ビジネスシーンにおいてデータはどのように活用すべきなのか。さまざまな業界のスペシャリストにお話をうかがいます。「全員がデータサイエンティストである必要はない、一定の知識を持っていることで多くの実務課題に対応できる」と話す、データ&ストーリー代表の柏木吉基さん。マーケターにとって、なぜデータ分析スキルが必要なのか語っていただきました。
※この記事は2014年11月に公開された内容を一部編集したものです。根拠として最も多く使われるのはデータである
── まず柏木さんのご経歴についてお聞かせいただけますか?私のキャリアは、セールスエンジニアとして日立製作所で約10年間、海外向けのシステムに関わることから始まりました。セールスエンジニアは一般的には技術職ですが、プロジェクトマネージャーとしてクライアントとの交渉など営業的な役割をメインにしておりました。その後、2001年から2003年にかけて、アメリカと欧州のビジネススクールへ留学し、MBAを取得しました。 2004年からは日産自動車に転職し、最初の6年間は海外向けのマーケティング&セールスを担当しました。その後、4年間を社内コンサルタントとしてさまざまな社内変革プロジェクトに携わってきました。プロジェクトは年に5〜6件、テーマは開発や商品企画、マーケティング、人事など、要望があればあらゆる部門の問題解決に関わりました。
データを十分に活かしている組織はほとんどない
── データを扱えている組織は世の中にどれくらいあるのでしょうか?本当の意味で組織としてデータをうまく活かせている企業というのは、非常に少ないと感じています。 データを扱うという視点において、企業を以下のように分けてみましょう。- 「データをすごく活用できている(上位層)」
- 「データはあるが活かせていない(中位層)」
- 「そもそもデータをまったく持っていない(下位層)」
一番大切なことは“火を絶やさない”こと
── その中でも特にデータリテラシーの高い、「エースで4番」のような方もいたほうがいいのでしょうか?必ずしも「エース」というレベルである必要はありませんが、スキルや分析手法の理解度が頭ひとつ出ているような方が1人でもいると、その現場での浸透のスピードは早いですね。ちょっとしたことが分からなくて躓いてしまったときに、近くにアドバイザーがいる環境はとても心強いです。そして、そういう人がいると継続性が増します。一番大切なことは、“火を絶やさない”ことです。 逆に、そこにいわゆるデータサイエンティストを放り込むと、現場と同じ言語で話すことができず、結果として逆効果になることが少なくありません。──「頭ひとつ出ている」のは、どういう方が理想的なのでしょうか?組織内の文化や仕事の仕方、人間関係を把握できていて、現場レベルでのビジネスを理解している人ですね。そういう方が手段としてデータを扱えるのが理想だと思います。 複雑な組織のなかで必要とされる情報をちゃんと理解していないといけません。分析的に正しくても、その組織内でのコミュニケーションとしては必ずしも最適でないようなことは往々にしてあります。 その案配を肌感覚で分かるスキルは一朝一夕では身につきません。それは事業、実務の現場で経験を積むことで身に付くもので、私も組織内の実務家という立場で、様々な現場を見続けて身につけてきました。