消費者視点を切り口に、海外のライフスタイルレポートをお届けする「世界のお気にいり」。仕立て屋や靴屋に見る、パーソナルなサービスについてご紹介します。
パーソナルな部分が大切にされる売り手とクライアントの関係
例えば、旅行でイタリアを(いや、ヨーロッパの多くの国でそうなのかもしれませんが)訪れた時、レストランやショップで、年配のウエイターやスタッフから丁寧なサービスを受けた経験はありませんか。日本における接客の仕事は、学生のアルバイトやパート、新人研修の一環というイメージがあるかもしれません。しかしイタリアでは、接客を一生涯の仕事として定年になるまで続ける人も多くいます。つまり、この道のプロというわけです。 とくに老舗店になると、顧客との関係が密になります。例えばレストランでは顧客が以前注文したメニューをウエイターが覚えていて、その嗜好にあわせてお薦めを教えてくれることがあります。また、服飾関係の場合は、顧客のスタイルやこれまでに買ったアイテムをもとに、ショップスタッフが似合う服やコーディネートのアドバイスをすることもあります。まるでパーソナルショッパーのようですね。ちょっとしたコンサルタント的な役割まで果たしてくれるのです。
仕立て屋や靴屋は顧客のライフスタイルまでも支える
それがより顕著に表れるのは、オーダーメイドをするような仕立て屋や靴屋でしょう。日本よりオーダーメイド文化が残っているとはいえ、値は張ります。イタリアでもオーダーメイドは、一部の人たちだけができる特別なものです。店側は、顧客の体型の変化からワードローブまでをしっかり把握しています。仕立て屋の場合、顧客のサイズや好みに合った洋服を提供するだけでなく、顧客の似合わないものはテーラーが作ることを拒否することもあります。仕立てデビューしたばかりの若者などには、テーラーが着こなしのノウハウを一から教え込む・・・といった、お洒落のお目付け役的な役割もしています。


イタリア人が日になんどもバールへ通うワケ
この「お店と顧客」の関係は、日常の生活の中でも見られます。イタリア人は1日に何度も行きつけのバールに通います。彼らはバールマンと軽いおしゃべりをするほか、自分好みのコーヒーが出てくるというちょっとした気遣いが嬉しくて同じ店に行くのです。バールマンたちは、濃い目のコーヒーが好き・少し牛乳を足したがるといった顧客たちの好みを覚えています。小さなプラスアルファのサービスですが、それがあるからこそイタリア人は馴染みの店に行き、いつも自分に付いてくれているスタッフから給仕され、買い物をすることを好むのです。こういった顧客と店との関係はとてもイタリアらしくて素敵だと思います。