【セミナーレポート】データを"立体的"に見る〜組織・個人に何が求められるのか〜

「データを活用できる組織とは?」

この問いをテーマに、株式会社サイカでは12月3日に特別セミナーを開催致しました。特別講演には、日産自動車にて数々の社内コンサルティングプロジェクトを担当されてきた柏木吉基氏をお迎えし、一般の実務家にとってのデータ分析とは何か、それを阻む課題とは何かについてお話いただきました。後半では、株式会社サイカの平尾より、これまでのさまざまなクライアントを外部から支援してきた中で、クライアントの現場で感じた「キーパーソン」の重要性についてご紹介しました。

このレポートの中では、特に要点となるスライドとメッセージについてピックアップしてご紹介させて頂きます。

特別講演 データ&ストーリー代表 柏木吉基氏

柏木吉基氏

投影資料は

トップマネジメントへの報告は3分

日産で様々な社内コンサルティングのプロジェクトに携っていましたが、カルロス・ゴーンを含めたトップマネジメントへの報告では、おおよそ3分以内で説明し、意思決定を求めなければならなかった。それ以上長くなると焦れてきて話を聞いてくれなくなります。

たとえ何百枚と補足資料を用意していようと、要点は3分。そしてそこでNoと言われると、何ヶ月掛けたプロジェクトであろうとリベンジの機会が与えられることはありませんでした。

一般的な実務家にとってのデータ分析とは?

スライド

一言で「データ分析」と言っても、分析の専門家(データサイエンティスト)とビジネスの一般的な実務家の間で期待されることは大きく違うと感じています。

例えば日産自動車でも、5年後10年後の自動車販売台数の予測などを時間を掛けて高度な分析を掛けて行う、という部署はありました。しかし、一般の実務家が行う分析は、「来週の役員会までに」といった高い頻度(そして短い時間)で行われるものであり、専門性よりも汎用的な問題解決への応用が求められます。

データ活用を阻む組織の課題・個人の課題

スライド

では、そのような分析が組織として行われるには何が必要なのでしょうか?「組織的課題」と「個人的課題」に分けて捉えられます。

まずはトップのコミットがあること(組織的課題(1)カルチャー)がとても重要ですし、現場でもデータにもとづいて判断する文化があることも合わせて必要です。

また、ありがちなデータ活用が進まないケースは、「過去にうまくいった経験」と分析結果があわない時に、分析結果の方を否定してしまうこと。これは評価基準(組織的課題(4)評価基準とマインドセット)にも通じる話であり、組織として「過去を否定すること」が評価される仕組みになっていないと分析がうまく使われることは難しいです。分析によって成果を出すためには、過去にやってきたことを否定しなければならない。結局は現状延長の意思決定しか出来ないのであれば、データを活用することはできません。

個人的な課題の中では、なぜあまりみんな指摘しないのか不思議なのですが、分析には時間がかかるのを認めることが必要です(個人的課題(6)日常の業務多忙)。分析を行うということは、「30分間PCの前に座って悩んでいる」ような時間が必要な仕事です。それを見て「あいつはサボってる」と言われたり、実際には言われなくても、本人が「周りからサボってると思われるかもしれない」と思ってしまうようでは、良い分析が行われる可能性は低くなります。

Q&Aセッション

柏木吉基氏

Q:私は統計を使った分析結果を受け取る、意思決定する側の立場に居るのですが、現実が分析のとおりにならなかった場合は分析が間違っていたのか、もしくはそれ以外のことに原因があるのでしょうか?

柏木氏:両方の可能性があり得ます。分析は、意思決定をサポートするために行っています。例えば、私自身が日産時代に担当した分析の中で、「分析をしたからこそヒットした車種があったのか?」というのは、答えるのが難しいご質問です。しかし、「分析を行ったことがトップマネジメントの意思決定に貢献した」ということを「分析としてヒットした」と言うのであれば、限りなく全てに近いものが意思決定に貢献したし、そうできるような仕事をしてきました。

Q:組織としてデータを活用する文化を浸透させていくには、どうすればうまく進みやすいのか?

柏木氏:私がお勧めしているのは、いきなり大きく始めるのではなく、スモールスタートをしていくことです。まずはどこかの部門で小さく成功させて、その成果を見せながら広げていくと進みやすくなります。いきなり「こっちのやり方が良いのでみんなやりましょう」と言われても、なかなか受け入れられないですが、このやり方で隣の部署ではうまく行っているらしい、ということを見ていれば、とても受け入れやすくなります。

Q:数字というのは、自分の想定とは違った意図で解釈されることもあるように思います。そうされないために、気をつけていたことはあるでしょうか?

柏木氏:私は自分自身の経験からしか語れないですが、日産では「言葉で説明すること」の方がリスクがあり、逆に数字で表現するほうが安全でした。トップマネジメントは、国籍だけをとっても非常に多様性があります。その中で英語で説明しても、一つの英単語を取ってももいろんな解釈をされる可能性があります。それだったら、「20%アップです」と数字で言い切るほうが確実でした。

事例紹介:株式会社サイカ 平尾喜昭

柏木吉基氏

投影資料はこちら

データ活用を進める「キーパーソン」の存在

株式会社サイカはコンサルティングを中心に創業しましたが、その中で「外部である自分たちに仮説はない」「現場の人が自ら持っている仮説を分析できるようなツールが存在しない」という問題意識から、統計分析ツールadelieを開発、提供するようになりました。

その後、adelieの提供や、コンサルティングとしての関わりなどで、様々なクライアントに関わらせていただきましたが、「分析が組織で行えた企業」に共通するのは「自ら意思決定し、実行結果のリスクまで引き受ける」ことのできるキーパーソンの存在があった、ということができます。

スライド

分析のプロセス内に存在する様々な「壁」

弊社では、分析のプロセスを以下のように分けてご提示しています。「データを組織として活用する」ことを目指す中で、それぞれのフェーズで違った壁に直面してきました。

スライド

例えば「問題意識」では、「過去の成功体験に囚われている」ことや「マネジメント層がマイクロマネジメントの傾向が強い」ことが壁となることがあり、その場合はロジックの整理や優先順位付けを行っていくことが必要となりました。
また、「仮説」や「データ」では、特に企業規模が大きい時に多くの部門に知見やデータが分散していくことが多く、状況に応じて多様な関係者を巻き込みながらプロジェクトを進行することが求められます。

過去に長期のプロジェクトを取り組ませて頂いた電機メーカー様では、それぞれの工程ごとに生じた壁に対して、フェーズごとに重要なキーパーソンがいて一緒に動くことで、プロジェクトがきちんと進んでいきました。

スライド

その経験の中で感じることは、「1人の問題意識と行動」だけでも、組織を変えるきっかけは十分に作れるということです。データを活用できる組織を作るための最もシンプルな回答は、今日来られている皆様のような方々が「最初の」キーパーソンに自らなること、なのだと思います。

この記事を書いた人