売上予測はどう算出する?予測の立て方や計算方法を解説

コラム
データ分析

企業にとって売上予測は、今後の目標や計画を立てるうえで欠かせない要素といえます。その一方で、「具体的な予測の立て方がわからない」「売上目標とは違うの?」と疑問を抱く方も少なくないでしょう。また、売上予測を立てることで得られるメリットや、予測の精度をより高めるための方法を知りたい方もいるかもしれません。

本記事では、売上予測の概要、売上目標との違いやメリット、予測の立て方や計算方法、精度を高めるためのポイントを詳しく解説します。

売上予測とは

売上予測とは、その名のとおり、過去の売上の傾向などから将来的な売上を予測することです。過去の売上実績の推移や昨年度の売上実績など、さまざまなデータに基づいて算出されます。

また、売上予測は客観的な情報をもとに算出されるため、予測結果に下記のような予想や期待は含まれない点に注意しましょう。

誤った予測例:

  • 去年の売上実績が50億円だから、今年は新製品の投入や新戦略の実施によって75億円はいくだろう
  • 今年は社員全員で努力して売上30億円を目指す

上記の例は、個人的な「新製品や新戦略の投入が効果を出すだろう」という予測や「努力が結果につながる」という期待が含まれているため不適切です。

売上予測は個人の主観や感情をベースにせず、明確なデータを用いて算出されるものと覚えておきましょう。

売上予測と売上目標の違い

前述したとおり、過去の売上データなどの客観的・現実味のあるデータをもとに算出される数値が売上予測です。一方の売上目標は、予測をもとに現状の戦略の質が改善される期待や、新しい戦略による効果などを見込んで設定された数値を指します。

そのため、売上目標は「今後このくらいまで数値を伸ばしたい」という理想や期待、予想を掲げているともいえるでしょう。

また、上記の性質によって、売上目標の数値は基本的に前年・前月より高い数値で設定される点も、売上予測とは異なる特徴です。適切な売上目標の設定は従業員のモチベーションの維持・向上が期待できることから、売上予測と同じく重要な指標の一つといえます。

売上予測を立てるメリット

売上予測を立てるメリット

次に、売上予測を立てることでどのようなメリットが得られるのか、詳しく解説します。

企業の適切な経営につながる

企業が成長するためには利益を出すことが不可欠であり、利益を出すためには社内の業務を円滑に回す必要があります。

例えば、受注しても対応できる担当者がいない、製品のフォロー業務に割ける人員がいない、必要な予算が下りないなどの問題が起こった場合、利益を出すことは難しいでしょう。トラブル対応に追われながら利益も満足に出せないとなると、企業の経営にも影響をおよぼしかねません。

予測データは、商品・サービスの需要や、実際にどのくらい売れるのかを予想する目安となるため、適切な予算配分や在庫管理、人員配置の判断に役立つメリットがあります。上記の問題を未然に防ぎ、社内の業務をより円滑に遂行するための指針となり得ます。

現実に即した売上目標を設定できる

営業活動において売上目標を設定する際、売上予測の客観的なデータを反映することで、現実的かつ利益を最大化できる目標設定が可能になります。

予測データがないと、理想に傾き過ぎた目標や、実現できないほど高すぎる目標を設定しかねません。現実的でない目標は、社員のモチベーション低下や達成困難につながります。一方で、目標が低すぎる場合も、企業の成長機会を逃す事態につながりかねません。

予測に基づいた目標は、現実的なデータを落とし込めるため、上記の事態を回避することが可能です。適切な目標数値の具体化によって、目標までの戦略も立てやすくなるでしょう。

金融機関・株主とのコミュニケーションに役立つ

金融機関へ資金繰りなどを相談する際は、根拠のある数値が使用された「事業計画書」の提出を求められる場合があります。売上予測がつかず、今後の売上の見通しが立たない状態では、返済計画の見積もりを誤ってしまうなど資金繰りが難しくなることが考えられるでしょう。

根拠ある売上予測のデータを用いることは、金融機関への資金繰り相談の際に役立つうえに、資金繰りが困難になるリスクの把握や今後の返済計画も立てやすくなるメリットがあります。

また、株主総会などの場で株主に事業の成長性などを説明する際にも、売上予測が役立ちます。売上予測のデータを活用することで、より説得力のある説明が行えるようになるため、円滑なコミュニケーションにつながります。

高精度の売上予測に役立つデータ

高精度の売上予測に役立つデータ

売上予測の精度を高めるためには、より信頼できるデータを多く収集することが重要です。具体的には、以下のようなデータがあるよいでしょう。

  • 商品ごとの売上高
  • 組織ごとの売上高
  • 月、年度、四半期ごとの売上高
  • 現在の取引数
  • 受注までにかかった期間の平均
  • サービスの平均契約期間
  • 更新率や解約率
  • 四半期、年度ごとの平均成長率 など

上記を指標としたデータは、「正確性」「誰でも活用できる透明性のあるデータかどうか」の2点が確保されているかどうかが重要になります。さらに、それぞれのデータにおいて日次・週次で集計されたものがあると、より理想的です。

併せて、社内だけでなく、外的要因となる指標やデータも参考にするとよいでしょう。例えば、以下のようなデータが挙げられます。

  • 経済状況
  • 競合他社の参入の有無、シェアの変化
  • 法律や規制の変化
  • 市場の成長率、消費動向 など

これまで紹介したデータのうち、どれが売上予測に必要な指標となるかは、業界や企業の規模によって異なる点に留意しましょう。

なお、サイカではデータ分析ソリューションの提供により、データを用いて成果を出すお手伝いをしています。「どのデータを予測に役立てるべきかわからない」とお悩みの方は、ぜひサイカにご相談ください。

3つの売上予測の立て方

3つの売上予測の立て方

次に、3つの売上予測の方法をピックアップして解説します。

(1)過去の売上データを活用する

過去の売上データを活用する場合、売上予測は以下の計算式で求められます。

売上予測=過去の売上データ×年間成長率

例えば、2年前の売上が75億円、前年の売上が100億円の場合「(100億円-75億円)÷100億円×100%」で、年間成長率は25%となります。これを上記の計算式に当てはめると、今年の売上は「100億円×125%=125億円」と予測できるのです。

ただし、上記の計算式では、高い精度の売上予測算出は難しいでしょう。より売上予測の精度を上げるには、計算式で参照している過去数年において、マーケティング活動や投下した広告宣伝費など、どの要素が売上を構成したのかを加味する必要があります。

また、売上予測は現在の業界の動向や社会情勢、経済情勢などを含め、事実に沿って算出しなければなりません。そのため、変化が激しい業界では精度が低下することが考えられるでしょう。さらに、新規事業の企業など、過去の売上データが存在しない場合は利用できない点にも注意してください。

過去のデータを用いる予測方法には、回帰分析などの統計学によるアプローチもあります。回帰分析による売上予測については、下記の記事で詳しく紹介していますので、こちらもチェックしてみてください。

回帰分析で売上予測するには?基本と手順・注意点を解説

(2)営業パイプライン・商談ステージから予測を立てる

営業パイプラインとは、営業における業務フローのことです。例えば、「問い合わせ⇒ヒアリング⇒提案⇒見積もり⇒受注」といったプロセスが該当します。

このプロセスは業界によって異なり、例えば不動産販売であれば「問い合わせ⇒接客⇒内覧⇒クロージング⇒契約」となります。

上記の過去の成功データを収集し、次のステージに進む可能性や契約成立の見込み率、概算取引額などを経て売上予測を立てるのが、この方法の特徴です。

具体的な予測の立て方は、まず過去のデータの平均値から週や月など一定期間を指定し、各プロセスでの成約見込み率と取引数をかけ合わせて概算取引額を算出します。そして、それぞれの概算取引額を合計し、売上予測を算出していきます。

この場合の計算式は、以下のとおりです。

【ヒアリングの成約見込み率×取引数=概算取引額】+【提案の成約見込み率×取引数

=概算取引額】+【見積もりの成約見込み率×取引額】=【合計売上予測】

営業パイプライン・商談ステージに基づく計算は、営業の実績データを用いるため、市場の動向を踏まえた高精度の予測が期待できます。また、過去のデータ蓄積が少ない新規事業の場合も先週、先々週のデータを今週に当てはめて計算するといった、短期間での予測も可能です。

また、この方法は売上だけでなく、マーケティング分野や営業目標の設定にも活用できる点も強みといえるでしょう。

(3)テスト市場分析から予測を立てる

特定のターゲットとなるグループに対して、試験的に商品・サービスを提供し、その結果得られたデータを使用して予測を立てる方法です。

例えば、新商品をテストとして特定地域で販売、もしくは利用者数を限ったうえでサービスのベータ版を利用してもらうことなどが該当します。これらの試験で得られたユーザーのリアクションなどを、予測に使用する方法です。

この方法は売上予測のほかに、新商品・サービスに対するユーザーの反応で把握した改善点をブラッシュアップしたり、ブランドの認知度を高めたりといった効果も期待できます。

ただし、仮にテスト対象のグループで良い結果が出ても、別のグループや本来のターゲット層でも通用するとは限らない点に注意が必要です。加えて、試験運用やサービスベータ版のリリースには、一定の費用がかかる点にも留意しましょう。

売上予測の正確性を高める3つのポイント

売上予測の正確性を高める3つのポイント

売上予測結果の正確性を高めるために注目すべきポイントを、3つ紹介します。以下3つのポイントを意識することで、より精度の高い売上予測の算出につなげられるでしょう。

売上予測の認識を組織全体で統一する

社内や部署内で、売上予測に対する認識を統一しておくことが重要です。例えば、どのような算出方法で数値が出されているのか、予測が経営に対してどのような影響を与えるのかなどを共有しておくとよいでしょう。

また、売上予測は企業によってさまざまですが、企業全体・部門ごと・課ごとに立てられるケースが一般的です。そのため、社内全体で認識を統一しておかなければ、それぞれの部門・課で算出方法や異なる基準を使用してしまうおそれがあります。そうなれば、数値の信憑性が下がるリスクもゼロではありません。

売上予測に対する認識や算出方法など、基準の統一化は上記のリスクを防ぐとともに、予測データの確度を高めることにもつながります。

組織内で情報共有する

売上予測は、担当者など特定の個人に限らず、社内全体で共通の認識を持つ必要があります。そのため、社内全体で情報共有ができる仕組みを作ることが大切です。

例えば、日々の売上データや営業データなど、幅広い情報を随時把握できるようにしておく方法が挙げられます。情報共有が不足していると、予測に使うデータに不足や不備が生じ、曖昧な数値を出すことになりかねません。

部署間でのデータの共有・連携は、精度の高い予測を可能にします。さらに、互いのデータから新しい戦略を発案したり、別部署・別部門の方法を取り込んだりするなど、業務活性化にもつながるでしょう。

売上予測が可能なITツールを導入する

売上予測ができるITツールの導入によって、ヒューマンエラーの防止や売上予測の効率的な作成につながり、予測精度の向上にもつながるでしょう。

売上予測に関する業務すべてを手作業で行った場合、ときに計算ミスなどにより、本来とは異なる予測データを算出してしまうことがあります。誤った予測データは、営業活動や経営にも悪影響をおよぼしかねません。

売上予測の作成をサポートしてくれるツールの活用は、これらのミスを未然に防ぐだけでなく、より素早く正確に精度の高い予測を立てることにもつながります。

売上予測に活用できるITツールはいくつかありますが、代表的なツールとしては「Excel」と「SFA」の2つが挙げられます。

Excelでは予測シート機能が活用できるため、売上予測の作成が可能です。ただし、あくまで表計算ソフトのため、膨大なデータの管理には不向きな点に注意しましょう。

SFAは「Sales Force Automation」を略した言葉であり、営業活動を総合的に支援してくれるツールのことです。これらのツールには、多くの場合、売上予測機能が搭載されています。

SFAは、営業活動が売上を構成するおもな要因である場合に活用できます。ただし、マーケティング活動や広告宣伝などの販促活動による、需要や販売への影響を直接加味することはできません。

また、昨今ではAIツールを用いた機械学習による手法も登場しています。AIに必要なデータを与えることで、売上予測を立てることが可能です。機械学習による売上予測については、以下の記事でより詳しく解説していますので、ぜひチェックしてみてください。

機械学習を活用した売上予測のメリットや手順、手法を解説

自社要素と外的要因を含む“全体的な”売上予測には「MMM」

前述したように、売上予測のデータには、自社要素と外的要因に関する情報を適宜用いる必要があります。自社要素・外的要因を含めた“全体的な”売上予測を実施するなら、「MMM」の活用がおすすめです。

MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)とは、マーケティング施策におけるさまざまなデータを統計的に分析し、施策の影響を具体的に判別できるようにモデル化する手法です。

MMMを利用すれば、売上や販売個数などの成果変数がどの要因によって構成されたのかを分解し、マーケティングのどの施策が有効だったのか、外的要因のどの要素が影響したのかを分析できます。

また、自社のマーケティング活動や外部環境の変化による需要への影響を「仮定のシナリオ」として設定し、シミュレートすることも可能です。

「マーケティング施策が売上に対してどう影響したのかを知りたい」「季節などの外的要因を加味した売上予測の精度を上げたい」という場合は、MMMが最適といえるでしょう。

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まとめ

売上予測は、利益獲得や企業の適切な経営、売上目標設定や金融機関・株主とのコミュニケーションなど、さまざまな場面で役立つ重要な要素です。

精度の高い売上予測には、正確かつ客観的で透明性のあるデータと、企業規模や創業年数に適した算出方法の選択が欠かせません。また、売上予測の認識や情報を組織内で統一・共有すること、必要に応じてITツールを活用することも、予測の精度向上につながります。

サイカでは、全体的な売上予測を行えるMMMプロダクト「MAGELLAN(マゼラン)」を提供しています。大手企業を含め250社以上が導入しており、自社の営業活動やマーケティング活動による売上予測が可能です。

加えて、天気や競合の動向といった外部要因による影響をシミュレートできる点も、MAGELLANの強みです。売上予測ができるITツールの導入をお考えの方は、ぜひご相談ください。

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