世界のお気にいり(10)

ミャンマーの新年は4月!10月のお祭りタディンジュではクリスマス電飾が人気?

消費者視点を切り口に、海外のライフスタイルレポートをお届けする「世界のお気にいり」。もうすぐ年末と新年を迎えますが、ビルマ暦であるミャンマーの新年は4月です。ミャンマーのお祭りについてレポートしました。

ミャンマーは月の満ち欠けを基準として独特のビルマ暦をもちいており、新年は4月。そのため、西暦の1月1日は祭日でさえありません。クリスマスは、国民の5%ほどを占めるキリスト教徒に配慮して祝日ですが、教会および一部の外国人向け施設を除けば、これもあまり盛り上がりません。

それに対し、ミャンマー人が1年で最もテンションが上がるのは、4月の満月前に1週間ほど開催する水かけ祭りと、秋に行う2つの仏教祭事、10月のタディンジュと11月のダザウンダインです。

1年の不幸を洗い流して新しい年を迎えるための水かけ祭り

日本人にとっての年末年始にあたる水かけ祭りは、ふだん穏やかなミャンマー人が熱狂的に盛り上がる期間。ほとんどの職場が長期休みに入り、地方出身従業員が多い大衆食堂などでは、1ヶ月近く休むところもあるほどです。
長期の休みを利用して郷里に帰る人が多いのはもちろんですが、通常10日近くある休暇のうちの前半で祭りを祝い、後半を家族や友人との旅行にあてる人も多く、行楽地はどこも大混雑になります。

企業がスポンサードする水かけステージ
企業がスポンサードする水かけステージ

水かけ祭りでは、企業がスポンサーについた大々的な水かけステージが大通りにずらりと並び、何百本ものホースで盛大に水をかけるだけでなく、ステージ内にも満遍なく水を降らせる徹底ぶり。年々派手さを増していましたが、アウンサンスーチー氏率いる新政権はそれに歯止めをかけるべく、2016年からステージに規制をかけ始めました。今後、多少は元の落ち着きある雰囲気へ回帰するのでしょうか。

期間中は、どこを歩いていても突然の放水に遭うので油断なりません。車は内部をビニールで覆い、人びとは荷物を持たないか、ビニール袋に入れて放水に備えます。そこでよく売れるのが、密封タイプのビニールポーチ。携帯など、必要最小限の持ち物を入れ、首から提げておくのです。

水かけ祭り期間の必需品、ビニールポーチ売りの屋台
水かけ祭り期間の必需品、ビニールポーチ売りの屋台

若い人たちによると、「品質があまりよくないから、すぐ敗れたり、水が漏れるんだよね」とご不満の様子。この時期に、完全防水のバッグを手頃な価格で出せば売れるかも!?

1年の不運を洗い流し新しい年を迎えるための水かけ祭り

水かけ祭りが済んでしばらくたった7月の満月の日から、ワーゾー(※日本の「雨安居/うあんご」に相当。うあんごとは、夏の時期に僧が一定期間一か所にこもって修行すること)が始まります。悟りを開いたばかりのお釈迦様が直弟子たちに初めての説教をした時期に由来し、3ヶ月近くの間、お釈迦様は天界へ戻られます。
仏教徒たちも通常よりもより宗教的な生活に努め、結婚や引越しは控え、月4回ある持戒日の学校は休校。托鉢への食事の提供を増やし、僧院やパゴダへの寄進にも積極的になります。

※ 参考:コトバンク「安居」より

ワーゾーに入る前に、僧侶を招いて袈裟を寄進する家庭や会社が多い
ワーゾーに入る前に、僧侶を招いて袈裟を寄進する家庭や会社が多い

ワーゾー期間は菜食に転じる人も多く、スーパーではそういった人たちが選びやすいよう、動物性タンパク質を使っていない食品に、それとわかる文言を印刷したシールを貼るなどして配慮します。

スナックに貼られたワーゾーマーク
スナックに貼られたワーゾーマーク

お釈迦様が帰還するタディンジュはクリスマス電飾がトレンド

10月の満月の日であるタディンジュをもって、ワーゾーは終了を迎えます。タディンジュの夜は家の前やベランダにロウソクや灯明をともし、地上に戻るお釈迦様の足元を照らすのです。最近は、電気提灯やLEDを使ったクリスマス用電飾が人気で、9月に入ると、そういったイルミネーション用品コーナーがスーパーに出現するようになります。

きらびやかなイルミネーションを施した団地
きらびやかなイルミネーションを施した団地

また、タディンジュには、目上の人に贈答品を贈る習慣があります。日本でのお歳暮やお中元のような感じでしょうか。取引先へ配って歩く会社も多いので、この時期は贈答品の詰め合わせを店頭に並べる商店が目に付き、その規模は年々派手さを増しています。

僧院への「寄進ツリー」が並ぶダザウンダイン

タディンジュの次の満月の日はダザウンダインと呼ばれ、僧院に大々的な寄進をします。そのため、タディンジュが過ぎると街角には高さ2mほどの、木を模した「カテインの木」が並び、寄進の品々を飾り付けていきます。

寄進の品を吊り下げた「カテインの木」
寄進の品を吊り下げた「カテインの木」

ミャンマー人が信仰する上座部仏教では、僧侶が財産を持つことを固く禁じています。わずかに認められた例外も、袈裟、托鉢用の鉢、傘、ウチワ、草履のみ。そのため、僧院へ寄進できる品物も限られ、上記の品以外では、食品、薬品、時計、毛布、食器といったところでしょうか。
どのメーカーも、「お坊様に喜んでいただけるものを贈りたい」という信者の需要に応えようとしているのか、ハンドクリームやサプリメントなど、僧院へ寄進できるギリギリのラインを探るかのような商品が増えてきています。また、派手なデコレーションを施すなど、豪華に見える工夫も怠りません。

スーパーに並ぶ、寄進用セット
スーパーに並ぶ、寄進用セット

経済開放で欧米の文化がどんどん流れ込んでいるミャンマーですが、伝統行事のさらなる商業化も、同時に進行しているといえそうです。