株式会社サイカは、7月20日に事業会社のマーケターを対象としたセミナー「web広告の効果を最大化させるためのオフライン広告活用セミナー〜45日で実現できる統合アトリビューション分析」を開催しました。
このセミナーは、CPAに注目しがちなweb広告の効果測定を見直し、web広告の効果最大化への考え方・アプローチをご理解いただくことを目的としています。オンラインとオフラインのプロモーションを統合し、アトリビューション分析を実践している企業の実例を交え、3部構成で行いました。セッションごとにレポートいたします。
第2部 「web広告の効果を最大化させるためのオフライン広告活用 ―間接効果の可視化と活用―」
ご登壇者プロフィール
統合分析を実践するソフトバンクの組織体制
株式会社サイカ 代表取締役 CEO 平尾 喜昭(以下、平尾):
「web広告の効果を最大化させるためのオフライン広告活用セミナー」、第1部では「CPAが下がらない理由とは ―ラストタッチからの脱却―」をテーマに、ライフネット生命保険株式会社 岩田 慎一さま、日産自動車株式会社 小暮 亮祐さまにお話を伺いました。
ソフトバンク株式会社 藤平 大輔氏(以下、藤平氏):
CPAという観点は重要な指標のひとつですし、他のメディアと比べて分かりやすい基準です。しかし経営指標から見ると、CPAひとつで売り上げが大きく変わるわけではありません。CPAをもとにしたROIなど、その先の指標が必要かなと思いますね。

平尾:
ソフトバンクは、すでに統合的な分析を実践していらっしゃいます。どのような組織体制になっているのでしょうか。
藤平氏:
私が所属するコミュニケーション本部では、広告出稿を扱っています。チームは、CM・店頭周り・イベントやデジタルの3つに分かれていますね。
平尾:
デジタルマーケティング担当者の悩みに多いのが、組織についてです。デジタルは細分化されていますので、立ち位置が複雑になりがちで会社のなかで動きづらいという声をよく聞きます。ソフトバンクでは、部署がひとつにまとまっているんですね。
藤平氏:
当社も、組織の統合は2年ほどかかりました。様々な部門にデジタルは携わりますが、担当者の人数は限られています。その中でどのようにまとめて、行動力を発揮していくか。さらに頑張らなくてはいけないなと感じています。
ソフトバンクがDMPを構築した理由とは
平尾:
ソフトバンクでは、サイカが提供するプロモーション分析アプリ「XICA magellan」を導入いただいています。それ以前に、DMPを構築されたと伺いました。そのお話を詳しく教えて下さい。
藤平氏:
2017年の学割キャンペーンを事例にお話しましょう。ジャスティン・ビーバーが登場したCM、ご覧になった方も多いと思います。おかげさまでCM好感度ナンバー1を久しぶりにいただきましたが、ターゲットである学生へ届いていたのか?この分析をしなければなりません。
平尾:
メディア接触時間の調査によると10代20代の若者だけでなく、30代もテレビよりネットに費やす時間が増えています。テレビCMが最大のマーケティングツールではありますが、それだけでは若年層にリーチしないというのは明白ですよね。
藤平氏:
CMだけでもデジタルだけでもだめ。合わせ技で一緒に行うのが現状です。やはり、データを統合した分析が必要になります。DMPができるまでは、当社内もデータがバラバラに存在していました。現在はソフトバンク・アドプラットフォームという統合プラットフォームを作り、データをまとめています。テレビのGRPから店舗の購買データまですべてをDMPに集約し、各施策について一元管理していますね。
平尾:
DMPを構築したことで、まさかという気づきはありましたか?
藤平氏:
学割キャンペーンのターゲットは学生ですが、実際に来店していたのは違う層だったという結果が出ました。私たちには、自社のweb広告に接触している人を店頭で可視化できる技術があります。それによると、店舗に来るのはお母さん。40代の女性だったのです。今までのマーケティング戦略の中で、ちょっと像が違ったなと感じましたね。
分析のスピードを上げ、仮説を導くXICA magellan
平尾:
では、XICA magellanの導入背景を伺いたいと思います。ソフトバンクには、分析を行う専門のチームがあります。それでもツールを導入されたのは、どのような理由があったのでしょうか?
藤平氏:
テクノロジーを使って、分析を早く行うためですね。以前は、お父さんシリーズのCM人気や先んじてiPhoneを扱っていたこともあり、競合他社との差別化ができていました。しかし、現在は3キャリアの差があまりない状況ですし、すぐに次の施策を打ち出さなくてはなりません。分析を早く実行し、施策へ繋げるためにツールを導入しました。

平尾:
分析ツールは様々ありますが、導入にあたって検討はされましたか?
藤平氏:
海外ベンダーのツールも試しましたが、分析の手順がブラックボックス化されていて分からないのが難点でした。データを入れると気持ちの良い分析結果がでるのですが、なぜそうなるのかという理由は伺えません。すると、再現性がはっきりしないため納得感が生まれないのです。また、コストの面もありますね。
平尾:
マゼランの分析手法は、重回帰分析をベースとしています。重回帰分析は、簡単な内容であればExcelを使うこともできますし、なぜそのように分析できるのか?が分かりやすいんです。
藤平氏:
マゼランはシンプルな分、分析結果が納得できます。すると、マーケターとして大切な次のステップ、仮説がイメージできる。マーケター自身が理解して使える、他にはないツールだと思います。
平尾:
マーケターとして仮説がイメージできる。仮説あってこその分析ですので、そのような評価は嬉しいです。
広告主がアドテクを理解し、主体的にマーケティングを行う
平尾:
ソフトバンクは、DMPの構築であったり分析ツールの導入であったりと、常に試行錯誤している、戦い続けている企業だなと感じています。なぜ、そのようにチャレンジし続けているのでしょうか。
藤平氏:
広告主としての立ち位置が変わってきていると考えています。代理店さんに任せきりではなく、広告主自身がアドテクを理解し、数字を読んで仮説を立てていく必要がある。社内のデータをどのようにコミュニケーションにつなげるか。そこを考え、実践しないといけません。マーケティングの情報を自分たちに取り戻すということが、求められているのではないでしょうか。
平尾:
これからのマーケティング、マーケターに求められる観点でもありますね。本日は、ありがとうございました。
セッションまとめ
- データを一元管理していると、プロモーションの統合分析に繋げやすい
- 間接効果を可視化することで、正しく施策の評価ができる
- 分析ツールに求めるものは、スピードと分析内容に納得感があり仮説を導き出せるかということ