世界のお気にいり(6)

イタリア老舗ブランド「カンパリ」の美しすぎるマーケティング

消費者視点を切り口に、海外のライフスタイルレポートをお届けする「世界のお気にいり」。
第6回は、イタリアの老舗ブランド「カンパリ」のマーケティングとミラノで流行中の食文化についてです。

万博のためにデザインされた特別ラベル。マグナムボトルも作られた。
万博のためにデザインされた特別ラベル。マグナムボトルも作られた。

現代化も大事だけど伝統も残したい、がイタリア流

イタリアには多くの有名老舗ブランドがあり、独占的な立場で昔からのイメージを保つだけで生き延びていけるブランドから、イメージを完全にモダンに刷新し、面影も残さないほど変わり果てているブランドまで様々です。そんな中でも、老舗らしい良さを残しつつ、常に時代の先端を走るマーケティングを展開するカンパリに注目してみたいと思います。

ダニエル・クレイグ出演、パオロ・ソレンティーノ監督による「CAMPARI RED DIARIES」の撮影シーンより
ダニエル・クレイグ出演、パオロ・ソレンティーノ監督による「CAMPARI RED DIARIES」の撮影シーンより

ダニエル・クレイグ出演、パオロ・ソレンティーノ監督による「CAMPARI RED DIARIES」の撮影シーンより
ダニエル・クレイグ出演、パオロ・ソレンティーノ監督による「CAMPARI RED DIARIES」の撮影シーンより

カンパリは創業者ガスパレ・カンパリがミラノのドゥオモの脇に作った醸造所で1860年に生まれた長い歴史を持つリキュールです。イタリアが共和国としてした翌1861年には、それに伴った活気に包まれるドゥオモ脇の醸造所の一角にバーも開店しました。それはミラノ随一のおしゃれな店で、ヴェルディからムッソリーニに至るまでの歴史上の要人が通い詰めていたとか。
さらに2代目のダヴィデは有名アーティスト達を起用した広告展開をし、他のビターズ系のお酒がストレートを推奨する中あえてカクテルとしての使用を推奨するなど、画期的なマーケティングで同製品を世界的成功に導きました。

そして現在ではファッション、デザイン、ショービズなどとコラボしたトレンド性を意識したマーケティングを行い、例えばミラノのファッションウィークやデザインウィークでは積極的にコラボやイベントのスポンサーを務めています。例えば9月のファッションウィーク中に、ショッピングゾーンの主要店でアペリティーボを振舞っていたのは記憶に新しいところ。

ミラノ随一の高級ショッピングストリートの主要店でファッションウィーク中にカンパリのサービスが。
ミラノ随一の高級ショッピングストリートの主要店でファッションウィーク中にカンパリのサービスが。

また毎年発表してきたショービズ界のスターをモデルに起用したカレンダーも有名で、今年はケイト・ハドソンがモデルを務め、過去にもペネロペ・クルス、ベニート・デル・トロなど旬のスターたちが登場しました。が、来年用はさらに革新を測り、クライブ・オーエンを主役にした短編フィルムを制作中とのこと。
またミラノの代表的なお酒として、同市で行われる大イベントを牽引するような立ち位置でイメージアップを図っていて、例えば昨年ミラノで行われた万博の際には特別ボトルやミラノガイドマップを作ってその存在感をアピールしていました。

有名アーティスたちの手による歴代キャンペーン広告もずらりと展示
有名アーティスたちの手による歴代キャンペーン広告もずらりと展示

そんなカンパリのマーケティングの歴史は本社に併設されたミュージアムに一堂に展示されています。これを見ると昔から常に最先端を行っていたからこそ、今のトレンドと結びついたマーケティングが嫌みなくはまるのだと言うことを痛感させられます。ブランドのモダン化だと言って付け焼刃的にアーティストやファッションと結びついても、かえって野暮ったくなってしまうのが落ち。やはり伝統に積み重ねられているというところが、モノを言うように思います。

ミラノ郊外のカンパリ本社にあるカンパリのミュージアム「GALLERIA CAMPARI」。カンパリオレンジをイメージしたエントランス。
ミラノ郊外のカンパリ本社にあるカンパリのミュージアム「GALLERIA CAMPARI」。カンパリオレンジをイメージしたエントランス。

(写真提供:GRUPPO CAMPARI)

ハムやチーズまでベジタリアン向け食品に。健康志向が一大マーケットを確立中

スーパーマーケットにはヴェジタリアン用食品だけのコーナーも。大手メーカーの製品も増えてきた。

その一方、最近のトレンドというと、挙げられるのは健康関連のブランドや商品です。食の国・イタリアは元々ファストフードやインスタント食品からは比較的縁遠く、多くの人はイタリア料理自体が健康的だと考えているため、それほど健康食を強く意識する傾向はなかったのですが、このところダイエットやアレルギー問題とも相まって、菜食主義や有機食品志向が高まっているのです。

大豆ベースで作られた、フェイクミートや豆腐類。
大豆ベースで作られた、フェイクミートや豆腐類。

そこで、これまでは専門店で売られていたようなヴェジタリアン向けや有機食品のブランドが、スーパーマーケットでも専用の大きなコーナーで大々的に売られるようになりました。アレルギー対策もあり、グルテンフリー製品なども強化されています。
その手の専門ブランドだけでなく、大手メーカーも有機やヴェジタリアン用のライン、またはグルテンフリーバージョンなどを特別に開発し始め、また大手スーパーマーケットはオリジナルの有機食材ブランドも展開して、この手の食品は一大マーケットとなっています。

有機食材とヴェジタリアンフードはリンクする部分が多く、この手のヴェジタリアン用かつ有機素材仕様というものは多い。
有機食材とヴェジタリアンフードはリンクする部分が多く、この手のヴェジタリアン用かつ有機素材仕様というものは多い。

生ハムやチーズの国だけに、大豆などを加工して、ハムやチーズまで作られているのがイタリアらしいところ。やはりここでも伝統はどこかに残しているところが、イタリア人の心を掴むポイントとなっているのかもしれません。