劣等感が成長の原動力──異色の経歴を持つコンサルタントに聞く、3倍速成長のマインドセット

About XICA

2024年8月にローンチしたサイカの新ソリューション「XICA COMPASS(以降、COMPASS)」。立ち上げに奮闘してきたのが、事業本部の副本部長を務める西川祐介だ。これまでサイカの事業を支えてきたMMM(マーケティング・ミックス・モデリング)ソリューション「XICA MAGELLAN」と双璧をなす新たな柱として、COMPASSはすでに10社近くの大手クライアントに導入いただいている。

西川がサイカに入社したのは2024年1月。入社まもなく、COMPASSの立ち上げに関わり始めると同時に、事業変化に合わせた組織の再編成も担う。

アクセンチュアで大手企業の新規事業立ち上げや戦略支援に邁進してきた西川だが、サイカ入社後は、現場に転がる地道で泥臭いタスクにも真摯に向き合い、手を動かす。そんな西川のルーツはどこにあるのだろうか。そして、なぜこのタイミングでサイカに飛び込むことを決めたのか。西川のこれまでのキャリアと今後の構想を聞いた。

西川 祐介 Yusuke Nishikawa
西川 祐介 Yusuke Nishikawa
株式会社サイカ 事業本部 副本部長

広告会社・事業会社等を経て、2012年に株式会社アイ・エム・ジェイに入社。データドリブンマーケティングを軸にした支援でシニアコンサルタント・事業部長を経験。その後​アクセンチュア株式会社へ転籍し、シニアマネージャーとして従事。コンサルティング11年、マーケティングとしては約20年のキャリアを重ね、マーケティング / デジタル / CX領域における戦略立案〜PDCA実行をコア領域とする。新規事業開発、事業戦略、組織変革などのハンズオン支援を複数社経験するなかで「事業はマネジメントと意思決定が悪ければ成長しない」「表面的ではない事業をグロースさせるコンサルティングがしたい」という想いを強く感じるように。その後、自社事業グロースとコンサルティングのアップデートの両輪を志向して2024年1月にサイカに入社。同年7月、事業本部 副本部長に就任。

「劣等感」がモチベーションの源泉

── 学生時代、西川さんが熱心に学んでいたことはありますか?

西川: 高校受験までは普通に勉強していたんですが、高校に入った途端「勉強って無意味だ」と思ってしまって(笑)。勉強をやめて音楽に熱中していきました。音楽理論を学びながら、毎日10時間ギターを練習し、大学ではビッグバンドジャズのコンサートマスターもやっていました。

25歳くらいまでは音楽漬けでしたね。大学卒業後も、楽器屋で働きながらプロのジャズギタリストに付いて演奏などをしていたんです。でも、「明日からお前プロになれ」と言われて逆に焦り、我に返りました(笑)

── 音楽をルーツに、楽器販売からキャリアをスタートしたんですね。

商品の仕入れ、イベント企画、電話営業まで色々やりました。販促の一環で、商品にPOP広告をつけてみると、無名ブランドなのに売れるんです。「販売促進って面白い!」と感じたのが、今に繋がるきっかけの一つかもしれません。

── そこから広告業界へ?

はい。小さな広告会社の営業です。飛び込み営業やテレアポで広告枠を売りつつ、印刷物などの制作ディレクションにも関わりました。

だんだん広告の制作側に興味が湧いてきて、100名規模の広告制作会社にプランナーとして転職します。デザイン制作、コミュニケーションプランニング、WEB設計などを幅広く担当し、クライアントワーク、PMワーク、紙媒体、デジタルと一通り経験させてもらいました。

── 少しづつ領域が広がっていますね。

いわゆる「Connecting the dots」の考え方のように、狙ってそうしてきたわけではなく、後から思い返すと点と点が繋がったという話かもしれません。

14歳から25歳くらいまでギターしか弾いてこなかったので、「人より10年遅れている」という強烈な焦りがありました。人の3倍量、3倍速で成長しなければ追いつけない。でもどうしようと途方に暮れていたときに発見したのが、自分の成長の枠組みでした。

音楽も仕事も「要素分解」→「構造把握」→「再構築・再現」→「素材として蓄積」→「アウトプット」の構造で捉えていることに気が付いたんです。自分の得意なこの枠組みを使って、要素分解からアウトプットを繰り返せば、急角度での成長を目指せると思いました。

周回遅れの「劣等感」をモチベーションの源泉に、販促、広告制作、プランニングを経験した次はマーケティング全体を組み立てられるようになりたい。そう思っていました。

7ヶ月アウトプットが出ない──初めて知った事業立ち上げの苦しさ

西川 祐介 Yusuke Nishikawa

── そこからIMJに転職されますね。

プランナー職での入社だったのですが、入社後すぐ新規事業の立ち上げにアサインされました。顧客調査や競合調査、企画検討を一通りやって、毎日ちゃんと仕事している。なのに、7ヶ月経っても実態としてのアウトプットが何も出ない。新規事業の立ち上げはこうも難しいのかと実感しました。

でも、親会社の人が入ってきた瞬間、急にプロジェクトが動き始めたんです。その経験を経て、事業というものをちゃんと学びたいと思うようになりました。2年ほどその事業に関わる中で、マーケティングの組み立てや運用、KPI設計、PDCAの回し方を学び、その後MBAも取りました。

当時は、スマホが現れ、デジタルマーケティングという言葉が生まれるマーケティングの急拡大期。デジタルマーケティングのコンサルにも一定のニーズがありましたが、本来マーケティングは事業や戦略の中の一つの手段。デジタルマーケティングはさらにその一部です。

その構造を理解した上で、「ビジネスインパクトを踏まえたコンサルティングができる人」と「デジタルマーケティングの機能コンサルティングをする人 」に分かれてきていると感じていました。

── そのタイミングでIMJがアクセンチュアの傘下に入りますね。

はい。アクセンチュアは、IMJの仕事よりも格段に幅が広く、当時の自分がやりたいと考えていた事業レベル・経営レベルでの支援の仕事にあふれていて、自分も大手企業の事業戦略や組織変革の仕事に関わる機会に恵まれました。

当時のアクセンチュアは、戦略を描くのは得意だけれど、 エグゼキューションは他社に依頼するしかないという課題感のもと、IMJを買収したという背景があります。IMJがマーケティングやデジタルのエグゼキューションに強みを持っていたからです。人材面でも戦略とエグゼキューションの両方ができる人が少ない状況で、自分は両者を繋ぎ、歪(ひず)みを埋められるポジションにいると思いました。

── 歪みを埋めるために具体的にどんなことをしたのでしょうか?

プロジェクトの中でテーマ設定をしていました。

例えば、2年半くらい関わった食品会社のDtoC事業立ち上げの話です。ゴールは、新規事業を立ち上げること。ただ、お客様自身はもちろん、元々のアクセンチュアメンバーも、戦略策定の後にどう実行・運用すればよいのかわからない状況でした。

そこで、中期経営計画から繋げたプロジェクトを、新規事業戦略や組織設計などに留めず、ブランド戦略・マーケティング設計・ローンチ後のオペレーション設計・PDCAサイクル構築とグロースに向けた運用・外部ベンダーディレクションまで、一貫して事業リードとして立ち回りました。戦略と現場を繋ぎ、運用を回し続けるまでをプロジェクトに組み込んだんです。

── サイカでも新規ソリューションの立ち上げに関わっていますが、COMPASSのローンチもスムーズだったように思います。

これまでの経験から学んだ「失敗するポイント」の排除を意識していたからだと思います。

── 「失敗するポイント」とは?

サービスのローンチまでは、細かい意思決定の積み上げです。チーム体制、メンバーの関わり方、旗振り役、それらの意思決定を間違えないよう意識していました。

大きい船を動かすのは大変ですが、小さい船なら動かしやすいので、まずはなるべく小さな船にします。ちゃんと自分ゴト化して自身で手を動かせる人たちを、役割分担しながら乗組員として置き、最終的なヘッドは誰も反対しない社長に依頼する。そして、失敗を許容して改善を繰り返しながら、徐々に共有と巻き込みの輪を広げ、うねりを少しずつ大きくしていく。こうした航路を描き、必要なステップと時間軸を決め、あとは愚直にやっていくだけです。

小さな組織にケイパビリティが集結するサイカ

西川 祐介 Yusuke Nishikawa

── アクセンチュアからサイカに転職することになったきっかけを教えてください。

IMJとアクセンチュアで過ごした11年の中で、新規事業立ち上げ、事業戦略や組織変革、マーケティングPDCAとさまざまな支援をさせていただきましたが、最終的に自分は事業責任者ではないんです。意思決定やマネジメントは、クライアントの判断に委ねるしかありません。マネジメントがダメだと、現場浸透もコミットも甘く、さらにモチベーションも低下しがちで、戦略の実行が大きくブレる。結果、事業が成長しないそんな事態を目の当たりにしました。

さらに、コンサルティング会社としては、事業やマネジメントがどうであれ、プロジェクト単価を大きくするために意識的にSI(System Integration)やBPO(Busuiness Process Outsourcing)に発展するようなアジェンダをクライアントに投げ続けなければいけません。

事業にちゃんと向き合える場所を求め、事業会社への転職を考え始めました。

── 事業会社も、規模やフェーズがさまざまある中で、なぜサイカだったのでしょうか?

新規事業の立ち上げを何度か経験する中で、自分がパフォーマンスを最も高く出せるのが1〜3のフェーズだと感じていました。サイカは、目指すビジョンやドメインは魅力的ながら、これからアップデートできる余地もまだ大きい事業フェーズだと思ったんです。

さらに、大企業だと戦略・オペレーション・組織づくり・マーケティングが分業になっている場合が多いですが、サイカの規模感だったら、手触り感を持てる範囲でそれらを総合的に描けるのもポイントでした。

── 入社してからの印象はいかがですか?

サイカはこれまで、「広告効果の可視化」にフォーカスしたSaaS企業でしたが、それだとどうしてもパーツの提供にとどまってしまいます。

なので最近は、自分たちのことを「データドリブンな意思決定を支援する会社」としてアップデートすべく、ソリューションや組織の引き上げを進めています。データサイエンスというサイカの資産を使って次のアクションを導き出す。このサイクルを回すことで正しい意思決定を促す。最終的にはクライアントの成果向上、そして喜びに繋げられる会社だと考えています。

データサイエンスをビジネスに繋げて価値提供しようとしている点、さらにそれを小さな組織でやっている点も強みです。

xica_capability

── 小さな組織ゆえの強みというのは?

チームでドライブし始めるスピードが早いところですね。大手コンサルだと、各領域にそれぞれ何百人、何千人のメンバーが分かれて所属しているのでチームが一つになるまでに時間がかかります。一方サイカは、お互いの強みがすでにわかっているので、すぐプロジェクトに取りかかれます。

── 一方で、課題を感じる部分もありますか?

マーケティングの意思決定をより良いものにするためには、クライアント組織の力学と事業状況を把握し、適切なやり方で導いていく必要があると思っています。まさに、データサイエンスとコンサルティングの組み合わせで、ビジネスにインパクトを与える部分の強化です。

そのために、クライアントのマーケティング施策でなく、マーケティング組織そのもののアップデートと事業成長、そしてサイカメンバーの成長を最終的な目標に置きたいですね。受注金額やリテンションはそれらを達成した結果として得られるものだと考えています。

「マーケティングをアップデートしたい」という思いは同じなので、その思いを中心に、より融合した組織にしていきたいと思っています。

これからのマーケターのキャリア形成

西川 祐介 Yusuke Nishikawa

── マーケターとしてのキャリア形成についてはどう考えていますか?

打ち手や手法が常に変化し続けるマーケティングの世界ですが、マーケティングの基本ロジック自体は大きく変わらないところもあります。変化するもの・しないものを理解し、自分なりの課題解決ができるようになる必要があると思います。

さらに、周辺にあるビジネス理解があったうえで事業インパクトが語れるか否かも、求められるマーケターになれるかどうかの分かれ目です。優秀なマーケターは、クライアントの事業・組織・オペレーション・文化までを見据えた上で、戦略や実行案を提示します。

マーケティングコミュニケーションやデジタルマーケティング、分析が分かっているというだけでは、限られた手段での支援しかできず、マーケティングの4Pを司るブランドマネージャーや事業責任者、CMOが持つ問題の解決には届きません。

これはセンスの問題ではなく、「自分はいま何を解決しているのか」というマインドセットの問題です。マインドセット×経験学習で、成長のPDCAサイクルをまわし続ければ到達できるはずです。

成長とは、変化すること

西川 祐介 Yusuke Nishikawa

── 発展のさなかにあるサイカですが、どんな人が活躍できる場所だと思いますか?

「変化を楽しめる」人だと思います。成長とは、変化することです。

自分も思うところがありますが、年齢を重ねると自分を守り始める傾向があります。無駄なことはやりたくないとか、自分のやることではないとか……。守りに入らず、枠を飛び越え、事業成長や変化のなかで生じるさまざまな「歪み」に、高い視座をもって橋渡しができる人は活躍できるはずです。

コンサルティングは人の商売なので、嫌われないことも大事です。コミュニケーションのバランスをコントロールできる方はクライアントの信頼を得やすいと思いますね。具体的には、傾聴、共感、そして空気を読む力(状況把握能力)です。論理的思考力はもちろん必要なのですが、それだけではうまくいかなくて、相手や状況によって話し方や話す内容を柔軟に変えられるような頭の柔らかい人が活躍できると思います。

今のサイカは、第二創業期にあります。新ソリューションの「COMPASS」はもちろんのこと、既存ソリューションの再活性も進めていて、それを起点に組織も変わりつつあります。ここ数年の社員数増加にともない、良くも悪くも効率よく勝つことを目指した型化や部分最適が起きていました。ですが最近は、顧客目線で最適解を目指す、部署横断チームでの動きが活発化しています。

事業の再成長に向けて大幅なアップデートをしている状況だからこそ、「自分で事業を作りたい」「組織を大きくしたい」と考えている方にはまたとない環境です。もちろん大変さはありますが、レイターステージのスタートアップ企業ということで一定整った仕事環境やワークスタイルの中で、大きなチャレンジができます。

僕自身、総合コンサルからスタートアップという一見不安定に思えるキャリア選択でも、それ以上に価値のある経験が得られると思ってサイカに来ました。まさにやりたかったことができているので、同じようにワクワクを感じてくれる人がいたら一緒に働けると嬉しいですね。

西川 祐介 Yusuke Nishikawa

この記事を読んだ方におすすめの記事