マーケと統計

95%達成できる広告予算の具体的な算出方法

統計学的に広告予算を作る方法を紹介したのですが、計算式の根拠を説明するのはなかなか大変なので、本記事に分割して記載していきます。前半では統計学について知識がある方向けに、後半では統計学について知識のない方向けに、理論的なところから説明していきます。

※ 本記事は広告予算の作り方:95%の確率で達成する予算の計算方法を読んでいただいた前提で記載しています。

大前提としての言葉の定義

話をすすめるにあたり、「真のCVR」という言葉を定義したいです。これについて腹落ちした上で読み進めてください。

真のCVRとは、ある広告を無限回数運用した時に収束するCVRを意味します。ですので、理論値です。コインを投げた時に表が出るか確率が50%であるように、サイコロを振って1が出る確率が16.7%であるように、同じ環境下で何度も運用したときに理論的に導かれるCVRを真のCVRとします。

広告予算の作り方について:統計学の知識がある方向け

クリック課金型の広告において、クリックした後にCVするか、しないか、の二項分布を想定します。サンプルサイズは十分に大きいため、正規分布に近似します。つまり、B(Click数, CVR)の二項分布に従う広告のCV数の平均値は、N(Click数 × CVR, Click数 × CVR × (1- CVR))に従います。

目標件数(CV数)を95%の確率で達成するためには、N(Click数 × CVR, Click数 × CVR × (1- CVR))のz値が-1.645になる件数が目標件数になればよいため、仮にCVRが10%、目標件数が100件の場合、下記の式を解けば必要なClick数が算出されます。

必要Click数の計算式

広告予算の作り方について:統計学の知識がない方向け その1

そもそも、目標達成の確率って何%か計算できますか?

リスティング広告で1,000Clickありました。着地先は、真のCVRが10%のLPです。このとき、CV数はいくつになるでしょうか?理論的には、 1,000Click × 10% = 100CVです。これは間違いなくそうです。では、ぴったり100CVになる確率は何%でしょうか?答えは4.2%です。CVR10%が間違いないとしても、1,000Clickがぴったり100CVになる確率は、たったの4.2%しかありません。計算式は下記の通りです。

ぴったり100CVになる確率計算式

残りの95.8%がどこに行ったかというと、99CVだったり、101CVだったり、100CVの周辺の数字に散らばっています。では、ぴったり99CVになる確率は何%でしょうか?また、101CVになる確率は何%でしょうか?それをCV数別に算出して、グラフにすると下記のようになります。

CV別の確率分布

横軸はCV数、縦軸はCV数ごとの確率です。青く塗りつぶされた点はCV数が100を超える確率を意味します。このグラフは100CVを中心に左右対称ですので、ざっくり2回に1回は100CVを上回りますが、2回に1回は100CVを下回ります。あなたの上司が「100CV行かなかったら、不足分は自腹な!」というパワハラ上司だとしたら、あなたはざっくり2回に1回は自腹を切らなければならなくなります。

では95%の確率で達成するClick数を知るためにどうすればよいのか?

100CVの獲得と、CVR10%という前提が変わらないときに、1,000Clickでは2回に1回は未達成になりますので、とにかくClick数をあげなければなりません。では、(例えば)95%の確率で達成するClick数はいくらになるでしょうか?

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ここで、エクセルの登場です。このエクセルファイルをダウンロードしてください。

簡単に解説すると、セル「B1」にあるClick数のもと、セル「B2」にあるCVRが正しいのであれば、CV数100未満になる確率はセル「B3」に表示されます。ですので、セル「B1」の数字をポチポチあげていって、セル「B3」が5%を切った時のClick数があれば、95%の確率で100CV達成です。

広告予算の作り方について:統計学の知識がない方向け その2

※ 統計学の知識が全くない方にもイメージしてもらえることを優先しているため、統計学的に正確ではない表現が含まれますが、ご了承ください。

広告予算の作り方について:統計学の知識がない方向け その1でやったことの振り返り

先程、エクセルで、Click数をポチポチ修正したと思うのですが、正直めんどくさいですよね。できれば、計算してバチっと答えを導き出したいところです。

その1では、エクセルを操作しながら、グラフの中心を100CV(1,000Click)から117CV(1,170Click)に移動させました。その結果、グラフの中心が117CVであれば、100CVを下回る確率が5%を切ることがわかりました。

グラフの中心を117CVにするには、中心を少しずつ大きくする(101CV → 102CV → 103CV → …)というのもありですが、グラフの中心を CVR10% × Click数n = n / 10 として、中心が n / 10 のグラフにおいて、100CV未満が発生する確率が5%以下になればよいと考えることも出来ます。

平均CV別の分布

統計学では○○以上になる確率が●●%になる点を算出できる

ところで、このグラフの形は、統計学でいう「正規分布」という形に非常に近いものになります。そのため、正規分布のグラフにおいて、「95%以下の確率でしか発生しない点」を算出することができれば、あとは今回の事例における「95%以下の確率でしか発生しないCV数」を算出できることになります。

あるグラフで成り立つ計算式は、そのグラフとほぼおなじ形のグラフでも成り立つよね、という話です。

実際に計算してみる

平均0、分散1の正規分布のグラフにおいて、「95%以下の確率でしか発生しない点」は x = -1.645 という値で決まっています。(分散については本記事では解説しません。よくわからないけど、分散というものがあると思って割り切るか、ご自身で検索してみてください。)

標準正規分布の-1.645の点

平均μ(ミュー)、分散σ^2(シグマ二乗)の正規分布のグラフにおいて、「95%以下の確率でしか発生しない点 X」は以下の式で計算できます。

では、平均 n / 10、分散 n * CVR10% * (1 – CVR10%) の正規分布のグラフにおいて、「95%以下の確率でしか発生しない点 100CV」は以下の式で計算できます。

あとは、最後の式をnについて解くだけで、答えが算出されます。

まとめ

統計学的に広告予算を作る方法にはどうすればよいのか?そのための具体的な手順を紹介してきました。このレベルであれば、初歩的な高校数学のレベルの確率論を覚えていれば、あとはエクセルでポチポチやれば算出可能です。統計学を使うと、エクセル操作の手間が省けるということをわかっていただけたかと思います。より複雑な予算を作る際には、エクセル操作では対応できませんので、統計学の知識が必要になります。

今回ご紹介したのは統計学の初歩レベルの話ですが、初歩レベルでも応用範囲は非常に広いため、上記の「正規分布のグラフに当てはめて計算する」という方法を、ご自身の広告において応用してみてください!

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