プリマハム株式会社

執行役員 マーケティング本部分掌
片桐 修二 氏

事業概要
「おいしさと感動で、食文化と社会に貢献」という企業理念のもと、ハム・ソーセージや食肉、加工食品を製造・販売。主力ブランドである「香薫®あらびきポーク(以下、「香薫®」)」や「スマイルUP!®」シリーズをはじめ、多様な消費者ニーズに応える幅広い商品ラインナップを提供し、日々の食卓を支えています。

取り組み内容
為替変動や原材料価格高騰など外部環境が変化する中、プリマハム様は限られたリソースでの成果最大化と、価格に頼らない「ブランド力」による市場でのポジション確立を目指し、データドリブンな意思決定基盤の構築に取り組んでいます。そして、データに基づく説得力ある戦略立案と組織連携による目的・目標の明確化を実現しました。

データサイエンスで王者に挑む、
プリマハムのマーケティング変革

エグゼクティブサマリー

直面していた課題

各マーケティング施策の投資対効果(ROAS)が不明瞭であり、客観的な把握が求められていました。また、価格競争から脱却し、商品が「ブランド力」で選ばれるための構造作りが論点となっていました。

データサイエンスによるアプローチ

まずはマーケティング・ミックス・モデリング(MMM)を用いてROASを可視化し、マーケティング投資の「量」の最適化を実施。続いて、コンシューマー・ミックス・モデリング(CMM)を活用して消費者に響くブランドのコア価値を解明し、戦略の「質」の最適化を図りました。

もたらされた成果

予算配分の最適化に加え、意思決定プロセスが大きく変化しました。外部からの提案や社内の定性的な意見への依存から脱却し、第三者視点の「データ(ファクト)」が共通言語に。経営層への論理的な説明基盤が形成され、新設されたマーケティング本部内での部門間連携も促進されるなど、組織的な成果を生み出しています。

フェーズ1:「量」の最適化

予算策定における客観的指標の必要性

同社では、主力商品である「香薫®」において、TVCMやデジタル施策、各種販促キャンペーンなど、複合的なマーケティング施策を展開していました。しかし、どの施策が売上にどの程度寄与しているのか、それぞれの効率を横並びで比較検証することが難しい状況にありました。

そうした状況下では、予算策定の際には広告代理店からの提案や過去の踏襲を判断材料とせざるを得ない側面がありました。限られた予算の中で、どの施策にどれだけ投資すれば売上に結びつくのか、客観的なファクトに基づいた検証が求められていました。

明らかになった施策のポテンシャル

サイカのMMM分析基盤「MAGELLAN(マゼラン)」により、各施策の効果・効率が定量化され、いくつかの重要な事実が明らかになりました。

  • TVCMの効率性:分析の結果、TVCMのROASが平均を上回っているだけでなく、売上にも大きく貢献していることが確認されました。また、出稿直後だけでなく、その後も中長期にわたって成果に影響を与える「長期蓄積効果(Brand Equity)」があることが判明し、これを加味して評価した結果、効率がさらに大きく上昇することがわかりました。
  • デジタル施策の役割:公式SNS(LINE、Xなど)についても、「長期蓄積効果」が確認されました。友だちやフォロワーへの定期的な接触により、中長期的視点でブランドイメージの構築に寄与している可能性が示唆されました。
施策による効果・効率比較

  • キャンペーン効率のばらつき:全国で実施されている各種キャンペーンについて深堀りしたところ、参加ハードルやコスト構造の違いにより、効率が良いものと改善の余地があるものが定量的に比較できるようになりました。
全国キャンペーンによる効果・効率比較

「ROAS最大化」を根拠とした意思決定

これらの分析結果を基に、次年度の予算編成については前年を踏襲するのではなく、「ROAS最大化」という明確な基準を設け、検討されることに。TVCMの最適出稿量の見極めや、デジタル施策への予算配分の調整、一部キャンペーン内容の見直しといった具体的なアクションプランが策定されました。これらのデータは経営層への説明材料としても活用され、納得感のある予算配分につながりました。

「広告代理店やメディアに属さないサイカの分析結果を用いることで、社内や経営層に対して『都合の良いデータ』ではない、客観的な説明が可能になりました」(片桐氏)

次年度の売上見込みと施策全体ROAS

フェーズ2:「質」の最適化

価格競争から脱却するブランド戦略の模索

投資の「量」の最適化に関する方向性が見えた後、同社はブランド戦略の「質」の再構築に着手しました。

昨今のハム・ソーセージ業界は、原材料費の高騰などによる価格改定の影響を受け、市場全体の生産量が減少傾向にあるなど厳しい環境にあります。その中で「香薫®」がシェアを維持・拡大していくためには、安売りによる競争ではなく、「香薫®だから買う」という指名買いの動機を強め、選ばれ続けるブランドになる必要がありました。

社内では、独自の製法による「11種類の挽きたてスパイス」や「桜スモークの薫り」が強い武器であると認識されていましたが、それが消費者にどこまで伝わり、購買行動に結びついているのかを検証することが次のテーマとなりました。また、調査・分析と商品企画、販促・プロモーション部門を統合した「マーケティング本部」が発足したことで、戦略や施策を一気通貫で実行する体制も整ってきました。

ロイヤル化の鍵の特定

サイカのCMM分析基盤「COMPASS(コンパス)」を用いて、「香薫®」購入者のロイヤル化に向けたドライバー(鍵)解明に取り組みました。

その結果、ブランドを選択する際の決定的な要因に加え、現状のコミュニケーションと消費者の期待値との間に存在する認識のギャップも判明しました。さらに分析を深め、生活の中での「具体的な使用体験(シーン)」を描写することが、ブランドへの共感を生むために有効であることが示唆されました。

これを受け、現在は消費者の生活文脈に深く入り込んだ「体験価値」の創造・追求へと、コミュニケーション戦略の軸足をシフトさせています。

※本取り組みの具体的な分析結果およびそれに基づく戦略の詳細については非公開としております

ドライバー一覧と分析結果

・対象者スコア差分:「一般ユーザー」と「ロイヤルユーザー」のスコア差分(「ロイヤルユーザー」の評点ー「一般ユーザー」の評点)
・スイッチ率:ドライバー要素のスコアが1pt上昇した際、「一般ユーザー」から「ロイヤルユーザー」に遷移する確率の変化(インパクトの大きさ)

データが導くコミュニケーションの確度向上

この結果を受け、同社はコミュニケーションの方向性をより確かなものにするプロセスへと転換しました。代理店へのブリーフィングにおいても、データに基づく明確な訴求イメージを提示し、ユーザーのロイヤル化に向けた具体的な戦略・アクションの検討が可能になっています。

「この分析結果は、経験からくる『なんとなく』の判断ではなく、ぶれずに進むための重要な役割を果たしています。たとえば、これまではタレントありきで企画が決まることもありましたが、今は『こういうターゲットに、こういう企画が必要だからこの人が合う』というように論理的に進められるようになりました」(片桐氏)

今後とまとめ

次に向けた論点

データに基づく意思決定のプロセスを導入した同社にとって、PDCAサイクルの定着が今後の重要テーマです。今回策定した戦略やその実行結果を定点観測し、MAGELLANによる予算の最適化やクリエイティブの効果検証を通じて、継続的にアクションへ反映させるサイクルの実現を目指しています。

「サイカは我々が言語化できていない『やるべきこと』を汲み取り、必要なときにしっかりペースメーカーとして並走してくれています。また、マーケティング本部発足のタイミングで本プロジェクトが推進されたことで、現場メンバーが分析を通じて顧客理解を深め、業務に対して前向きに取り組む良い変化が生まれたと感じています。新設されたばかりの組織はまだまだ未熟な部分も多いですが、サイカとそこのスキルアップも図っていきたいです」(片桐氏)

まとめ

原材料費の高騰や市場の変化が激しい今、価格競争に頼らず「ブランドの力」で選ばれ続けることは、多くの企業にとって不可欠な課題です。今回のプリマハム様の事例は、こうした変革に挑むためのヒントが凝縮されています。

同社は、外部パートナーからの提案や社内の定性的な意見に頼りがちだった意思決定プロセスを、客観的なデータを取り入れることで自社の現在地を冷静に把握し、意思決定の精度を向上させています。投資の「量」を適正化しつつ、ブランドの本質的な価値をデータで証明し、戦略の「質」を見直す。この両輪を回すことで、初めて価格に左右されない強固な事業基盤が築かれます。

また、こうしたデータが部門の壁を越える「共通言語」となり、組織全体が同じ方向を向くことで、戦略の一貫性が生まれます。マーケターが確信する次の一歩を、組織を動かす「確かな根拠」へと変えていく。本事例が、これからのブランドづくりに取り組む皆様にとって、自社を前進させる一助となれば幸いです。

マーケティングの意思決定を、データで前に進める

抱えられている課題が本事例と異なる場合でも、データを用いたマーケティングの最適化や意思決定にご関心がありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

その他のお客様の声

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スマートフォン・携帯電話など従来の通信サービスを中心に、幅広い事業を展開。基盤となる通信を核に、コマース・金融・エネルギー・エンターテインメント・教育などのライフデザインサービスを連携しながら拡充することで、新たな体験価値の提供を目指しています。