KDDI株式会社

KDDIとサイカのデータドリブン・マーケティングの取り組みは、2019年から始まりました。通信業界において多岐にわたるサービスを展開するKDDIは、複雑な顧客獲得プロセスにおいて、成果を最大化するためのコミュニケーション最適化を目的に、サイカのMMM(マーケティング・ミックス・モデリング)を活用しています。

導入から5年が経ったいま、KDDIのMMM活用は非常に発展しており、月次分析による高頻度なPDCAサイクルを実現しています※1。2021年から分析を開始したUQ mobileでは、月次のマーケティング投資最適化により、契約者一人あたりに投じるコミュニケーション費用を、最適化前と比較して約2割削減するなどの顕著な成果を上げました※2。

本事例では、KDDIがサイカと取り組んでいるデータドリブンなマーケティング最適化方法について、UQ mobileにおけるプロジェクトを中心に紹介します。

※1 2024年8月現在
※2 2023年度実績

競合ひしめく市場における勝ち筋は、“データドリブン”と“スピード”

携帯電話・スマートフォンなどの通信サービスの市場は競合の参入も多く、機能面での差別化の難しさから、価格競争に陥りやすいという特徴があります。そのため、コミュニケーションによる差別化が重要であり、そのためにもクリエイティブとメディアの最適化が求められています。

また、近年の特徴的なのは顧客における携帯キャリアへの意識が薄まっているという変化です。キャリアに対する興味関心がなく、どのキャリアでも構わないという人が増えてきているのです。ストック型ビジネスモデルであるため、購買行動期に入っている顧客は市場の約2割程度であるということがKDDIの自主調査でわかっています。

KDDIでは購買行動期に入っていない市場の約8割を占める消費者(以下、日常期と表現)に向けて、日常期の段階からKDDIが提供する通信ブランド(au, UQ mobile, povo)へのイメージを持ってもらい、乗換先を検討する際にKDDIを一番に想起してもらうことを目指し、ターゲットに合わせた施策の展開を図っています。

そして、これらのマーケティング活動の成果を最大化させるためにKDDIが重要視しているのが、データドリブンな意思決定と分析サイクルのスピードです。

UQ mobileをはじめKDDIの各サービスにおける顧客が加入や成約に至るまでのプロセスは非常に複雑で、多数の要因が絡み合っているのが特徴です。これらの影響を正しく捉えながらより適切な意思決定をするために、KDDIでは大量のデータをもとにこの影響を可視化しています。これがMMM活用の主な目的です。

そして、KDDIにおけるMMM活用の特徴の一つは、月次でこの分析を回しているという点です。KDDIでは主にオンラインメディアのクリエイティブや予算の最適化にMMMを活用しており、月次の運用サイクルに合わせて分析を行っています。

通信サービスの市場環境

通信サービスの市場環境

データに基づいたマーケティング意思決定の実現

前述のとおり、KDDIでは月次でマーケティング投資の最適化を継続した結果、契約者一人あたりに投じるコミュニケーション費用を、最適化前と比較して約2割削減するという成果を上げています。ここからはKDDIがどのようにデータに基づく意思決定をしているのかを紹介します。

KDDIがMMM活用で目指しているのは下記の4つです。

  • マーケティング施策の効果を正確に測定・可視化する
  • 施策ー消費者意識ー成果の関係性を明らかにする
  • 各ターゲットに対する最適なアプローチを特定する
  • マーケティング予算の効率的な配分を実現する

この目的を達成するために構築されたモデルが、KDDIのMMMの大きな特徴となっています。

KDDIの分析モデルの特徴

  • 消費者の意識指標をモデルに組み込み、「施策 → 意識 → 成果」の構造を解明
  • 目標とする意識指標をユーザー導線に合わせて設定
  • 成果を複数に分け、ターゲット毎に有効な施策を明確化

KDDIでは週次で消費者の意識調査を行っていることから、その調査結果をMMMの変数に組み込むことが可能となっています。成果に対して影響が大きいと想定される意識指標をユーザー導線に合わせてモデルに組み込み、どの意識指標を上げれば成果が最大化するのか、またその意識指標を上げるにはどの施策を強化すればよいのかを分析できるようにしているのです。これにより、施策の投下量や予算配分だけでなく、どのような意識指標を伸ばすべきかという質の面も最適化を図ることができます。

UQ mobileの販売チャネルは店舗などのリアルチャネルだけでなく、オンラインチャネルもあります。MMMの目的変数となる成果を複数のパターンに分けることで、それぞれの成果を上げるにはどの施策が有効なのかがわかるようにしています。

KDDIではMMMの分析モデルに消費者の意識指標を組み込んでいる

KDDIではMMMの分析モデルに消費者の意識指標を組み込んでいる

月次運用の実現

KDDIのMMM活用のもう一つの特徴は、月次で分析し最適化を図るというPDCAサイクルの速さです。月次の分析サイクルが必要な理由は、KDDIにおけるマーケティング投資の最適化がオンラインメディアを中心としていることに加え、新規トライ施策を織り交ぜながらPDCAサイクルを実現していることにあります。

もちろん、テレビCMを中心としたオフラインメディア効果も含めた最適化を行っていますが、よりクイックな評価が求められるオンラインメディアを軸にMMMを活用してマーケティングの効率向上を図っています。

成果を上げるための最適化サイクル

成果を上げるための最適化サイクル

KDDIで実行している月次のMMM分析サイクル

KDDIで実行している月次のMMM分析サイクル

月次でMMMを回す上では、分析だけでなくデータ収集にかかるスピードも重要です。KDDIでは、自社や競合他社に関するマーケティングデータを、社内外から収集・統合し、分析用データの成形と分析不使用データも含めた可視化環境を構築し、データ活用のスピードを担保しています。この時にポイントとなるは下記の2点です。

  • ブフォーマットや粒度の異なる様々なデータを収集し、分析用データに統合すること
  • 分析担当者がワンストップで異常値および傾向変化を把握できるトラッキング環境を構築すること

下図のように、MMMの分析結果も常に可視化できる環境を構築しているのが特徴です。このようなデータ基盤の構築が、KDDIにおけるデータドリブン・マーケティングの要になっています。

KDDIのデータドリブン・マーケティングの要となるデータ基盤の構築方法

KDDIのデータドリブン・マーケティングの要となるデータ基盤の構築方法

組織を動かすために

戦略や戦術の徹底には組織の巻き込みが必要ですが、一般的に、組織が大きくなればなるほどその難易度は高くなります。馬場氏が指揮を執るコミュニケーションデザイン部では、広告運用プロジェクトを編成し、グループ横断でお互いの組織を理解しながら広告運用の全体最適化を図る取り組みをしています。これにより、よりスピード感のある運用が可能となるだけでなく、一気通貫したブランド・コミュニケーションの全体最適化が可能となっています。

また、組織を跨いだ社内連携においては、各施策の評価を共通指標で語れるという点でMMMの分析結果が非常に有用です。共通指標により施策を横並びで評価することで、施策ごとの部分最適ではなく、施策を統合した全体最適を図ることができるのです。

広告運用の全体最適化を図るプロジェク

広告運用の全体最適化を図るプロジェクト

マーケティングのさらなる最適化を目指して

上記のように、MMMを駆使してデータドリブンなマーケティング投資の最適化を図るKDDIでは、現在、新たに生成AIを活用したクリエイティブのさらなる最適化にも取り組んでいます※。

※こちらはサイカとのプロジェクトの内容ではありません

マーケティングにおいて重要となる、質(誰に・何を)と量(どこで・どのくらい)の両輪をデータドリブンに最適化することに挑んでいるKDDI。今後ますます進化を続けるKDDIの挑戦に、サイカは引き続き伴走していきます。

「サイカのMMMは、大量のデータから複雑なモデル化を行い、可視化できる点で非常に価値があります。またコンサルタントの支援により、分析~施策適用のスピード感を実現できており、現在では欠かせないパートナーとなっています。」
KDDI株式会社 馬場氏

株式会社丸亀製麺

丸亀製麺とサイカの取り組みは、ビジネスの勝率を高めるための“キードライバー”を解き明かす試みです。キードライバーを解き明かすことで、投資すべき先に対する考えがブレなくなり、意思決定のスピードが上がって、結果として事業の成長に繋がると南雲氏は考えています。同社では、もともと構築していたマーケティングモデルの解像度をさらに上げ、ビジネスを伸ばすキードライバーを明らかにする手段の一つとして、データサイエンスを活用しています。

サイカとのプロジェクトは、まずMMM(マーケティング・ミックス・モデリング)を活用して商品プロモーションとブランディングの最適投資配分を解明する取り組みから始まりました。約半年のプロジェクトを通して、投資配分の最適解が見えてきた後、次に着手したのが商品が売れた背景・メカニズムを明らかにする取り組みです。これは、顧客が行動(購買)するまでに影響する意識をデータで明らかにするアプローチです。

本記事では、取り組みの前提となる丸亀製麺におけるマーケティングの考えと、サイカとの取り組みについて紹介します。

丸亀製麺が実践する“KANDOドリブンマーケティング”

「顧客は集めるものではなくつくるものであり、“感動”こそが顧客を創造する源泉価値だと考えています。人は強く心が動かされるから(感動がある)こそ行動(購買)するのです」
(南雲氏)

南雲氏が語るこの考えのもと、丸亀製麺のすべての思考や行動は、“感動”を創造するために存在しています。同社のすべての戦略・戦術は「感動体験No.1」というビジョンの実現へつながるよう設計されています。そしてその源泉価値を、「一軒一軒が製麺所」「手づくり・できたてのおいしさ」「人の力」が織りなす感動体験と定義しています。これはマーケティング戦略だけでなく、商品戦略や営業戦略、DX戦略などすべてに当てはまることだそうです。

このように“感動”を意思決定の最優先事項とし、事業を持続的に成長させるためには、感性とデータの両立が必要だと南雲氏は考えています。データからは“感動”は創れない。感性だけでは確率が低い。そのため、両者を組み合わせてマーケティング戦略や戦術を組み立てていく取り組みを強化しています。これは丸亀製麺に息づく「二律両立」という考え方に基づいたトレードオンを目指す姿勢の表れでもあります。

※予測不能レベルの進化を遂げるために、「二律背反」しがちな要素を「二律両立」させるという考え

実際、丸亀製麺のマーケティングコミュニケーションでは、左脳・理性へのアプローチを通して選ばれる理由やパーセプションを、右脳・直感へのアプローチを通して選ばれる衝動をつくっています。

丸亀製麺が実践する“KANDOドリブンマーケティング”

丸亀製麺が実践する“KANDOドリブンマーケティング”

丸亀製麺が実践するハイブリッド戦略
――80%の売上はブランド力によって決まる

「当社はブランディングで右肩上がりのベースラインをつくり、フェア商品で衝動の山をつくるハイブリッド戦略をとっています。80%の売上はブランド力によって決まるものであり、ブランドに対する理解・好意度・共感が高まっている状態をつくることが最重要だと考えています。そのうえで1.5カ月ごとに年8回フェア商品を展開することで、食べたい衝動を最大化し、事業を持続的に成長させています」
(南雲氏)

南雲氏の説明の通り、同社ではブランディングとフェア商品のプロモーションを戦略的に組み合わせることで(ハイブリッド戦略)、右肩上がりのベースラインと定期的な衝動の山をつくっています。

丸亀製麺が実践する“KANDOドリブンマーケティング”

ブランディングとフェア商品プロモーションのハイブリッド戦略のイメージ図

また、短期的に見ると顧客体験価値(CX)の積み重ねがブランド力につながると考え、カスタマージャー二―に沿った顧客接点ごとに「どこでどういう価値を感じていただくか」を顧客体験に落とし実践しています。その蓄積を可視化して関係部署と共有し、一体感をもって取り組んでいくために、データサイエンスを活用したアジャイルな高速アクションを大切にしています。

これらを実現するための、サイカとのプロジェクトにおいて以下2つの取り組みを行っています。

<取り組み①> 商品プロモーションとブランディングの最適投資配分の解明:ブランド・エクイティ分析

  • ブランド・エクイティ分析とは?
    • MMMの応用による長期にわたるブランド蓄積効果を加味した分析。丸亀製麺における「ブランディングで右肩上がりのベースラインをつくり、フェア商品で衝動の山をつくるハイブリッド戦略」の効果を可視化する取り組み。
  • 分析の結果わかったこと
    • 商品プロモーションによる短期スパイクとブランディングの長期蓄積の相乗効果で、狙い通り右肩上がりの成長が築かれていたこと。さらに、ブランディングによって商品CMの効果が押し上げられたことも判明した。

「きっと正しいだろうと感覚でわかっていたことが数値として可視化されたため、意思決定しやすくなったほか、新商品の広告予算を決める際にも役立っています」
(南雲氏)

事業成果につながる“キードライバー”は何か
――MMM×KSF分析による新たなアプローチ

<取り組み②> 事業成果につながるブランド重要指標を検証し、感性をデータで測る:ブランドKSF(Key Success Factor)分析

  • ブランドKSF分析とは?
    • 持続的に業績が高まる背景・メカニズムを明らかにする取り組み。アンケート調査データを使用し、来店に対するブランドKSF(ブランド重要指標)を解明し、また、そのブランドKSFに影響を及ぼす因子を解明する。
  • 分析の結果わかったこと
    • リピート/新規いずれにおいてもブランドKSFとして最も重要なのは利用意向であること、また、最も利用意向につながっているのは「うどんがおいしい」という認識であるということがわかった。
    • その「うどんがおいしい」に直結するイメージとしては「安心して食べられる」と「他とは違う良さがある」が重視されており、丸亀製麺の源泉価値に近しい項目と相関関係があることもわかった。
丸亀製麺におけるKSF分析の概要

丸亀製麺におけるKSF分析の概要

社内外の関係者とのコミュニケーションがスムーズに

このように、ブランディングの効果やブランドの重要指標を定量的に示すことは、戦略や戦術の根拠となるだけでなく、策定した戦略・戦術を実行に移す際にも非常に有用だと南雲氏は語っています。戦略や戦術の方針を社内外の関係者に浸透させるには、感性に訴えることが効果的な場合もあればデータを用いて理性に訴えることが効果的な場合もあります。特に後者を必要とする場面において、戦略・戦術に対する理解を促進することができ、各関係者とのコミュニケーションがスムーズになったそうです。

戦略に100%正解はないが、信じる道の解像度を高めたい

「戦略設計をするうえで、当然100%の正解はない」と南雲氏は語っています。ただ、信じる道の解像度を高めて未来を切り開いていくうえでは、拠り所となるものが必要であり、それが南雲氏がデータサイエンスを活用する理由だと説明しています。

また、戦術の面においても、環境の変化が激しい今日のマーケティングでは、感性とデータを行き交わせてアジャイルに最適化していくことの重要性がますます増しています。南雲氏は、この感性とデータを駆使する戦い方を、スポーツの世界でのデータ活用に例えて説明しています。

「スポーツの世界では、選手の状態や試合の展開を感覚で捉えながら、スコアや成功率のデータも見る必要があります。どちらか一方だけを見ていては勝てません。マーケティングにおいても、日々市場や消費者は変化しているので、感性とデータの両方を駆使していかないと戦いに勝てないのです」
(南雲氏)

まさにこれを実践する取り組みとして、丸亀製麺では「うどんスコア」と「体験スコア」を「丸亀感動スコア」として各店舗に毎日フィードバックしています。日々の店舗体験と顧客の感情を、データとしても蓄積・共有しているのです。

※こちらはサイカとのプロジェクトの内容ではありません

このように、データを駆使してビジネスを推進している南雲氏は、MMMとの向き合い方やこのプロジェクトのパートナーとしてサイカを選んだ理由を以下のように語っています。

「MMMはあくまで目的ではなく手段であり、MMMですべてが解明できるとは思っていません。だからこそ、プロジェクトのパートナーには一緒に議論を通して正解を見つける姿勢を求めています。もちろん、パートナーに丸投げでは勝率が上がらないので、必ず自社で主導するようにしています。そのうえで、サイカをパートナーとして選んだ決め手は、スピード感とコンサルタントの向き合う姿勢です」
(南雲氏)

「スピード感」
日々変化するマーケティング環境に適応するためには、分析のスピードや頻度もそれに合わせて高める必要があります。同社のプロジェクトでは、MMMを四半期に1回のペースで分析しており、分析論点が追加になる場合は都度モデルを調整しながらPDCAサイクルを回しています。

「コンサルタントの向き合う姿勢」
100%正解がない世界において、解き明かしたい課題は次々と生まれてきます。また、環境の変化に伴い、論点もどんどんアップデートされます。それらに対し、柔軟にそして粘り強く寄り添う姿勢がパートナー選びの決め手となりました。

成長の先に目指す姿
――外食業界で働く人の存在意義を高めたい

――“食の感動で、この星を満たせ。”(トリドールのスローガン)

南雲氏が同社の成長の先に目指すのは外食業界全体の変革です。外食業界の消費者インサイトを解き明かすことで外食ビジネスを伸ばし、外食業界で働く人の存在意義や価値を向上させていきたいと語っています。

株式会社トリドールホールディングス 執行役員 CMO 兼 KANDOコミュニケーション本部長 兼 株式会社丸亀製麺 取締役 マーケティング本部長
南雲克明様

「数字ではなく、唯一無二の感動体験を創造し続けることを追求することで、必然として高い収益性と持続的な成長を実現できるということを証明したい」
(南雲氏)

こう語る南雲氏は、さらなる取り組みとしてEX(従業員体験価値)向上に向けたプロジェクトを進行しています。このプロジェクトは、従業員が働く幸せとプライベートの幸せを両立することで内発化が促進され、今まで以上に顧客に最高の感動体験を提供することができ、結果として事業成果に繋がるという考えに基づいています。この一連の流れをモデル化することで、再現性高く成果を出せる組織づくりを目指しています。

このように、新たなステージへと進化し続けている丸亀製麺の挑戦に、サイカは引き続き伴走していきます

丸亀製麺が実践する“KANDOドリブンマーケティング”

丸亀製麺のプロジェクト変遷

アットホーム株式会社

Q. 担当業務を教えて下さい

アットホームの主なビジネスは、約55,000店ある加盟店様における不動産物件情報の流通を円滑にすることですが、その中でマーケティングコミュニケーション部では、BtoCとBtoB双方のマーケティングを担っています。担当する領域は、BtoCのプロモーション、BtoBのプロモーション、企業広報など多岐に渡ります。

部内で私たちが所属するコンシューマコミュニケーショングループでは、主に生活者向けのプロモーション領域を担当しており、マス、デジタル、OOHなどのメディアを組み合わせてコミュニケーションの最適化を図っています。プロモーションの戦略立案からメディアバイイング、PDCAの運用まですべて一気通貫で行っています。生活者向けの不動産情報サイトを通じて、加盟店様に見込み顧客を送客しているという意味では、間接的にBtoB(加盟店のビジネス支援)の側面も担っています。

私たちのチームでは、最終コンバージョン(物件の問い合わせ)に貢献するリーチと集客を意識して、ブランドの純粋想起と指名検索数をKPIとして追っています。

Q. マーケティングにおいて、これまで抱えていた課題を教えて下さい

年間でおよそ550万人が県外、県内での住み替えを行います。高校卒業を機に、一人暮らしから始まり、住宅購入までを行う住み替えの見込み層に対して、20代~30代を中心に、ターゲットセグメントを行い、メディアごとの役割分担を明確にし、効率的にターゲットに対してのコミュニケーションを行っています。

従来は、効率化といっても、個別のメディアごとのパフォーマンスを最大化することがPDCAの主な取り組みでした。実施した施策全体の効果検証としては、いわゆる定量調査によるブランドKPIの推移を定点で計測していました。この手法だと、いろいろやった結果の数字の推移の把握のみに留まり、どの施策がどのKPIに対して、どれくらい効果があったのかというプロモーション費用に対する投資対効果を示すことができず、社内の評価を得るのに十分ではありませんでした。また、当然ながら理論にもとづいたPDCAを実施することも困難でした。

そのような課題があった中でMAGELLAN(マゼラン)を導入しましたが、MAGELLANを導入したことで、各施策がKPIに与える効果と影響の相関関係がわかり、施策の投資対効果を可視化でき、プロモーション(広告・宣伝)費用を「コスト」ではなく、「投資」と捉えるようになりました。また、共通指標による評価を実施することで、何に投資をするべきかといった共通認識を持つことができたと思います。

“代理店依存” から脱却し、自ら分析・改善できるマーケティングを実現

活動からの脱却が理由としてあります。ターゲットにリーチしたいと考えたときに、普通だったら代理店にプランニングを任せますよね。どのメディアにどれくらいの予算をかけるかという予算配分の最適化プランも代理店に一任します。ただ、その提案通りに施策を動かしていっても、実際の効果というのはなかなか見えにくい部分もあります。例えば、「テレビCMにこれだけの予算をかけて、本当に予算に見合う効果は得られているの?」「本当にターゲットである若年層にリーチできているの?」といった様々な疑問が生まれてきました。そこでMAGELLANを導入し、自分たちの手でファクトを積み重ねて、自分たちの手で試行錯誤しながらPDCAを運用していこうと考えました。

昨年からMAGELLANの運用を始めましたが、最初はデータの集約と分析から始め、最近ではメディアごとの効果を踏まえた予算配分の最適化が納得感を持ってできているのではないかと思います。今後のプロモーションもMAGELLANを活用してプランニングしていく予定です。

Q. MAGELLANの分析結果に対する印象を教えて下さい

ゴールに対する施策ごとの貢献度合いが把握できるのが本当に良いですね。定量化が難しく、今までは一部を感覚に頼らざるを得なかった施策ごとの貢献度が数値でわかれば、予算の最適化も容易になります。加えて、PDCAのスピード感も気に入っています。プランニングして実行して結果が出るまで、以前は1キャンペーンごとに検証していましたが、MAGELLANを使うことでそれが高頻度で回せるようになりました。

また、施策レビューにおいては、部内で共有する資料の中にMAGELLANのレポートを加えるようになり、代理店にもMAGELLANの結果をフィードバックし、プランニングに活かしてもらうようにしました。そして、こうした分析をするためには数字=施策実施に伴って生まれるデータが必要になりますので、社内の担当者が自然と数字を意識するようになったことも、MAGELLAN導入の良い影響ではないでしょうか。

データを活用し、生活者に寄り添うマーケティングへ

Q. 最後に、マーケティングにおいて目指す姿について教えて下さい

生活者が接触するメディアの変化などによって、マス広告の効果に変化が生まれているのは事実だと思います。認知は上げられても、コンバージョンに近いファネルの後半では効果が限定的な状況の中で、もっと生活者一人ひとりに寄り添ったアプローチをしていかなければならないと感じています。

今後は生活者の住み替えのモーメントをさらに的確に捉えていくこと、そしてその変化が生まれる前の段階からターゲット層に寄り添うことでアットホームのことを知って理解してもらえるようなマーケティングをしていかなければならないと考えています。そのためにも、MAGELLANを使って様々なデータを活用することでマーケティングの精度を高めていきたいと考えています。

ユニ・チャーム株式会社

Q. 担当業務を教えて下さい

私が所属するグローバルマーケティング統括本部 eUC推進部は、インターネットのeビジネスでユニ・チャームを引っ張って行くことをミッションとして作られた部門です。もともとはオウンドメディアを中心に担当していた部門ですが、2019年1月からペイドメディアを統合して、トリプルメディアの連携を強めています。

私はeUC推進部内のメディアグループで、ベビー用紙おむつ「ムーニー」のオフライン広告とデジタル広告のプランニングや検証を担当しています。

Q. 市場の特徴や貴社の状況を教えて下さい

ベビー用紙おむつは、お客様にとって大切な子供が身に着けるものです。また、消費財の中では単価が高く使用頻度も高い。そのため、お客様から高い品質を求められるのが1つの特徴ですが、ムーニーは製品テストを徹底的に行っていますので、製品力には自信があります。また別の特徴として、ベビー用の紙おむつは使用期間が3年と短いため、消費者の入れ替わりが激しく、常に新しいユーザーが市場に入ってくる構造になっています。どんどん市場に流入してくる新しい消費者から、安心して使える紙おむつとして自社を選んでもらうために、ベビー用紙おむつのマーケティングにおいてはブランディングが非常に重要です。

また近年の傾向として、子育て世帯の夫婦は忙しいので、他の日用消費財と比べてネットでの購入率が高く、ネット購入率の伸びも早い、という特徴も見られます。ネット購入ではムーニーを指名して買ってもらわねばならないため、ブランディングを通して純粋想起を獲得することが重要になります。こうしたブランドの知覚イメージを築く重要性は、ベビー用紙おむつ市場の特徴であり、難しさでもあると思います。

Q. マーケティングにおいて、これまで抱えていた課題を教えて下さい

広告施策のROI検証に課題を感じていました。広告出稿の選択肢が増え、消費者が様々な広告に日々触れるようになったことで、消費者の態度変容も従来のようにテレビCMだけでは収まらなくなってきています。そうした現状に対応するために組織変更を行い、ペイド・オウンド・アーンドのトリプルメディアを統合的に推進できる体制を作ったのですが、トリプルメディアを統合して様々な施策を展開する中で、各施策の効果を測ることが難しくなり、ROIが明確にはわかりにくくなりました。

ROIを測るにあたって、デジタル広告はまだ数字が取りやすいですが、オフライン広告のROIを測ることは特に難しいです。とりわけテレビCMはブランディングのチャネルとして依然として重要で、かつ一番広告費もかかるため、課題観が大きい領域です。テレビCMについて、ベースとなるタイムCMは、半期ごとに一括購入をするため固定費としての性質が強く、どの程度の量を持っておくべきか頭を悩ませるポイントです。

MMMをMAGELLAN(マゼラン)に変えた理由

Q. そうした課題を解決するために取り組んでいたことはありますか?

MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)の手法を用いた分析を行いました。分析を行った結果、15秒広告と30秒広告の効果性・効率性が明らかになり、デジタル広告とオフライン広告の費用対効果の違いもわかったので、やってよかったと思いました。

ただ、金銭的なコストが重かったことと、分析モデルを作るまでの打合せやデータ収集など、工数面のコストも重かったため、継続的に行っていくことは難しかったです。その点、MAGELLANなら、以前の方法と比べて金銭的なコストが抑えられますし、分析のスピード感も早いので、そこが良い点だと思います。

その他、MAGELLANを採用した大きな理由としては、「デジタル広告、オフライン広告を統合的に分析して効果を検証できる点」「タイムCMとスポットCMの出稿配分を最適化できる点」「分析結果を使ってマーケティング施策全体の予算配分を最適化できる点」がありました。

Q. MAGELLANの今後の活用方針を教えて下さい

まず、現時点ではまだ分析モデルの安定性に欠けるので、カスタマージャーニーの描き方やデータの選び方を最適化して、分析モデルの信頼性を向上させていきたいです。そして、現状では短期的な施策の効果予測をMAGELLANで行っていますが、将来的にはブランド価値を科学して数値化していけたら良いと思っています。

ブランド価値で結ばれる消費者との関係

Q. 最後に、マーケティングにおいて目指す姿について教えて下さい

最終的には、製品のブランド価値が貯まる構造を作っていくことが大事だと思います。製品力には自信があるので、それをうまく伝えることで、価値を感じていただき、お客様ご自身に満足していただくとともに、他のお客様にも推奨していただけるような、そういう関係をお客様とムーニーの間で継続してもらえるようなプロモーションを展開したいです。それは、今はもうオフライン広告だけではできないと思うので、トリプルメディアの連携を通して実現していきたいと思います。

株式会社NTTぷらら

競争が激化する市場においてプロモーションを本格始動

Q. 担当業務を教えて下さい

原田様:私と渡邊が所属するデジタルマーケティング担当では、主に3つのミッションがあります。1つ目は弊社が抱えている主だったサービスのWebサイトの構築・運用、2つ目は各サービスのプロモーション企画・実行、そして3つ目はWebサイトを通じた各サービスの販売です。プロモーションに関しては、オフライン広告もオンライン広告もすべて担当領域となります。

福島様:私は営業企画担当として、営業部全体の販売戦略策定や戦略にもとづいた事業計画の策定を行っています。課題の抽出から打ち手の検討・実行をリードする役割を担っています。「ひかりTV」の販売においては、量販店などのリアルチャネルも重要なチャネルとなっています。そこでの販売促進の施策については営業企画の管掌範囲となっており、その他のプロモーション施策と連携を取りながら施策を展開しています。

Q. 市場の特徴や貴社の状況を教えて下さい

原田様:映像配信サービス事業においては、競合サービスが非常に多くあります。有料サービスだけでなく無料サービスも、同じ可処分時間を取り合っていると考えると競合にあたります。お客様にとっては選択肢の幅が広がっているということですが、その分競争が激化している市場となっています。

「ひかりTV」は光回線が前提となっているサービスだったので、これまでは光回線とセットで販売していました。店頭での販促を最大化するためのマスプロモーションは実施しておりましたが、いわゆるインバウンドでのオンライン獲得なども含めた統合マーケティングやブランディングにそこまで注力をしなくても売れる状態でした。しかし、光回線の市場は成熟してきており、新規の需要は落ち着きつつあります。そのため、お客様に能動的に「ひかりTV」にお申し込みいたただける状態にすることを目的に、数年前から本格的に統合的なプロモーション施策を強化するようになりました。

映像配信サービス事業についてお話しする原田様

統合的なプロモーションのノウハウがなく、最適解がわからなかった

Q. マーケティングにおいて、これまで抱えていた課題を教えてください

原田様:統合的なプロモーションのノウハウが蓄積されていないということが大きな課題でした。改めて、プロモーション方法を検討することにしました。競合と比較してどこが差別化ポイントになるのかを明確にしながら施策を展開してきました。認知系のテレビCMから獲得系のオンライン広告などのプロモーションを実施しながら、少しずつノウハウを溜めてきましたが、まだまだ最適解がわからずにいました。

渡邊様:ひかりTV立ち上げ当初から約6年間は、毎年テレビCMなどのマスプロモーションを実施していました。当時は、主に店頭における光回線とのセット販売の促進を目的に、立ち上げ期の認知向上、ブランディングを目指したものでした。しかし、それ以降大きなマスプロモーションなどを実施していなかったこともあり、「ひかりTV」の認知度も下がっていきました。ひかりTVを広く認知していただくためのアプローチが足りていない状況でした。

原田様:他にも、社内のマインドも課題でした。これまでずっと光回線とのセット販売で売れてきたので、認知やブランド力を高めることの重要性を本質的に理解している社員が少なかったと思います。私たちも、それらが販売にどのくらい効果があるのかを定量的に提示することができず、また肌感としても掴み切れていませんでした。

認知系施策の効果が可視化され、継続実施の意義を再確認できた

Q. MAGELLANでの具体的な分析内容と、結果に対する印象を教えて下さい

原田様:MAGELLANではこれまでに2回分析をしており、1回目はテレビCMの効果可視化を、2回目は認知系のオンライン広告の効果可視化を目的に実施しました。

テレビCMは他施策と比べて費用も段違いに高額な一方で、お客様の行動を計測することが難しいです 。これまでは、テレビCMを実施している時期と実施していない時期を単純比較でテレビCMの効果を推定していました。テレビCMを打ち出すときは販売強化期間にあてることが多いため、もちろん他のプロモーション施策や販売促進施策も並行して実施しています。テレビCM単体での効果がどのくらいなのかがわからず、分析に苦労していました。

実際にMAGELLANで分析した結果、肌感に近い数値が出て驚きました。テレビCMについて前年同月実施分と効果の比較をしました。最新のテレビCMはクリエイティブや訴求内容を大きく変更し、販売チャネルに対する貢献度が高かったというのが肌感としてありました。そして、MAGELLANの分析でもしっかりそれを数値で示すことができました。

また、MAGELLANの分析結果報告会では、クリエイティブを変えることでさらに効率化が図れるという示唆もいただきました。私としては、テレビCMに関しては時期と金額感だけで効果が左右されると考えていたのですが、細かなクリエイティブの改善で効果が変わるという気づきをいただけたことが良かったです。

渡邊様:私も、MAGELLANの分析結果が肌感に近い数値だったので納得感がありました。また、テレビCMだけでなく、並行して推進していたキャンペーンなどの販売促進施策の販売貢献度も数値として把握することができたことも良かったです。

2回目の分析は認知系のオンライン広告の効果可視化を中心とした分析でした。中長期的な認知拡大を目的としている広告のため、直接のコンバージョンが少なく、オンライン広告を実施する必要はあると思いながらも、少し自信の持てないところがありました。しかし、MAGELLANの分析によって、しっかりと販売貢献しているということが数値化され、継続して実施する意義を再確認することができました。これらの認知系の施策については、社内でも軽視されがちだったので、今後は定量的な根拠を持って説得できるようになったことも心強く感じます。

MAGELLANの分析結果についてお話しする渡邊様

Q. 今後はどのような分析を行っていく予定でしょうか?

福島様:今後は、リアルチャネルでの販売促進施策の貢献値を細分化して可視化する予定です。コロナ禍において、その影響があるとはいえ、リアルチャネルの販売割合の比率は依然として高いです。競争が激化する中、複数の施策を並行して実施しながら、短いスパンでPDCAを回すことが重要になってくると考えています。MAGELLANによって、並行して実施されている複数の施策の中でそれぞれがどのくらいの効果があるのかを可視化できるので、今後の販売戦略に活かしていきたいと考えています。リアルチャネルでの販売促進施策の貢献値を細分化して可視化できれば、リアルチャネル・オンラインの施策全体を通して最適化できることになるので、とても期待しています。

「お客様中心主義」のマーケティングを目指す

Q. MAGELLANの今後の活用方針を教えて下さい

原田様:販売(成果)から近い施策であれば、やはり肌感としても近い結果が得られますが、販売から離れれば離れるほど、貢献値の予測が立ちません。最終的には、販売だけでなく、認知や理解促進などの中間KPIに対する貢献値も可視化していきたいです。より早い段階でPDCAを回せるようにするためにも、中間KPIを加えて二段階で分析していきたいと思っています。

福島様:販売促進施策に関しては、どうしても人が介在する部分が大きいため、そこをどう分析するかも気になる点です。また、分析した結果をもとに、施策を検討し実行する上でも社内の理解を得る必要があります。最終的には、「MAGELLANがこう言っているので大丈夫です」と言えるようになると良いですね。

販売促進施策の分析についてお話しする福島様

Q. 最後に、マーケティングにおいて目指す姿について教えて下さい

原田様:弊社は創業当初より「お客様中心主義」を実践してきました。売上より、まずは「お客様が本当に満足しているのか?」を大切にしてきました。しかし、ふと振り返ると、シェア拡大を重視してしまい、この理念から少し遠ざかってしまうこともあったように思います。MAGELLANを通して、私たちのアクションに対してお客様がどう反応されているのか、お客様は何を求めているのかという点に目を向けられるようになったことは大きな変化だと思っています。改めて、お客様中心主義に立ち戻り、その理念に即したマーケティングをしていきたいと考えています。

マルコ株式会社

ニッチな商材であるがゆえに、認知度の低さが業界全体の課題に

Q. 担当業務を教えて下さい

マーケット開発部にて、オンライン広告・オフライン広告問わず、あらゆる媒体を活用し、新規顧客を獲得することをミッションとしています。

今でこそテレビCMなどにも出稿していますが、もともとはクローズドマーケットだったこともあり、広告宣伝活動をあまり積極的に行っていませんでした。本格的に広告宣伝活動に取り組み始めたのは、RIZAPグループへグループ入りをした2016年からです。以降、RIZAPグループのノウハウを取り入れた広告宣伝活動を一気に強化しています。

Q. 市場の特徴を教えて下さい

市場の特徴の1つ目は、補整下着業界はニッチな商材であるため、業界全体としてまだまだ認知度が低いということです。理想の体型を目指すにはエステやダイエットなど、様々な選択肢がありますが、その中で補整下着はなかなか選択肢に挙がりません。「下着で体型を整えられること」をいかに認知させられるかが、業界全体の課題となっています。

特徴の2つ目は、ネガティブなイメージを持たれやすいということです。例えば、補整下着と聞くと「ファッション性に乏しい」「締め付けられるのでは」といったイメージを抱く方も多くいらっしゃいます。こうしたネガティブイメージを払拭するべく、私たちは「補整下着」の機能性、着用感、デザイン性を改良した「ボディメイクランジェリー」を通して、世の中に補整下着がグレードアップしたことを伝えていきたいです。

広告宣伝活動の開始に伴い、ターゲット層が拡大 ――ターゲットに合わせた最適施策でより効率化を図りたい

Q. 貴社の特徴を教えて下さい

私たちは、女性の体を、補整下着を着用していない状態でもキレイにすることを最大の目的としています。そのため、単に補整下着を販売するのではなく、ご購入後のアフターフォローまで無料でしっかりと行うことが一番の強みです。経験豊富なボディスタイリストが専属で担当し、きちんとコンサルテーションをしながら、プロポーションを美しく整えていくお手伝いをしています。お客様の中には、通われて10年20年以上の方も多く、長くお付き合いさせていただいています。

Q. メインターゲットを教えて下さい

若い女性向けのラインナップが豊富だったこともあり、これまでは20代から30代前半のお客様に多くご利用いただいていました。広告宣伝活動を始めてからは、特にインフォマーシャルの影響もあり、30代後半から60代以上のお客様も増えています。今では、どの年代のお客様にも均等にご利用いただいている状況です。

ターゲット層が拡大したからこそ、ターゲット年代別に最適な商品や施策が何かを細かく分析し、効率化していく必要があると考えています。

オフライン広告の効果を、他施策への波及効果を加味して精緻に分析したい

Q. マーケティングにおいて、これまで抱えていた課題を教えて下さい

テレビCMやインフォマーシャル、折込チラシなど、オフライン広告の効果を精緻に分析する方法を探していました。オンライン広告はデータがあるため、一定の分析はできていると感じています。オフライン広告においては、テレビCMやインフォマーシャル放映前後のセッション数の変化で効果を測定してきました。ただ、この方法では他施策への波及効果を加味した分析ができないため、それぞれの媒体を過小評価、あるいは過大評価している可能性があります。また、どの媒体を経由して来店予約に至ったのかというヒアリングのデータからも分析を試みていますが、印象に残った媒体を回答する可能性が高いため、この手法でも適正な媒体評価が難しいと感じていました。

また、コミュニケーションの観点でいうと、広告表現の難しさに課題感を感じています。一般的に、補整下着は着用時にしかキレイになれないのではないかと思われることが多いです。しかし、私たちはアフターフォローもしっかりと行っているため、着用していない状態でも理想の体型へと変えていくことができます。この強みを表現していくことは大変難しいのですが、3か月間継続着用した成果をデータで証明するなどで工夫し、少しずつ強みを表現できるようになっています。

Q. MAGELLAN(マゼラン)を導入された理由を教えて下さい

先ほど申し上げたように、オフライン広告の効果を他施策への波及効果を加味して精緻に分析するためです。これまで様々な分析手法を取り入れてきましたが、オフライン広告の効果を適正に評価することが難しいと感じていました。オフライン広告は広告宣伝費のうち非常に大きい割合を占めるため、費用対効果が見合うのかどうかをMAGELLANで明確化したいと考え、導入を決めました。

また、コロナなどの外的要因の影響が可視化できることも導入の決め手の1つです。コロナ禍においても新規顧客を獲得できており、要因もある程度は推測できているのですが、その推測が正しいのかどうかを丁寧に分析したいと考えています。

Q. MAGELLANの今後の活用方針を教えて下さい

まずは、最大の目的であるオフライン広告の効果可視化を行い、新規顧客の獲得数を最大化するための最適な広告予算配分を実現していきたいです。また、外的要因も含めた分析や、ターゲット年代ごとの細かい分析も行い、効率化を図りたいと考えています。

その後、店舗ごとに実施している独自キャンペーンや、販売スタッフへのインセンティブ制度の効果可視化にもチャレンジしたいと考えています。どのようなデータを使用するかは検討中ですが、キャンペーンのオファー内容が売上に貢献しているのかという点や、インセンティブ制度はどのくらい効果があるのかという点などを分析したいです。

誰もが憧れるブランドを目指す

Q. 最後に、マーケティングにおいて目指す姿について教えて下さい

課題として挙げていたことですが、「MARUKO」は認知がまだまだ低いため、まずは誰もが知っているブランドになっていくことを目指しています。また、認知されるだけでなく、誰もが憧れるようなブランドにしていきたいです。そのためにも、当社の商品とサービスがしっかり伝わるようなマーケティングを行い、市場全体を牽引していきたいと考えています。

青山商事株式会社

社内外のリブランディングやブランド認知・売上の拡大を図る

Q. 担当業務を教えて下さい

平松様:2019年10月に新設したリブランディング推進室において、洋服の青山のリブランディング業務を担当しています。具体的には、新しいブランドパーパスである「ビジネスのパフォーマンスを上げるパーツを提供する会社になる」を軸に、マーケティング施策やPR施策を行っています。また、社内における組織風土改革なども一貫して行い、ビジネスウェア事業の再構築を目指しています。

薮田様:マーケティング部のデジタルマーケティンググループに所属しており、オンライン広告を活用したブランド認知や売上の拡大をミッションとしています。バナー広告や検索広告、SNSを活用したプロモーションなどを実施して新規顧客の獲得を目指すだけではなく、アプリやメルマガなどを活用した既存顧客の購入率やLTVの向上も図っています。

自分ごと化されるブランドになるために ――お客様とのコミュニケーションを活性化する様々なキャンペーンを実施

Q. マーケティングにおいて、これまで抱えていた課題を教えて下さい

洋服の青山のブランド認知は99%を超えており、ブランド名も、スーツを扱っている企業だということも広く知られています。一方で、多くのお客様に「自分には関係のないブランドだ」と思われている点が課題として挙げられます。自分ごと化されていないため、全国に707店舗、全都道府県に店舗があるにもかかわらず、近所にある店舗の存在に気づいてもらえないことがあるのです。「自分に関係のあるブランド」「買いたいものがあるブランド」だといかに認識していただくか、ここにマーケティングの難しさを感じています。

この課題に対する打ち手として着目したのが、SNSです。20代~40代といった最もボリュームのあるビジネスパーソン層にリーチできることから、リブランディング推進室が立ち上がってすぐにTwitterキャンペーンを実施しました。もともと、当社のSNSではスーツばかりを打ち出してきたのですが、市場調査の結果、実はスーツは2年に1回ほどしかご購入いただけないことがわかりました。そこで、購入率やLTVの向上を図るべく、比較的購入頻度の高いワイシャツを全面に打ち出すことにしました。その取組みの一例が、ノンアイロンワイシャツを10円で販売するキャンペーンです。綿100%のノンアイロンワイシャツで皺になりにくいものはめずらしく、一度商品を体験いただければリピーターになるはずだと考えました。キャンペーン実施後は、Twitterから着心地などの感想コメントを集め、店頭POPに反映することでPR施策にも活かすことができました。いかに多くのお客様に商品を体験いただけるタイミングを提供できるかを意識し、また持っているアセットを最大限活用することで、自分ごと化していただくための施策が実施できたと感じています。

※ 2021年6月末時点

「ノンアイロンワイシャツ10円キャンペーン」のTwitter投稿画像

また現在、リブランディング推進室のもと、改めてお客様に向き合うべく様々な施策に取り組んでいます。例えば、先日も新たな施策として、思わず悩みを打ち明けてしまうような聞き上手なチャットボット「AIチャットボット スナックママ よしこ」を導入しました。これまでの常識に囚われず、いかにお客様とのコミュニケーションを常時取り続けられるようにするかという観点で、施策を企画・実施しています。

一方で、リーディングカンパニーとして成功してきたからこそ、このようなこれまでにはない新しい施策や考え方に対して、社内のハードルは高くなる傾向にあります。そのため、会社を中からも変えていき、社内外のリブランディングを同時並行で進めていきたいと考えています。

お客様との新たなコミュニケーション強化施策「AIチャットボット スナックママ よしこ」

オフライン広告の効果を可視化し、数値をもとに最適な予算配分を実現したい

Q. MAGELLAN(マゼラン)を導入された理由を教えて下さい

導入理由は2つあります。 1つ目は、テレビCMやチラシなど、オフライン広告の効果を数値で可視化するためです。オンライン広告は分析ツールもいろいろとあり、ある程度は効果分析ができています。一方で、オフライン広告は効果の可視化ができず、費用対効果の分析が難しいため、前年踏襲型の予算配分になっていることが課題でした。MAGELLANであればオフライン広告の直接効果だけではなく、オンライン広告との相乗効果まで可視化できるため、適切な媒体評価ができ、最適な予算配分が可能になると考えました。

2つ目は、エリアごとに細かく分析できるためです。以前実施した独自調査で、テレビCMとチラシのどちらも効果がありそうな地域と、どちらも効果がないと思われる地域があることがわかりました。しかし、その調査では差が出ている理由まで突き止めることができず、もどかしさを感じていました。MAGELLANはエリアごとに詳細に分析が可能なため、この差分を明らかにできると考えました。今のエリア分析で有益な示唆が得られた際には、さらにエリアを広げて細かく分析していきたいです。

Q. 特に検証したい仮説などはありますか?

エリアの話でいうと、例えば首都圏とローカルや、ローカルの中でも都市部の地域とそうではない地域で効果のある媒体に違いがあるのかを見極めたいと思っています。首都圏や都市部の地域であるほど、テレビCMの効果は薄れるのではないかと考えており、その仮説をMAGELLANでしっかりと検証したいです。

また、チラシに投資価値があるのかも分析したいです。仮説として、チラシを見てご来店いただく方は既存のお客様が多いのではないかと考えています。もしそうあれば、チラシの代わりにアプリやメルマガを実施するほうが効率的な可能性もあります。広く認知させるという意味で、テレビCMの補完としてチラシに効果があると良いのですが、本当に投資価値があるのか、これからの分析結果が楽しみです。

Q. MAGELLANの今後の活用方針を教えて下さい

まずは、広告予算の中でも大きな割合を占めるオフライン広告の効果を可視化し、数値をもとに最適な予算配分を行いたいです。無尽蔵に広告予算があるわけではありませんので、前年踏襲型の予算配分を見直すことで、オンライン広告・オフライン広告の予算最適化と施策全体の最適化を目指しています。

また、新入学や新入社のタイミングでファーストスーツの需要が高まる次のフレッシャーズ時期(1月~3月)に最適な広告施策が実施できるよう、MAGELLANでこれまでのアクションを分析し、次回に向けての有益な示唆が得られたらと考えています。

ビジネスウェア専門店の殻を破った“オンリーワン”のポジションを目指す

Q. 最後に、マーケティングにおいて目指す姿について教えて下さい

お客様に、私たちの商品だからこそ欲しいと思っていただき、指名買いいただける状態にすることが理想です。そのために、情報が必要な方に広告が届き、欲しいと思っていただき、ご購入いただくというサイクルを回し続けることを大切にしたいです。

また、今後はブランドパーパスを軸に、“ビジネスウェア専門店”数社の中の一社としてではなく、そこから一歩抜き出た“オンリーワン”のポジションを築いていきたいです。

イオンクレジットサービス株式会社

さらに幅広い顧客層の獲得を目指し、広告施策を展開

Q. 担当業務を教えて下さい

営業本部はクレジットカードにおける新規入会者数の最大化をミッションとしています。 クレジットカードへの入会は店頭とネットの2つのチャネルから可能となっており、ネット会員推進部はネットにおける新規会員の獲得をミッションとしています。現状は店頭からの新規入会が多いのですが、ネット経由での新規入会も強化したいと考えています。

Q. 市場の特徴を教えて下さい

クレジットカード業界の特徴は2つあります。 1つ目は、多くのお客さまが一人複数枚のクレジットカードを所有し、買い物をする場所によって使い分けているということです。様々な決済手段が増える中で、各社がメインカードとして利用してもらう施策を行っています。

2つ目は、クレジットカード会社ごとに会員属性が異なるということです。お客さまは買い物をする場所において一番お得なクレジットカードを選択されるため、属性の違いが根強く現れます。例えば私たちの場合、イオングループの店舗にご来店いただいたお客さまにその場でご入会いただくことが多いため、家族のいる女性層の割合が高いです。一方、男性層やクレジットカードを初めて持ち始める若年層の割合はまだまだ低いため、今よりもさらに幅広い顧客層の獲得を目指し、広告施策を展開しています。

各広告施策の費用対効果が可視化できず、最適な予算配分が難しかった

Q. マーケティングにおいて、これまで抱えていた課題を教えて下さい

各広告施策の費用対効果をしっかりと可視化できていないことが課題でした。オンライン広告は入会1件あたりいくら費用をかけているのかが明確です。一方で、テレビCMなどのオフライン広告は、かけた費用に対してどれくらいのリターンがあるのかを明確化することが難しく、そのため、的確な予算配分も難しいと感じていました。

Q. MAGELLAN(マゼラン)を導入された理由を教えて下さい

テレビCMなどのオフライン広告の費用対効果が可視化できるためです。年間の広告予算をどう効率的に活用していくかは常に議論していたところでした。また、決まった予算の中で成果最大化を目指したい中で、どのようにテレビCMを活用していくべきかを模索していました。

また、私たちの部署では新規会員の獲得に向けた広告施策を展開していますが、別の部署では既存会員向けに、利用促進を図る広告施策を展開しています。目的の異なる広告施策ですが、それぞれが相互に影響しあっている可能性があるのではないかという仮説があります。MAGELLANでこの相乗効果も深掘りし、最終的な成果最大化のための最適な予算配分を行いたいと考えました。

キャンペーンごとに細かく分析し、最適化を図る

Q. MAGELLANの分析結果に対する印象を教えて下さい

予想通りの結果でした。例えば、テレビCMを出稿することで検索などのオンライン広告の効果が高まり、入会につながると感じていましたが、実際にテレビCMにより新規入会者数が伸びていることが数字で明らかとなりました。一方で、テレビCM出稿にかかる費用が増加することよって、効率が下がる期間があることもわかりました。予算配分を最適化することで、新規入会者数を拡大しつつ、費用対効果も改善したいと考えています。

Q. 今後、MAGELLANをどのように活用していきたいと考えていますか?

今回は年単位のデータを用いて分析したため、大枠の傾向を見ることができました。次はキャンペーン単位で細かく分析する必要があると考えています。また、クレジットカードの需要は春に高まる傾向があるため、キャンペーン内容だけではなく、季節要因などでも効果が変わると考えています。今回の分析結果だけを今後すべての広告施策に当てはめるのではなく、より細かい単位で分析し、分析結果を蓄積していくことで、さらに最適化をしていきたいです。

また、クレジットカード業界でどういった傾向があるのかも確認したいと思っています。業界トレンドと自社で、有効な広告施策に違いがあるのかを見てみたいです。両方の分析結果をもとに、次回以降の最適な攻め方がわかるとおもしろいと思っています。

一番に投資すべきところを見極め、効率の最大化を目指す

Q. 最後に、マーケティングにおいて目指す姿について教えて下さい

新規会員の獲得効率を改善し続けたいです。2020年より拡大したコロナ禍で改めて痛感したのは、効率最大化がいかに鍵となるかということでした。一番に投資すべきところを見極め、効率最大化を目指したいです。

また、私たちの強みは店頭などのリアル領域ですが、その反面ネットなどのデジタル領域が弱い傾向にあります。この領域はまだまだ成長できる部分が多いため、ネット経由の新規入会者数を増やし、いかにお客さまにご利用いただき喜んでいただけるかを追求していきたいです。