消費者視点を切り口に、海外のライフスタイルレポートをお届けする「世界のお気にいり」。ミャンマーではFacebookとチャットアプリViberが大人気。そして、お経アプリのニーズも高いのです。
部下に調べものを頼もうと、「Googleで検索してみて」と言うと怪訝な顔をされた。 絶えずスマホをいじり、Facebookに毎日を振り回されているかに見えるミャンマーの若者たちですが、実はGoogle検索も知らない人が少なくないのです。これには、ミャンマー特有の事情が関係しています。
突然始まったモバイルインターネット時代
ミャンマーは経済鎖国ともいえる政策をとった軍事政権のもと、長く世界から取り残されていました。民主化を目指すテンセイン政権が2011年に誕生するまで、インターネットの普及率は1%程度にとどまり、携帯電話はもとより、固定電話さえない家庭がほとんどでした。 しかし、2014年に政府が海外の携帯電話会社の参入を許可すると、これまで日本円換算で何万円もしたSIMカードの価格が、数百円程度にまで下落。2011年に約124万人だった携帯電話契約者数は、2015年には約4153万人へと劇的に増えました。人口が約5141万なので、普及率80%ということになりますが、1人で複数のSIMカードを所有する人が多く、実際はそこまではいっていません。 さらに時を同じくして、周辺国から安価なスマートフォンも流入したため、ミャンマーはあっという間にモバイルインターネット時代に突入しました。つまり、固定電話やガラケー、カメラ、ビデオ、コンピュータなど、それら全てを一度も個別に持つことなく、いきなり全ての機能を兼ね備えたスマートフォンを持つようになった人が大多数を占めるのが、ミャンマーという国なのです。
何もかもFacebookで済ますネットビジネス
そんなミャンマーでひとり勝ち、いや、ふたり勝ちしているのがFacebookとViberです。 ほぼ何もないところからスマホ社会に突入してしまったミャンマーは、Web文化がひどく未成熟です。企業やレストラン、ショップなども、公式サイトの代わりにFacebookに公式ページを設けるところが目立ちます。 Webショップはまれで、人気があるのはFacebookショッピング。ミャンマーでは銀行口座を持つ人が少なくクレジットカードも普及していないので、ネット決済ができません。Facebookのメッセーンジャー機能を使って注文をとり、あとは直接家やオフィスへ商品を運び、現金決済で代引きするというのが、この国のネットショッピングなのです。 商店や小さな会社だと、オフィスにコンピュータがなく、スマホで全てを済ませるケースさえ見かけます。そのため、最近ソフト開発会社は、スマホを使う会計ソフトやPOSレジなどの開発に力を注いでいるそうです。
Viber人気は登録方法にあり
チャットアプリではViberが圧倒的強さを誇ります。理由は簡単。電話番号だけで登録ができるから。登録時にメールアドレスを入力する必要のあるアプリは、ミャンマーで普及は難しいのが現状です。先に説明したように、ミャンマー人の多くはそんなものは持っていませんから。 Viber支持者からはこんな声も聞こえます。
全世代に安定した人気のお経アプリ
ミャンマー人に人気の、ちょっと変わったアプリとして、お経アプリを紹介しましょう。敬虔な仏教徒が多いミャンマーでは、様々な機会にパゴダへ赴き、お経をあげます。お経といっても交通安全、家内安全、安産、火事除けなど効能別にたくさんの種類があり、偉いお坊さんでも全部を覚えきれていないほどです。 でも、お経アプリなら、必要なお経をすぐに表示してくれるので、何冊も経典を持ち歩かずにすみます。若い世代には自分で唱える代わりに、音声付きお経アプリを流して終わらせるちゃっかり者までいるそうです。ネットやスマホが普及して、まだたった2、3年ですが、ミャンマー人の適応力はなかなか高そうです。