宣伝会議サミット2016レポート・後半

宣伝会議サミット2016レポ「HOME’S的・統合プロモーションの実践方法」

宣伝会議サミット2016のセミナー「統合プロモーションの明日−テレビCMを加味したウェブ広告運用の実践とは−」のレポートです。前半では、マーケティング業界における統合プロモーションの現状について振り返り、今後どうしていくべきかの課題が浮かび上がりました。後半では、統合プロモーションの実践について不動産検索サービスHOME'Sでの事例を伺います。

<前半を読む>

統合プロモーションの実践に大事なのは、チームを作ること

久松さま:

まず、マゼランのパス解析というのが、実はカスタマージャーニーにも見立てられるんですね。そのため、ストーリーと数字が一緒になってどう手を打っていくかが見えてくる。このあたりは広告だけではなく、あるパスが強いのであれば、そこに対してサービスを提供する、そこのポイントに向けて重点を置いていくことができる。いろいろなプロモーション活動と役割のスタッフが集まっているので、どうアウトプットを最大化できるのか、という期待値がありました。

あとひとつは、広告の運用において「今の結果を出して・次の打ち手を打つ・実際のアクションを起こす」という一連の流れです。これまでも、できるだけ短いサイクルで行っていたものの、やはりワンサイクル回すのに10日間かかっていました。そのため、1ヶ月でPDCAを回そうとすると3回しかできない。それがマゼランを使うと1日でデータがわかるので、最短3日で回せる。1ヶ月のうちに10回もPDCAを回せると、今動いている世の中に対してよりフィットさせることができるのではないか、という期待感がありました。

平尾:

ありがとうございます。導入にあたって、現場ではどういった反応があったか伺います。マゼラン自体はツールです。ツールだけ当て込むと、組織として実行していくことが難しいように思います。実際に統合プロモーションを実行に移すというときに、どのような点が重要と捉えていますか?

久松さま:

一番大事なのはチームを作ることかな、と思います。

平尾:

専門家を雇ったり育てたりではなく、チームを作ることですか?

久松さま:

チームを作ることですね。ほとんどの企業のマーケティング組織は、いくつかの部門に分かれてそれぞれ活動していると思います。さらに自社で出来ない場合は、広告代理店を代表とした外部のパートナーと手を組んで実施されているのではないかなと。そうすると、広告に関係するプロジェクトでも、たくさんの人が関わることになります。まず、全体をどうしていくかということを理解してもらい、その目的を共有した上で、どのようにチームとしてパフォーマンスを上げていくかがものすごく重要だと思います。

弊社の場合でも複数部門が関わっているプロジェクトの場合、たとえば毎週2時間会議室で打ち合わせをしているのに「前提が揃わない」「やりたいという部分が擦り合わない」部分があります。そういうときは、「何を目指しているのか」「どんなことをやろうとしているのか」を理解するように、アクティビティを行っています。

平尾:

別々の部門がそれぞれやっていることを、統合して一気にやるぞという前提で進められている。

久松さま:

日々の仕事が「何に繋がり、何を行うのか」をみんなで理解していく必要があります。アクティビティは、社内の複数部門と社外の方にも参加していただいてます。

平尾:

すごいですね。プロジェクトを進めるにはチーム作りが重要で、それを社内外を越えてやるべきだ、と。そこを一気にやることは筋が通っているなと感じます。ただ、またしても意地悪な質問になりますが、実際にここまでのものを、それこそアクティビティを社内外でやろうよと言われても、なかなか一挙に進めるのは厳しいかなと思っていまして。どういった手順を踏んで行けば社内外を巻き込んだチーム作りができるのか、ステップについて伺いたいです。

久松さま:

全部で3つのステップで考えています。まず、「何のためのプロジェクトか」「何のためにやっているのか」ということを理解する。その前提を揃えるということが大事です。
その上で、それぞれが持っているKPIだけではなく、全体のKPIを考えて設定することが大事かな、と。KPIが違うことで、本当はこうやったらいいんだけど自分のミッションは違うし…という問題が出てしまうと、なかなか上手くいかないみたいです。

3つ目は、社内外を超えたチームで目標を達成するためにモチベーションを上げるのが重要かなと思います。最初はやはり社外だから、違う部門だからと遠慮してしまうと思うのですが、会社や部門の垣根を越えて、揃えた前提に沿って「もうちょっとこうしませんか?」「このような方法もあります」など率直にコミュニケーションを取ることが大事ですし、チームとしての一体感が生まれます。

平尾:

社内外を超えたチームに関わると思いますが、代理店同士って競合になりませんか?こちらはリスティングを売りたくて、こっちはディスプレイアドというように。そこは、どのように対処をされたのでしょうか。

久松さま:

我々は、年間の予算を決めて、その中で最適に使っていくというよりは事業をドライブさせるためにマーケティングを行っています。みんながマーケター。ですので、決まった予算ををみんなでわけるというよりは、どうやってパイを大きくし、ドライブさせるかということをみんなで考えたいですね。

ユーザーの体験はオン・オフ関係なし。統合プロモーションは一般化する

平尾:

すごくイメージが沸きます。以上のお話から、議題の1と2。プロモーションの分析とそれを実践に落とすというところのご経験をお伺いしました。議題の3つ目について、もう少し広く、マーケティング業界と統合プロモーションの未来について議論して参ります。

まず最初の質問です。「オンラインとオフラインを両方やっています」というクライアントは実際に多いです。しかし、それぞれの部門が独自に行っている施策であって、ひとりのユーザーやカスタマージャーニーをみんなで共有し合い、統合的にプロモーションをすることができているのだろうか?統合プロモーションの本質を、なかなか実現できていない状況ではないだろうかと感じています。それを踏まえた上で、これから統合プロモーションは一般的になると思いますか?

久松さま:

当然、一般化してくるのではないかなと考えています。その理由はスマホ。街中歩いている時に、「いま俺はリアルだ」「いま僕はオンラインだ」とは、みんな意識していない。つまり、ユーザーに対してどういう体験をさせるかという場合には、あまりオンライン・オフラインというのは意識する必要はありません。それよりも、どうやってユーザーとコミュニケーションを取っていくか、というところが大事になってくると思います。

平尾:

まさに広告主視点でオンとオフを分けるというよりは、否が応でもそうなってしまうというわけですね。次に、データが複数存在する統合プロモーションを実践するハードルについてです。統計分析や機械学習のような、いわゆるデータサイエンスの力を持っていないと統合プロモーションは難しいのではないかと思ってしまいます。データサイエンティストというキャリアは一般化すると思いますか?

久松さま:

一般化して、すべての会社に専門性も高くスキルも必要なデータサイエンティストが所属して活動するかというと、そうではないと思いますね。たとえば車に乗ってどこかに行くとします。その時に、ドライバーは乗っている車を全部分解して、組み立て直すスキルが必要か?ということではありませんよね。細かい分析はツールに任せて、何をやるかを考えることにマーケターは注力すべきかなと思います。

平尾:

似たところで、アクセス解析がありますよね。昔は限られた人しかできなかったものでしたが、Google Analyticsのおかげでみんな見ることができるようになりました。分析も同じような世界になってくるかもしれないですね。ありがとうございます。

統合プロモーション実践の第一歩は、今の仕事の成果を出して展開すること

平尾:

では最後に、踏み出すための第一歩というお話を。マーケターが明日から統合プロモーションを実践するときに、まず第一歩目として何をする必要があるのか考えたいと思います。

先んじて、久松さまにポイントを挙げていただきました。まず上段から。久松さまは、価値観を変えずに成果を出すことを、プロモーションを実践に落とすためのポイントとしてあげられてます。これはどういうことでしょうか?

久松さま:

統合プロモーションは、獲得系の広告であればPLを見ているようなもので、どうやって利益が出るか、ブランドの広告だとBSに近い活動だと思うんですね。まさに経営を統合している経営戦略なので、今すぐ明日から変えられない部分ですし、変えるために時間もかかります。ではどうするのか。

オンラインの広告を担当しているとしましょう。マーケターは、どの媒体でどういう形で出稿しているかというレポートを出しますよね。上司にはCPAの報告をして、運用を変えたことによってパフォーマンスが変わるかを実践してもらう。すると、「調子いいじゃん!」と言われたとき、「実はこういう形でやってまして」と話すことができる。さらには「じゃあ、こういうこともやってみましょうよ」という議論へつなげていけることが大事なのかなと思います。

平尾:

ありがとうございます。やってみることが大事だけれど、いきなり全部やるというわけではないということですね。

久松さま:

いきなり全体最適は始められません。まず、自分の担当案件を軸に成功させて、そこから全体に展開する。そうすると、実績があるので、どれくらいのインパクトがあるかイメージがみんなで持ちやすくなりますね。まずどこかひとつの部門であったり、ひとつのカテゴリから始めていくのがいいのではないでしょうか。仮説の出所が大事というよりは、どこからでもスタートして良いと思うんですよね。やってみてダメだったらまた次のことを考えればいいですし。

平尾:

まず部門的に始めたことを全体に展開させていくというのが、リスクを減らせて納得感も組織内に形成しやすいのですね。

そろそろお時間になりましたので、本日はここまでとさせていただければと思います。本日の対談が、マーケターの皆さまが統合プロモーションをやりきる上でのきっかけとなってとなってくだされば幸いです。改めまして、久松さまありがとうございました。


以上、「統合プロモーションの明日−テレビCMを加味したウェブ広告運用の実践とは−」について、対談の書き起こしを中心にレポートをご紹介いたしました。統合プロモーションを実践していくためのポイントについては、具体的にサイカよりアドバイスも行っております。ぜひ、お問い合わせください。

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