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社会を変えるものづくりを──MAGELLAN初代プロダクトマネージャーが語る「色褪せない初心」と「PMの使命」

2015年8月、開発本部プロダクトマネージャー・岩澤利貢(いわさわ・としつぐ)は、ADVA MAGELLANの初代プロダクトオーナー(PO)としてサイカに入社。構想段階からリリースまで開発に従事した後、営業として500社以上のクライアントとお会いしてきました。「誰よりもプロダクトに関わってきた自負がある」と語る岩澤は、その経験を活かし、現在開発本部のプロダクトマネージャー(PM)として活躍しています。

マゼランの開発者・岩澤がものづくりの道に進むきっかけとなったのは、高校時代に出会った「橋」だといいます。岩澤のものづくりへの想い、その根源、PMとして抱く今後の展望を聞きました。

統計との出会いと、マゼランの構想が生まれた背景

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岩澤 利貢/Toshitsugu Iwasawa

開発本部プロダクトマネージャー(PM)。2015年8月にサイカ入社。面接の場で平尾と意気投合し、マゼランの構想を一緒に考えてきたサイカの生き字引。PM以前はセールスを担当し、500社以上の担当者とお会いした経歴を持つ。

── 岩澤さんは、マゼランの技術のベースにある「統計」にはいつ出会われたんですか?

統計をはじめて知ったのは、Web制作会社で働いていたときです。お世話になっていた保険セールスマンの方と話しているときに、「統計って知っていますか?」と聞かれました。彼は「統計は絶対に勉強したほうがいい」と言って、『金鉱を掘り当てる統計学』(講談社、2001年)という本を勧めてくれたんです。

勧められるがままに読んでみると、「統計を使えば、複雑な経営上の数値や株価などの予測ができる」と書いてありました。「これは、ビジネスに活かせる!」と衝撃を受けたんです。これが統計との出会いです。それから統計の基本を独学で勉強し、仕事にどう活かすかを模索しました。

その後、toC向けのアクセス分析ツールや、ブログ作成ツールを作っている会社でアドテックに携わることになります。

最初は、自社サービスを周知するため、背中にQRコードを印刷した忍者の服を着て、電車に乗ったり街を歩いたりしていました。同僚のアメリカ人と韓国人と3人で忍者の格好をしているのがおもしろかったのか、ツイッターに投稿されたり、某テレビ局のイベントに参加した際には、人が集まりすぎて追い出されたりしたこともあります。

この時期は、ちょうどSSP(サプライサイドプラットフォーム)の考え方が日本に広がってきたタイミングで、新しい広告の仕組みを作るプロジェクトの責任者に任命されたんです。ここで広告分析をやっているうちに、「統計を活用した広告分析サービスを作れば、より価値の高いデータを提供できるのではないか」という、マゼランのもとになる発想が生まれました。

── その着想をサイカで実現することになったのですね。

サイカに入社するまで、数社でいろんな経験をしてきましたが、思い返すと「自分のやりたいことはなんなんだろう」と探ってきた歴史だったと思うんです。その結果たどり着いたのは、Slerとして「人々の生活を支える社会インフラを維持する」でも、Web制作で「オーダー通りのWebサイトをつくる」でもなく、「自分でビジネスを考え、自分でビジネスをつくりたい」だったんですよね。

そんなとき、統計を使ったプロダクトを作ろうとしているサイカのことを知りました。

面接で、CEOの平尾さんに自分が作りたいプロダクトの構想を伝えると、面白いくらい考えていることが一致したんです。面接中に2人でプロダクトの全体像を議論し、正式に入社する前には、すでにモックを作っていました。

誰よりもお客様の理解を深めた、3年半の営業経験

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── プロダクトオーナーとして入社した岩澤さんは、その後、営業部門の責任者を務めることになります。この変化には、どんな経緯があったんですか。

僕がマゼランのプロダクトオーナーをしている頃、サイカは大手広告代理店とパートナーシップを組み、マゼランを販売させてもらっていました。毎日その会社に常駐し、マゼランを提案できそうな案件をもらっていたんです。

それでも営業成績はなかなか上がらない。そんなとき、新宿のチェーン居酒屋で海鮮を焼きながらCEOの平尾さんに言われた一言が、営業の道に進むきっかけになりました。

「自社の営業を強くしたい。THE MODEL式のセールス組織を自分たちでつくっていきたい。いちばんマゼランを知っていて、いちばんマゼランの価値を信じている人物に営業チームを引っ張っていってほしい」と。

平尾さんは、「プロダクトオーナーは、いちばん売れる人物がなるべき」という考えも持っていました。ゆくゆくは営業の経験を活かしてもう一度プロダクトづくりに関わることも見据えて営業を打診され、お受けすることにしたんです。

── それまでに、営業の経験はあったんですか?

いえ、全くありません。ですから、最初はびっくりしました。でもやっぱり、営業で成果を出す人も、良いプロダクトを作る人も、お客様のことを誰よりも理解している人なのだと思います。事業の立ち上げフェーズで、お客様に価値を届け、グロースしていくのがプロダクトオーナーの責務だと考えると、営業も自分がやるべきことだと思い、営業チームにコミットすることを決めました。

それからは、営業を1から勉強して、マーケ、インサイドセールス、フィールドセールスを統括しながら、結果を出すために試行錯誤を繰り返す日々。そうした中で、事業戦略やプロモーションの経験が豊富な彌野さん(取締役COO 彌野正和)の加入をきっかけに、ターゲットと訴求メッセージを整え、資料や商談を強化したことで、一気に成果が出るようになりました。

── 現在岩澤さんは、開発サイドに戻られプロダクトマネージャー(PM)として活躍されています。営業の経験は今に活きていると感じますか?

はい。営業チームにいた3年半、現場で働く方から社長まで、1000人以上の方とお話してきました。さまざまな立場の方がどんな課題を持っていて、何に価値を感じるのかを聞けた経験は、開発側に戻ってきた今、プロダクトを作る上で大きな財産になっていると感じています。

プロダクトマネージャーに戻ったのは、マゼランを包括する新サービス「ADVA」の構想が出てきたタイミングでした。ADVAは広告業界、ひいては社会を変える可能性のあるプロダクトです。自分が抱いていた「社会を変えるようなものづくりをしたい」という想いを叶えるためにも、開発側に戻りたいと平尾さんに伝え、2020年の11月、PMに就任したんです。

シドニーの美しい橋に魅了され、ものづくりの道へ

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──「社会を変えるようなものづくりをしたい」という言葉に強い思い入れを感じました。そう思うようになったきっかけはなんだったのでしょうか。

高校時代に行ったオーストラリア旅行で、シドニーハーバーブリッジ (Sydney Harbour Bridge) という、90年の歴史を持つ、ものすごく大きくて綺麗な橋を見たんです。そこで観光ガイドの方が話してくれたこの橋ができたことで、交通が便利になり、人々の生活が大きく変わった」という説明に、心を射抜かれました。その感動の最中に「自分も、人々の生活や社会を変え、歴史に残るようなものを作りたい」という想いが湧いてきたんです。

それから建築家を目指し、有名な建築学部がある大学を受験したんですが、見事に全部落ちてしまい、滑り止めで受けていた情報学部に入学することになりました。でも偶然にも、そこで今の仕事につながるコンピューターサイエンスを一通り学ぶことができたんです。

ビジョンに人を惹きつけ、経営と現場に橋を掛ける

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一般的にPMは「テクノロジー、ビジネス、デザインの3つのスキルが不可欠な職種」と言われています。アメリカでは、どれか1つを極めた人材が、他の2つの領域を身につけながら最終的に目指す役職がPMとなっているようで、本当に幅広い経験と知識が必要なポジションです。

さらにPMには、最新の情報やテクノロジー、流行などをいち早くキャッチアップしてプロダクトに反映させていくことが求められます。サイカのPM組織でも、情報をすばやくキャッチアップし、深掘りしてプロダクトに活かすという一連の流れを、型化するチャレンジをしています。

── 個人に依存するのではなく、組織としても成長しようと挑戦しているんですね。

そうですね。PMは個人で完結する仕事ではなく、プロダクトに関わるさまざまな人を動かし、ビジョンで人をワクワクさせる仕事です。

その一つの取り組みとして、今年の6月にプロダクトロードマップ策定プロジェクトを行いました。これは、プロダクトのビジョンを社内のみんなに深く理解してもらい、よりワクワクしてもらえるよう、ロードマップをビジュアル化するプロジェクトです。

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プロダクトロードマップ公開後のアンケートでは、8割以上のメンバーから「目指す方向性や想いが伝わって、ワクワクした」という感想をもらいました。この絵を見ながら、「どうやって、この“山”を目指そうか」といったディスカッションも生まれています。経営と現場メンバーをつなぐ橋を作れたのかな、と思っています。

「テクノロジー・ビジネス・デザイン」の3つのベーシックなスキルを磨きながら、最新情報をキャッチアップし続け、新しいアイディアに人を惹きつけていく。そんなPM組織を作っていくのが、これからの挑戦ですね。

── ご自身のキャリアの展望も教えていただけますか?

僕が目指しているのは、わかりやすいところで言えばCPO(チーフプロダクトオフィサー)です。CEOが描いた会社の世界観を、プロダクトに落とし込んでいくのがCPOの役割。世界を変えるプロダクトを、最高責任者として作っていきたいです。

高校生の頃から抱いている「人々の生活を変えるようなものづくりをしたい」という想いは変わっていません。引き続き、サイカでその夢を実現していきたいと思います。

※インタビュイーの所属・役職は取材当時のものです。

[インタビュー・文]佐藤史紹
[企画・編集]川畑夕子(XICA)