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徹底的にデータを見て、グロースハックする

金山裕樹氏

ビジネスシーンにおいてデータはどのように活用すべきなのか。さまざまな業界のスペシャリストにお話を伺うインタビューシリーズ。今回は、株式会社VASILY代表取締役 金山 裕樹氏です。徹底的にデータ同士の相関を見ることでVASILYを成長させてきた金山氏に、データ分析の可能性や限界について伺います。

君が神だとしてもデータを持ってこい

─── さっそくですが、金山さんにとってデータとは?

その質問難しいね。僕にとってのデータは、ふたつの考えがあります。ひとつは意思決定ツール。もうひとつはコミュニケーションツール。

社内でいろいろな企画や意思決定するときに口酸っぱく言うことがあります。「君が神だとしてもデータを持ってこい」ってね。そのくらいデータは信じてますね。

日々いろいろな意思決定が発生するなかで、僕たちが大事にしているのは、“インテリジェンス”。日本語で言うと「情報」と漠然としてしまうんですけど、少し分解して考えると、“インフォメーション”と“インサイト”のふたつに分解できると思っています。それらが組み合わさったものがインテリジェンス。データはインフォメーションに分類される。

データだけでも意思決定はできないし、考察や想いなどのインサイトだけでも意思決定はできません。データを含めたインフォメーションと、それを個人がどう思ったかというインサイトを組み合わせたインテリジェンスを情報として持って、意思決定をしています。データが無ければインフォメーションが成り立たなくなってしまうので、どんな状況においてもデータをもとに意思決定するようにしています。インテリジェンスをもとに行動するのがVASILYの経済活動のベースです。

─── 以前にお話を伺ったときに、「相関をみるべきだ」と仰っていました。

相関も因果も両方見るようにしています。わかりやすく情報を処理するために、いろいろなことに人間は因果を作ってしまいます。人間は物語に生きていますし、人生はストーリーだから。しかし、物事には因果だけでは説明できないものもあります。有名な話だと、ドラッグストアなどで、オムツの横にビールを陳列すると売上があがる、とか。それって完全に因果ではない。相関は人間の脳では計算できないものです。だからデータがあると思っています。

データを見ることは、呼吸をするのと同じこと

── コミュニケーションツールとはどのような意味でしょうか?

意思決定に関わってくことですが、データがないといろんな方向に話が飛んでしまいます。アクションを起こすとき、まずデータから始めます。話の起点になるからです。僕らはすべてのユーザーの活動をデータで落とし込んでいて、社内から誰でもアクセスできるようにしています。データというインフォメーションからチームでインサイトを作って、最終的にインテリジェンスにしていく。それが意思決定の道具となっていきます。データが無いとなにも話ができません。それが、「君が神でもデータをもってこい」という話につながっています。

それぞれの思い込みで話が通じないという経験をたくさんしてきました。その思い込みもその人の人生なので、個々の想いや直感は否定しませんが、それを裏付けるものとしてデータがあります。例えば、サイト内のボタンを変えたあとのユーザビリティの善し悪しの判断はどこでするのか? 110万人いる(取材時点、現在のユーザー数は200万を超える)ユーザーの声はすべて聞けないので、ログという形のデータで判断します。データを見ながらディスカッションしたり、データから行動を検証することは、呼吸をするのと同じレベルなのかもしれないですね。

君の考えているその企画やアクションでどの数字がどう動くの?

─── 具体的にどのようにデータを活用していますか?

そんなに難しいことはやっていません。すべてのアクションを定量化するだけです。なにか施策を打つときに、どの数字を動かしたいのかを聞きます。「君の考えているその企画やアクションはどの数字がどう動くの?」って。

たとえば、アプリストアのキャプチャーを変えたいと思ったとき、アクションと数字を紐づけて、伸ばすべきKPIに関係すること以外はやらないようにしています。アクションと伸ばすべき数字を関連づけて、そこにフォーカスしてアクションしていきます。そうすると、事業として大事な部分は結果的に売り上げだとか伸ばしたいものが伸びていく。そこの確認をひたすらしていく感じです。

─── なぜそこまでがっちりトラックを追おうとしたのですか?

僕のキャリアのなかでそれが当たり前だと教え込まれてきました。圧倒的に影響を受けているのは『ポスト・ヒューマン誕生』(レイ・カーツワイル著)という本で、技術的特異点が人類にどう影響を与えるのかという内容。近い将来計算機は信じられないくらいに増大になり、すべてのものが定量化できる。例えば美術の美しさだったり感情もすべて定量化できるようになると書かれています。技術的特異点がくると信じていますし、近い将来すべて定量化できるようになるのを肌で感じているので、それを実現させたいですね。

僕は80%の精度でいい。最後の20%はいらない。

─── 定量化していって上手くいった例はどのようなものがありますか?

多分一番効果が出ているのが、アプリの画面に表示するお知らせです。例えばキャンペーンやアップデートなど。どんな文言・時間帯・曜日で配信すると開封されやすいのかについては、完全に統計学的なアプローチで相関を見ています。

今までは因果で考えて、ユーザーのユースケースを考えて、ファッション情報は平日よりも可処分時間のある土日にチェックしてくれるだろうと金曜にお知らせ出していましたが、相関を見ると、金曜日より月曜日のほうが開封率が高いことが分かりました。

このデータを見るまでは、月曜日は忙しくてお知らせは開封しないと考えていました。しかもファッションのアプリなので、平日より土日の方がアクセスは多いですし。休日休前日に配信すべきと考えていましたが、実際にデータで確認すると、全然違いました。まさに相関が見えました。人間の目には見えないものがあります。統計の面でしかわからないことが見えたといういい例ですね。絶対に見えないものがあるから、統計的アプローチは絶対に必要だと思います。

─── 逆に上手くいかなかったことや、ここは進化させなきゃいけないなと思ったことは?

スピードかな。正確にデータをとろうとすると、どうしても時間がかかります。時間かけたり、サンプル数が多いほうが精度は上がりますが、ささっと終わらせたほうが良いときもあります。データにダイブしすぎて徒労に終わったことももちろんありますし、そこの見極めが難しいですよね。データは無限に分析し続けることができます。どこで区切りをつけるかが重要ではないでしょうか。インフォメーションとインサイト両方が必要ですので、データだけを信じるわけではありません。データサイエンティストはデータを噛み締めたい。僕は80%の精度でいい。最後の20%の精度をあげるために全体の80%の時間が使われてしまう。でも、最後の20%は実はあまり必要ないことが多い。それは、学問と実務の違いだと思います。

─── データ分析をしていく上で必要なこととはどんなことでしょう?

フラットな判断ができ行動を起こせる環境を作ることは大事だと思います。データに関する業務は自分でやることが重要だから。他人がとったデータには、その人の恣意的なものが含まれてしまうので、自分でやった方が絶対にいいと思ってます。データは、収集・分析・アクションをひとりでやったほうが、データのバイアスはかかりません。データを放り投げて、レポートだけ確認して行動すると、上手くいかないことがある。データ分析会社とかも使いません。絶対にずれますから。だから社内にデータサイエンティストがいますし、自分でも簡単な単回帰くらいならやってしまいます。作られた数字で判断を惑わされないためには、自分でやるしかない。難しいことはする必要は無く、単純集計や分布図でもいいと思います。

細かい数字はいい。形はどうだ?

─── 今後、データをどのように活用したいですか?

データのビジュアライズはやってみたいですね。細かい数字を追わなくても、形で判断できるといいですね。エクセルで数字を追うのもいいのですが、データのビジュアル化したときに、どういう形になっているかが気になる。ビジネスにおいて、細かい数字は追ってられない場面が多くあります。しかし、形なら見ることができる。できればすべて形で確認したいくらいです。必要があれば数字にダイブすればいい。将来はすべてのデータをビジュアル化したい。

あとは相関の分析をもっと深くやっていきたいですね。とれる数字を全部出して、KPIを設定して、徹底的に相関を見てみたいです。それをビジュアル化できればなお良いですね。

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