Q. 担当業務を教えて下さい
私が所属するマーケティング本部は大きく3つの組織に分かれます。当社のビジネスモデルとして集客の入り口はWeb申し込みに集約しており、その中で私が所属するメディア部は集客の効率化・最大化を担っています。コンバージョンポイントはWebのみですが、オンラインプロモーションも、オフラインプロモーションも担当しています。ご契約までの流れとしては、Webで無料カウンセリング予約申し込みをしていただき、実際にご来店いただいた際に無料カウンセリングを実施、内容にご満足いただけた際にご契約、という形になります。
Q. マーケティングを実践する上で、業界特有の難しさがあれば教えて下さい
この業界の難しさとしては、大きく3つあります。 1つは、客単価が低いサービスではないので、1人のお客様にご契約いただくための難易度が低くないことです。
もう1つは、ブランド価値などを向上させることによる中長期的な売上(LTV)拡大が狙いにくいことです。弊社の提供サービスの価値は短期間でお客様を理想の状態にすることであり、サービス価値やブランド価値を上げることで得られるお客様との中長期的なお付き合いが中々単純化できない点があります。サービス価値向上によりお客様満足度が上がることは大変嬉しい反面、中々判断が難しいところもあります。
最後に、マーケット環境の変化が早く、激しいということです。直近1年で各地方にパーソナルトレーニングジムを2~3店舗運営されている企業様がかなり増えています。マーケット自体が成長しているので、そういった企業様も集客できているようです。結果として、熾烈な広告出稿争いが始まっていて、競争が激化しているというのが現状です。
Q. 多くの企業がデジタル広告からオフライン広告に広げていく形を取ると思いますが、御社もそうでしょうか?
そうですね。当初はデジタル広告から効率よくお申込みをいただくことをベースにしていたのですが、トップラインを上げていくときに、オフライン広告が必要だという認識が社内で広まりました。
デジタル広告の特徴として、全方位に最適化していくのが圧倒的にやりやすいということがあります。一方で、エリアなどのセグメントが切りにくい(ボリューム担保など)ものや、いわゆる潜在層へのリーチ(視認性・単価)などは、まだまだ完全ではないと捉えております。オフライン広告は、そういったデジタル広告の弱みを補完するものだという認識をしています。予算構成比率ではデジタル広告の方が大きいのですが、デジタル広告が苦手なところをオフライン広告で補っていくというのが全体最適ではないかと考えています。
Q. マーケティングにおいて、これまで抱えていた課題を教えて下さい
ラストクリックコンバージョンだけで媒体最適がされていたことが課題でした。オフライン広告の費用対効果はそれぞれの代理店から出てくるレポートを「正」としており、一気通貫したマーケティング施策やチャネル評価ができていませんでした。
特に、去年からマーケットが激変しており、過去の勝ちパターンだけでは難しい状況になりました。ラストクリックコンバージョンの効率だけで媒体を選んでいくと、顕在層をいかに刈り取るかという話に終始してしまいます。それよりも、顕在層をいかにして作っていくかが重要だと考えていました。
Q. マーケットが激変する前は、顕在層を作るということは考えていなかったのでしょうか?
あまり考えられていませんでした。獲得広告のコストパフォーマンスが非常に良かったので、当時は顕在層を作るというよりも顕在層を獲得するために、デジタル広告をやりながらテレビCMも実施して、コンバージョンの総量を上げていくことを優先していました。
Q. 市場が激変する中で、どのように変化に対応したのでしょうか?
まず、起きている事実をきちんと整理することからはじめました。ターゲットが誰なのかということも、今と比較すると見えていない部分がありましたので、ターゲットを整理するために顧客データと外部調査機関をいくつか使って可視化を実施しました。
同時に、チャネルの最適化をデジタル領域で進めました。既に最適化は進められてはいたのですが、ゼロベースで細分化を進めました。具体的には、検索広告において、「指名検索のCPCは本当に最適なのか」「CPCを下げるためのことを本当にやりきっているのか」や、ディスプレイ広告において、「ブロードリーチのセグメンテーションはすべてやれているのか」「クリエイティブの出し分けもされているのか」など、そういったところから見直しを進めました。
そして、今後進めようと思っているのが、全体最適です。媒体別、LP別など、チャネル別のLTVを可視化して、CPAを一律にするのでなく、モチベーションやアプローチの仕方によって費用対効果をすべて見直そうと思っています。
Q. そうした中、MAGELLAN(マゼラン)を導入された理由を教えて下さい
ラストクリックコンバージョン以外の評価をしなければならないと考えていたからです。オンラインアトリビューション分析は、クッキーが使えなくなる世界がすぐに来るので、ここで成功パターンを作れたとしても、継続性がないと考えました。また、実は弊社の中に統計学に詳しい人間が複数人いまして、「今後は相関だよね」という話をしていたときに、サイカのセミナーに参加しました。そこで、もともとやりたいと思っていたことをツール化されていたので、MAGELLANを採用することにしました。
もともとやりたいと思っていたことというのは、ラストクリックコンバージョンで評価できない広告の正当な評価です。デジタル広告はラストクリックコンバージョンである程度評価できますが、お客様のジャーニーには認知があって、興味があって、比較があって、という流れがあります。弊社はテレビCM、交通広告、チラシをやって、デジタル広告もやっていたのですが、デジタル広告以外は評価軸を持てていませんでした。
デジタル広告以外は、と言いましたが、実はデジタル広告も同様で、ラストクリックコンバージョンだけで評価して良いのかという疑念を持っていました。例えば、リターゲティングの効果が良くて、ブロードリーチの効果が悪いということはわかっていたのですが、一度広告に当たっているからこそ獲得効率が良いというのは当たり前の話です。 顕在層がこれだけ減ってきている以上、自分たちで幅を広げていかなければならず、実施しているプロモーションをラストクリック以外でも評価をしなければならないのですが、当時の弊社ではできませんでした。ログベースでなく、統計ベースならできる、でもそれを実施できる人はいない。やりたいのにできない、という状況でしたが、最終的には「ツールならできるのではないか」と考え、意思決定しました。
Q. 現在は本格利用の手前の段階だと思いますが、現時点でのMAGELLANの分析結果に対する印象を教えて下さい
数字の精度が予想より良かったです。見込んでいたよりも実績に近い数字が出ています。今は、うまく使っていきたいとは思いつつ、どこまで信頼していって良いかなということを見極めているタイミングです。予算額やアロケーションに対して、もう少しだけモデルの精度が上がれば、そもそもの予算組み自体もMAGELLANをベースにして進めて良いと思っています。
Q. MAGELLANの今後の活用方針を教えて下さい
本来の使い方ではないということは理解しているのですが、マーケット環境の変化を捉えることができると良いなと思っています。マーケット環境が年単位、半年単位で劇的に変わっている状況がありますので、未来のマーケット環境の変化を捉えたり、その影響度を可視化できるとすごく良いなと思います。
Q. 最後に、マーケティングにおいて目指す姿について教えて下さい
全体最適を実現することが理想系です。今考えている全体最適とは、お客様のモチベーションに対して最適なコミュニケーションができ、最適なファネル戦略もできていて、コスト戦略についても自分たちの手で最適な解を作れている、ロジックで説明ができる状況を意味しています。「結果的にこれが最適解だったね」ということではなく「これが最適解だよね」というように、自分たちで解を見つけ、定義していきたいです。この状況を実現させるのは非常に難易度が高いと思うのですが、今はいろいろなことにチャレンジしている段階なので、できるところを少しずつ増やしていきたいです。
個人的には、これからオフラインやオンラインというチャネルの考え方はなくなっていくと思っています。例えば、オンラインでもオフラインに近いチャネルは山程あるためです。ここまで増えてしまったチャネル、媒体に対して、自分たちでどうやれば解を導き出せるか、難易度が高いことは理解しつつも、チャレンジしていきたいです。