株式会社丸亀製麺

丸亀製麺とサイカの取り組みは、ビジネスの勝率を高めるための“キードライバー”を解き明かす試みです。キードライバーを解き明かすことで、投資すべき先に対する考えがブレなくなり、意思決定のスピードが上がって、結果として事業の成長に繋がると南雲氏は考えています。同社では、もともと構築していたマーケティングモデルの解像度をさらに上げ、ビジネスを伸ばすキードライバーを明らかにする手段の一つとして、データサイエンスを活用しています。

サイカとのプロジェクトは、まずMMM(マーケティング・ミックス・モデリング)を活用して商品プロモーションとブランディングの最適投資配分を解明する取り組みから始まりました。約半年のプロジェクトを通して、投資配分の最適解が見えてきた後、次に着手したのが商品が売れた背景・メカニズムを明らかにする取り組みです。これは、顧客が行動(購買)するまでに影響する意識をデータで明らかにするアプローチです。

本記事では、取り組みの前提となる丸亀製麺におけるマーケティングの考えと、サイカとの取り組みについて紹介します。

丸亀製麺が実践する“KANDOドリブンマーケティング”

「顧客は集めるものではなくつくるものであり、“感動”こそが顧客を創造する源泉価値だと考えています。人は強く心が動かされるから(感動がある)こそ行動(購買)するのです」
(南雲氏)

南雲氏が語るこの考えのもと、丸亀製麺のすべての思考や行動は、“感動”を創造するために存在しています。同社のすべての戦略・戦術は「感動体験No.1」というビジョンの実現へつながるよう設計されています。そしてその源泉価値を、「一軒一軒が製麺所」「手づくり・できたてのおいしさ」「人の力」が織りなす感動体験と定義しています。これはマーケティング戦略だけでなく、商品戦略や営業戦略、DX戦略などすべてに当てはまることだそうです。

このように“感動”を意思決定の最優先事項とし、事業を持続的に成長させるためには、感性とデータの両立が必要だと南雲氏は考えています。データからは“感動”は創れない。感性だけでは確率が低い。そのため、両者を組み合わせてマーケティング戦略や戦術を組み立てていく取り組みを強化しています。これは丸亀製麺に息づく「二律両立」という考え方に基づいたトレードオンを目指す姿勢の表れでもあります。

※予測不能レベルの進化を遂げるために、「二律背反」しがちな要素を「二律両立」させるという考え

実際、丸亀製麺のマーケティングコミュニケーションでは、左脳・理性へのアプローチを通して選ばれる理由やパーセプションを、右脳・直感へのアプローチを通して選ばれる衝動をつくっています。

丸亀製麺が実践する“KANDOドリブンマーケティング”

丸亀製麺が実践する“KANDOドリブンマーケティング”

丸亀製麺が実践するハイブリッド戦略
――80%の売上はブランド力によって決まる

「当社はブランディングで右肩上がりのベースラインをつくり、フェア商品で衝動の山をつくるハイブリッド戦略をとっています。80%の売上はブランド力によって決まるものであり、ブランドに対する理解・好意度・共感が高まっている状態をつくることが最重要だと考えています。そのうえで1.5カ月ごとに年8回フェア商品を展開することで、食べたい衝動を最大化し、事業を持続的に成長させています」
(南雲氏)

南雲氏の説明の通り、同社ではブランディングとフェア商品のプロモーションを戦略的に組み合わせることで(ハイブリッド戦略)、右肩上がりのベースラインと定期的な衝動の山をつくっています。

丸亀製麺が実践する“KANDOドリブンマーケティング”

ブランディングとフェア商品プロモーションのハイブリッド戦略のイメージ図

また、短期的に見ると顧客体験価値(CX)の積み重ねがブランド力につながると考え、カスタマージャー二―に沿った顧客接点ごとに「どこでどういう価値を感じていただくか」を顧客体験に落とし実践しています。その蓄積を可視化して関係部署と共有し、一体感をもって取り組んでいくために、データサイエンスを活用したアジャイルな高速アクションを大切にしています。

これらを実現するための、サイカとのプロジェクトにおいて以下2つの取り組みを行っています。

<取り組み①> 商品プロモーションとブランディングの最適投資配分の解明:ブランド・エクイティ分析

  • ブランド・エクイティ分析とは?
    • MMMの応用による長期にわたるブランド蓄積効果を加味した分析。丸亀製麺における「ブランディングで右肩上がりのベースラインをつくり、フェア商品で衝動の山をつくるハイブリッド戦略」の効果を可視化する取り組み。
  • 分析の結果わかったこと
    • 商品プロモーションによる短期スパイクとブランディングの長期蓄積の相乗効果で、狙い通り右肩上がりの成長が築かれていたこと。さらに、ブランディングによって商品CMの効果が押し上げられたことも判明した。

「きっと正しいだろうと感覚でわかっていたことが数値として可視化されたため、意思決定しやすくなったほか、新商品の広告予算を決める際にも役立っています」
(南雲氏)

事業成果につながる“キードライバー”は何か
――MMM×KSF分析による新たなアプローチ

<取り組み②> 事業成果につながるブランド重要指標を検証し、感性をデータで測る:ブランドKSF(Key Success Factor)分析

  • ブランドKSF分析とは?
    • 持続的に業績が高まる背景・メカニズムを明らかにする取り組み。アンケート調査データを使用し、来店に対するブランドKSF(ブランド重要指標)を解明し、また、そのブランドKSFに影響を及ぼす因子を解明する。
  • 分析の結果わかったこと
    • リピート/新規いずれにおいてもブランドKSFとして最も重要なのは利用意向であること、また、最も利用意向につながっているのは「うどんがおいしい」という認識であるということがわかった。
    • その「うどんがおいしい」に直結するイメージとしては「安心して食べられる」と「他とは違う良さがある」が重視されており、丸亀製麺の源泉価値に近しい項目と相関関係があることもわかった。
丸亀製麺におけるKSF分析の概要

丸亀製麺におけるKSF分析の概要

社内外の関係者とのコミュニケーションがスムーズに

このように、ブランディングの効果やブランドの重要指標を定量的に示すことは、戦略や戦術の根拠となるだけでなく、策定した戦略・戦術を実行に移す際にも非常に有用だと南雲氏は語っています。戦略や戦術の方針を社内外の関係者に浸透させるには、感性に訴えることが効果的な場合もあればデータを用いて理性に訴えることが効果的な場合もあります。特に後者を必要とする場面において、戦略・戦術に対する理解を促進することができ、各関係者とのコミュニケーションがスムーズになったそうです。

戦略に100%正解はないが、信じる道の解像度を高めたい

「戦略設計をするうえで、当然100%の正解はない」と南雲氏は語っています。ただ、信じる道の解像度を高めて未来を切り開いていくうえでは、拠り所となるものが必要であり、それが南雲氏がデータサイエンスを活用する理由だと説明しています。

また、戦術の面においても、環境の変化が激しい今日のマーケティングでは、感性とデータを行き交わせてアジャイルに最適化していくことの重要性がますます増しています。南雲氏は、この感性とデータを駆使する戦い方を、スポーツの世界でのデータ活用に例えて説明しています。

「スポーツの世界では、選手の状態や試合の展開を感覚で捉えながら、スコアや成功率のデータも見る必要があります。どちらか一方だけを見ていては勝てません。マーケティングにおいても、日々市場や消費者は変化しているので、感性とデータの両方を駆使していかないと戦いに勝てないのです」
(南雲氏)

まさにこれを実践する取り組みとして、丸亀製麺では「うどんスコア」と「体験スコア」を「丸亀感動スコア」として各店舗に毎日フィードバックしています。日々の店舗体験と顧客の感情を、データとしても蓄積・共有しているのです。

※こちらはサイカとのプロジェクトの内容ではありません

このように、データを駆使してビジネスを推進している南雲氏は、MMMとの向き合い方やこのプロジェクトのパートナーとしてサイカを選んだ理由を以下のように語っています。

「MMMはあくまで目的ではなく手段であり、MMMですべてが解明できるとは思っていません。だからこそ、プロジェクトのパートナーには一緒に議論を通して正解を見つける姿勢を求めています。もちろん、パートナーに丸投げでは勝率が上がらないので、必ず自社で主導するようにしています。そのうえで、サイカをパートナーとして選んだ決め手は、スピード感とコンサルタントの向き合う姿勢です」
(南雲氏)

「スピード感」
日々変化するマーケティング環境に適応するためには、分析のスピードや頻度もそれに合わせて高める必要があります。同社のプロジェクトでは、MMMを四半期に1回のペースで分析しており、分析論点が追加になる場合は都度モデルを調整しながらPDCAサイクルを回しています。

「コンサルタントの向き合う姿勢」
100%正解がない世界において、解き明かしたい課題は次々と生まれてきます。また、環境の変化に伴い、論点もどんどんアップデートされます。それらに対し、柔軟にそして粘り強く寄り添う姿勢がパートナー選びの決め手となりました。

成長の先に目指す姿
――外食業界で働く人の存在意義を高めたい

――“食の感動で、この星を満たせ。”(トリドールのスローガン)

南雲氏が同社の成長の先に目指すのは外食業界全体の変革です。外食業界の消費者インサイトを解き明かすことで外食ビジネスを伸ばし、外食業界で働く人の存在意義や価値を向上させていきたいと語っています。

株式会社トリドールホールディングス 執行役員 CMO 兼 KANDOコミュニケーション本部長 兼 株式会社丸亀製麺 取締役 マーケティング本部長
南雲克明様

「数字ではなく、唯一無二の感動体験を創造し続けることを追求することで、必然として高い収益性と持続的な成長を実現できるということを証明したい」
(南雲氏)

こう語る南雲氏は、さらなる取り組みとしてEX(従業員体験価値)向上に向けたプロジェクトを進行しています。このプロジェクトは、従業員が働く幸せとプライベートの幸せを両立することで内発化が促進され、今まで以上に顧客に最高の感動体験を提供することができ、結果として事業成果に繋がるという考えに基づいています。この一連の流れをモデル化することで、再現性高く成果を出せる組織づくりを目指しています。

このように、新たなステージへと進化し続けている丸亀製麺の挑戦に、サイカは引き続き伴走していきます

丸亀製麺が実践する“KANDOドリブンマーケティング”

丸亀製麺のプロジェクト変遷

くら寿司株式会社

ターゲットに合わせたプロモーションの変更が必要

Q. 担当業務を教えて下さい

広報宣伝IR本部 販売促進部では、認知及び集客を目的としたプロモーション活動を行っております。具体的には、広告制作・出稿、店頭SP制作、SNS・サイト運用及び企画立案など、オフライン・オンライン問わず幅広く担当しています。また、広報部との連携によるPR活動も行っています。

Q. 市場の特徴や貴社の状況を教えて下さい

外食業界の特徴は、価格・味・鮮度はもとより、安心・安全であることが最も重要です。当社は一皿100円(税抜)と安価なお寿司を、より安全に提供するために「四大添加物無添加」や「防菌寿司カバー」など様々な取り組みを行っています。

また、外食業界の中でも特に回転寿司業界は、お客様の年齢層が幅広いという特徴があります。小さなお子様からご高齢の方まで幅広い年齢層のお客様がお越しになりますが、お客様の来店動機は年齢層によって異なります。そのため、ターゲットとする年齢層に合わせてプロモーションを変更しながら、より効率良く訴求をしていくことが重要となってきます。

プロモーション効果の可視化が課題 ――仮説を証明する術がなかった

Q. マーケティングにおいて、これまで抱えていた課題を教えて下さい

プロモーション効果の可視化が大きな課題でした。これまでは、売上に対して実施したプロモーションの内容とかけた費用などを照らし合わせることで、費用対効果を検証していました。店舗の売上の変化を見て、プロモーションの良し悪しを検証していたのですが、常に複数の広告宣伝媒体を活用する上、店頭での販売促進やキャンペーンなどを同時期に実施することがほとんどなため、どの施策がどのくらいの効果なのか、各施策の正確な費用対効果の算出が難しいという状態でした。

また、オフライン広告とオンライン広告の予算投下割合や、エリア別の最適な予算配分を見出すことが難しいという課題もありました。細分化した分析はこれからとなりますが、恐らくエリアによって効率や特徴が異なるのではないかなと思っています。

数値的根拠を持って説明できるようになった

Q. MAGELLAN(マゼラン)の分析結果に対する印象を教えて下さい

仮説を検証することができ、成果を最大化するための予算配分がわかったことは非常にありがたく、上層部へも数値的根拠を持って説明ができるようになるので、提案しやすくなりました。売上が下がっていない中で、既存の施策をやめるという判断は、なかなか困難なことが多いですが、各施策の売上への貢献値が数字で説明できれば、自信を持って判断することができると感じました。

Q. MAGELLANの今後の活用方針を教えて下さい

まずは、プロモーション効果の可視化及び予算配分最適化の分析結果にもとづいて、より効率的にプロモーション活動を展開していきたいと思っています。一度分析をして終わりではなく、継続的に分析し、予算配分を更新していく必要があると思っています。媒体の種類や効率も変化していくので、常に分析して効率を見直すことが重要だと思います。

限られた広告宣伝費の中で、どうすれば2倍3倍の効果を出せるのか、MAGELLANを活用しながら追求していきたいと考えています。その上で、新たなプロモーションへの発見があればと期待しています。

また、エリア別の分析においても、今後本格的にMAGELLANを活用していきたいと考えています。エリアによって効果的なプロモーションや訴求内容が異なるはずなので、その点もMAGELLANを使って分析していきたいと思っています。

「お寿司=くら寿司」と第一想起されることが理想

Q. 最後に、マーケティングにおいて目指す姿について教えて下さい

「お寿司=くら寿司」と第一想起してもらえるようになることが理想です。そして、子供時代にくら寿司のファンになってくださったお客様が、大人になっても通い続けてくださる、そのようなサイクルを作ることが目標です。

目標の実現のために、まずは当社の取り組みやサービスを、より多くのお客様に知っていただかなければなりません。そのためにも、数値化したデータをもとに分析・検証を行い、より正確に、より効果的にプロモーション活動を展開していきたいと考えています。

湯快リゾート株式会社

業界に類を見ない、ダイレクト・チャネルで独自性を打ち出していく

Q. 担当業務を教えて下さい

棚橋様:私は、セールス&マーケティング部を統括する立場として、マーケティング活動やセールス活動、その他データアナリティクスに関わる様々な部署の課題を横串で俯瞰し、改善を図ることをミッションとしています。

渡辺様:私はリサーチから戦略策定、コミュニケーションの実行など、マーケティング領域全般を担当しています。

Q. 市場の特徴や貴社の状況を教えて下さい

渡辺様:宿泊業界の一番の特徴は、旅行代理店様による販売が主流のビジネスモデルということです。皆さんの中にも、代理店様を通して宿泊のご予約をされた方は多いのでないでしょうか。

そうした中で、私たちの最大の特徴は、中心となる販売チャネルが湯快リゾートのホームページやコールセンター経由から直接ご予約をいただく、ダイレクト・チャネルだということです。1泊2食7,500円(税別)からという低コストで高品質の宿泊体験をお客様に提供させていただくため、流通マージンを含めてあらゆる費用を抑える努力をしています。

棚橋様:また、私たちはお客様との距離を大切にしております。代理店様から「湯快リゾートが○○を始めます」と連絡が来るより、私たちから直接お声をかけさせていただくほうが親近感を持っていただきやすいと考えております。身近な存在として、お客様の思い出や人生の一部になるためにも、ダイレクト・チャネルでの販売は重要だと考えております。

渡辺様:一方で、宿泊業界の中ではダイレクト・チャネルを推進している企業は少ないため、ベンチマークを設定しにくいという難しさがあります。そのため、同じ業界ではなく、昨今のトレンドであるD2Cサービスや、低価格・高品質でビジネス展開されている企業の戦略や考え方を参考にしています。

棚橋様:私たちは「非日常の中の日常」として湯快リゾートを体験していただきたいと考えています。お客様の生活や人生の1ページにどう入り込んでいけるかを考えると、生活の中の一部を扱っている業界やコンテンツなど、宿泊業界ではないところにヒントがあるように思います。

メディアミックスで効果の可視化をしていきたい

Q. マーケティングにおいて、これまで抱えていた課題を教えて下さい

渡辺様:テレビCMや新聞広告を中心としたオフライン広告における、集客への効果の可視化が課題でした。最終コンバージョンだけで評価するとオフライン広告は効率が悪いように見えてしまうため、施策間の影響も含めたメディアごとのピュアな実力を評価する必要があると感じていました。特に、テレビCMはもっと効果が大きいのではという仮説がありましたが、定量的な分析ができていなかったため、定量化する方法を模索しておりました。

また、私たちのメインターゲットは、お子様のいらっしゃるファミリー層やご年配の方々のため、オンライン広告・オフライン広告両方からのアプローチが必要です。そのため、オフライン広告だけでなく、オンライン広告も含めたメディアミックスで効果を正しく把握したいと考えておりました。

Q. 昨今の市況の変化で、メディアの活用方法に変化はありましたでしょうか?

渡辺様:オフライン広告の出稿が慎重になりました。テレビCMや新聞広告は、計画から出稿までに数か月かかります。また、直前に出稿を取りやめることが難しいため、市況が日々変化していく中ではクイックに対応できないというデメリットがあります。

一方で、オンライン広告は計画をすぐに停止できる環境にあり、市況の変化にも素早く対応することが可能です。そのため、現在はオンライン広告を中心にコミュニケーションを行っています。

棚橋様:お客様の置かれた状況や、市況にそぐわないメッセージを出しても意味はありません。日々変わる状況の中でコミュニケーションのアジリティを担保するためにも、リードタイムが必要な広告は、現在は慎重に実施するべきだと感じています。

MAGELLAN(マゼラン)を軸に実行・検証を繰り返し、事業成長につなげていく

Q. MAGELLANを導入された理由を教えて下さい

渡辺様:MAGELLANはMMM領域ですでに実績があり、信頼できると思ったためです。また、先ほど申し上げた課題感にまさにフィットするツールでした。

棚橋様:初めてミーティングをした際に、良い議論ができたというのも決め手の1つです。初回にも関わらず、私たちの課題感を瞬時に理解し、それを踏まえた上で親身になって議論を進めていただいた印象があります。また、ソリューションの提供スピード・質も担保されていると感じました。

Q. MAGELLANの今後の活用方針を教えて下さい

渡辺様:MAGELLANの分析結果をアクションへ反映した後に、どれくらいの変化があったのかを見ていきたいと考えています。改善のプロセスを意識することで、集客の最大化を目指していきたいです。

また、MAGELLANの分析指標を、経営層まで含めた湯快リゾート全体における共通の指標として位置づけたいと考えています。MAGELLANの分析結果をもとに、実行・検証を繰り返し続けることで、プランニングの基盤となるプロジェクトとし、最終的には事業の成長につなげていきたいです。

棚橋様:マーケティング活動の効率化や成果の最大化はもちろんですが、これらはすでにある分析方程式により導き出される結果に他なりません。パラダイムシフトが容易に起こりうる今、その前提にある分析方程式そのものにも注目していく必要があると考えています。なぜなら、市況やお客様、または私たち湯快リゾートの中で質的な変化が発生した際に、分析方程式そのものが変わる可能性があるためです。その変化にも対応できるMAGELLANによって、ダイナミックな世の中の動きを捉えつつ、それを先読みし、正しい経営判断につなげていきたいと思っています。

お客様視点を大切に、ブランドに共感していただけるファンを増やしていきたい

Q. 最後に、マーケティングにおいて目指す姿について教えて下さい

渡辺様:お客様の抱える課題を、データドリブンで解決していきたいと考えています。また、常にお客様を起点としたマーケティング組織となることを目指しております。

棚橋様:私たちが行っているのは心を持ったビジネスだと思っています。日本の良さを伝えていきながら、湯快リゾートのことを考えることで笑顔になるお客様が1人でも増えるような事業を展開していきたいです。マーケティングはそれを実現するためのツールですので、うまく活用しながら、湯快リゾートに共感していただける方やファンを増やしていきたいと考えています。

日本ピザハット株式会社

マーケティング部内の組織横断でデジタル領域を強化

Q. 担当業務を教えて下さい

私は、マーケティング部デジタルマーケティング課で課長を務めており、デジタル領域全般を統括しています。デジタル広告における売上拡大が主なミッションです。またその他、DX化の重要性が全社的に理解されるようになったことで、デジタルマーケティング課では広告施策以外のデジタル関連業務も行っています。具体的には、FCオーナー様を新規募集する際、デジタルマーケティングの知見を活かし、求人広告の配信やコーポレートサイトにおける求人ページの作成なども担当しています。

DX化を意識するようになったのはここ1~2年のことで、コロナによる影響が大きいです。コロナの影響でWebからの注文比率が増え、これまで以上にデジタル領域を補強する必要がありました。その一環として、組織体制の強化も行いました。

現在、マーケティング部は、デジタルマーケティング課・企画課・商品開発課・ITストアビジネス課・ITバックオフィス課の5つの課に分かれているのですが、IT部門がマーケティング部に属する企業は大変珍しいかと思います。しかし、サイトやPOSシステムなどにおけるあらゆるデータをIT部門が管理しているため、実は分析を行う際にデータ収集で連携することが多々あります。IT部門をマーケティング部配下とすることで、この連携をスピーディーに行えるというメリットがあるのです。また、これまでは縦割りの意識があり、他課との連携が取りにくい場合があったのですが、現在は横の連携を強化しており、組織横断でデジタル領域を強化し、企画立案やデータ分析を行っています。

マーケティング部 デジタルマーケティング課 課長 薮内 浩平様

コロナの影響で市場が激変 ――デリバリー戦国時代におけるピザハットの強み

Q. 市場の変化や特徴を教えて下さい

デリバリー業界に関しては、コロナの影響で急速な拡大が見られます。一方で、“ピザ” デリバリー業界に関しては、ここ数年横ばいな状態が続いています。主な理由は2つです。

1つ目は、食のジャンルを問わず、デリバリーが容易にできるようになったことです。これまでイートインやテイクアウトしか対応していなかった大手外食チェーン店が、デリバリーを行うようになりました。また、デリバリー専門の外部プラットフォーマーが数多く誕生していることも影響しています。外部プラットフォーマーとは協業関係を築いている一方、ピザハット以外の商品は競合にあたるため、広い意味での競合数は増えています。競合が増えた今、デリバリー業界は戦国時代に突入していると感じます。

2つ目は、コロナの影響で個食の概念がこれまで以上に浸透したためです。これまで、ピザは誕生日やクリスマスなど、年に1~2回の大勢が集まるイベントでご注文いただくことが多い傾向にありました。そのため、人が集まる機会が減少している昨今、ピザデリバリー業界の伸長率は緩やかな状態です。

デリバリー需要が増えている一方、テイクアウト需要も年々高まっています。これもコロナの影響になるのですが、外食はせず、家で召し上がられる方が増えているためです。また、テイクアウトは配送費用がかからないため、お得にご購入いただけるというメリットもあります。

テイクアウト需要の増加を受け、どのような場所に店舗を構えるかも重要になってきました。これまではデリバリーの比率が大きかったため、裏路地に店舗を構えていても問題はありませんでした。しかし、現在は、普段お客様が目にする場所や目立つ場所に店舗を構えることが重要となっています。お客様のテイクアウト需要に応えるだけでなく、認知度拡大にもつながるため、店舗の出店計画も変化してきています。

Q. 戦国時代というお話がありましたが、そのような中での貴社の強みを教えて下さい

強みは2つあります。

1つ目は、もちろん「おいしさ」です。味には自信があり、競合と最も差別化が図れている点だと考えます。ただし、ピザは大勢が集まって食べるという「体験」がメインになりがちのため、前回どこのピザを召し上がられたかを覚えている方は、残念ながら多くはありません。また、ブランドスイッチされにくいという特徴もあるため、いかに第一想起されるかが重要になります。そこで、「赤」と言えば「ピザハット」を思い出していただけるよう、赤を全面に打ち出した広告を展開し、競合との差別化を図っています。

2つ目は、個食に対応した商品ラインナップを揃えていることです。日常的にご注文される方はまだまだ多くはないのですが、おひとりの時間でもピザをお召し上がりいただけるよう「MY BOX(マイボックス)」という商品をご提供しています。このように、個食需要に対応した商品は、競合との差別化を図る上で強みとなっています。

個食に対応したおひとりさまピザセット「MY BOX」は、販売数100万個を突破(2021年10月現在)

施策を横断した広告効果の可視化に課題

Q. これまで抱えていたマーケティング課題や、MAGELLAN(マゼラン)を導入された理由を教えて下さい

これまで、オンライン・オフライン問わず、施策を横断した広告効果の可視化ができていないという課題を抱えていました。テレビCMやチラシ、デジタル広告など、それぞれの施策ごとに分析はできていたものの、すべてを統合して同じ土俵で分析することはできていませんでした。例えば、デジタル広告経由のご注文が何件だったという結果が出た場合でも、長年テレビCMやチラシに多くの投資を行ってきたため、純粋にデジタル広告だけの効果なのかがわからず、上層部への説明も難しいと感じていました。その点、MAGELLANならオンオフ統合分析が可能なため、この課題をしっかりと解決できると考えました。また、国内No.1の導入実績があるという点も決め手になりました。

また、米国にあるピザハットの親会社から、アトリビューション分析の実施を求められていたタイミングだったというのも、導入のきっかけの1つです。実は、グローバルでは共通のアトリビューション分析ツール(MMMツール)がすでに導入されていました。しかし、そのツールは日本語対応したものではなかったため、活用のしやすさの面で課題があると感じていました。また、海外のツールの場合、日本独自の環境や文化に対応した分析が難しいため、日本国内のツールを探していました。定性面もしっかりとインプットしないと正しいアウトプットは出てこないと考えているので、日本における私たちの前提条件をしっかりと理解し、汲み取ってくれるという点でもMAGELLANは最適だと考えました。

Q. MAGELLANの分析結果に対する印象を教えて下さい

まず、デジタル広告の正しい効果が、数値でしっかりと可視化されたと感じました。 これまでも、成果に対するデジタル広告の直接効果はある程度把握できていましたが、直接効果だけでなく、間接効果まで加味した分析はできていませんでした。昔からテレビCMが中心の業界だったことから、デジタル広告の効果が理解されにくいという状況だったのですが、今回MAGELLANの分析結果を活用することで、上層部に対してもきちんと数値的根拠を持って説明できると思いました。

また、ローカルエリアになればなるほど依然として電話注文が多く、テレビCMが主力と思われているFCオーナー様が多いのも特徴です。しかし、Webからの注文比率は全国的に増えているため、今回の分析結果を活用し、デジタル広告の有効性をオーナーの皆様に対してもしっかりと数値でお見せできるのは、大変ありがたいと思っています。

その他の施策についても、これまで肌感でしか把握できなかった費用対効果を数値で可視化することができました。これらの分析結果をもとに、今後のプロモーション戦略・戦術を再検討し、効率化を図っていきたいと考えています。

Q. 今後、MAGELLANをどのように活用していきたいと考えていますか?

今後は、四半期ごとに分析と分析結果の施策への落とし込みを行い、スピーディーにPDCAを回していきたいです。実は、過去も別のツールを活用して重回帰分析を行っていた経験があるのですが、その際は年に1回程度しか分析できず、スピード感に欠けていたという反省点がありました。

競合や外部プラットフォーマーとは圧倒的な広告量の差があり、プロモーションの量では太刀打ちが難しいのが現状です。そのため、MAGELLANによってスピーディーにPDCAを回すことで、プロモーションの効率化を図り、質の面で勝負していきたいと考えています。

部門を超えて連携を強化し、お客様視点のマーケティングを行う

Q. 最後に、マーケティングにおいて目指す姿について教えて下さい

便利なツールが年々増えていますが、導入して満足するのではなく、どううまく活用していくかがポイントだと考えています。私たちの場合、お客様との接点は店舗やオペレーション部隊などの現場です。そのため、ツールによって得られた示唆をいくら反映しようとしても、現場の受け入れ態勢が万全でなければアクションに移す意味はありません。数字だけを見るのではなく、しっかりと現場を見た上で連携を強化すること、そして、お客様視点に立った上で今後どうアクションすべきかを考えること、そこを忘れず大切にしていきたいです。