デモグラフィックとは?マーケティングに不可欠な「属性データ」の基本と活用法

コラム
マーケティング

「デモグラフィック(Demographic)」という言葉は、マーケティングの現場で頻繁に使われる用語のひとつです。しかし、その定義や具体的な活用方法について、意外とあいまいなまま使われていることも少なくありません。

本記事では、「デモグラフィックとは何か?」という基本から、マーケティングにおける具体的な活用法、そして注意すべき限界や最近のトレンドまで、戦略視点でわかりやすく解説します。

デモグラフィックとは?基本の定義

デモグラフィックとは、日本語で「人口統計学的属性」や「人口属性」と訳され、以下のような人々の基本的な特性を指します。

  • 年齢
  • 性別
  • 居住地(地域、都市/地方など)
  • 世帯構成(単身/家族など)
  • 学歴
  • 職業
  • 年収
  • 婚姻状況

これらは比較的安定しており、外部から把握しやすい情報であるため、マーケティングにおいてターゲット設定や市場セグメンテーションに広く用いられてきました。

なぜデモグラフィックがマーケティングで重要なのか?

マーケティングの本質は「適切な相手に、適切なメッセージを、適切なタイミングで届けること」です。そのためには、誰に届けるか=ターゲットの輪郭を明確にする必要があります。

この「誰」にあたる情報を構造的に捉えるのが、デモグラフィックです。

たとえば

  • 新卒就活生向けサービスなら、「22歳前後」「大学4年生」「都市部在住」などの属性が重要。
  • 高級外車の広告なら、「40代以上」「年収1000万円以上」「経営者/役職者」といった属性がターゲットになる。

このように、デモグラフィックはターゲット像を「誰でもわかる形」で定義できる点に強みがあります。

デモグラフィックの活用例について

デモグラフィックはマーケティングにおいて、顧客ターゲットを決定したり、商品の価格やプロモーション、新規出店の可否判断など様々な場面で用いられます。 例えば以下のような活用方法があります。

既存顧客をデモグラフィック(年齢、性別、年収帯等)によってセグメンテーションし、自社の商品をよく買ってくれる客層(ターゲット)を割り出した上で、ターゲットを決定する。

ターゲットとなるデモグラフィックを20代女性にしたので、20代女性に受けそうなプロモーション方法を考える。
新規出店の際に、自社のユーザー層である性別・年齢の人口が商圏内にどの程度存在するのかを統計データを元に調査し、出店の可否判断を行う。

ただし、価値観やライフスタイルなどが多様化している現代においては、デモグラフィックだけを分析してターゲットを決定することは困難です。

デモグラフィック以外のターゲティングの切り口

オーソドックスなデモグラフィック以外のセグメンテーションの方法としては、ジオグラフィック、サイコグラフィック、ビヘイビアルという3つの方法があります。 ジオグラフィックは、地域の人口や気候、文化などの地理的な属性に着目したセグメンテーション手法です。

サイコグラフィックは、個人のライフスタイルや価値観などその人の心理的な属性を着目したセグメンテーション手法です。 ビヘイビアルは、来店回数や購入した商品、買い上げ単価など購買に関連する行動に着目したセグメンテーション手法です。

実際にマーケティングを行う際にはこれらのセグメンテーションから複数のセグメンテーションを組み合わせてターゲットとなる顧客像を明確にしていきます。

デモグラフィックの特徴

デモグラフィックの特徴として挙げられるのが他のセグメンテーション手法と比較してデータを入手しやすいということです。デモグラフィックはアンケートやヒアリングでも比較的聞きやすい項目ですし、政府や研究機関が統計情報を定期的に調査していることが多いので情報の取得が容易です。

デモグラフィックと比較すると、サイコグラフィックは個人の内面に大きく関わるので聞き方も難しければ、既存の調査データを探すのも困難です。

また、ジオグラフィックは地域の属性に関する統計なので人間に焦点を当てた分析には活用しにくいと考えられます。ビヘイビアルは既に接触したターゲットに対する分析なので、新商品開発や認知拡大の為の広報活動のターゲティングのためには用いにくいと考えられます。

デモグラフィックと他のターゲティング手法の違い

デモグラフィックは、ターゲティングの一つの軸であり、以下のような他のアプローチと組み合わせることで、より精緻なマーケティングが可能になります。

手法特徴
デモグラフィック年齢・性別などの「基本的な属性」
サイコグラフィック価値観・ライフスタイル・志向性
ビヘイビオラル購買履歴・Web行動・アプリ利用状況など
ファームグラフィック法人の規模・業種・所在地など(BtoB向け)

近年では、デモグラフィックだけでは説明しきれない購買行動の多様化が進んでおり、「○○だから××する」という単純な相関が崩れてきています。

たとえば、同じ「30代女性・都心在住」でも、子育て中の主婦と、独身の管理職では、生活パターンも消費行動もまったく異なります。

デモグラフィックの主な活用シーン

1. マーケティング戦略の設計

市場セグメントごとのニーズを理解し、ターゲットを絞り込む際の出発点として用いられます。

2. メディアプランニング

テレビ・新聞・デジタル広告などの媒体選定において、「40代男性の視聴率が高いメディア」といった判断材料になります。

3. クリエイティブ開発

訴求軸やビジュアルを設計する際に、「30代女性に刺さるトンマナとは?」といった問いのヒントになります。

4. MMMへの入力変数

MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)では、広告の成果を評価する際に、商材やターゲットに紐づくデモグラフィック変数が重要な役割を果たすケースもあります。

ジオデモグラフィクスについて

小規模な店舗の広報や新規出店の商圏調査などの際にはエリアマーケティングを行う必要があります。エリアマーケティングを行う際によく使用されるのがジオデモグラフィクスという手法です。

ジオデモグラフィクスとは、地図を表すジオグラフィとデモグラフィックを掛け合わせた用語で、デモグラフィックデータを細かく分解して地図上に反映させたデータを指します。

ジオデモグラフィクスを使用することによってマーケティング調査を円滑に行えるようになります。 例えば新規出店を行う際に、出店予定地をプロットしてそこから徒歩で20分の商圏を地図上で調べてジオデモグラフィクスによって商圏範囲内の人口や年齢層などを調べて出店の可否判断を行うという活用方法があります。

ちなみにセグメンテーションの所で説明したジオグラフィックとジオデモグラフィクスが関係ないことには注意してください。

デモグラフィックターゲティング広告について

デモグラフィックはウェブ広告でも使用されます。特定のデモグラフィックに対してのみ表示する広告のことをデモグラフィックターゲティング広告と呼びます。典型的なのはSNSに用いるデモグラフィックターゲティング広告です。

SNSに登録されたデモグラフィックをもとに、広告配信者が設定した対象となるデモグラフィックを持ったターゲットのみに広告を表示します。

リスティング広告でもデモグラフィックによってターゲットを設定することが可能です。ただし、検索エンジンのデモグラフィックはSNSのように入力されたデモグラフィックデータに基づいているわけではありません。

検索キーワードなどからデモグラフィックを推測しているだけなので、必ずしもターゲットにしているデモグラフィックだけに広告を配信しているとは限りません。

デモグラフィックの限界

デモグラフィックはシンプルで扱いやすい一方で、以下のような限界もあります。

  • 個人の「内面」まではわからない
     価値観やモチベーションなど、購買の真因は他の要因によることが多い
  • 生活の多様化への対応が難しい
     同じ属性でも行動や嗜好が大きく異なる現代では、属性情報だけでは不十分
  • プライバシー保護の観点から取得が難化
     クッキー規制や個人情報保護の強化により、従来の属性データ活用にも制限がかかってきています

そのため現在では、「デモグラフィック×ビヘイビオラル」「デモグラフィック×サイコグラフィック」といった多層的なセグメンテーションが主流になりつつあります。

また、サイカが推進するようなMMMやCMM(コンシューマー・ミックス・モデリング)などのモデリング手法では、複数の変数を統合的に扱うことで、より実態に即した施策評価と予測を実現しています。

属性データを“戦略的に活かす”新しいアプローチ

前章でご紹介したように、デモグラフィックはマーケティングにおける出発点の一つです。しかし現代のマーケティング環境では、「属性が似ている=同じように行動する」とは限りません。

そこで注目されているのが、CMMというアプローチです。CMMとは、顧客セグメントごとにマーケティングの消費者行動における効果を分析・モデリングし、「どの顧客グループに、何が効いたのか?」を解明する方法です。具体的には、消費者の意識データ(アンケート調査のデータ)を基に、消費者のブランド選択のメカニズムを統計的に分析します。

MMMとCMMの違いと連携

MMMは、マーケティング投資の「どこで、どれぐらい」定量的な要素を把握するのに優れています。一方、CMMは「だれに、なにを」のより質的な要素を明らかにするアプローチです。

項目CMM(コンシューマー・ミックス・モデリング)MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)
必要な
データ
アンケート調査などで得られる消費者意識データ売上や広告投資などの過去の実績データ
分析の
目的
消費者行動の理解と、ブランド選択を促進する戦略の策定・最適化マーケティング施策の効果可視化と、投資の最適化
予測の対象消費者意識データから「将来の消費者行動」を予測過去の実績データから「将来の事業成果(売上など)」を予測

CMMとMMMは、それぞれ異なる視点とデータを用いて分析を行うため、企業はこれらの手法を適切に組み合わせることで、より精度高くマーケティングを行うことが可能となります。

サイカでは、MMMとCMMを組み合わせた統合的な分析フレームを通じて、マーケティングの意思決定を「直感」から「科学」へと進化させる支援を行っています。デモグラフィックを起点とした戦略設計にお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください

まとめ

以上のようにデモグラフィックについて説明してきました。

マーケティングを行う際にはターゲティングがとても重要ですが、デモグラフィックは個人の社会的属性に着目する最もオーソドックスな顧客セグメンテーションの1つです。

ただし、消費者ニーズが多様化しているので、デモグラフィックだけではなく消費者のライフスタイルや購買行動など他のセグメンテーション手法も活用してターゲット像を決定した方が良いでしょう。

その他のマーケティング用語説明

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