マーケティングの成果向上に欠かせないデータ分析13選
マーケティングとは、「販売を不要にすること」。これは、現代経営学の父と呼ばれるピーター・ドラッカーの言葉です([英和対訳]決定版 ドラッカー名言集/ダイヤモンド社より)。
このマーケティングには、データ分析が欠かせません。勘や経験に頼ったマーケティング活動の大半は失敗に終わり、コストを浪費してしまいます。
とはいえ、マーケティングにデータ分析が欠かせないと言われても「どんなデータ分析手法があるかすらよく知らない」という方も多いと思います。
そこでこの記事では、マーケティング初学者の方向けに、マーケティングの成果向上に欠かせない13のデータ分析手法とそれぞれの概観をご紹介します。マーケティングのシーン別に紹介するので、ぜひ実務にも取り入れてみてください。
目次
マーケティングに欠かせないデータ分析13選
それでは早速、マーケティングに欠かせない13のデータ分析手法を紹介します。
データ分析を利用する主なシーンは、下記の通りです。
- マーケティング戦略を立てる
- 顧客データを分析する
- データの傾向を明らかにする
- データの関係性を明らかにする
- データの分類を明らかにする
- データの隠れた要素を見つけ出す
各シーンごとに重要なデータ分析を紹介していくので、自社マーケティングに必要だと考えられるデータ分析をピックアップしてみてください。
マーケティング戦略を立てる
1. 4P分析
4P分析は、「Product(商品)」「Price(価格)」「Place(販売)」「Promotion(流通)」の4つの軸で情報を整理し、マーケティング戦略を立てるためのデータ分析手法です。
たとえば、新しい商品やサービスをリリースするにあたって、機能や性能、適正価格、販売チャネル、販促活動などを、ターゲットユーザーに合わせて設計します。
大切なのは「4つのPのバランス」です。いずれか1つに偏ったマーケティング戦略は、失敗する可能性が高いと言えます。
2. STP分析
STP分析は、「Segmentation(市場の細分化)」「Targeting(ターゲット市場を決定)」「Positioning(市場でのポジションを確認)」という3つの軸で情報を整理し、市場におけるポジションを明確にするためのデータ分析手法です。
ビジネスとは市場シェアの獲得競争でもあるため、マーケティング戦略を立てるにあたって、自社やその商品・サービスのポジションを把握する必要があります。
3. SWOT分析
SWOT分析は、「Strengths(自社の強み)」「Weaknesses(自社の弱み)」「Opportunities(市場の機会)」「Threats(市場の脅威)」という4つの軸で情報を整理し、実態に即したマーケティング戦略を立てるためのデータ分析手法です。
SWOTを軸に情報を整理すれば、自社と市場のプラス要素・マイナス要素を考慮しながら、適切なマーケティング戦略を立てられるようになります。
顧客データを分析する
4. デシル分析
デシル分析とは、商品やサービスの購入データをもとに、顧客を10のグループに分割し、購入比率や売上高構成比などを視覚化するデータ分析手法です。
顧客全体だけでなく、顧客をさまざまなセグメントにわけて分析を行うと、違う角度からの顧客データ分析が可能になります。
優先的にマーケティングコストを投資すべき顧客層が判明するので、投資先の「選択と集中」を実現します。
5. RFM分析
RFM分析とは、「Recency(最終購入日からの経過日数)」「Frequency(購入回数と購入頻度)」「Monetary(購入金額の総額)」という3つのデータから顧客をスコアリング・ランキング化して、顧客グループを分類するデータ分析手法です。
RFMを軸にデータを整理した上で、顧客を次のように分類します。
※以下を元に弊社で作成
出典:https://tech.pepabo.com/2017/12/06/tableau-rfm/
これにより、アップセル・クロスセルを積極的に実施すべき顧客と、離脱防止に務めるべき顧客などが判明します。
データの傾向を明らかにする
6. クロス集計分析
クロス集計分析とは、基本的なデータ分析手法の1つです。アンケート調査を通じて得られたデータを用いて、回答者の属性や質問項目など複数の軸をかけ合わせ、データを集計します。
例)女性向けキャンペーンを実施することになったアイスメーカーが、キャンペーンの対象商品を決めるためにクロス集計分析を実施
① 対象商品の候補に挙がっているバニラアイスとストロベリーアイスの売上データを比較すると、バニラアイスがストロベリーアイスの2倍の売上を占めています。このデータだけを見たら、バニラアイスをキャンペーンの対象商品にしようと思うかもしれません。
ですが、今回はターゲットを女性にしぼったキャンペーンです。そこで、性別ごとの売上データを見てみると、女性よりも男性のほうが購買数が多いことが分かります。
そこで、購入者の性別ごとに売上データを見てみます。すると、バニラアイスの購入者の9割は男性で、一方のストロベリーアイスは、購入者の8割が女性でした。この結果を受け、 今回の女性向けキャンペーンの対象商品はストロベリーアイスに決定しました。
このように、データ分析として必要な情報を抽出するために、さまざまな軸を組み合わせながら分析するのが、クロス集計分析です。
出典:【ゼロから始めるデータ分析#2】データ分析初心者が覚えておくべき3つの分析手法 | 株式会社サイカ https://xica.net/xicaron/data-analysis-for-beginners-2/
データの関係性を明らかにする
7. 重回帰分析
統計学において「重」とは複数、「回帰」とは因果関係を意味します。
重回帰分析とは、「一つの成果(目的変数)」と「複数の要因(説明変数)」における関係性を把握するデータ分析手法です。
「売上目標を達成するためには、広告宣伝費にいくらかけるべきか」
「施策Aと施策B、それぞれどのくらいの効果が見込めるか」
「今期の予算をどう配分すると、マーケティング成果を最大化できるか」
など、売上予測やマーケティング戦略の策定などに活用できる、マーケティング分野では必須ともいえる分析手法です。
たとえば、売上高(目的変数)に影響を与えているさまざまな要因(説明変数)の影響度を解析することで、マーケティング施策の最適な予算配分を検討できます。
出典:【ゼロから始めるデータ分析#2】データ分析初心者が覚えておくべき3つの分析手法 | 株式会社サイカ https://xica.net/xicaron/data-analysis-for-beginners-2/
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8. ロジスティック回帰分析
ロジスティック回帰分析とは、複数の説明変数(要因)から、「2値の目的変数(結果)」が起こる確率を予測・説明するための分析手法です。2値とは、「YESかNO」のように、2つの目的変数しか存在しない値を意味します。
たとえば、見込み客のデータ(売上高、従業員数、利益率など)から、その見込み客が自社商品を購入する確率などを予測できます。
<重回帰分析とロジスティック回帰分析の違い>
- 重回帰分析
複数の説明変数から、目的変数の数値を予測する - ロジスティック回帰分析
複数の説明変数から、目的変数が「1」になる確率を予測する
重回帰分析とロジスティック回帰分析は類似点もありますが、利用シーンが明確に分かれています。
9. アソシエーション分析(バスケット分析)
アソシエーション分析(バスケット分析)とは、購買データをもとに、ある商品が、他の商品と一緒にどのくらい購入されているかを分析するデータ分析手法です。
よく一緒に買われている商品の組み合わせがわかるので、同時に購入されやすい商品を近くに配置したり、勧めたりするなどのマーケティング戦略に活かせます。
※以下を元に弊社で作成
出典:誰でも手軽に活用できるバスケット分析のメリットと実施方法とは? | リサーチ・市場調査ならクロス・マーケティング https://www.cross-m.co.jp/column/data_marketing/dtm20220722/
データの分類を明らかにする
10. クラスター分析
クラスター分析とは、データの母集団からデータごとの特徴量(予測の手がかりになる変数)を発見し、特徴量に応じたデータの集団(クラスター)を明らかにするデータ分析手法です。
クラスター分析の対象は顧客情報だけでなく、企業、商品・サービス、地域、あるいはアンケート項目などあらゆるデータを対象とします。
膨大なデータも単純化でき、マーケティングにおいては消費者のセグメンテーションし、クラスターごとに適した施策を打つことができます。
11. 決定木分析
決定木分析とは、ツリー構造でデータを分類していくデータ分析手法です。簡単な分析でもそれなりに精度の高い結果が得られ、分析結果を解釈しやすいことから、データ分析の現場で良く用いられています。
主に潜在顧客の発見や、商品・サービスが顧客満足度に与える影響などを把握するためのデータ分析手法です。
データの隠れた要素を見つけ出す
12. 因子分析
因子分析とは、観測された要素データから、隠れた共通の因子(構成要素)を見つけ出す分析手法です。
アンケート回答結果の裏に隠れたユーザの意図を数値化するなど、顧客の本質的なニーズを把握したいときに使います。
13. コレスポンデンス分析
コレスポンデンス分析とは、アンケート調査やクロス集計分析などで得られた結果を、散布図にするデータ分析手法です。
※以下を元に弊社で作成
出典:コレスポンデンス分析とは|市場調査ならインテージ https://www.intage.co.jp/glossary/400/
メーカーの商品説明資料や、マーケティングの企画書などでもよく見かけますね。
属性同士の位置関係から、属性同士の関連性を把握できるので、「この属性を持っているとこの属性も持ちやすい」など、競合商品の関係性を把握する時などに使えます。
マーケティングにおけるデータ分析の必要性とメリット
テレビCMや新聞広告など従来主流だったマスマーケティングでは、大まかなターゲット、大まかな市場分析を通じて、マーケティング活動を行ってきました。
しかし、インターネットの普及により誰もが情報を自由に発信・取得できる時代になると、状況は一変しました。消費者のニーズは急速に多様化し、細かいターゲティングや細かい市場分析なくして、マーケティング活動は成り立たなくなったのです。
マーケティングのデジタルシフトに伴い、データ分析のニーズも高まり、データ分析技術も発展してきたことで、現在ではデータ分析こそがマーケティング成功の鍵となっています。
また、マーケティングにおいてデータ分析を用いると、次のようなメリットが得られます。
データにもとづいた意思決定
従来の勘や経験に頼ったマーケティングは、ギャンブル的要素の強い活動です。マーケティング活動によって大きなコストがかかるので、まさに「当たれば天国、外せば地獄」だと言えます。
そうしたギャンブル的要素を排除するためにも、データ分析が欠かせません。データにもとづいた意思決定により、マーケティング活動の成功率を大幅にアップできます。
パーソナライズされたマーケティングの実現
消費者のニーズが多様化したことにより、「パーソナライズされたマーケティング」の必要性が高まりました。
「パーソナライズされたマーケティング」とは、顧客データ、見込み客データ、市場データなどを分析した上で、セグメント(ターゲットの分類)ごとに異なるマーケティングを実行することです。
「パーソナライズされたマーケティング」を実現するためには、前述した分析手法を駆使して、市場や顧客の理解を深めていくことが欠かせません。
仮説・検証の繰り返しによるマーケティングの改善
データを活用したマーケティングのメリットとして、「施策の実行」と「成果の確認」を素早く行えることがあります。仮説・検証のサイクルを細かく繰り返すことで、マーケティング活動の改善がスピーディーに行えるようになります。
マーケティングの目的に応じてさまざまなデータ分析手法を使い分け、仮説・検証のサイクルを高速化できれば、より高いマーケティング成果が見込めます。
マーケティングのデータ分析を実施する手順
マーケティングのデータ分析は、主に次のようなステップで実行します。
上記のステップを頭からスタートし、しっかりとフローに沿ってデータ分析を進めていきます。「おかしい」と感じる部分の1つ前に戻り、再度フローを進めます。このフローに従わないと、マーケティングのデータ分析が失敗に終わる可能性が高くなるので、注意してください。
各ステップの細かい内容は、『【ゼロから始めるデータ分析#1】データ分析初心者がまず知るべき「分析の8ステップ」』で詳しく解説しています。
マーケティングに限らず、ビジネス全般のデータ分析に大切な基礎知識がつまっているので、本記事と合わせてご覧ください。
マーケティングにおすすめのデータ分析ツール
マーケティングのデータ分析は、データ数が少なければ、Excelなどのツールを使った分析も可能です。ただし、豊富かつ膨大なデータを分析しなければならない場合は、専用のデータ分析ツールをおすすめします。
ここでは、マーケティングにおすすめのデータ分析ツールを4つ紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)ツール
MMMとは、マーケティング関連のビッグデータを統合的に分析し、マーケティングの各施策が成果に与えた直接的な影響と間接的な影響を可視化する統計的手法のことをいいます。
マーケティングのためのメディアやチャネルが増加し続ける中、統合的なデータ分析を行わなければ、正しいマーケティング成果を把握することはできません。この問題を解消し、あらゆるデータからマーケティング活動の全体像を把握できるのが、MMMで、この仕組みを誰もが使えるようツールに落とし込んだのがMMMツールです。
サイカが提供する「MAGELLAN(マゼラン)」は、広告効果の可視化・最適な予算配分のために、幅広い業界・業種の企業に導入されています。
MA(マーケティング・オートメーション)
MAとは、事前定義したシナリオと取り込んだ見込み客データにより、リードジェネレーション(見込み客の創出)とリードナーチャリング(見込み客の引き上げ)を可能にするシステムです。
オンラインとオフラインの見込み客データを分析しながら、事前に定義したシナリオをトリガー(きっかけ)にして、マーケティング施策の一部を自動化できます。
ビッグデータを活用したマーケティング業務の効率化を実現し、マーケターをクリエイティブな仕事に集中させることができます。
DMP(デジタル・マネジメント・プラットフォーム)
DMPはインターネット上に蓄積された、膨大なデータを管理・分析するためのデータ分析ツールです。
主に、DMP事業者が独自に収集したオーディエンスデータ(3rdパーティデータ)を活用し広告運用を最適化するほか、自社が保有するユーザーデータと組み合わせて、確度の高い見込み客を特定するなどの活用方法も可能です。
また、DMPを活用して、セグメントしたユーザーごとに広告配信やメール配信までできるため、One to Oneマーケティングが可能になります。
CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)
CRMはユーザーデータを総合的に管理し、さまざまな切り口で顧客分析を行うためのデータ分析ツールです。また、データ分析だけでなく、部門横断的なユーザーデータ活用も実現します。
もともとはユーザーデータを管理し、良好な顧客関係を築くためのツールでした。しかし近年では、多くのCRMでデータ分析機能が強化されており、顧客分析に欠かせないデータ分析ツールとなっています。
マーケティングとデータサイエンス
近年、マーケティング業界でニーズが高まっている分野が、「データサイエンス」です。
データサイエンスとは、企業が保有している膨大なデータを解析し、ビジネスの利益になるような知見を導き出すためのアプローチのことをいいます。
ビジネスにおけるデータ分析が一般化するにつれて、「データを分析すればあらゆることを説明できる」という認識が浸透しました。
これは半分正解、半分不正解です。なぜなら、データそのものは無機質な情報の集まりであり、データを眺めているだけでは何も説明できないからです。つまり、「データは答えをくれない」のです。
データから答えを得るためには、ビジネスパーソン自身がデータに命を吹き込む必要があります。様々なアプローチを駆使してデータから示唆を導き出し、次のアクションに繋げていく、この「命を吹き込む」部分が、データサイエンスで行うことです。
マーケティングにおいてデータ活用のニーズが高まる中、データサイエンスもまた欠かせないものになりました。
データサイエンスについては、『データサイエンスとは?データのプロがわかりやすく解説【初学者におすすめの書籍3選】(内部リンク)』で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
おわりに
販売を不要にすること、売れる仕組みを作ること。
言葉の違いはあれど、著名な経営学者・マーケターの多くが、マーケティングの役割について同じような解釈を残しています。
こうしたマーケティングの本質的な役割を果たすためには、やはりデータ分析が欠かせません。ユーザーのニーズが多様化した今日、販売を不要にしたり売れる仕組みを作ったりするには、データに基づいた意思決定やパーソナライズされたマーケティングが必要なのです。
本記事を通じて、マーケティングにおけるデータ分析の重要性を再認識していただければ幸いです。