ブランディングとクリエイティブの重要性:広告の短期・中長期的な効果の実態

コラム
マーケティング広告

企業の経営者やマーケターは、ブランドを強くすることが将来の事業成果に繋がることを理解し、長期的なブランド構築に向けた戦略を重視しています。しかし、実際のところ多くのマーケティング施策において、短期的な視点に固執しがちな状況が見られます。

またここ数年、広告宣伝に関わるクリエイティブが似通ったものが多くなっているという声をよくお聞きします。いつも同じような表現の繰り返し… 似通ったクリエイティブは、だんだん目を向けられないものになってしまいます。

本記事では、広告におけるブランディングとクリエイティブの重要性についてご紹介していきたいと思います。

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もし、ブランディング広告を止めると1年後どうなるのか?
~広告の短期・中長期的な効果を可視化する~

短期だけでなく、中長期的な広告の売上効果も可視化し、ブランディング広告を中止した場合の将来の売上減衰を予測する方法を、事例を交えてご紹介します。

長期的なブランディングと短期的な販売促進の現状

マーケティング専門家で作家の Peter Binet(ピーター・ビネット)氏と Les Field(レス・フィールド)氏が10年以上にわたって行ってきた研究※1によると、長期的なブランディングと短期的な販売促進の最適な投資バランスは約 60%(ブランディング)/ 40%(販売促進)とあります。

ブランディング広告は、長期的にブランド力を維持・強化することによる事業成長を目的としています。そのため、ブランディング戦略の効果は数年単位で測定されます。一方、販売促進は直接的かつ短期的な行動を促すことが目的で、その効果は数日間から数週間、場合によっては数時間で測定されます。

ビネット氏とフィールド氏は、「2010年代は、多くの広告主がこの60% / 40%のルールを逸脱し、短期的な販売促進の広告活動にマーケティング予算を寄せてきた10年だった」と述べています。

長期的なブランド構築をある意味で犠牲にして、短期主義を助長した要因は2つあると考えられます。

1つ目は、広告のデジタル化です。
2010年代以降、Facebook、Instagram、Twitter、TikTok などのオンライン広告プラットフォームが登場し、急速に普及しました。デジタルメディアはインプレッション、クリック、コンバージョンなどの効果が見やすいことから、多くの広告主が広告宣伝費をデジタルメディアに投じるようになりました。

2つ目は、デジタル(オンライン広告)に閉じたアトリビューションモデルの活用です。
オンライン広告はユーザー行動ログデータを基盤に即効的な効果が確認できることから、多くのマーケターは短期的な効果を得るために継続的に最適化を行ってきました。企業にとっても、マーケティング活動の価値を証明しなければならいプレッシャーがあるため、効果が測定やすいデジタルメディアを中心としたアトリビューションモデルに焦点が絞られる傾向にありました。
(アトリビューション分析について詳しく知りたい方は、是非こちらのコラムもご覧ください)

広告クリエイティブへの影響とブランディングへのリスク

短期的な結果を重視することは、クリエイティブ制作にも影響を与えることが考えられます。短期間に効果を出すことに集中すると、情緒的で感情的な反応をもたらすクリエイティブの優先順位が下がり、価格重視や合理的なメッセージで即効的な反応を訴求するクリエイティブが優先されることがよくあります。

合理的なメッセージを使ったクリエイティブは、短期的に最も成果が出るかもしれませんが、CVや購入後にはターゲットとなる消費者にすぐに忘れられてしまうため、残存効果やブランド認知への影響が小さい傾向にあります。

一方で、感情的な反応をもたらすクリエイティブの場合、短期的な成果は見られないかも知れませんが、繰り返し接触することにより、ブランドに対する愛着や思い入れが蓄積され、長期的な成果向上が期待できます。

長期的に見た「販売促進(獲得型広告)」と「ブランディング広告」の効果

上記の図※2のように、販売促進(獲得型広告)では一次的に成果は急上昇するものの、長期的な蓄積効果は最小限にとどまります。

広告キャンペーンを6か月未満の期間で評価した場合は、合理的なメッセージを持った販売促進(獲得型広告)の方が効果的であることがわかります。一方、6か月以降の長期間で評価した場合は、ブランディング広告が成果に与えている長期的な蓄積効果が見えるようになります。

この結果からも、ブランド構築の重要性と、そこに対して継続的に投資することの必要性がわかります。

グローバルブランドの戦略変更事例

特にここ数年は新型コロナウイルスの影響により、多くの企業がROIに対してシビアとなり、短期的な売上を促進しがちです。しかし、ブランド構築がもたらす長期的な事業成果を犠牲にしてまで、短期的な販売促進に過剰な投資をする必要はありません。

グローバルでは、このことに気付き、戦略を変更しているブランドがいくつか出てきています。

GAP社の2019年第3四半期決算説明会で、CFOがブランディングとは対照的に、Old Navyのディスカウント主体のマーケティングに依存しすぎていたと述べました。

また、いわゆるデジタルネイティブ企業の中でも、Airbnb社が2021年第1四半期を通してマーケティング予算を28%(約250億円相当)削減しました。これは主に、販売促進系のマーケティングへの投資を大幅に削減し、ブランド構築とPR活動への注力を強化したと述べています。このような戦略変更を反映し、Airbnbは2021年の2月に米国や欧州を中心に「Made Possible by Hosts」と題した大規模なブランディングキャンペーンをテレビ媒体などで、開始しました。

まとめ

最終的には、ブランドに対して愛着や思い入れをおこすクリエイティブキャンペーンと、迅速な効果をもたらす販売促進の相乗効果が鍵となりますが、課題はこの両方にまたがる投資の理想的なバランスを見つけることです。

しかし、ブランド構築のための予算を確保するのは容易ではありません。ブランド構築を目標とした広告施策が事業成果に対する貢献度を示す、明確な指標や評価基準を設定する必要があります。

中長期的なブランド価値(ブランド・エクイティ)を含む、サイカ独自のマーケティング・ミックス・モデリング(MMM)分析サービス「MAGELLAN(マゼラン)」で可視化できます。あらゆるマーケティング施策が事業成果に対する貢献値を短期・中長期的に評価する他、目標(例:売上やCV数などの達成)や条件(例:特定施策の予算が固定)に応じた最適な予算配分のシミュレーション機能も搭載しています。MAGELLANの詳細はこちらをご覧ください。

また、データ戦略で成果を最大化するクリエイティブ制作サービス ADVA CREATOR(アドバ クリエイター)では、狙った成果に繋がるクリエイティブの制作が可能です。脳波解析とデータサイエンスを活用した独自の分析技術で、認知、興味、購入意向、ブランドイメージといった、自社が目的とする成果を生み出す脳波の波形を特定し、その波形を導くクリエイティブ要素 (映像、色、音やメッセージなど) を分析・抽出し、レシピ化します。このクリエイティブレシピをもとに、最適なクリエイターをアサインし、目的の成果を実現するクリエイティブを制作しています。ADVA CREATOR の詳細はこちらをご覧ください。

※1)Les Binet & Peter Field (2017). Media in Focus: Marketing effectiveness in the digital era
※2)Les Binet & Peter Field (2013). The Long and the Short of It: Balancing: Balancing Short and Long-Term Marketing Strategies
IPA Databank(1980年~2010年の間、996広告キャンペーンを対象にした調査 )

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