テレビCMの「ブランド蓄積効果」はどのくらいあるのか?~統計分析で広告効果の核心に迫る~

コラム
マーケティング広告

コロナ禍で、企業のマーケティング予算が削減される動きが多くの業界で見られています。短期的な利益確保に注力する中で、予算の多くを占めるテレビCMなどのブランディング広告を継続できない企業も多くあります。

本来、ブランディング広告は短期的な売上向上に貢献しつつ、中長期の売上成長に向けてブランド力を蓄積する重要な役割を担っています。しかし多くの企業では、この中長期的効果を把握できないため、ブランディング広告の実施を諦めざるを得ないというジレンマを抱えています。

今回はブランディング広告の代表例としてのテレビCMを取り上げ、その「ブランド蓄積効果」が一体どのくらいあるのか、MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)を用いて明らかにした分析結果をご紹介します。

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ブランド・エクイティを定量的に把握する方法:
“MMM×ブランド蓄積効果”の可視化

テレビCMの「ブランド蓄積効果」は、どのくらい大きいのか?

株式会社サイカでは、2021年にフジテレビジョンとの共同で、テレビCMの広告効果に関する研究※1を実施しました。調査に用いたのはMMMツールMAGELLAN(マゼラン)と、国内約250のマーケティング事例から抽出された統計データです。

この研究から、波及効果や残存効果など、テレビCMが持つ様々な効果の大きさが明らかとなりました。中でも「ブランド蓄積効果」に関しては下記のような発見を得られました。

– テレビCMは、購買やコンバージョンといった成果を、出稿後も中長期に渡って生み出し続ける「ブランド蓄積効果」を持つ

– 出稿してから短期で得られた成果(残存効果含む)を100%としたとき、ある耐久消費財ブランドのケースでは、その後の47ヶ月間をかけてテレビCMが更に+65%の成果を生み出していた

– ある日用消費財ブランドのケースでは、18ヶ月間をかけて+70%の成果を生み出していた

共同研究レポートの詳細

またブランド蓄積効果は、テレビCMを継続的に出稿する中で、文字通り過去から少しずつ「蓄積」されていくということもわかっています。言うなれば、ブランド蓄積効果は中長期に渡って売上を下支えする役割を果たし、更には継続的なテレビCMの実施により徐々に売上のベースラインを押し上げていくと考えられるのです。

テレビCMの「ブランド蓄積効果」は、どのくらい大きいのか?

テレビCMのブランド蓄積効果を定量化するMMMとは?

ブランド蓄積効果を含むテレビCMの効果をどのように分析しているのか、気になる方もいらっしゃるかと思います。ここで、MMMの分析手法を簡単にご紹介します。

MMMツールのMAGELLANでは、重回帰分析の一種である「パス解析」という統計的手法を用います。これにより、成果に影響を与える各変数(各広告の出稿量、外部要因等)と成果量(販売数、WEBコンバージョン数等)の関係性(=相関)を数値化します。

テレビCMのブランド蓄積効果を定量化するMMMとは?

この際、広告の短期的効果と中長期的効果を切り分けて考えることが重要です。広告には、出稿直後の数日間における問い合わせの増加といった短期的効果(波及効果・残存効果を含む)のみならず、数ヶ月・数年以上に渡りブランド力向上に寄与する中長期的効果もあると考えられます。

短期的効果は出稿直後から著しく減衰していきますが、中長期的効果は広告を継続的に出稿する中で少しづつ蓄積されていきます。MAGELLANでは、その蓄積の波形をモデル化し、実際の成果量や各変数との整合性を取りながら数値化します。これにより、ブランド蓄積効果を定量化することができるのです。

テレビCMのブランド蓄積効果を分析するメリットとは?

ここまでテレビCMのブランド蓄積効果の大きさと分析手法について見てきました。ここで、テレビCMのブランド蓄積効果を分析するメリットについてあらためて考えたいと思います。

最大のメリットは、企業が中長期の売上成長を見据えてマーケティング戦略を立案・実行する上での根拠を得られるという点です。

ここで、実際の事例をご紹介します。

テレビCMの出稿拡大の根拠を見出した事例/DtoCブランド

あるDtoCブランドのマーケティング責任者は、「中長期のブランド成長に必要なアクションについて社内の承認を得られない」という課題を抱えていました。

[背景]
従来この企業は、テレビCMを含む大型プロモーションを年に1度実施していました。テレビCMは短期的な販売促進を目的としたもので、効果測定も短期的効果の確認を主としてきました。

しかし、コロナ禍でDtoC市場の競争が激化するなか、他社との差別化を図るためにも、中長期先を見据えてブランド力を高めていく努力がより必要となってきました。

その具体的なアクションとして、テレビCMの継続出稿が有効だという仮説に至りました。

[課題]
このアクションプランの社内承認を得るために、テレビCMがブランド力に与える中長期的効果を、売上ベースで示す必要がありました。しかし、それを示す数値的根拠が無く、説明ができないという課題に直面しました。

[対策]
MMMツールのMAGELLANを用いて、テレビCMを始めとした各マーケティング施策の、過去数年から現在に渡る売上貢献度を可視化しました。分析の論点の1つが、テレビCMがブランドの売上に与える中長期的効果の可視化です。

分析の結果、2つの事実を定量的に示すことができました。

1つは、テレビCMには出稿直後の数ヶ月で得られる「短期的効果」だけではなく、その後も中長期に渡って継続して得られる「ブランド蓄積効果」が大きいという点です。過去に実施したテレビCMの成果のうち、約40%がブランド蓄積効果によるものだとわかりました。

もう1つは、テレビCMの出稿を継続することで、このブランド蓄積効果が時間の経過と共に累積していくという点です。すなわち、売上を下支えするベースラインが積み上がる状態を可視化することができたのです。

この2つの事実により、テレビCMを中長期の視点で運用・効果測定していく重要性が社内で認識されるようになりました。また、ブランド蓄積効果の可視化により、テレビCMを大型プロモーション期間以外にも継続的に実施するための上申材料を得ることができました。

ブランド蓄積効果の可視化で、中長期先を見据えたより戦略的なマーケティングを

今回は、MMMで明らかとなったテレビCMのブランド蓄積効果の大きさと、分析のメリット、分析を実践した事例を見てきました。

ブランド蓄積効果を可視化することで、テレビCMを始めとするブランディング広告を中長期的な視点のもとに再評価することが可能です。また、ブランド蓄積効果を把握し、運用・拡大していく意識を持つことで、企業は中長期先を見据えたより戦略的なマーケティングを実行できるでしょう。

ブランド蓄積効果を含めたテレビCMの効果測定には、データサイエンスを用いて高度な分析を実現するMMMツールが最適です。MMMであれば、Cookieでは測定困難なオフライン広告を起点として発生した購買やコンバージョンを定量化できます。

MAGELLANは、あらゆる広告の効果と効率性を測定できる国内No.1のMMMツールです。またMAGELLANでは、テレビCMを始めとするブランディング広告が中長期の事業成果に与える影響を可視化・予測する「ブランド・エクイティ分析」が可能です。

※1)Fuji Television Network, Inc. (2021). TVCM DATA Analysis 「テレビCMの本当の広告効果を可視化する」

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