:経営層や他部署の理解が得られず、データに基づく判断が一部の部署にとどまることです。組織としての進め方は「データドリブンなマーケティング組織への第一歩」で解説しています。

5つのステップのうち、「見る」と「決める」を分けるのはSTEP1とSTEP3です。実際にこの流れで意思決定を変えた企業の例を、次の章で紹介します。

データドリブンマーケティングの事例

サイカが支援した企業では、データによって次のような意思決定が変わっています。

  • 予算配分:KDDIは月次の分析でUQ mobileのマーケティング投資を見直し、プリマハムは次年度予算の編成基準を前年踏襲から「ROAS最大化」へ切り替えました。
  • 訴求とターゲット:丸亀製麺はブランドの重要成功要因(KSF)を分析し、新商品の広告予算の判断に生かしています。
  • 事業の方向性:エステーは防虫剤市場が縮小した要因を分析し、ブランドの提供価値を再定義しました。

各事例の課題、使ったデータと手法、公開されている成果は「データドリブンマーケティングの事例」で詳しく紹介しています。

データドリブンマーケティングに活用できるツール

データドリブンマーケティングを支えるツールは、データの収集・保管、分析・可視化、施策の実行という目的別に整理して選びます。

カテゴリ主な役割答えられる問い
DWH(データウェアハウス)社内外のデータを統合して保管する分析の前提となるデータをそろえる
CDP顧客データを集めて統合し、施策に使える形に整える誰が、いつ、何をしたか
Web解析ツールサイトやアプリ上の行動を計測するサイト上で何が起きたか
CRM / SFA顧客情報や商談情報を管理する顧客との関係がどう推移しているか
BIツールデータを可視化し、ダッシュボードで共有する何が起きたか、どこに変化があるか
MAツールメール配信などの施策を自動化する施策の実行を効率化する

表のどのツールも、単体では「どの施策が成果を動かしたか」には答えません。その問いに答えるのは、STEP3で紹介したMMMや実験などの分析の設計です。ツールは、STEP1で決めた意思決定に必要なデータと機能から逆算して選ぶと、導入そのものが目的になることを避けられます。

データドリブンマーケティングに関するよくある質問

データドリブンマーケティングとは何ですか?

分析結果を根拠にマーケティングの意思決定を行う手法です。データを集めて可視化するだけでなく、分析によって予算配分や訴求などの判断が実際に変わることが、データドリブンといえる条件になります。

データドリブンマーケティングとデジタルマーケティングの違いは何ですか?

デジタルマーケティングはWeb広告やSNSなど「使う媒体」を指す言葉で、データドリブンマーケティングは「判断の根拠」を指す言葉です。そのため、テレビCMや店頭販促などのオフライン施策も、データに基づいて評価し配分していれば、データドリブンマーケティングに含まれます。

どのくらいのデータがあれば始められますか?

必要なデータの量は、答えたい問いによって変わります。広告予算の配分を統計的に分析する場合は、成果、出稿、外部要因のデータを週次で過去2〜3年分そろえるのがひとつの目安ですが、まずは手元のデータで答えられる問いから始めることもできます。

テレビCMなどのオフライン施策も分析できますか?

分析できます。テレビCMはクリックの記録が残りませんが、出稿量(GRPなど)と売上の時系列データがあれば、MMMなどの統計的な手法で、季節性や競合の影響と切り分けて売上への貢献を推定できます。

社内にデータサイエンティストがいなくても始められますか?

始められます。答えるべき問いを決めることと、分析の結果を判断に使うことはマーケティング部門の役割で、高度な分析の部分は外部の専門家と分担する進め方もあります。

まとめ

データドリブンマーケティングとは、分析結果を根拠にマーケティングの意思決定を行い、実行と検証を繰り返していく手法です。データを集めて「見る」ことはその出発点にすぎず、変えるべき意思決定を先に決め、「どの施策が成果を動かしたか」に答えたときに、データで「決める」ことができるようになります。

まずは、自社のマーケティングの意思決定のうち、根拠が曖昧なまま続いているものを一つ特定することから始めてみてください。どこから手をつけるか迷う場合は、よくある課題の一覧(「課題から探す」)から近いものを探すこともできます。

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