世界のお気にいり(7)

紅茶・仏具・ビール市場にみる、ミャンマー地場ブランドのマーケティング

消費者視点を切り口に、海外のライフスタイルレポートをお届けする「世界のお気にいり」。経済開放が進み、ミャンマーには外資ブランドが多数進出しています。地場産業はどうなっていくのか?伝統的な仏具市場についてもレポートします。

経済開放が急ピッチで進むミャンマー。地場ブランドは生き残れるのか

周辺諸国に比べ、工業化で出遅れたミャンマーでは、自国ブランドがあまり育ってきませんでした。車や電化製品は輸入頼りですし、スーパーに並ぶトイレットペーパーや洗剤といった消費財も、中国やタイ、マレーシア、ないしはそれらの国々と合弁関係を結んだ欧米メーカーのブランドが幅を利かせています。 食品分野では地元ブランドも健闘してきましたが、それもこの3〜4年の民主化の進展で、日本や欧米のブランドの進出が進んでいます。たとえば、コカコーラ社は2012年、現地では有名な飲料ブランド「マックス」を擁する地場企業ピンヤ・マニュファクチャリング社と合弁会社を立ち上げ、60年ぶりにコカコーラブランドの販売を再開。飲料店の棚にあった「マックス」は、瞬く間に「コカコーラ」や「スプライト」に入れ替わりつつあります。
インスタント飲料は地元ブランドが多い
インスタント飲料は地元ブランドが多い
  かつてイギリスの植民地下にあったミャンマーでは、紅茶文化が盛んです。街の喫茶店では、個人の嗜好に合わせて砂糖やミルクの量を細かく指定することができるのですが、インスタント紅茶では、1〜2種類しか出していないメーカーがほとんど。街の奥様方にうかがうと、「喫茶店ほどにとは言わないけれど、もっといろいろな種類を出してほしい」という声が多く聞かれました。 小袋入りインスタントコーヒー&紅茶市場は今も、地場ブランドの「プルミエ」や「ロイヤル」などが大きなシェアを占めていましたが、三菱商事が2015年、「プルミエ」を出すルピア社の株式を30%取得するなど、外資の進出が進みつつあります。
インスタント飲料は、低所得層にも購入しやすい小袋入りが中心
インスタント飲料は、低所得層にも購入しやすい小袋入りが中心

ミャンマーの仏具市場は地場企業が優勢

変化しつつある食品分野に比べ、いまだに地元企業が強いのは、仏具などの伝統文化に根付く分野でしょう。ミャンマーでは7月から11月にかけて、袈裟などの仏具を僧院へ寄進する人が多く、この時期にはスーパーも、わざわざ棚を1列まるごと仏具売場に変えるところもあるほどです。
7月に行うことが多い、仏具を僧侶に寄進する儀式
7月に行うことが多い、仏具を僧侶に寄進する儀式
そんな仏具における有名ブランドは、「タマダ」と「ゾティカ」。袈裟には、コットン製で8000チャット(約670円)くらいの安価なものから、蓮の茎の繊維を用いた最高級品で30万チャット(約2万5200円)以上するものまで、いろいろな種類があります。 仏具店を訪れていた女性たちに、どんな袈裟があればいいと思っているか聞いてみました。
寄進用に飾りつけが施された仏具セット
寄進用に飾りつけが施された仏具セット
「絹・綿混紡の袈裟の種類を増やして欲しいわ。特に、もっと絹の量が多いものがあるといいわね。涼しいからお坊様も喜んでくださるはず」 「昔に比べて色が少しは鮮やかになったけれど、もう少しきれいな色でもいいのでは」 「もっと豪華な箱に入ってるといいんだけど」しかし、「……でも、他のお坊様と差が出るとよくないんじゃない?」という意見にも、全員同意でした。 ミャンマーの僧侶は生涯にわたり財産を持たず、物欲とは無縁の世界で生きることを課せられているだけに、「少しでも豪華なものを寄進したい」という在家信者の希望にそった商品開発は難しいのかもしれません。

ミャンマー随一の巨大ブランド・ミャンマービール

誰しもが知る、ミャンマーの巨大ブランドといえば、「ミャンマービール」を忘れてはなりません。
「ミャンマービール」は、国際的な賞をいくつも受賞した国際的ブランドでもある
「ミャンマービール」は、国際的な賞をいくつも受賞した国際的ブランドでもある
「ミャンマービール」を生産するミャンマーブリュワリー社は、もともと国防省傘下のメーカーで、軍政下にあっては圧倒的なシェアを誇っていました。それだけに、軍事政権を忌み嫌う人たちの中には、同社のビールを決して飲まないという人もいるほどです。 政府が民主化に舵を切ってしばらくした2015年、日本のキリンホールディングズが同社を買収。当時、キリン関係者は、「ミャンマーのビール市場は初期段階にある。キリンの技術とノウハウで大きな成長が見込めるはず」と語っています。
真ん中が従来の「ミャンマービール」で、左右が「ミャンマープレミアム」と「キリンイチバン」
真ん中が従来の「ミャンマービール」で、左右が「ミャンマープレミアム」と「キリンイチバン」
2016年には日本側の主導で、従来の「ミャンマービール」よりもワンランク上に位置する「ミャンマービールプレミアム」を発売。同じく、日本ブランドを前面に押し出した高級ビールとして、「キリンイチバン」も売り出しました。比較的所得の高い層に、どちらもよく売れているようです。 この9月、アメリカによるミャンマーへの経済制裁が解除になりました。これにより、欧米の有名ブランドのミャンマー進出が激増することが予想されます。上記で紹介したブランドも、数年後にはすっかり様変わりしているかもしれません。
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