テレビCM調査

テレビCMの費用(出稿金額)の決定要因

テレビCM出稿金額が大きいトップ100ブランドランキングという調査結果を発表したところ、様々な反響がありました。特に多かったものが、「この調査は誤っている(出稿金額が実態を反映していない)」というものでした。

この調査は個別ブランドの出稿金額をヒヤリングした結果ではなく、調査機関におけるテレビCM放送回数に「テレビCM出稿回数単価の相場」を掛け算したものであるため、ご指摘の通り、正確なものではありません。放送回数はほぼ実態を反映しているものである一方、想定単価を掛け算した途端に信頼性が失われるのは想定単価が実態を反映していないからです。

では、なぜ想定単価が実態を反映しないのでしょうか?それは、テレビCMを出稿する上での「単価」の決定要因が多様だからです。

本記事では、その「単価」の決定要因について、よくあるものを網羅的に解説していきます。

忙しい人のための「テレビCM出稿単価の決定要因」概要

テレビCM出稿単価の決定要因は大きく分けて2つ存在します。ひとつは「テレビ局要因」、もうひとつは「代理店要因」です。

テレビ局要因は非常にシンプルです。テレビCMへの出稿という商品は「タイム」「スポット」という2種あります。タイムのほうが単価が高く、スポットのほうが単価が低くなります。その他、時間帯、曜日、人気番組か否か、CM放送時間(15秒、30秒、60秒、120秒等)、買い付け時期などにも大きく影響を受けます。

つまり、テレビ局要因のほとんどはテレビCM放送枠という商品の価値により変動する要因とも言えます。

代理店要因は少し複雑です。テレビ局をCM放送枠という商品を作る「生産者」、代理店をCM放送枠を買う「購買者」と考えると、生産者は、商品を大量に購買してくれる購買者には相対的に安く商品を販売し、そうでない購買者には相対的に高く商品を販売します。CM放送枠を大量に仕入れられる代理店経由でテレビCMを出稿すれば、出稿金額自体は安く済む可能性が高まります。

また、代理店は購買者である一方、広告主にCM放送枠を売る立場でもあります。上記と同様の理由で、大量のCM放送枠を買いたい広告主には相対的に安くCM放送枠を販売します。

つまり、代理店要因は商品の価値というよりむしろテレビ局と代理店の力関係、代理店と広告主の力関係により変動する要因とも言えます。

リスティング広告のように入札形式でないテレビCM放送枠の単価は、上記のような複数要因が複雑に絡まって決定されています。そのため、「想定単価」として考えられる金額が実態を反映しにくくなっています。

テレビCM放送枠の価値により変動する要因

テレビCMの放送枠はどれもが同価値ではありません。考えてみれば当然のことですが、人気番組のテレビCM放送枠と、不人気番組のテレビCM放送枠は同価値ではありませんし、平日お昼の番組のCM放送枠と、休日のゴールデンタイムの番組のCM放送枠は同価値ではありません。それでは、CMの放送枠の価値はどのような要因に影響を受けるのでしょうか?

タイムかスポットか

タイムとは、ある特定の番組のスポンサーになることで放送できるようになるCM枠のことです。「この番組は、~~の提供でお送りします」のような形で読み上げられる企業やブランドはスポンサーとしてCM放送枠を購入しています。一般的にスポンサーには30秒CMの枠が与えられますので、CMが30秒であればタイムで買っていると考えて間違いないです。

視聴率

テレビCM放送枠の買い付けは「放送回数」ではなく、「GRP」で実施されます。 ※ いまさら聞けないGRPの定義、計算方法、注意点

1,000GRPを買い付けたときに、視聴率が1%だと予想される番組で1,000回放送されても、視聴率が25%だと予想される番組で40回放送されても、支払う金額は同じです。ゴールデンタイム番組と深夜番組の視聴率には差がありますので、深夜番組のCM放送枠を中心に買い付けていれば放送回数は大きくなりますし、ゴールデンタイム番組のCM放送枠を中心に買い付けていれば放送回数は小さくなります。

時間帯や曜日

時間帯や曜日によっても単価は変動します。主には視聴率が高い時間帯、曜日に単価が高くなりがちです。

この要因については日本テレビ放送網株式会社の日テレ広告ガイドに詳しく記載されています。

買い付け時期

買い付け時期も大きな単価決定要因のひとつです。CM放送枠は有限ではありますが、必ず全枠が売れるわけではありません。売れ残った枠には公益社団法人 ACジャパンのCMが放送されます。

テレビ局や代理店からすると、売れ残りは避けたいと思うのが当然です。つまり、売れ残りの枠がある状況で、その枠を買いたいと手を上げれば比較的低い単価で放送枠を買える場合があります。基本的には、どの広告主にとっても旨味の少ない不人気枠ではありますが、安く買えるのであれば買いたいと思う広告主も一定数存在しています。

力関係により変動する要因

テレビ局と代理店、代理店と広告主との力関係によっても単価は変動します。あの広告主には安く売って、うちには高く売るなんてずるい、という話ではなく、得意先と長期安定取引をするために取引価格を変更するのは自然なことです。もちろん、入札である方が経済学的には全体にとってよくなりやすいのですが。

CM買い付け量

CM放送枠もあくまでテレビ局の商品ですから、大口の取引先には相対的に低い単価で販売されます。日本においては、株式会社電通、株式会社博報堂、株式会社アサツー ディ・ケイが三大広告代理店と呼ばれていますが、この三社と他社では明らかに単価の違いが見られます。また、この三社の中でも株式会社電通は取引量が大きく、更に低単価で買い付けられる可能性があります。

同様の理由で、テレビCM放送枠を大量に購入する広告主には相対的に低単価で放送枠が融通されます。

広告主、またはその担当者の交渉力

広告主、あるいはその担当者がテレビ局⇔代理店⇔広告主の力関係に精通しており、広告主のテレビCM出稿予算が大きい場合、つまり、広告主の交渉力が強い場合に、広告主が支払う単価が下がる可能性があります。

交渉力に定評があるのがプロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社です。有名企業や新興企業のマーケティング責任者にプロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社出身の方が着任されるケースをよく目にします。彼らは三者間の力関係に精通しており、代理店との交渉ノウハウも蓄積しているため、その経験やノウハウを持って転職し、要職につき、大きな貢献をすると評判です。

広告枠の独占

オリンピックやサッカーのワールドカップなど、非常に大きなイベントにおいて、ある特定の代理店がその放送枠を独占契約で取得するケースがあります。大きなイベントですから、広告主にとっても魅力的なCM放送枠ですが、特定の代理店からしか購入できない場合、単価が高くなる可能性があります。

まとめ

CM放送枠の単価決定要因は、これまで挙げてきた以外の要因も含め多種多様で、それぞれが複雑に絡み合っています。その中で、CM放送枠本来の価値以外の要因の影響はそれなりに大きいため、テレビCM担当者にとっては、広告代理店との良好な関係を築きつつ、交渉していく必要があると言えるでしょう。

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