採用関連記事一覧

プロダクトロードマップは公正な世界への地図──ビジョンにリアリティを与えたグラフィックの力

プロダクトのビジョンを語る「プロダクトロードマップ」が完成した。

プロジェクトオーナーである、サイカ開発本部プロダクトマネージャー(以下、PM)岩澤利貢(いわさわ としつぐ)が、プロダクトのビジョンを伝える手段として選んだのはグラフィック。

岩澤はこのグラフィックにどんな想いを込めたのか。また、メンバーはどのように受け止めたのか。そして、ADVA(アドバ)が描く世界とは。

今回は、自身もプロダクトロードマップ策定プロジェクトに参画したCEO平尾が、CTO Officeでテックリードを務める天野と岩澤を招き、プロダクトロードマップ策定の背景と、サイカが描くビジョンについて語り合った。

平尾 喜昭/Yoshiaki Hirao(写真左)

サイカCEO。父親の倒産体験から「世の中にあるどうしようもない悲しみをなくしたい」と強く思うようになる。慶應義塾大学総合政策学部在学中に統計分析と出会い、卒業直前の2012年2月、株式会社サイカを創業。創業前にはバンドマンであったというユニークなキャリアも持つ。

岩澤 利貢/Toshitsugu Iwasawa(写真中央)

開発本部プロダクトマネージャー(PM)。プロダクトロードマップ策定PJTのオーナーを務める。2015年8月にサイカ入社。面接の場で平尾と意気投合し、マゼランの構想を一緒に考えてきたサイカの生き字引。PM以前はセールスを担当し、500社以上の担当者とお会いした経歴を持つ。

天野 太智/Taichi Amano(写真右)

FICC、ラクスル、Speeeなど4社で開発と組織づくりの経験を積み、2020年3月にサイカ入社。難易度の高い技術課題を解決するCTO Officeのマネージャーを務める。現在は、数理エンジンとWebアプリケーションを含むリアーキテクチャプロジェクトのオーナーを担う。

マーケティングの産業革命を起こしたい

平尾 本日はよろしくお願いします。まずは、今回プロダクトロードマップで描いたサイカのビジョンについて、岩澤さん、教えていただけますか。

岩澤 はい。サイカが目指すビジョンは、いわばマーケティングの産業革命だと思っています。

一部の人にとってはメリットがあるけれど、ほかの誰かにとっては平等ではない。そこに僕らが公正・平等を測る定規を投じることで、誰もが適正な評価を受け、届けたいものが届けられる、正しいものを作っている人にちゃんとお金が落ちる世界を実現しようとしています

平尾 ビジョンに掲げているとおり、「才能開花に満ちた公正な世界をつくる」っていうのが僕らの目指すところですよね。データ分析を民主化することで、情報の非対称性や、当たり前になっているけれど実は疑問を持つべき問題に、誰もが気づけるようにする

産業革命の文脈で言うと、エジソンは電気を作ったけれど、彼が本当にすごいのはそれだけではなく、電気を供給する会社(※1)を作ったことだと思うんです。発明で終わらず、みんなが使えるものにした。大きな視点でいうとサイカはそんなことをやろうとしています。

天野 バリューチェーンそのものを変えようとしていて、そこにしたたかなロードマップがあるのがサイカのすごさだと思っているし、エンジニアとしてワクワクできる理由です。

平尾 最終的には、マゼラン(※2)ADVAをデファクトスタンダードにすることで広告業界の活性化に貢献したいと思っています。そのためにはまず、僕ら自身が市民権を得る必要がある。広告代理業として胸を張れるレベルまで最速で進化したいですね。

(※1)世界最大の総合電機メーカー、ゼネラル・エレクトリック(略称GE)
(※2)2020年9月、マゼランは「ADVA MAGELLAN(アドバ マゼラン)」に改称。データサイエンスを駆使して、CMを中⼼としたマーケティングの成果を最⼤化させるサービス「ADVA」のラインナップに包含された。テレビCMやWeb広告はもちろん、あらゆる広告施策の効果を分析/可視化し、最適な予算配分をシミュレーションするツール。

プロダクトロードマップは、迷ったときに立ち返る場所

平尾 次に、今回のプロジェクトの背景について聞きます。プロダクトロードマップは最初テキストでまとめていたんですよね。そこからグラフィックに舵を切った。ロードマップを共有する場としてタウンホールミーティング(※3)という形も取りましたね。

岩澤  はい。プロダクトロードマップ策定プロジェクトは、平尾さんの脳内にあるビジョンを言語化し、自分の想いも詰め込んで具体化し、みんなが理解できる形でアウトプットするものでした。

PMとして意識しているのは、いかにビジョンにワクワクしてもらうか。手触り感のあるリアルなものだと感じてもらえるか。ワクワク感を伝えるのはPMの大事な役割なんです。テキストでまとめたときに感じた「目指すものが見えづらい」「作り手の想いが伝わりづらい」という課題と、立場による理解度・熱量の壁を、グラフィックの力で越えたいと思い、株式会社沼野組の沼野友紀さんに制作をお願いしました。

完成したプロダクトロードマップ

天野 これまでの他社での経験でいうと、「こういう世界をつくろう」というビジョンはあるけれど、一段二段下がった抽象度のものがなく、プロダクトをつくる側として、経営と開発間の架け橋ができていない苦しさを感じたことがあります。ビジョン・ミッションに基づくプロダクトロードマップは持たず、KPIをどう伸ばすかを追いかける開発組織もあります。そういう意味でいうと、今回のようにビジョンをグラフィックで表現する取り組み自体めずらしいかもしれないですね。

▲開発本部のメンバーに、これまでプロダクトロードマップをどのように共有されてきたかを聞いた。これまでグラフィックを使った共有を体験したメンバーはいなかった。

平尾 共有した効果を振り返ってみると、プロダクトロードマップが、迷ったときに立ち返る場所になった気がするんです。どれだけ丁寧に共有しても時間とともに風化してしまうから、戻れる場所ができたのはとてもよかったと思う。

天野ビジョン・ミッションが組織の持ち物になった感覚もありますね。

平尾 確かに。プロダクトロードマップを共有した全社のタウンホールミーティングでは、部署関係なく回答しきれない数の質問が上がりましたよね。少なくともみんなにとって考える対象になった。

天野 ロードマップって「渡されるもの」というイメージがあったんですが、みんなでディスカッションすべきものになりましたよね。

平尾 テキストで共有したら、「ふーん」で終わっていたかもしれません。「この山の2つ目まではどう進んでいくのか」「1つ目と2つ目、どちらから着手するほうが生産性が高いか」みたいなディスカッションは、このグラフィックがなかったら生まれなかったかもしれない。

▲岩澤がこだわってきたワクワク感の共有。ロードマップ共有後に取ったアンケートでは、多くのメンバーが「ワクワク」を感じていた

▲熱量の伝達も、8割のメンバーが「よく伝わった」と回答

(※3)経営陣と現場のメンバーが直接対話できるような形式で進められるミーティングのこと。サイカでは、slidoを用いた質疑応答をメインコンテンツとし、全社の重要トピックについてより深く理解することを目的に月次で実施している。

揺るがず、諦めず、正しいことを

岩澤  マゼランは2020年9月にリリース4周年を迎え、マゼランを包含したソリューション「ADVA(アドバ)」をリリースしました。

4年前、マゼランを作り始めた当時のテレビCMの効果可視化って、「できたらいいよね」と言われるような、ちょっと非現実的なものでしたよね。まだ無い市場をつくっている感じがありませんでした?

平尾 うん。「会社まで空飛んで出勤できたらいいよね」と同じ世界観だった(笑)

統計分析を主としたMMMは、70年代から世界中のグローバルカンパニーが使っている分析手法で、海外では当たり前に使われてきました。ただ、日本では浸透してこなかった。

その中で僕らは、統計分析の精度とスピードをギリギリまで突き詰めて、統計で何ができるのかをいろんな角度から伝え続けてきました。

▲マゼランの構想開始からいまに至る、マゼランの歴史

岩澤  「何十億かけているものの効果がわからないって変じゃない?」っていうシンプルなことを、4年間ずっと言い続けてきましたよね。統計の価値を世の中に伝えることを諦めなかったのは大きいと思います。

平尾 ほんとそう。揺るがしちゃいけないものは揺るがさないように努力してきましたね。

統計という難しい技術を諦めて、わかりやすくカンタンなものを提供することもできたと思うんです。でも僕らとしては、「可視化」に対していちばん精度が高いんだ、というプライドを絶対に毀損しちゃいけないと思ってた

岩澤  その信念を揺るがさなかった結果、「可視化する」という当たり前のことをやったほうがいいよね、という雰囲気を生み出し始めている気がします。

平尾 プロダクト(ツール)があったことも大きいですよね。

岩澤  そうですね。コンサルという形ではなく、いつでもすぐにアウトプットを見られるツールを持っていたことで、「テレビCMの効果は定点観測すべきものです」という説明ができました。

天野 僕は、目指す世界観と同じくらい、企業としての倫理観も大事だと思っています。

平尾 そうですね。例えば、広告代理業としてのADVAの文脈で僕らがクライアントに提案するとき、分析してみたら自分たちではなく別の会社にお願いしたほうが成果が出る、という結果になることもあるんです。その場合は、「データサイエンスに基づくと、うちではなく○○社さんに頼んだほうがいいです。その場合、このくらい成果が出ます」とお客様にプレゼンしてきました。

お客様からはめちゃくちゃビックリされますけどね。データドリブンに他社を薦めるという(笑)
自分たちが論理的に正しいと思うことをするというのも、サイカの昔からのスタンスですね。

マーケターの意識改革でマーケティング業界が飛躍する

平尾 4年間、マゼラン、岩澤さん、メンバーのみんなと走ってきました。天野さんのような優秀なメンバーもジョインしてくれて、さてこれから何をしていくのかってところを聞きたいと思います。まず岩澤さん、ビジョン達成に向けた足元のチャレンジを教えてもらえますか。

岩澤  サイカが目指す「マーケティングの適正評価の民主化」は、「マーケター自らが分析してみたい、成果を見続けたいと思える世界をつくること」だと言い換えられます。忙しいから結果だけ教えてもらえればいいと思っているマーケターの方に、自分たちで分析したほうがいい、自分たちが分析すべきだ、と思ってもらうことが、マーケティングの民主化の第一歩です。

この第一歩を踏み出すことができれば、マーケターが自分の手で広告効果を適正に評価できるようになり、やがて業界のカタチが変わっていく。マゼランがあることで業界全体を大きく躍動させたいと強く思っています。

この世界観を実現するための大きな要素の一つが、私たちが取り組む足元のチャレンジ、ユーザーが自分の手で未来を予測できる機能の開発です。マーケティングを単なる過去の振り返りに留めず、意気込んで迎え撃つものにもしない。短期・中長期の未来がどうなるかを手軽に見て、自ら考えることを楽しむ世界を実現したいです。

天野 作り手としても、難易度が高い統計をユーザー自身が使いこなせるプロダクトを開発する機会ってなかなかないので面白いと思います。マゼランは、統計や数理の知識を最適化し、概念として抽象化することで、エンジニアが理解しやすくメンテナンスしやすい状態で実装しています。僕はこの概念の抽象化に楽しさを感じているんです。

平尾 僕らは確かにデータ分析の会社なんですけど、まさにミッションで「データ分析の民主化」と言っているとおり、データ分析を人が触(さわ)れるようにする会社なんですよね。

天野 そうなんですよね。それがすごく面白いです。

岩澤  過去の反省を含め振り返ってみると、やっぱり統計は一定の理解がないと難しくて使えないんです。

マゼランを作り始めた当時、サイカはスパルタでしたよね。

自動車に例えると、「部品はある。作り方も教える。だから自分で作り方を覚えてエンジン作ってね」みたいなことをお客様に対してやってた。そしたら誰もついて来なくなって、「あ、エンジンは作ってあげるべきなんだ」と気付いた。

その反省を踏まえて、いまはできあがった分析モデルをいろんな角度から見られるようにし、お客様が必要なものを自分で取り出したり組み合わせたりできるツールを目指しています。

ここまでいけば、「ここでは統計のどういう分析をやってるんだろう?」と、統計に対する興味や見方も変わってくると思うんですよね。

天野 そのためには、作り手がみんな数理のバックグラウンドを持っていて、数理はこうあるべきという理論を語っていたらたぶん上手くいかないんです。そういう意味で、プロダクトのことをピュアに考えられる人が開発本部に多くいるっていうのはサイカの強みですね。

平尾 「どう使うか?」という転換を考えるのがサイカだと思っています。

例えば、「電気ができました」だけでなく、「電気を使ったら夜も明るい時代が築ける。だからライトを作ろう」と考えるのがサイカなんです。

第2創業期
知的好奇心と成長意欲を絶やさず、ビジョンを描けるか

平尾 サイカの開発チームは、2020年1月にCTOに就任した是澤さんのもと、組織の改革を続けています。いわば第2創業期にある開発本部。いまどんな人を求めていますか。

岩澤  PMには、プロダクトの方向性を決める、数理(データ)を見る、具体化されたものを実際に開発してデリバリーするという3つの役割があります。この3つのどの役割にも必要なのが、ビジョンを描けることです。

そのためには、打ち手先行にならない考え方が必須です。お客様に対してもそうですが、困っていることの真因は何で、それが解決された世界はどういう世界なんだろうってところを想像できる人と一緒に働きたいですね。

天野 その前提にあるのが、知的好奇心と成長意欲だと思います。

12個あるサイカの行動指針「XICA WAY」の最後に、「目先の利益でなく成功を約束する」というのがありますが、お客様の真の成功に向き合えるというのは、サイカで働くにあたって大事な要素だと思っています。

そのためには、企業と自分の倫理観が揃っていること、言い換えればグレーゾーンを走ろうとする悪人じゃないことが結構重要なんじゃないでしょうか。

平尾 ほんとそうですね。仲間をリスペクトし、エンカレッジする。異なるアイデアを歓迎する、というのが前提にあった上で、自分の手で世界を変えたい、自分の脳みそをぶっ壊すレベルで成長したいって思える人はサイカに合うでしょうね。

逆に合いそうで合わないのが、「データ分析が大好きだから、とにかくデータに触れていられればいい」って人かな。

天野 確かに。まだ第2創業期というフェーズで、組織としても発展途上の部分があるので、カオス耐性も必要ですよね。カオスの中でも生きていけるっていうんじゃなく、カオスを自分で解決していこうっていう気概がある人

サイカの開発本部で「モノづくりビジョン」と言っている組織ビジョン「Refine your choice and make it the Best(自らの選択に磨きをかけ最高なものにする)」を実現するためには、突破口を見つける能力と、問題を解決する意思、自分の可能性を信じて成長し続けられる自信が必要なんだと思います。そういう方と一緒に組織を育てていきたいですね。

平尾 開発本部は、今回のビジュアライゼーション、タウンホールミーティング以外にも、miroやDiscordの導入、他部署理解のためのDeepDiveなど、いろんな取り組みをしてきました。今後もどんどん新しい挑戦をしてくれるはず。とても楽しみです。

※インタビュイーの所属・役職は取材当時のものです。