KDDI株式会社

KDDIとサイカのデータドリブン・マーケティングの取り組みは、2019年から始まりました。通信業界において多岐にわたるサービスを展開するKDDIは、複雑な顧客獲得プロセスにおいて、成果を最大化するためのコミュニケーション最適化を目的に、サイカのMMM(マーケティング・ミックス・モデリング)を活用しています。

導入から5年が経ったいま、KDDIのMMM活用は非常に発展しており、月次分析による高頻度なPDCAサイクルを実現しています※1。2021年から分析を開始したUQ mobileでは、月次のマーケティング投資最適化により、契約者一人あたりに投じるコミュニケーション費用を、最適化前と比較して約2割削減するなどの顕著な成果を上げました※2。

本事例では、KDDIがサイカと取り組んでいるデータドリブンなマーケティング最適化方法について、UQ mobileにおけるプロジェクトを中心に紹介します。

※1 2024年8月現在
※2 2023年度実績

競合ひしめく市場における勝ち筋は、“データドリブン”と“スピード”

携帯電話・スマートフォンなどの通信サービスの市場は競合の参入も多く、機能面での差別化の難しさから、価格競争に陥りやすいという特徴があります。そのため、コミュニケーションによる差別化が重要であり、そのためにもクリエイティブとメディアの最適化が求められています。

また、近年の特徴的なのは顧客における携帯キャリアへの意識が薄まっているという変化です。キャリアに対する興味関心がなく、どのキャリアでも構わないという人が増えてきているのです。ストック型ビジネスモデルであるため、購買行動期に入っている顧客は市場の約2割程度であるということがKDDIの自主調査でわかっています。

KDDIでは購買行動期に入っていない市場の約8割を占める消費者(以下、日常期と表現)に向けて、日常期の段階からKDDIが提供する通信ブランド(au, UQ mobile, povo)へのイメージを持ってもらい、乗換先を検討する際にKDDIを一番に想起してもらうことを目指し、ターゲットに合わせた施策の展開を図っています。

そして、これらのマーケティング活動の成果を最大化させるためにKDDIが重要視しているのが、データドリブンな意思決定と分析サイクルのスピードです。

UQ mobileをはじめKDDIの各サービスにおける顧客が加入や成約に至るまでのプロセスは非常に複雑で、多数の要因が絡み合っているのが特徴です。これらの影響を正しく捉えながらより適切な意思決定をするために、KDDIでは大量のデータをもとにこの影響を可視化しています。これがMMM活用の主な目的です。

そして、KDDIにおけるMMM活用の特徴の一つは、月次でこの分析を回しているという点です。KDDIでは主にオンラインメディアのクリエイティブや予算の最適化にMMMを活用しており、月次の運用サイクルに合わせて分析を行っています。

通信サービスの市場環境

通信サービスの市場環境

データに基づいたマーケティング意思決定の実現

前述のとおり、KDDIでは月次でマーケティング投資の最適化を継続した結果、契約者一人あたりに投じるコミュニケーション費用を、最適化前と比較して約2割削減するという成果を上げています。ここからはKDDIがどのようにデータに基づく意思決定をしているのかを紹介します。

KDDIがMMM活用で目指しているのは下記の4つです。

  • マーケティング施策の効果を正確に測定・可視化する
  • 施策ー消費者意識ー成果の関係性を明らかにする
  • 各ターゲットに対する最適なアプローチを特定する
  • マーケティング予算の効率的な配分を実現する

この目的を達成するために構築されたモデルが、KDDIのMMMの大きな特徴となっています。

KDDIの分析モデルの特徴

  • 消費者の意識指標をモデルに組み込み、「施策 → 意識 → 成果」の構造を解明
  • 目標とする意識指標をユーザー導線に合わせて設定
  • 成果を複数に分け、ターゲット毎に有効な施策を明確化

KDDIでは週次で消費者の意識調査を行っていることから、その調査結果をMMMの変数に組み込むことが可能となっています。成果に対して影響が大きいと想定される意識指標をユーザー導線に合わせてモデルに組み込み、どの意識指標を上げれば成果が最大化するのか、またその意識指標を上げるにはどの施策を強化すればよいのかを分析できるようにしているのです。これにより、施策の投下量や予算配分だけでなく、どのような意識指標を伸ばすべきかという質の面も最適化を図ることができます。

UQ mobileの販売チャネルは店舗などのリアルチャネルだけでなく、オンラインチャネルもあります。MMMの目的変数となる成果を複数のパターンに分けることで、それぞれの成果を上げるにはどの施策が有効なのかがわかるようにしています。

KDDIではMMMの分析モデルに消費者の意識指標を組み込んでいる

KDDIではMMMの分析モデルに消費者の意識指標を組み込んでいる

月次運用の実現

KDDIのMMM活用のもう一つの特徴は、月次で分析し最適化を図るというPDCAサイクルの速さです。月次の分析サイクルが必要な理由は、KDDIにおけるマーケティング投資の最適化がオンラインメディアを中心としていることに加え、新規トライ施策を織り交ぜながらPDCAサイクルを実現していることにあります。

もちろん、テレビCMを中心としたオフラインメディア効果も含めた最適化を行っていますが、よりクイックな評価が求められるオンラインメディアを軸にMMMを活用してマーケティングの効率向上を図っています。

成果を上げるための最適化サイクル

成果を上げるための最適化サイクル

KDDIで実行している月次のMMM分析サイクル

KDDIで実行している月次のMMM分析サイクル

月次でMMMを回す上では、分析だけでなくデータ収集にかかるスピードも重要です。KDDIでは、自社や競合他社に関するマーケティングデータを、社内外から収集・統合し、分析用データの成形と分析不使用データも含めた可視化環境を構築し、データ活用のスピードを担保しています。この時にポイントとなるは下記の2点です。

  • ブフォーマットや粒度の異なる様々なデータを収集し、分析用データに統合すること
  • 分析担当者がワンストップで異常値および傾向変化を把握できるトラッキング環境を構築すること

下図のように、MMMの分析結果も常に可視化できる環境を構築しているのが特徴です。このようなデータ基盤の構築が、KDDIにおけるデータドリブン・マーケティングの要になっています。

KDDIのデータドリブン・マーケティングの要となるデータ基盤の構築方法

KDDIのデータドリブン・マーケティングの要となるデータ基盤の構築方法

組織を動かすために

戦略や戦術の徹底には組織の巻き込みが必要ですが、一般的に、組織が大きくなればなるほどその難易度は高くなります。馬場氏が指揮を執るコミュニケーションデザイン部では、広告運用プロジェクトを編成し、グループ横断でお互いの組織を理解しながら広告運用の全体最適化を図る取り組みをしています。これにより、よりスピード感のある運用が可能となるだけでなく、一気通貫したブランド・コミュニケーションの全体最適化が可能となっています。

また、組織を跨いだ社内連携においては、各施策の評価を共通指標で語れるという点でMMMの分析結果が非常に有用です。共通指標により施策を横並びで評価することで、施策ごとの部分最適ではなく、施策を統合した全体最適を図ることができるのです。

広告運用の全体最適化を図るプロジェク

広告運用の全体最適化を図るプロジェクト

マーケティングのさらなる最適化を目指して

上記のように、MMMを駆使してデータドリブンなマーケティング投資の最適化を図るKDDIでは、現在、新たに生成AIを活用したクリエイティブのさらなる最適化にも取り組んでいます※。

※こちらはサイカとのプロジェクトの内容ではありません

マーケティングにおいて重要となる、質(誰に・何を)と量(どこで・どのくらい)の両輪をデータドリブンに最適化することに挑んでいるKDDI。今後ますます進化を続けるKDDIの挑戦に、サイカは引き続き伴走していきます。

「サイカのMMMは、大量のデータから複雑なモデル化を行い、可視化できる点で非常に価値があります。またコンサルタントの支援により、分析~施策適用のスピード感を実現できており、現在では欠かせないパートナーとなっています。」
KDDI株式会社 馬場氏

株式会社丸亀製麺

丸亀製麺とサイカの取り組みは、ビジネスの勝率を高めるための“キードライバー”を解き明かす試みです。キードライバーを解き明かすことで、投資すべき先に対する考えがブレなくなり、意思決定のスピードが上がって、結果として事業の成長に繋がると南雲氏は考えています。同社では、もともと構築していたマーケティングモデルの解像度をさらに上げ、ビジネスを伸ばすキードライバーを明らかにする手段の一つとして、データサイエンスを活用しています。

サイカとのプロジェクトは、まずMMM(マーケティング・ミックス・モデリング)を活用して商品プロモーションとブランディングの最適投資配分を解明する取り組みから始まりました。約半年のプロジェクトを通して、投資配分の最適解が見えてきた後、次に着手したのが商品が売れた背景・メカニズムを明らかにする取り組みです。これは、顧客が行動(購買)するまでに影響する意識をデータで明らかにするアプローチです。

本記事では、取り組みの前提となる丸亀製麺におけるマーケティングの考えと、サイカとの取り組みについて紹介します。

丸亀製麺が実践する“KANDOドリブンマーケティング”

「顧客は集めるものではなくつくるものであり、“感動”こそが顧客を創造する源泉価値だと考えています。人は強く心が動かされるから(感動がある)こそ行動(購買)するのです」
(南雲氏)

南雲氏が語るこの考えのもと、丸亀製麺のすべての思考や行動は、“感動”を創造するために存在しています。同社のすべての戦略・戦術は「感動体験No.1」というビジョンの実現へつながるよう設計されています。そしてその源泉価値を、「一軒一軒が製麺所」「手づくり・できたてのおいしさ」「人の力」が織りなす感動体験と定義しています。これはマーケティング戦略だけでなく、商品戦略や営業戦略、DX戦略などすべてに当てはまることだそうです。

このように“感動”を意思決定の最優先事項とし、事業を持続的に成長させるためには、感性とデータの両立が必要だと南雲氏は考えています。データからは“感動”は創れない。感性だけでは確率が低い。そのため、両者を組み合わせてマーケティング戦略や戦術を組み立てていく取り組みを強化しています。これは丸亀製麺に息づく「二律両立」という考え方に基づいたトレードオンを目指す姿勢の表れでもあります。

※予測不能レベルの進化を遂げるために、「二律背反」しがちな要素を「二律両立」させるという考え

実際、丸亀製麺のマーケティングコミュニケーションでは、左脳・理性へのアプローチを通して選ばれる理由やパーセプションを、右脳・直感へのアプローチを通して選ばれる衝動をつくっています。

丸亀製麺が実践する“KANDOドリブンマーケティング”

丸亀製麺が実践する“KANDOドリブンマーケティング”

丸亀製麺が実践するハイブリッド戦略
――80%の売上はブランド力によって決まる

「当社はブランディングで右肩上がりのベースラインをつくり、フェア商品で衝動の山をつくるハイブリッド戦略をとっています。80%の売上はブランド力によって決まるものであり、ブランドに対する理解・好意度・共感が高まっている状態をつくることが最重要だと考えています。そのうえで1.5カ月ごとに年8回フェア商品を展開することで、食べたい衝動を最大化し、事業を持続的に成長させています」
(南雲氏)

南雲氏の説明の通り、同社ではブランディングとフェア商品のプロモーションを戦略的に組み合わせることで(ハイブリッド戦略)、右肩上がりのベースラインと定期的な衝動の山をつくっています。

丸亀製麺が実践する“KANDOドリブンマーケティング”

ブランディングとフェア商品プロモーションのハイブリッド戦略のイメージ図

また、短期的に見ると顧客体験価値(CX)の積み重ねがブランド力につながると考え、カスタマージャー二―に沿った顧客接点ごとに「どこでどういう価値を感じていただくか」を顧客体験に落とし実践しています。その蓄積を可視化して関係部署と共有し、一体感をもって取り組んでいくために、データサイエンスを活用したアジャイルな高速アクションを大切にしています。

これらを実現するための、サイカとのプロジェクトにおいて以下2つの取り組みを行っています。

<取り組み①> 商品プロモーションとブランディングの最適投資配分の解明:ブランド・エクイティ分析

  • ブランド・エクイティ分析とは?
    • MMMの応用による長期にわたるブランド蓄積効果を加味した分析。丸亀製麺における「ブランディングで右肩上がりのベースラインをつくり、フェア商品で衝動の山をつくるハイブリッド戦略」の効果を可視化する取り組み。
  • 分析の結果わかったこと
    • 商品プロモーションによる短期スパイクとブランディングの長期蓄積の相乗効果で、狙い通り右肩上がりの成長が築かれていたこと。さらに、ブランディングによって商品CMの効果が押し上げられたことも判明した。

「きっと正しいだろうと感覚でわかっていたことが数値として可視化されたため、意思決定しやすくなったほか、新商品の広告予算を決める際にも役立っています」
(南雲氏)

事業成果につながる“キードライバー”は何か
――MMM×KSF分析による新たなアプローチ

<取り組み②> 事業成果につながるブランド重要指標を検証し、感性をデータで測る:ブランドKSF(Key Success Factor)分析

  • ブランドKSF分析とは?
    • 持続的に業績が高まる背景・メカニズムを明らかにする取り組み。アンケート調査データを使用し、来店に対するブランドKSF(ブランド重要指標)を解明し、また、そのブランドKSFに影響を及ぼす因子を解明する。
  • 分析の結果わかったこと
    • リピート/新規いずれにおいてもブランドKSFとして最も重要なのは利用意向であること、また、最も利用意向につながっているのは「うどんがおいしい」という認識であるということがわかった。
    • その「うどんがおいしい」に直結するイメージとしては「安心して食べられる」と「他とは違う良さがある」が重視されており、丸亀製麺の源泉価値に近しい項目と相関関係があることもわかった。
丸亀製麺におけるKSF分析の概要

丸亀製麺におけるKSF分析の概要

社内外の関係者とのコミュニケーションがスムーズに

このように、ブランディングの効果やブランドの重要指標を定量的に示すことは、戦略や戦術の根拠となるだけでなく、策定した戦略・戦術を実行に移す際にも非常に有用だと南雲氏は語っています。戦略や戦術の方針を社内外の関係者に浸透させるには、感性に訴えることが効果的な場合もあればデータを用いて理性に訴えることが効果的な場合もあります。特に後者を必要とする場面において、戦略・戦術に対する理解を促進することができ、各関係者とのコミュニケーションがスムーズになったそうです。

戦略に100%正解はないが、信じる道の解像度を高めたい

「戦略設計をするうえで、当然100%の正解はない」と南雲氏は語っています。ただ、信じる道の解像度を高めて未来を切り開いていくうえでは、拠り所となるものが必要であり、それが南雲氏がデータサイエンスを活用する理由だと説明しています。

また、戦術の面においても、環境の変化が激しい今日のマーケティングでは、感性とデータを行き交わせてアジャイルに最適化していくことの重要性がますます増しています。南雲氏は、この感性とデータを駆使する戦い方を、スポーツの世界でのデータ活用に例えて説明しています。

「スポーツの世界では、選手の状態や試合の展開を感覚で捉えながら、スコアや成功率のデータも見る必要があります。どちらか一方だけを見ていては勝てません。マーケティングにおいても、日々市場や消費者は変化しているので、感性とデータの両方を駆使していかないと戦いに勝てないのです」
(南雲氏)

まさにこれを実践する取り組みとして、丸亀製麺では「うどんスコア」と「体験スコア」を「丸亀感動スコア」として各店舗に毎日フィードバックしています。日々の店舗体験と顧客の感情を、データとしても蓄積・共有しているのです。

※こちらはサイカとのプロジェクトの内容ではありません

このように、データを駆使してビジネスを推進している南雲氏は、MMMとの向き合い方やこのプロジェクトのパートナーとしてサイカを選んだ理由を以下のように語っています。

「MMMはあくまで目的ではなく手段であり、MMMですべてが解明できるとは思っていません。だからこそ、プロジェクトのパートナーには一緒に議論を通して正解を見つける姿勢を求めています。もちろん、パートナーに丸投げでは勝率が上がらないので、必ず自社で主導するようにしています。そのうえで、サイカをパートナーとして選んだ決め手は、スピード感とコンサルタントの向き合う姿勢です」
(南雲氏)

「スピード感」
日々変化するマーケティング環境に適応するためには、分析のスピードや頻度もそれに合わせて高める必要があります。同社のプロジェクトでは、MMMを四半期に1回のペースで分析しており、分析論点が追加になる場合は都度モデルを調整しながらPDCAサイクルを回しています。

「コンサルタントの向き合う姿勢」
100%正解がない世界において、解き明かしたい課題は次々と生まれてきます。また、環境の変化に伴い、論点もどんどんアップデートされます。それらに対し、柔軟にそして粘り強く寄り添う姿勢がパートナー選びの決め手となりました。

成長の先に目指す姿
――外食業界で働く人の存在意義を高めたい

――“食の感動で、この星を満たせ。”(トリドールのスローガン)

南雲氏が同社の成長の先に目指すのは外食業界全体の変革です。外食業界の消費者インサイトを解き明かすことで外食ビジネスを伸ばし、外食業界で働く人の存在意義や価値を向上させていきたいと語っています。

株式会社トリドールホールディングス 執行役員 CMO 兼 KANDOコミュニケーション本部長 兼 株式会社丸亀製麺 取締役 マーケティング本部長
南雲克明様

「数字ではなく、唯一無二の感動体験を創造し続けることを追求することで、必然として高い収益性と持続的な成長を実現できるということを証明したい」
(南雲氏)

こう語る南雲氏は、さらなる取り組みとしてEX(従業員体験価値)向上に向けたプロジェクトを進行しています。このプロジェクトは、従業員が働く幸せとプライベートの幸せを両立することで内発化が促進され、今まで以上に顧客に最高の感動体験を提供することができ、結果として事業成果に繋がるという考えに基づいています。この一連の流れをモデル化することで、再現性高く成果を出せる組織づくりを目指しています。

このように、新たなステージへと進化し続けている丸亀製麺の挑戦に、サイカは引き続き伴走していきます

丸亀製麺が実践する“KANDOドリブンマーケティング”

丸亀製麺のプロジェクト変遷

SMBCコンシューマーファイナンス株式会社

Q. 貴社の事業内容を教えて下さい

弊社は、三井住友フィナンシャルグループにおけるコンシューマーファイナンス事業の中核会社として、「金融事業」をはじめ、「保証事業」「海外事業」「債権管理事業」に取り組んでいます。「金融事業」では、個人のお客さまに対して無担保・無保証による小口資金の融資を通じて、お客さまが安心してお取引いただけるサービスを、「保証事業」では、銀行や信用金庫などの金融機関189先と提携し、提携先金融機関が取り扱う個人向けローン商品の債務を保証する事業を行っています。また、「海外事業」では、国内で培ったノウハウを活かし、香港・タイ・中国本土7都市、台湾にて小口資金の融資を中心に展開し、そして「債権管理事業」では、金融事業の延滞債権などの管理・回収やお客さまからのご返済に関する相談などの対応をそれぞれ行っています。

Q. 担当業務とチームのミッションを教えて下さい

所属は「金融事業部 プロモーショングループ」です。ミッションは、広告を通じて “PROMISE” ブランドの認知向上を図り、新規顧客の獲得、既存顧客の囲い込みを行うことにあります。その中で、私自身は主にオンライン広告、コンテンツマーケティングを中心に、「やっぱりプロミス」と皆さまに感じていただけるよう、戦略の策定や調査、分析のミッションを担っています。

金融事業部 プロモーショングループ 渡邉 紀様

チーム内の情報共有が課題だった

Q. マーケティングにおいて、これまで抱えていた課題を教えて下さい

ミッションを果たすために、限られた予算でいかに効率良くプロモーションを行うか、ということが大きな意味での課題です。そのために、消費者のカスタマージャーニーやオンライン広告・オフライン広告の相関性などを探って、広告媒体ごとの適切な予算配分や効果検証を行う必要があると考えています。

また、業務が属人的になっている、という問題もあります。例えば、特定の人が居なくなると業務が停滞する、特定の人が作成したファイルなどを後から加工できないなどが挙げられます。異動で新しく加わったメンバーに、いち早く知識を習得していただける体制を敷くことは課題です。時代とともに広告の幅も広がり、それに携わる人の知識の幅も広くならざるを得ません。メンバーと情報共有を図る際、どういう言葉を使うのか、どこまでの情報を伝えるのか、プロモーション戦略はフロントラインの現場スタッフにも理解していただく必要があります。そういった場面での説明も含めて、人材が変わる中で、常に一定の水準で続けなければならないことに難しさを感じます。

金融事業部 プロモーショングループ 川本 竜吾様

MAGELLANに期待するオンオフ統合分析と情報の共有

Q. そのような課題の中で、MAGELLANにどのようなことを期待しているのでしょうか?

テレビCMや屋外看板、中づり広告などに触れた消費者が、Web上で購買に至る数など、オンラインとオフラインの相関性はこれまで算出が困難と言われていました。MAGELLANはその点を “統計学” という背景から明らかにするツールとのことで、大変期待しています。

また、カスタマージャーニーの可視化や、適切な予算配分を示すプランニングと予実管理の機能が備わっていることから、立場の違う人間が「MAGELLAN」という共通のツールを見ながら議論できる、そういったことが業務改善につながると期待しています。さらに、チームの人材が変わる中で、過去の情報やノウハウの蓄積、共有にも活かすことができると考えています。

変わりゆく外部環境への対応がMAGELLANの導入理由

Q. 情報やノウハウの蓄積・共有を含めてですが、どんどん御社は変わられている印象があります。変わっていこうというスタンスのきっかけというのは何かあったのでしょうか?

弊社を取り巻く環境が厳しいものになってきたということがあります。外部環境では、参入を強化して久しい銀行系のカードローンなど、市場におけるシェアの奪い合いが激化しています。また、当業界ではインターネットを通じた購買が主流になりつつあり、データの定量化や深い分析が求められています。出せる情報は出して分析し効率化を図らないと、という意味で、背に腹は代えられない状況にあるのです。 MAGELLANは、市場が成熟してきた場合や、変わらないと負けるのが見えているというところに至ると、より力を発揮できるのではないかと考えています。

金融事業部 マーケティング企画室 曽根 優希様

MAGELLANは素人でもわかりやすい

Q. 数々の分析ツールがある中で、MAGELLANを導入された理由を教えて下さい

素人目にもわかりやすい、という点がまず挙げられます。「回帰分析」や「多変量解析」という言葉が出てくると、私など、一旦席を外して深呼吸をして戻ってくる、そんなことをする必要があるのですけれど、MAGELLANは見やすさやわかりやすさを追求したつくりになっていて、直接の担当者でなくても、画面を見ながら議論できるだろうと思っています。特に、ナビゲーション画面に表示されるカスタマージャーニーは、一見して興味をそそる内容だと感じています。

Q. MAGELLANの活用方針を教えて下さい

チーム内の共通ツールとして使用し、現状を把握するための情報共有や、改善に向けた議論に役立てたらと思っています。その他にも、慣れてきたらMAGELLANの「わかりやすさ」を活かして、他のチームとの情報交換に使いたいです。その他、広告代理店様と打ち合わせをする際にも有効ではないかと考えています。

いざというときに、やっぱりプロミスだなというプロモーションを行いたい

Q. MAGELLANを起点にというところで、今後どのようなプロモーション活動を目指されていくのでしょうか?

概念的な話になりますが、お客さまはそれぞれ違った時間に、違った環境で、違ったお気持ちで広告に触れていると思います。ただ、MAGELLANの分析を通じて各種広告の相関性が明らかになってくると、最も効果的なプロモーションの道筋のようなものが見えてくるのではないかと思います。インターネットが普及して以来、オンライン広告の注目度が増してきましたが、効果的なプロモーションにはオンライン広告・オフライン広告双方のバランスが重要であると考えています。日々の生活の中で違和感なく弊社の広告に触れて、いざというときには「やっぱりプロミス」と思い出していただけるような、そんなプロモーション活動を追求していきたいと考えています。

今後のMAGELLANへの期待

Q. それでは最後に、今後MAGELLANに期待することはどのようなことでしょうか?

「分析の精度」と「わかりやすさ」は追求していただきたいと考えています。分析の精度というのは、継続利用によって蓄積されるデータは増えますし、トライアンドエラーによって高まるものだと考えています。特に、オンライン広告・オフライン広告の相関性の明確化に関しては大変期待しています。その他、外部要因として「他社の広告出稿の影響」もありますが、それのみならず、マーケット全体に影響を及ぼすような社会の動きや、都道府県ごとの地域性を加味した分析、それらが可能になれば「MAGELLAN」はより進化するのではないかと思います。

株式会社インターワークス

Q. 担当業務を教えて下さい

今回MAGELLANを導入したメディア&ソリューション事業部では、製造業と工場勤務に特化した求人メディア「工場WORKS」と「製造・転職 メーカーズ」を運営しています。マーケティング部では、広告出稿やサイト運用を通し、メディアへの集客ならびに応募者数の最大化をミッションとしています。

Q. マーケティングにおいて、これまで抱えていた課題を教えて下さい

まず、中長期的なマーケティングプランを考える上で、最適な広告予算の設計ができていませんでした。施策の費用対効果をベースとした予算設計を行いたいのですが、広告効果指標の算出や管理が、適切とは言い難い状況にあったのです。また、認知施策の必要性を理解しているものの、CPAなどの数値が出やすい獲得系の広告に予算を寄せてしまいがちで、応募見込み層へのアプローチができていないという課題もありました。

広告効果を数値化・可視化し、妥当性のある広告予算の設計につなげる

Q. MAGELLANを導入された理由を教えて下さい

大きく2つあります。1つ目は、広告効果や施策同士の影響度を数値化・可視化し、認知系施策への理解促進や最適な効果指標を明らかにするためです。社内でもログなどを用いた分析を行っていますが、より客観的な分析ができるMAGELLANを導入しました。

2つ目は、自社での分析に対するベンチマークにするためです。マーケティング部独自の分析結果とMAGELLANの分析結果があれば、判断の偏りを防げる他、分析結果に差異が生じたときに、その理由はなぜかと考えるきっかけになります。自社での分析とMAGELLAN、この2つの軸を持つことが、バランスの取れた判断をする望ましい体制ではないかと考えています。

Q. MAGELLANの今後の活用方針を教えて下さい

自社での分析結果とMAGELLANの分析結果を比べ、そこから得られる示唆をもとにさらに分析を深めていきたいです。その次のステップとして、メディアを検討するときに、MAGELLAN上でシミュレーションを行い、意思決定の材料として使いたいと考えています。また、獲得・認知系ともに予算の最適な配分も行いたいですね。個人的には、業種ごとのHR系のビッグデータと弊社側のデータをマージして分析してくれるオプションの機能などがあると、MAGELLANの高い付加価値になるのではと感じます。

ターゲットを理解し最適なマーケティングコミュニケーションを実現したい

Q. 最後に、マーケティングにおいて目指す姿について教えて下さい

今後マーケティングで注力していきたいことは、運営メディアの認知・ブランディングです。まだサイト名での検索流入が少ないので、その比率を上げることとSEOでの集客・広告での集客の最適化を目標としています。WebメディアにSEOは欠かせませんが、アルゴリズムの変更によってはリスクにもなりえます。リスクヘッジのためにも、メディアのブランディングや認知を広げたいです。

サービスのゴールは求職者と企業を結びつけ、雇用を増やすことです。そのためには、運営しているメディアのターゲットを明確化し、理解を深め、いかに最適なプロモーションを効率良く実施できるかが重要だと考えています。ターゲット層を考えると、アプローチ方法としてWeb広告以外のプロモーションがベストという可能性もあります。今後、オフラインメディアを含めたプランニングを検討するときにも、MAGELLANは有効なツールであると思いますし、キャンペーンを実施して終わりではなく、その効果が追えることも大きいと感じています。

株式会社メディプラス

Q. マーケティングにおいて、これまで抱えていた課題を教えて下さい

ブランド施策を中心としたマーケティング活動の適切な評価手法に、試行錯誤していました。メディプラスは、クリニックへの卸販売やオンラインを含めた通販を販路に、テレビのインフォマーシャルや誌面広告、テレマーケティングやデジタルマーケティングで成長してきたブランドです。しかし、近年では獲得単価が上がる傾向にあり、顕在層から潜在層へと新たにファネルを広げ、ブランド施策による新規顧客獲得を進めていました。

これまでメディプラスは、ダイレクトコマースゆえに直接的なCPO(Cost Per Order)での評価を重視してきましたが、ブランド施策においては、アトリビューション評価が必要です。そのため、ツール含めた様々な方法で新たな評価手法の確立に取り組んできましたが、デジタル施策のみや一部のオフライン広告とのアトリビューション分析に限られ、施策の効果を全体的に見ることができていませんでした。さらに、複雑なロジックで算出された統合評価は、表面的な理解に留まってしまいがちで、運用へつなげることが難しいという課題もありました。このような背景から、オンライン・オフライン各施策を統合した施策の効果がわかり、かつ実務レベルで運用できる方法を求めていたのです。

MAGELLAN(マゼラン)は、PR施策や販促施策の効果も可視化

Q. MAGELLANを導入された理由を教えて下さい

私たちの課題である、マーケティング施策全体のROI を統合的に把握でき、最適な予算のアロケーションを行えると感じたからです。特にお客様の行動の起点がオフライン施策による場合、従来のオンライン施策のみの計測では、評価ができません。オフライン施策も含めた効果の可視化が、MAGELLANのメリットであると思います。

また、特にすばらしいと感じたのは、ノンペイドのオフライン活動の効果も計測できる点です。例えば、PRや直営店における接客、販売チャネルにおける販促施策なども、何かしらお客様の購入意向に影響を与えているはずです。また、オーガニック検索も、過去のマーケティング施策の積み重ねがあると考えられます。MAGELLANは、このようなあらゆる活動の効果を計測できます。全体のマーケティング施策を最適化する上で、重要な役割を果たしてくれると期待しています。

Q. MAGELLANを導入したことで、どのような影響がありましたか?

ある時、「オフライン施策の費用対効果が悪くなっているのではないか?」と、アロケーションの判断を迷ったことがありました。しかし、MAGELLANの分析から、私たちが感じていた以上にオフライン施策はビジネスへ貢献していることがわかったのです。結果、オフライン施策予算の最適なアロケーションへ、つなげることができました。さらに、MAGELLANの分析はシンプルで評価に納得感があり、マーケター自ら次のアクションをとることができています。現場でも様々な施策の効果が可視化され、経営陣にも定量化したレポートが報告できるようになりました。

マーケティング全体を評価し、中長期的な成長戦略を描きたい

Q. 最後に、マーケティングにおいて目指す姿について教えて下さい

まずは、様々な施策の投資効果について、数値にもとづいた合理的な判断をできるようにしたいです。そのためにも、CPOではなくROIを共通認識とし、強い意思決定のもと、マーケティングを推進できる体制を整えなくてはなりません。一つひとつの施策がどうだったかではなく、事業全体の中でどのように採算を取っていくかの視点が大切だと考えています。あらゆるマーケティング施策から逆算し、事業計画も考えつつ、一定期間における検証を行っていきたいですね。

今後も、お客様との接点が多様化するに伴い、通販業界全体として、販売チャネルのマルチ化が求められてくるでしょう。メディプラスでも、マーケティングファネルに則り、各施策の役割を明確にし、オンライン・オフライン問わず、認知から購入までのマーケティング施策の最適化を目指したい。そして、ビジネスKGI を達成したいと考えています。

イーデザイン損害保険株式会社

Q. マーケティングにおいて、これまで抱えていた課題を教えて下さい

テレビCMやYouTubeなど、ブランドへの認知・想起の向上を目的とした施策の効果測定が難しい、という課題がありました。 お客様からのお見積もり依頼やご契約のコンバージョンを目的とした、いわゆる刈り取り系の広告によるアプローチはほとんど飽和状態にあり、ビジネスの成長のためには、ブランドへの認知・想起を向上させて潜在層のボリュームを増やしていく必要があります。一方で、これまで数年にわたってテレビCMなどのマス広告を出稿してきたことで、すでに認知率は高い状態にあり「今までと同じようにテレビCMをやり続ける意味はあるのか」といった疑問もありました。

そのため、認知・想起の向上を目的とした施策の効果を明らかにして、コスト配分を最適化したいと考えていました。

こういった課題を解決できる手段がなかなかなかったのですが、マス広告の効果測定と、マス広告とデジタル広告の統合分析ができるツールとしてMAGELLAN(マゼラン)を知り、導入を決めました。

MAGELLANの導入で、成果が可視化。データにもとづいた対話が生まれる

Q. イーデザイン損保様は、2017年の10月にMAGELLANを導入されました。導入から約1年が経過し、どのような影響がありましたか?

1つ目は、社内のステークホルダーに対して、テレビCMなどの施策の成果を数字で説明できるようになったことです。MAGELLANを導入するまでは、間接効果も含めて定量的に説明できる指標がない状態でした。まだ完璧とは言えませんが、施策の成果について1つの定量的な指標を持って説明できるようになったことは大きいと思いますし、今後は、それをもとに議論を積み重ねていきたいと考えています。

2つ目は、いろいろなマーケティング改善のトライができるようになったことです。MAGELLANの分析により実施した施策の効果検証ができるようになったことで、まだ数はこなしていませんが、例えば、エリア別に出稿の仕方を変えてみる、テレビCMの出稿の仕方を変えてみるなど、様々な試みをして、その結果を振り返って改善に活かすということができるようになりました。

Q. MAGELLANの今後の活用方針を教えて下さい

エリアごとに異なる特性を考慮し、それぞれのエリアで最大の効果につながるメディアミックスは何かを検証していきたいです。それを実現するためには、マス広告を含む各施策の間接効果までを明らかにしなければならないため、MAGELLANの分析結果を活用しながらPDCAを回していこうと考えています。

お客様ごとにパーソナライズしたコミュニケーションを実現したい

Q. 最後に、マーケティングにおいて目指す姿について教えて下さい

繰り返しではありますが、MAGELLANのデータ分析をベースとした、最適なメディアミックスとその予算配分を突き詰めたいと考えています。効果の最大化には、最適なメディアプランニングとクリエイティブがセットですから、クリエイティブ要素もどのように分析していくか考えたいですね。

そして、お客様のライフスタイルが多様化した現在においては、コミュニケーションのパーソナライズが必要です。お客様に合ったタイミングやサービス、伝達方法で、「興味のない広告を見せられている」ではなく、「良い情報を知ることができた」と思っていただけたら良いですよね。そのためにも、デジタルでの接客とでも言いますか、お客様一人ひとりに最適なコミュニケーションを追求していきたいです。

株式会社トゥエンティーフォーセブン 

Q. 担当業務を教えて下さい

私が所属するマーケティング本部は大きく3つの組織に分かれます。当社のビジネスモデルとして集客の入り口はWeb申し込みに集約しており、その中で私が所属するメディア部は集客の効率化・最大化を担っています。コンバージョンポイントはWebのみですが、オンラインプロモーションも、オフラインプロモーションも担当しています。ご契約までの流れとしては、Webで無料カウンセリング予約申し込みをしていただき、実際にご来店いただいた際に無料カウンセリングを実施、内容にご満足いただけた際にご契約、という形になります。

Q. マーケティングを実践する上で、業界特有の難しさがあれば教えて下さい

この業界の難しさとしては、大きく3つあります。 1つは、客単価が低いサービスではないので、1人のお客様にご契約いただくための難易度が低くないことです。

もう1つは、ブランド価値などを向上させることによる中長期的な売上(LTV)拡大が狙いにくいことです。弊社の提供サービスの価値は短期間でお客様を理想の状態にすることであり、サービス価値やブランド価値を上げることで得られるお客様との中長期的なお付き合いが中々単純化できない点があります。サービス価値向上によりお客様満足度が上がることは大変嬉しい反面、中々判断が難しいところもあります。

最後に、マーケット環境の変化が早く、激しいということです。直近1年で各地方にパーソナルトレーニングジムを2~3店舗運営されている企業様がかなり増えています。マーケット自体が成長しているので、そういった企業様も集客できているようです。結果として、熾烈な広告出稿争いが始まっていて、競争が激化しているというのが現状です。

Q. 多くの企業がデジタル広告からオフライン広告に広げていく形を取ると思いますが、御社もそうでしょうか?

そうですね。当初はデジタル広告から効率よくお申込みをいただくことをベースにしていたのですが、トップラインを上げていくときに、オフライン広告が必要だという認識が社内で広まりました。

デジタル広告の特徴として、全方位に最適化していくのが圧倒的にやりやすいということがあります。一方で、エリアなどのセグメントが切りにくい(ボリューム担保など)ものや、いわゆる潜在層へのリーチ(視認性・単価)などは、まだまだ完全ではないと捉えております。オフライン広告は、そういったデジタル広告の弱みを補完するものだという認識をしています。予算構成比率ではデジタル広告の方が大きいのですが、デジタル広告が苦手なところをオフライン広告で補っていくというのが全体最適ではないかと考えています。

Q. マーケティングにおいて、これまで抱えていた課題を教えて下さい

ラストクリックコンバージョンだけで媒体最適がされていたことが課題でした。オフライン広告の費用対効果はそれぞれの代理店から出てくるレポートを「正」としており、一気通貫したマーケティング施策やチャネル評価ができていませんでした。

特に、去年からマーケットが激変しており、過去の勝ちパターンだけでは難しい状況になりました。ラストクリックコンバージョンの効率だけで媒体を選んでいくと、顕在層をいかに刈り取るかという話に終始してしまいます。それよりも、顕在層をいかにして作っていくかが重要だと考えていました。

Q. マーケットが激変する前は、顕在層を作るということは考えていなかったのでしょうか?

あまり考えられていませんでした。獲得広告のコストパフォーマンスが非常に良かったので、当時は顕在層を作るというよりも顕在層を獲得するために、デジタル広告をやりながらテレビCMも実施して、コンバージョンの総量を上げていくことを優先していました。

Q. 市場が激変する中で、どのように変化に対応したのでしょうか?

まず、起きている事実をきちんと整理することからはじめました。ターゲットが誰なのかということも、今と比較すると見えていない部分がありましたので、ターゲットを整理するために顧客データと外部調査機関をいくつか使って可視化を実施しました。

同時に、チャネルの最適化をデジタル領域で進めました。既に最適化は進められてはいたのですが、ゼロベースで細分化を進めました。具体的には、検索広告において、「指名検索のCPCは本当に最適なのか」「CPCを下げるためのことを本当にやりきっているのか」や、ディスプレイ広告において、「ブロードリーチのセグメンテーションはすべてやれているのか」「クリエイティブの出し分けもされているのか」など、そういったところから見直しを進めました。

そして、今後進めようと思っているのが、全体最適です。媒体別、LP別など、チャネル別のLTVを可視化して、CPAを一律にするのでなく、モチベーションやアプローチの仕方によって費用対効果をすべて見直そうと思っています。

Q. そうした中、MAGELLAN(マゼラン)を導入された理由を教えて下さい

ラストクリックコンバージョン以外の評価をしなければならないと考えていたからです。オンラインアトリビューション分析は、クッキーが使えなくなる世界がすぐに来るので、ここで成功パターンを作れたとしても、継続性がないと考えました。また、実は弊社の中に統計学に詳しい人間が複数人いまして、「今後は相関だよね」という話をしていたときに、サイカのセミナーに参加しました。そこで、もともとやりたいと思っていたことをツール化されていたので、MAGELLANを採用することにしました。

もともとやりたいと思っていたことというのは、ラストクリックコンバージョンで評価できない広告の正当な評価です。デジタル広告はラストクリックコンバージョンである程度評価できますが、お客様のジャーニーには認知があって、興味があって、比較があって、という流れがあります。弊社はテレビCM、交通広告、チラシをやって、デジタル広告もやっていたのですが、デジタル広告以外は評価軸を持てていませんでした。

デジタル広告以外は、と言いましたが、実はデジタル広告も同様で、ラストクリックコンバージョンだけで評価して良いのかという疑念を持っていました。例えば、リターゲティングの効果が良くて、ブロードリーチの効果が悪いということはわかっていたのですが、一度広告に当たっているからこそ獲得効率が良いというのは当たり前の話です。 顕在層がこれだけ減ってきている以上、自分たちで幅を広げていかなければならず、実施しているプロモーションをラストクリック以外でも評価をしなければならないのですが、当時の弊社ではできませんでした。ログベースでなく、統計ベースならできる、でもそれを実施できる人はいない。やりたいのにできない、という状況でしたが、最終的には「ツールならできるのではないか」と考え、意思決定しました。

Q. 現在は本格利用の手前の段階だと思いますが、現時点でのMAGELLANの分析結果に対する印象を教えて下さい

数字の精度が予想より良かったです。見込んでいたよりも実績に近い数字が出ています。今は、うまく使っていきたいとは思いつつ、どこまで信頼していって良いかなということを見極めているタイミングです。予算額やアロケーションに対して、もう少しだけモデルの精度が上がれば、そもそもの予算組み自体もMAGELLANをベースにして進めて良いと思っています。

Q. MAGELLANの今後の活用方針を教えて下さい

本来の使い方ではないということは理解しているのですが、マーケット環境の変化を捉えることができると良いなと思っています。マーケット環境が年単位、半年単位で劇的に変わっている状況がありますので、未来のマーケット環境の変化を捉えたり、その影響度を可視化できるとすごく良いなと思います。

Q. 最後に、マーケティングにおいて目指す姿について教えて下さい

全体最適を実現することが理想系です。今考えている全体最適とは、お客様のモチベーションに対して最適なコミュニケーションができ、最適なファネル戦略もできていて、コスト戦略についても自分たちの手で最適な解を作れている、ロジックで説明ができる状況を意味しています。「結果的にこれが最適解だったね」ということではなく「これが最適解だよね」というように、自分たちで解を見つけ、定義していきたいです。この状況を実現させるのは非常に難易度が高いと思うのですが、今はいろいろなことにチャレンジしている段階なので、できるところを少しずつ増やしていきたいです。

個人的には、これからオフラインやオンラインというチャネルの考え方はなくなっていくと思っています。例えば、オンラインでもオフラインに近いチャネルは山程あるためです。ここまで増えてしまったチャネル、媒体に対して、自分たちでどうやれば解を導き出せるか、難易度が高いことは理解しつつも、チャレンジしていきたいです。

KDDI株式会社

メディア横断でのコミュニケーションプラン・予算アロケーションが課題

Q. 担当業務を教えて下さい

宣伝部では、全社のブランドマネジメント及び広告制作・出稿やスポーツ協賛などを担当しています。以前は、オフラインメディアとオンラインメディアの宣伝担当がそれぞれクリエイティブ制作からメディアバイイングを行う体制でしたが、2020年4月に組織体制を変更し、チームを統合して横断型コミュニケーションができる体制へ切り替えました。

Q. 今年度は「au PAY」事業で「MAGELLAN(マゼラン)」をご活用いただいています。キャッシュレス市場の特徴を教えて下さい

近年、キャッシュレス市場は飛躍的に伸張しています。調査によると、「au PAY」などのコード決済市場においては、2019年の店舗利用件数で昨年対比15.7倍の伸びを示しています。現在もコロナ禍による変化で、キャッシュレスの需要は拡大しています。

その中で、弊社の「au PAY」はauブランドで培ってきたお客様とのつながりを活かしながら、事業を拡大させています。

※2020年9月現在

Q. これまで抱えていた課題を教えてください

組織における課題とプロモーションにおける課題がありました。

まず、組織における課題としては3つありました。 1つ目は、メディア横断でのコミュニケーションプランの設計や予算アロケーションができないという点です。メディアごとでの担当割という組織体制だったので、メディア単位での効果最大化を目指してしまい、全体での最適プランを見出せない構造となっていました。

2つ目は、業務縦割りのため、担当者の考え方や視野が狭くなってしまうという点です。総合的な思考になりにくい状態でした。

そして3つ目が、広告宣伝の事業貢献度合いの可視化ができないという点です。大きな費用を使っている広告宣伝が、事業にどこまで貢献できているのかが、見えにくい状況でした。

また、プロモ―ションにおける課題としては、au以外のユーザーへの認知拡大・利用促進の勝ちパターンがわからないということです。弊社の強みとしては、通信事業で培ってきたauユーザーとのつながりがあり、「au PAY」事業においてもこのつながりを活かして認知拡大・利用促進を図ってきました。一方で、au以外のユーザーに対するアプローチのノウハウは十分ではありませんでした。クリエイティブとメディアをどのように組み合わせ、予算配分をすることがベストなアプローチなのかわからないことが課題となっていました。

「MAGELLAN」×「Datorama」の相乗効果により広告効果分析の一本化・自動化を実現

Q. 課題に対して、どのような対策を講じられたのでしょうか?

これらの課題を解決すべく立ち上げたのが「広告宣伝効果分析プロジェクト」でした。オフラインメディアとオンラインメディアのチームを統合し、すべてのメディアを一気通貫して1つの部署、1つのプラットフォームで管理することにしました。すべてのメディアの効果検証を統合して行うことで、貢献度の高いメディアへ適正に予算配分することができると考えました。

そこで取り組んだのが、すべてのデータを統合し、集約したデータを「MAGELLAN」で分析することです。データの統合は「Datorama」を活用しました。「Datorama」に統合したのは、オンラインメディアへの出稿実績やブランドサイトのPV数だけでなく、オフラインメディアであるテレビCMのGRPデータや、第三者調査機関による調査データ、「au PAY」の決済データなど多岐に渡ります。それらのデータを「MAGELLAN」にエクスポートし、分析しています。分析結果も「Datorama」の画面で一括管理できるよう連携しました。

マーケティング施策効果把握の全体像

Q. かなり思い切った改革だったと思うのですが、どのような点が大変でしたか?

社内の意識統一が大変でした。この取り組みの意義を各担当者や経営陣に対して丁寧に説明していくよう努めました。短期的な工数やコストの削減だけでなく、中長期的な目線で広告宣伝による事業の最大化を目指しているということを、理解してもらうことが重要でした。

Q. メディア横断での分析が可能となり、組織に変化はありましたか?

大きく2つの変化がありました。 まず1つ目は、広告効果分析の一本化・自動化により、工数削減ができたということです。これまで気づかなかったのですが、実は組織を統合してみると、異なるチームで全く同じ作業をしていることがわかりました。こうした重複作業の発生を防ぐことで、格段に作業効率が上がりました。

そして2つ目は、分析を短期間で実行できたことにより、空いた時間を次の予算のアロケーションという本質的な業務にあてることができるようになったことです。メンバーの視野も、通年や数年といった中長期な目線で考えるように広がりつつあります。各自が一段高い視点で分析ができるようになっていって欲しいと考えています。

Q. 「au PAY」の分析において、新発見はありましたか?

課題だったau以外のユーザーに対する適切な広告宣伝予算のアロケーションがわかりました。auユーザーとau以外のユーザーとでメディア評価を比較すると、明らかに結果が違いました。最適化したアロケーションで施策を実施したところ、計画予算よりも低コストで、成果が増加した結果となりました。

また、このPDCAをかなり短期間で実行できたことも驚きでした。「MAGELLAN」と「Datorama」による統合分析を開始したのはこの4月からなのですが、わずか2カ月後の6月のメディアバイイングから予算配分案を実行に移すことができました。短期間でPDCAを回すことが可能なので、より高頻度で分析を実行し、アロケーションの精度を上げることができると期待しています。

最小予算で効果を最大化し、事業に貢献することがミッション

Q. MAGELLANの今後の活用方針を教えて下さい

現在の「MAGELLAN」の活用は最注力のコミュニケーションである「認知」の分析に留まっていますが、今後はファネル中間のKPIを分析に追加し、コミュニケーションを一気通貫で分析できるようにしていきたいと考えています。これまでは、一気通貫で見られる指標がなかったため、この指標を作ることで各施策の全体最適を図ることができると期待しています。

コミュニケーションファネルにおける分析スコープ

Q. 最後に、マーケティングにおいて目指す姿について教えて下さい

広告宣伝は、最小予算で効果を最大化し、事業に貢献することがミッションです。一方でメディアの変化や消費者の生活スタイルによっても、モデルは変化していきます。今回の取り組みから世の中の変化も捉えながら、過去の成功にとらわれることなく、効果最大化を目指していきたいと思います。