マーケと統計

視聴率から広告効果を分析する前に:視聴率って信用できるの?

視聴率調査は、株式会社ビデオリサーチによって、関東世帯の900世帯に対して実施されています。調査対象世帯において、その番組が視聴されたかされていないか、正確に言うと、その番組が放送されているチャンネルが映っていたかいないかを調査しているわけですが、たった900世帯の調査で180万世帯のことなんてわかるんでしょうか?

結論から言うとそれなりに高い精度でわかります。「それなりに高い精度」が何を意味するか、ピンと来ますでしょうか?今回は視聴率をマーケティングやプロモーションの分析に使っている方向けに、視聴率という数字をどの程度信用してよいのか、理論的に説明していきます。

視聴率の正確性を、忙しい人のために結論から話すと

視聴率がどの程度正しいかを正確に表現しようとすると、

  • 調査世帯における某番組の視聴率が10.0%だったとして、
  • 全世帯における某番組の視聴率は、
  • 95%以上の確率で
  • 8.0% ~ 12.0% の間に収まる

というものになります。回りくどいですが、統計学的に正確な表現をするとこうなります。

全世帯を調査していない以上、どうしても真の視聴率との差は生まれてしまいます。視聴率調査においては

  • 真の視聴率と、調査世帯の視聴率の差を
  • 非常に高い確率(95%以上)で
  • 一定の範囲内に収める

ために必要な数の世帯を調査していて、それが900世帯だった、ということになります。

調査側の言い分:母集団と同じ特徴の標本集団を調査してるんだよ!

いきなり統計用語が出てきましたが、マーケッターであれば「母集団」という単語はよく耳にすると思いますし、使っている方も多いと思います。視聴率調査においては、調査地域の全世帯が母集団、調査対象の900世帯が標本集団ということになります。

関東地域には約180万世帯あるわけですから、180万世帯全てを調査対象にすれば正確な視聴率が算出できます。ただ、調査に莫大なコストがかかりますから、全世帯を調査するなどやっていられません。ですから、全世帯=母集団と同じような特徴を有しているであろう一部の世帯=標本集団を調査し、「同じような特徴を有してるんだから、標本集団の調査結果=母集団の調査結果だと言い張ろう」というのが視聴率を調査する側の主張です。

900世帯調査すると、どのくらい正確な視聴率だと言えるの?

どのくらい正確な視聴率なのか、という質問には答えづらいものがあります。なぜなら、標本集団の視聴率を調査することでわかるのは、

  • 真の視聴率(全世帯を調査したときの視聴率)は
  • 非常に高い確率で
  • 調査世帯の視聴率の
  • ±○%の中に収まります

ということだからです。つまり、真の視聴率と調査世帯の視聴率はイコールにならないよ(誤差が出るよ)。だから、その誤差を小さくするよ。まれにその誤差が大きくなる可能性はあるけれど、95%以上の確率で、すごく小さな誤差に留めるよ!ということです。

どのくらいの誤差が生じうるの?

視聴率の誤差がどの程度かは、ビデオリサーチのHPに記載があります。自ら誤差があることを説明してるなんて、真面目ですね。

視聴率をご覧いただくときの注意事項 | 週間高世帯視聴率番組10

リンク先を見ていただけるとわかりますが、調査世帯の視聴率毎に誤差の大きさが変わっています。900世帯調査だったらこれくらいの誤差、1,200世帯の調査だったらこれくらいの誤差、という具合であればいいのですが、そうは問屋がおろしません。これは、誤差がどの程度生じうるか、という計算式の中に、世帯視聴率が入っているからしょうがないんですね。

900世帯調査において、一番誤差が大きくなりやすいのは、視聴率40~60%みたいですね。±3.3%です。ところで「半沢直樹」の最終回の視聴率は、42.2%と公表されています。あのドラマは2013年放送ですが、900世帯調査が始まった2016年以降に放送されていれば、その真の視聴率は、95%以上の確率で、42.2%±3.3%=38.9%~45.5%の中に収まります。

もっと精度を高めたいならどれくらいの世帯を追加調査すればいい?

95%の確率でプラスマイナスの誤差3.3%なんて嫌だ!もっと精度を高めて欲しい!というあなたのために、じゃぁ何世帯調べればいいのよ、ということについて考えていきたいと思います。

最終的に知りたいのは、何世帯調べればいいか、ですから、この調査世帯数をnと置きます。

精度を高められるのは「aの確率で」「±bの誤差」という2つですね。確率と誤差の範囲です。それぞれ、aとbと置きます。

例えば、n=900であれば、a=0.95で±0.033の誤差がでるよ、という感じですね。

統計学について本気で学びたい人は初級の本を読んでもらうとして、ここでは結論だけ紹介します。

aに関して、統計学では0.95か0.99という数値がよく使われます。慣習のようなものですが、今回はこれを採用します。誤差がある範囲内に収まる確率は95%か99%のどちらかから選んでね、ということです。

では、待望の計算式ですが、もう何も考えずに下記の式に代入してください。95%の確率であれば1.96、99%の確率であれば2.58のどちらかを選んでください。

必要なn数の計算式

もし、調査世帯視聴率20%の番組の真の視聴率を、99%の確率で、±1%の誤差の範囲内に留めたいのであれば、下記の計算式を解くことになりまして、必要な調査世帯数は10,651世帯です。めちゃくちゃ増えましたね、めちゃくちゃ大変ですね!

必要なn数の計算式

まとめ

視聴率を使って広告の効果測定をするマーケッターはそれなりに多いと思いますが、視聴率にはそれなりに誤差が生じることを念頭に置いて分析に取り掛かる方がよいと思います。ご自身が何か調査をするときも、この考え方は使えますので、応用して「どれくらいの精度にしたいのか」から逆算して、調査する標本数を決めるのも良いと思います。

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