広告の正しい効果測定にマーケティング・ミックス・モデリングを使うべき理由
広告のほんとう
広告の効果、実は測定できていない?
テレビCMや駅前の巨大看板、タクシーで流れている動画広告、ポストに入っているチラシなど、私たちは日常生活で様々な広告を目にします。そうした広告は、私たち消費者の購買行動にどの程度影響を与えているのでしょうか。
どの業界でも「費用対効果を重視せよ」といわれますが、実は、こういった広告の効果は正しく測定できていないことが多いのです。そのため、「去年も出したから」「きっと認知度が上がるだろう」というように、経験や勘に頼って広告を出しつづけている企業は少なくありません。
日本の総広告費は6兆円を超えます(*1)。
企業としても、広告宣伝費は巨額の投資にほかなりません。
「効果がわからないままお金をかけ続けていいんだっけ?」
私たちサイカが提供する広告効果分析ツール『MAGELLAN(以下、マゼラン)』の背景には、そんな課題感があります。
広告には、効果が見えやすいものと見えにくいものがある
広告には、効果が見えやすいものと見えにくいものがあります。
ネットサーフィンをしていると勝手に表示される、マンガの広告やショッピングサイトの広告など、インターネット上に出稿される広告を「オンライン広告(または、インターネット広告)」といいます。オンライン広告は、画面表示からクリック、購買まで、広告を見た人の行動履歴を追うことができるため、広告が売上などに与える効果が見えやすい広告です。
一方、テレビCMやタクシー広告、看板広告など、オンライン広告のように広告を見た後の個人の行動を把握できないものは「オフライン広告」と呼ばれます。オフライン広告はオンライン広告の規模を超える投資が行われていますが(*2)、その効果は見えにくく、過去の事例を参考にして出稿するなど、感覚的に施策を運用しているケースも多いです。
また、「テレビCMを見て、その商品をネットで検索。後日、天気がよかったので店舗まで行って店員さんに相談。割引もあるので店頭で購入した」というように、消費者が商品を買うまでの行動には、さまざまな要因が影響し合っています。
天気や気温、競合企業の施策など、自分たちでコントロールできない要因も購買に影響している中、広告同士の関係性や、購入にいたるまでの消費者の行動、外部要因の影響を可視化・数値化するのも難しいといわれています。
(*1)出典:電通「日本の広告費」https://www.dentsu.co.jp/knowledge/ad_cost/
(*2)オンライン広告(インターネット広告)の市場規模は約2.2兆円。一方、オフライン広告(新聞・雑誌・ラジオ・テレビのマスコミ四媒体+プロモーションメディア)の市場規模は約3.9兆円。(出典:電通「日本の広告費」https://www.dentsu.co.jp/knowledge/ad_cost/)
こんな分析はキケン
一つの施策とその成果のみで「効果あり」と判断する分析はキケン
「広告効果を分析できる」と謳うツールはたくさんありますが、中には効果を正しく分析できていないまま「効果あり」と評価しているものもあるため、注意が必要です。
たとえば、最近よくあるテレビCM効果測定サービスの中には、テレビCMの出稿データと、消費者の行動データ(たとえば、Webサイト上の購買データなど)を1対1で比較し、「テレビCMは効果があった」と判断してしまっているものも一定数存在します。ですが、こうした分析はとても危険です。
なぜなら、前の章で書いたとおり、現代の消費者の購買行動にはさまざまな要因が影響を与えていて、最終的な目標としている売上などの成果に、一つの施策だけが影響を与えていることはほぼないからです。
ほかの施策の影響や施策同士の関係性を考慮して分析したら、「実はほかの施策の影響のほうが大きかった」という結果になる可能性もあります。
こうした1対1の分析に頼ってしまうと、アクションを誤り、最終的に損失を被ってしまう恐れもあるため注意が必要です。
どんな広告も見える化する、マーケティング・ミックス・モデリング(MMM)
MMMとは
マーケティング・ミックス・モデリング(以下、MMM)とは、オンライン広告とオフライン広告の効果、天気や気温、競合企業の動向といった外部要因が成果に与えた影響を統合的に分析する効果測定手法です。
MMMの仕組み
MMMでは、統計分析の技術を使います。統計分析は、さまざまなデータを組み合わせ、それらの関係性を方程式化することで、データの傾向や特徴、データ同士の関係性を明らかにしていく分析手法です。
「広告のほんとう」に書いたとおり、広告・マーケティングの効果には、さまざまな施策や要因が影響しあっています。そのため、広告効果を正しく測定するためには、要因同士の関係性や相性を明らかにする「パス解析」といわれる分析手法なども取り入れたMMMが適しています。
(*3)要因同士の因果関係や相関関係を矢印で表す「パス図」を用いて、要因同士の複雑な関係を明らかにする分析
MMMにできる3つのこと
①オフライン広告の効果が分かる
MMMによる分析を行うことで、「効果が見えにくい広告」といわれるテレビCMや新聞広告、チラシなど、オフライン広告の効果を数値化できます。
②施策同士の関係性や相性が分かる
MMMでは、広告が成果に与えた効果だけでなく、たとえば「雑誌広告がWeb広告の効果をアシストしていた」といった施策同士の関係性や、天気や気温など外部要因の影響も可視化できるため、「どの施策とどの施策の相性がよいのか」「顧客がどのような流れで購買に至っているのか」「どのタイミングでこの施策を打つと効果が高いのか」なども分かります。
大手企業だと、並行して実施するマーケティング施策が100以上あることもあります。
一つひとつの施策ごとに効果を測ろうとすると誤った評価をしてしまう危険性が高いです。施策ごとの関係性まで考慮し、各施策の効果を正確に測ることで、マーケティング成果を最大化することができます。
③売上を最大化するための、広告費の予算配分がわかる
MMMに使われる統計分析では、施策が成果に与えた影響や施策同士の関係性を方程式化します。そのため、「売上を最大化するためには、それぞれの施策にいくら予算をかけるのが最適か」を推測でき、未来の予測を立てることが可能です。
MMM、今後の可能性
オンライン広告はこれまで、Web上の個人の行動を追いかけて記録することで効果を測定してきました。しかし、個人の行動ログであるCookie(クッキー)がプライバシー保護の観点で2023年までに使えなくなるため(*4)、オンライン広告の測定精度は下がるといわれています。
MMMは海外では一般的なものであり、社内に分析チームを持っていたり、分析ツールを提供したりしている企業も多くあります。国内で実践している企業はまだ多くありませんが、今後海外企業にならってMMMを取り入れていく企業は多くなるでしょう。
オンライン広告とオフライン広告を統合的に分析でき、測定精度も高いMMMの需要は、マーケティング領域でますます高まっていくと予想されます。
◆クッキーレス化がマーケティングに与える影響については、以下の記事も参照ください
クッキーレス化はピンチではなくチャンス―クリック偏重から、ユーザー体験重視のマーケティングへ | 株式会社サイカ
個人情報保護規制の今後の見通しと、企業が取るべきアクション | 株式会社サイカ
◆MMMについて、国内外の動向については、以下の記事も参照ください
クッキーレス時代、日本がマーケティングにMMMを取り入れるべき3つの理由 | 株式会社サイカ
(*4)Googleは、Google Chromeをはじめとする各Webブラウザにおいて、2023年までの「サードパーティークッキーの廃止」を発表している。
MMM×ツール=マゼラン
マゼランの強み
これまで、統計分析の専門知識を必要とするMMMは、データサイエンティストでなければできないと思われていました。そのため、MMMを実践をしたいときには、専門のコンサルティング会社や調査会社に依頼するのが一般的でした。
一方で、最近増えてきた「テレビCMの効果測定が簡単にできる」と謳うツールは、テレビCMの出稿データと成果を、1対1で簡易的に分析しているものが多いため、分析の精度に不安があります。
サイカが提供するMMMツール「マゼラン」の強みであり、国内で競合がいないといわれる所以は、専門知識がない方でも、精度の高いオンオフ統合分析を実践できる点です。マゼランのリリースから5年間、およそ200社にも及ぶ170社以上の国内大手企業のデータ分析を行ってきた実績があるからこそ、経験から得られたノウハウをマゼランの分析アルゴリズムや機能開発に反映させることができます。
競合との比較
- ほかのテレビCM効果測定ツールとの違い:精度が違う
施策同士は関係しあっているため、施策同士の関係性まで考慮して一つひとつの施策の効果を正確に測ることが重要です。一般的なテレビCM出稿サービスは、1対1の分析で「効果があった」と判断しているものも多いですが、マゼランはマーケティング施策同士の関係性を考慮して分析するので、それぞれの施策の効果を正しく分析できます。
- コンサルティング会社・調査会社との違い:分析難度・時間・お金が違う
コンサルティング会社や調査会社に依頼すると、プロのデータサイエンティストが統合分析を行います。分析精度は高いですが、時間と費用がかかります。
また、分析結果は次のアクションに繋がることが重要ですが、外部のコンサル会社は分析のみを行うことが多いので、アクションの決定・実行につながる分析結果が出てこない場合もあります。
サイカは、「データ分析の民主化」を掲げ、これまで専門知識が必要とされていたMMM(オンオフ統合分析)を専門知識がなくても扱えるようにしているため、時間とお金を抑えて、アクションにつながる精度の高い分析を実現できます。
メディアの多様化、消費者の生活変化など、マーケティングを取り巻く環境は常に変わり続けています。経験と勘だけに頼っていては成果を出し続けるのが難しい時代。だからこそ、正しい分析を行い、データを企業の武器にすることをおすすめします。
[イラスト]たべあずちゃん