広告を科学する(5)

海外広告研究論文の日本語まとめ。表示位置は絶対に上?広告はホントに購買意欲に繋がるのか

昨今、さまざまな広告手法が生まれていく一方で、どのような広告手法が効果的で、その背景にはどのようなメカニズムが存在するかということに関して、学術的な知見があまり現場に届いていないという実情があります。こうした問題を解決するために、これまで3回に分けてマーケティング・サイエンスにおける広告研究のサーベイを行い、現場の人たちにとって有用なものになるように、その内容をなるべく分かりやすく発信してきました。今回は、これまでのサーベイ内容を整理した上で、これからの研究方針について、簡単に紹介したいと思います。

マーケティング・サイエンスにおける広告研究のサーベイ整理

これまで、トップジャーナル(※1)に載っている論文を中心に、論文ごとの紹介をしてきましたが、ここではすべての内容を踏まえて、広告研究の中で項目ごとにまとめてみたいと思います。

広告の表示順位と利益の関係

まず挙げられるのが、広告の位置と利益の関係です。通常、広告が表示される位置が上であればあるほど、利益が良くなると考えてられますが、果たしてそれは本当か?ということに関して、いくつかの研究がなされていました。

これまでサーベイした研究結果を要約すると、概して「位置が上であればあるほど利益が高くなりがちではあるものの、必ずしもそうとは限らない」ということが言えそうです。

Varian(2007)では、より高い位置に表示される方が純利益が高くなることを実証していますが、Ghose and Yang(2010)では、CTRやCVRに関して上であればあるほど収益が最大化するというわけではないことを実証しています。

また、Jerah et al. (2011)では、企業や商品に関して詳しい層と詳しくない層に分けた上で、詳しい層は位置に関係なく企業や商品の質が優位なものを選び、詳しくない層は優位な企業と劣位な企業の商品の質に差があまりない場合は位置に応じて選択するが、差があるときは位置ではなく商品の質が優位なものを選択することを実証しています。

このように、確かに位置が上であればあるほど利益が高くなりがちではあるが、必ずしもそうではなく、ケースによって異なることが実証されています。

広告と購買行動に関する分析

次に上げられるのが広告と購買行動に関する分析です。すなわち、「広告は購買行動に寄与しているのか」ということに関する研究です。まさにマーケティング・サイエンスにおける広告研究の中心的な問いですが、果たして実際はどのようになっているのでしょうか?Manchanda et al.(2006)では、バナーやポップアップの広告が購買意欲に影響しているということを実証しています。Yao,Mela(2011)では、インターネット広告が消費者の効用及び広告主の利潤に影響を与えていることを実証しています。Goldfarb,Tucker(2011) では、インターネット広告の効率性についての実証分析を行っており、検索ワードに関連する広告を出すことと広告の目立ち度を増すことは、それぞれ単独で用いる事で購買意欲を増やす効果があることを実証しています。

このように、昨今のマーケティング・サイエンスにおける広告研究はインターネット広告が中心ですが、テレビ広告についての考察もあります。Joo et al.(2013)は、テレビ広告がオンラインサーチ数を増やすことを実証しています。この研究は、広告が購買意欲を促すことを直接的に示しているわけではありませんが、「あるメディアの行動が消費者がもう片方のメディアへのアクセスに対する行動」に注目したものであり、広告が購買意欲にもたらす間接的な影響について明らかにしたものとなっております。

以上の結果をまとめると、広告は総じて購買行動を促進するということが言えそうです。とても当たり前のことのように思われるかもしれませんが、様々なデータを使ってそれを実証できたというのは、科学的根拠として重要です。

※1 トップジャーナルについては「アメリカトップ3のマーケティングジャーナルの特徴 ーマーケティング・サイエンスにおける広告の研究(4)」をご参考ください。

参考文献

Ambarish, C., and Kaiser, U. (2014), “Targeted Advertising in Magazine Markets and the Advent of the Internet,” Management Science, Forthcoming.
Bravo, E., Sanz, V., and Yildirim, M., (2014), “Valuing Customer Portfolios with Endogenous Mass-and-Direct Marketing Interventions Using a Stochastic Dynamic Programming Decomposition,” Marketing Science, Forthcoming.
Ghose, A., and Yang, S. (2009), ‘‘An Empirical Analysis of Search Engine Advertising: Sponsored Search in Electronic Markets,’’ Management Science, Vol.55, No.10, pp.1605-1622.
Goldfarb, A., and Tucker, C. (2011), “Online Display Advertising : Targeting and Obtrusiveness.” Marketing Science, Vol. 30, No. 3, pp. 389-404.
Jerah, K., Ma, L., Park, Y. H., and Srinivasan, K. (2011), “A Position Paradox” in Sponsored Search Auctions.” Marketing Science, Vol.30, No.4, pp.612-627.
Joo, M., Wilbur, K. C., Cowgill. B., and Zhu, Y. (2013), “Television Advertising and Online Search.” Management Science, Vol.60, No.1, pp.56-73.
Manchanda, P., Dubé, J., Goh, K., and Chintagunta, P.(2006),”The Effect of Banner Advertising on Internet Purchasing.” Journal of Marketing Research: February 2006, Vol. 43, No. 1, pp. 98-108.
Varian, H. R. (2007), “Position auctions.” International Journal of Industrial Organization, Vol25, No.6, pp.1163–1178.
Yao, S., and Mela, C. F.(2011) “A Dynamic Model of Sponsored Search Advertising,” Marketing Science, Vol.30, No.3, pp.447-468.

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