
広告のマーケティング研究
広告についてのアカデミックな研究を取り扱うジャーナルは、Management Science、Marketing Research、American Marketing Associationなどがあります。これらは、マーケティング・サイエンスと呼ばれる学問領域に属しています(※1)。2000年代以降、この領域での広告研究の中心的なテーマはウェブ広告です。ウェブ広告のコストパフォーマンスをどのように向上させるか、そして、どうすればCVR(Conversion Rate)を改善することができるのか、などのテーマを定量的に分析しています。 その中でも、さまざまな論文に引用され、マーケティング・サイエンスの広告研究でベンチマークとなっている2つの論文、Manchanda, Dube, Goh and Chintagunta(2006)とGhose and Yang(2010)について取り上げます。ウェブ広告が購買行動の変化に与える影響についての研究
Manchanda, Dube, Goh and Chintagunta(2006)では、バナーやポップアップなどのウェブ広告と購買行動の関係性をサバイバル分析(※2)を用いて検証しています。サバイバル分析とは、ある商品が購入されなかった週を「(サバイバルに)成功した週」、購入された週を「(サバイバルに)失敗した週」とカウントし、消費者の購買行動を「商品の最終購入日」、ウェブ広告の閲覧回数などを示す「マーケティング変数」、ウェブサイトの閲覧回数などを示す「行動変数」の関数とする分析手法です。また、ここでは階層ベイズモデル(※3)と呼ばれる推定手法を用いていますが、これは最も一般的な最小二乗法よりも制約が緩く、個々の消費者の異質性を考慮して推定することができるため、マーケティング・サイエンス研究でよく用いられています。 ヘルスケアの購買などに関する週次データを用いて検証した結果、ウェブ広告がリピーターの増加に貢献しているという結論が導かれています。サーチエンジン広告における広告効果指標の実証分析
Ghose and Yang(2010)では、Googleで広告を出稿している全国展開の小売店から集められた数百のキーワードをもとに、6ヶ月分のパネルデータを用い、スポンサードサーチを中心としたサーチエンジンの実証分析を行っています。分析内容は、CTR(Click Through Rate)やCPC(Cost Per Click)やCVRなどのさまざまなスポンサードサーチの測定手法の関係性をモデル化したものとなっており、上述した階層ベイズモデルの他に同時方程式モデルと呼ばれる手法を用いて分析しています。 主な結果としては、- CTRの上昇に対する影響はランキングよりも入札期間の方が大きい。
- LPの品質スコアはCVRと正の相関があるがCPCと負の相関がある。
- 検索結果で上位に表示されCTRもCVRも高いキーワードのほうが、必ずしも利益をもたらすとは限らない。